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2009年3月

2009年3月27日 (金)

抗酸化作用ビタミンの有効性

抗酸化作用があるといわれるビタミンを摂取しているが、最近の知見によるとがんの予防効果に疑問がありそうです。

抗酸化作用があるといわれるビタミンは、βカロチン、ビタミンA、C、E、セレン(セレニウム)などですが、例えば喫煙者に対する”合成”βカロチンの評価では、

一般の食品素材ではなくサプリメントで摂取した場合、むしろがん罹患を促進する可能性があると報告されている。抗酸化系ビタミンのベータカロチンの錠剤を喫煙者が摂った場合、逆に肺がん罹患の危険性が増大するという。

米国National Cancer InstituteがフィンランドのNational Public Health Instituteと共同で行った50歳から69歳までの男性喫煙者2万9千133人を対象にした栄養介入試験(ATBC研究)で明らかになったもので、被験者は1日に平均20本のタバコを36年間吸っており、無作為に、1)合成ビタミンE50IU、2)合成ベータカロチン20mg、3)ビタミンEとベータカロチン併用、4)偽薬、という4つの投与グループに分けた。

結果、876人が肺がんを発病、564人が死亡した。そのうち、ビタミンEグループの発病者は2%と低く、ベータカロチングループは16%と高い結果が出た。ただ、毎日の喫煙量が20本以下でアルコールを摂取しない被験者の場合、ベータカロチン投与における評価はできなかった。

喫煙者への合成ベータカロチン投与ついては、その後、1996年に発表された米国のCARET studyでも否定的な見解が下された。
試験は、喫煙者あるいは以前タバコを吸っていた被験者および職場環境にアスベストがある労働者18,000人以上を対象に、半数に偽薬を、残り半数に合成ベータカロチン30mgとビタミンA25000IUを与えるというものだった。

しかしながら、この研究は予定より21ケ月早く中断された。というのも、ビタミン投与グループは偽薬グループに比べ、肺がん罹患が28%、死亡率が17%も高くなったためだ。

その後、こうした合成ベータカロチンの弊害については、「イタチによる実験で、合成ベータカロチンを多量投与したところ、特に煙草の影響を受けたグループとアスベスト環境にいたグループで、肺がんの危険性が増大した」と報じられている(Journal of the National Cancer Institute誌'99/1月号)。

この原因については、「煙草の煙に含まれる発がん性物質との相互作用を行う酵素の生成を合成ベータカロチンが高めている」とされている(Nature誌'99年/4月号)。同誌によると、イタリアの研究者およびテキサスの研究グループが合成ベータカロチンを豊富に含んだ餌をラットに与えたところ、肺にある種のがんを誘発させる酵素が増大したという。 リンク先

現在までに得られたエビデンスでは、ビタミンに限らず、がんを予防することが確実と評価された単一の食品や食品成分は存在しません。β-カロテン、ビタミンA、C、E、セレニウムなど、試験管実験で得られたメカニズムや動物実験では抗酸化作用があるといわれてきた栄養素を単独、あるいは、複合で用いても、がん予防効果がないことを示す複数のエビデンスが揃ってきています。逆に、通常の食事からは摂取できないレベルの高用量のβ-カロテンやビタミンEは、がんや健康障害のリスクを上げるという確かな証拠が示されています。がんを予防する可能性が示されている成分でも、サプリメントなどで過剰にとりすぎない方が良さそうです。

世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による「食事、栄養、身体活動とがん予防の世界評価」の2007年の改訂では、いろいろの栄養素についての要約がチャートで表わされています。「日本人のためのがん予防法」「食品・栄養とがん予防:世界的見地から

例えば著しい肥満は、確実に膵臓がんのリスクを高める、逆に(食事からの)葉酸は、おそらくリスクを低減する等です。

厚生労働省のWebには「健康食品の安全性・有効性情報」があり、たくさんの健康食品・ビタミンに関してより詳細な情報を得ることができます。
科学的な情報を得て正しく判断し、服用すべきかどうかは自己責任で決めるということでしょう。

私が摂っているビタミン類は全て『天然由来』の者に限っています。合成ビタミンよりは少し高価ですが、天然由来のものを多すぎないように摂るほうが安全だということです。確かに抗酸化作用のあるビタミンががんを予防するという確かのエビデンスは少ないですが、例えばセレン(セレニウム)については、

がんの発生率や死亡率との関連についての報告があるが、現時点ではポジティブな(有効性があるとする)結果とネガティブな(有効性がないとする)結果の両方が存在している。また、部位により異なることが示されている。

<がんの発生率や死亡率の抑制効果が示唆されたという報告>
 1) 全がん死亡率および発病率を低下させるのに経口摂取で有効性が示唆されている(66)。ただし乳がん、膀胱がん、皮膚がん、白血病-リンパ腫に対しては、このような効果の証拠はない(66) (66)。
 2) 前立腺がんの発生率の減少に、経口摂取で有効性が示唆されている(66)。血中、血漿中、および足の爪のセレン濃度を測定した結果より、食事からのセレンの摂取量の増加は前立腺がんのリスクを減少させると思われている。このようなサプリメントの効果は、セレン欠乏の人で最も大きく現れる。食事からの十分なビタミンEの摂取が、セレンの前立腺がん予防効果をさらに向上させるかもしれない。
 3) 疫学調査ではセレンの土中濃度がもともと低い地方で、皮膚がんの素因がある人を対象に、二重盲検試験でセレンの摂取とがんの関連をみた結果、皮膚がんの発生率は変わらなかったが、肺がん、大腸がんと前立腺がんの発生率は33-54%減少した。全体のがん死亡率は50%低下、前立腺がんでは37%の低下がみられた(53)。
 4) 50μg/日のセレン化酵母摂取が、15mgのβカロテンと60mgのビタミンEとの併用で、脳卒中死亡率、がん死亡率、そして全体の死亡率を減少させたという予備的な知見がある(66)。

<がんの発生率や死亡率の抑制効果がみられなかったという報告>
 1) 皮膚がんの発生率を減少させるのに、経口摂取で効果がないことが示唆されている(66)。200μg/日のセレン摂取は、基底細胞がん、扁平上皮細胞がん、非メラノーマ性皮膚がんの発生を抑制しなかった。
 2) 肺がんの発生率を減少させるのに、経口摂取で効果がないことが示唆されている(66)。疫学調査の結果、食事からのセレン摂取の増加は、肺がんリスクを減少させなかった。ただし欠乏している人では、少し効果があるかもしれない(66)。
 3) 3365人を対象とした無作為化比較試験において、セレン(37.5μg)とビタミンC(250mg)およびビタミンE(100IU)を含有するサプリメントを1日2回、7.3年間摂取させた結果、胃の前がん性病変の有病率や胃がんの発生率にプラセボとの差はなかった(PMID:16849680)。
 4) 2003年9月までを対象に、4つのデータベースで検索できた無作為化比較試験25報について検討したシステマティックレビューにおいて、がん患者によるセレン、ビタミンC、ビタミンA、β‐カロテンなどの抗酸化物質の摂取と全死亡率との関連は認められなかった(PMID:16849679)。
 5) 35-60歳の成人男女13017名(男5141名、女7879名)を対象とした無作為化二重盲検比較試験において、セレン(100μg/日)、ビタミン C(120mg/日)、ビタミンE(30mg/日)、β-カロテン(6mg/日)、亜鉛(20mg/日)を平均7.5年間摂取させたところ、女性では皮膚がんのリスクが増加し、男性では影響はみられなかった (PMID:17709449)。
 6) 2005年8月までを対象に7つのデータベースで検索できた無作為化比較試験12報についてのシステマティックレビューにおいて、β-カロテン、セレン、ビタミンEなどの抗酸化物の摂取は、全がん発症率や死亡率に影響を与えなかったという報告がある(PMID:18173999)。
 7) 健常男性34,888名(50歳以上、試験群26,192名)を対象とした無作為化プラセボ比較試験において、ビタミンE 400IU/日、セレン200μg/日を単独もしくは併用で7-12年間摂取させたところ、前立腺がん、肺がん、結腸直腸がんの発症リスクに影響は認められなかったという報告がある(PMID:19066370) 。

効果のあるなし両方のデータがあり、はっきりしたエビデンスとは言えないだろうが、「合成」β-カロチンのようにのような危険性がなければ摂り続けようと考えている。ただ、Dr.ワイルも彼のWebページでは推奨するビタミンの摂取量について著作に書いた内容とは違ってきているようで、マルチビタミンという形で推奨しているようです。

ビタミン、ミネラルは抗酸化作用だけに注目しているのではありません。これらの栄養素は免疫力を高めるためにも必要なものです。これらを食事からバランス良く摂取するのが良いのですが、玄米菜食ではミネラル分も不足しがち(玄米のぬかは微量ミネラルを結合させる作用が強いため、玄米食はミネラル不足になり勝ち)です。そのため、私は玄米ご飯には必ず「有機栽培の黒胡麻」を振りかけて食べるようにしています。それも結構な量ですから、便はいつも黒ずんでいます。アメリカ補完代替医療推進協会の日本語版ページが参考になるでしょう。

ビタミンも天然由来の安心できるものを、摂りすぎないように続けることにします。

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2009年3月25日 (水)

2年越しの高橋真梨子

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7月の高橋真梨子コンサートを先行予約しておいたら、抽選でチケットが取れたという連絡があった。2年前にもこの時期に彼女のチケットを購入しておいたのだが、膵臓がんで入院して手術をし、退院したのがコンサートの数日後で、結局チケットは誰かに差し上げたのだった。G110_2

バラードの女王といわれる高橋真梨子は、コンサートでソプラノサックスを披露 することもある。父がプロのジャズサックス奏者であり、そんな環境で育ったからだろう。平原綾香も、そういえばサックス奏者だった。洗足学園音楽大学ジャズコースサックス専攻。生徒会長も務め、卒業式では学長賞を授与されたという、こちらも才色兼備の歌手だ。

二年越しで、聞き逃したコンサートに行くことができる。生きていればこそである。『宇宙の叡智』に命を預け、生かされるままに生きている。感謝。

高橋真梨子のアルバム『紗』『musse』を聴く。

このところ、連日チェロのレッスン。短時間だが毎日音を出している。『グリーン・スリーブス』、『虹の彼方に』など。少しはサマになってきた。楽譜が頭に入って右手の弓と左手の弦に気配りができる。ビブラートに挑戦。綺麗なビブラートができるとできないとでは、チェロの魅力に差が出ます。

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2009年3月24日 (火)

肥満は膵がん術後の死亡率を2倍にする

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玄関先にスノーフレーク(鈴蘭水仙)が咲きました。pivoさんからこの花の名前を教えていただきました。


体格指数(BMI)の値が35を超える肥満者は、リンパ節転移が広範で生存率も低く、術後の再発率が高い膵がんを発症しやすいという報告が「JAMA/Archives journals」(JAMAはアメリカでもっとも権威のある医学系雑誌)の1つ、「Archives of Surgery」誌3月号で、テキサス州立大学 M. D. アンダーソンがんセンターのJason B. Fleming氏らが発表した。(がんナビのページより) 元の英文記事(要約)はこちら

今回対象としたのは、1999~2006年に膵がんの治療で膵切除術(膵部分切除あるいは膵全摘)を行った患者285人。
BMIが35を超える患者では13.2カ月、BMIが23未満の患者では27.4カ月が生存の中央値であった。
BMIが35を超える肥満患者では、BMIが35以下の非肥満患者と比較して、リンパ節転移のリスクが12倍、膵切除術後のがんの再発と死亡のリスクは非肥満患者のおよそ2倍であった。がんの再発は、BMIが35を超える患者では95%、BMIが35以下の患者では61%に認められた。

国立がんセンターの「日本人のためのがん予防法」でも肥満は、喫煙・運動不足と並んで膵がんのリスクを高める因子であると書かれているが、それだけではなく、術後の再発率に関しても主要な宿主因子であることが明らかになったということです。

ASCO 2008の生存率」で書きましたが、術後ジェムザールを投与した場合の無病生存率(3年)は23.5%、無病生存率(5年)は16.5%です。この記事によるとBMIが35以下の患者では39%(再発患者が61%ですから)になります。期間が書かれていないのですが、調査期間が1999~2006年ということですから、2~9年くらい経過している患者の現時点での成績ということでしょう。非肥満者の無病生存率は、ASCOの無病生存率よりは高いはずです。

つまり、「統計値」というものは、このように当てにならない。というか、注目する因子を変えただけでその意味する内容が変わってしまいます。ASCOのデータは「肥満度」は考慮せずに「十把一絡げ」で統計処理したもの。肥満度を考慮し、性別を考慮し、民族や人種、生活環境まで考慮したら、そもそも統計の対象となるようなたくさんのサンプルは集められないわけですから、これが統計の宿命でしょう。『統計は統計、私は私』。統計値で悲観的になる必要もないということです。

ただ、BMI35以上というと、身長169cmの私の場合、体重が100kgでちょうど35.0となります。コーラとマクドナルドで超肥満となる人の多いアメリカでは結構多いのかもしれませんが、日本人では珍しい部類になるのではないでしょうか。現在の私のBMI指数は21.7、膵がんになる前は最大で29くらいでしたが、これでも「高度肥満」に後一歩という数字です。23未満では生存期間中央値が2倍ほどに長くなるということですから、今後も運動と食事に関心を払い、現状を維持するように努めることが大事だということに違いありませんね。

『ともかく、歩け、歩け』『玄米菜食で腹6分目』と、このブログで書いて実行してきましたが、このニュースを見て、これがやはり膵臓がんの再発を抑えるための重要な一つの方法だということを確信しました。今日もJRのほぼ一駅分(蒲田から大森まではJRの駅間距離では結構長い方です)を、往復で歩きました。

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2009年3月21日 (土)

インターネットで聴く交響曲 モーツアルト40番

パソコンでこのブログを書いたり、何かをするときはたいがいインターネットラジオでクラシックを流している。WINAMPも日本語に対応して、格段に使いやすくなった。ネットラジオの多くはCDを流しているのだが、最近はオーケストラのライブをリアルタイムで、あるいはオンデマンドで流すサイトがずいぶんと増えてきたようだ。

例えば、ベルナルト・ハイティンクの生誕80年記念で、オランダの公共放送局radio4が無料でダウンロードをさせてくれるとう大盤振る舞いだ。曲は、ビゼー:交響曲ハ長調 (2000年録音)、 シューマン:交響曲第1番「春」 (1981年録音)、 ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 。320kbpsのMP3フォーマットでCDにも匹敵する音質だと言える。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団も定期演奏会をライブで有料配信するというニュースもあった。

こうなると、いつライブが聴けるのかを、常に検索しなければならないが、世の中には親切な人もいて、「おかか since 1968 Ver.2.0」は、海外クラシック音楽ライブ番組情報を日付別にまとめたブログである。こんなブログがあると、いくら時間があっても足りないという悲鳴を上げたくなるほどである。ザルツブルク音楽祭やバイロイト音楽祭もインターネットで流されるようになって、クラシックファンには贅沢な悩みが増えそうである。

日経パソコンが、2008年10月に創刊25周年を迎えたのを記念して、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏をインターネットで配信する「ネットで楽しむオーケストラ ― 新日本フィルライブ ―」を開設した。今日はこれを聞いてみた。

曲はモーツアルトの交響曲第40番。モーツアルトの交響曲の中では私が一番好きでよく聴く曲。若い頃はLPレコードを買う金がなかったからFM放送のエアーチェック(これも懐かしい言葉だ!)でカセットに録音して聞き、少し余裕ができたら真っ先にLPを買った記憶がある。

「ネットで楽しむオーケストラ」ではクリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団で、すみだトリフォニーホールでの録音だ。

ト短調の40番は、第1楽章の冒頭、ためらいがちなヴィオラ(だと思う)の刻出にヴァイオリンがしなやかに乗ってくる、これが曲の主題にもなっているのだが、この冒頭部分がモーツアルトファンには堪らないのである。この曲にはクラリネットパートを加えた第2版があり、私が持っているCDで、ラファエル・クーベリック指揮のバイエルン放送交響楽団のものはこの第2版だが、今回のネットの録音はクラリネットがない構成だった。

映像付きの録音と、高音質だが映像のないものとの両方がアップされている。DVD風に映像を楽しむか、高音質を取るかと迷ったが、両方を聞き比べてしまった。結果は映像付きの方はやはり音の広がりに欠けるし、音の輪郭も少しもやっとしている。お勧めは高音質の方だ。若い指揮者アルミンクが、第1楽章と第4楽章の終わり近くで指揮台を足で「ドン」と叩く音が入っている。それだけ情熱的な演奏だということだ。クーベリックの演奏に比べてテンポも少し速い。

タイムドメインのスピーカーで聴いていると、自分がこのホールにいるかのような気になってくる。いいスピーカーだと思う。モーツアルトは免疫力を上げるといわれるが、さて今日はどれくらい上がったか?

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2009年3月19日 (木)

一年有半

3月15日の朝日新聞読書欄に、早坂暁の「大切な本」というエッセイがあった。タイトルが『死を恐れぬ明治の男 昭和の男も死と対決』と、なんとも痛々しい。

  人にとって大切な本は、人生最終の帰結である"死"を納得させてくれる本だと私は思っている。
  50歳のとき、突如として病気の集中豪雨に襲われた。心筋梗塞、胃潰瘍、膵臓炎、、胆石、大腸ポリープ群などなど。突然の襲来かと思ったが、ナニ、たばこは1日100本、3食はすべて肉食、酒をくらい、睡眠3時間の仕事生活の当然の帰結であった。
  さて、胃は全摘してもらい、心臓は半分が壊死しているから、開胸してバイパス手術をすることとなったが、直前に胆嚢に癌が発生していることがわかった。 
   絶体絶命の四文字が脳裏を飛びかう。しかも胆嚢の癌は力強く進行していて、手術しても余命1年半と告知されてしまったのだ。
   突然に死と向かい合って、泥縄の死の研究にとりかかった(笑)。
   心のある友人がたちまちエリザベス・ロスさんの『死ぬ瞬間』、キルケゴールさんの『死に至る病』を差し入れてくれるが、キリスト教をベースにした死の研究本だ。しっくりこない。   
    「おい、これはどうだ」
    と、さらに心ある友人が中江兆民さんの『一年有半』をもってきた。東洋のルソーといわれた兆民さんが55歳のとき喉頭癌になって手術をしたが、「余命はいいとこ1年半」と医者にいわれて、さらばと『一年有半』『続一年有半』という本を書いて、死と対決したのだ。明治34年刊行で20万部を超える大ベストセラーとなったのだからすごい。
   「これ、これ」とばかり読んでみると、すごい。なんと「1年半というが短くはない。わたしにとっては悠久だと言おう。私は虚無海上の一虚舟だ」と喝破して、死なんか恐れていない。坂の上の雲を目指す明治の男は、平気で死んでいくんだぞとカッコいい。タハッ-! 同じ余命1年半の昭和の男にはカッコよすぎて、どこか腑に落ちないが、時間はない。これでもって、死と対決するしかないと覚悟を決めたのだ。

「東洋のルソー」といわれた中江兆民は、土佐の生まれ。植木枝盛、中江兆民、幸徳秋水と続く自由民権の系譜が、『自由は土佐の山間から』と言われるように、土佐は多くの偉人を排出している。少年の頃の中江篤助(兆民)が、長崎で坂本龍馬で「中江の兄さん、タバコこうてきておうせ」と言われて喜んで買いに走った、「何となく偉い人也と信じ」きっていたという。

大阪四区から衆議院議員に当選した兆民は、しかし、自由党員らの裏切りに愛想を尽かして、「衆議院、彼は腰を抜かして、尻もちをつきたり。総理大臣の演説に震懾(しんしょう)し、解散の風評に畏怖し、両度まで否決したる、すなわち幽霊とも言うべき動議を大多数にて可決したり・・・無血虫の陳列場・・・やみなん、やみなん」と言って、議員を辞職する。この文章は、そのまま現在の日本の政治家を批評しているようでもあり、多くの非正規社員が路頭に迷うという年度末に、西松建設の献金疑惑や国民が要らないという定額給付金を押しつけようとする自民・公明党と民主党にそのまま当てはまりそうだ。その辞表の弁がおもしろい。「小生こと、近年アルコール中毒病相発し」歩行も困難で採決の投票も難しい状態だから辞職したい、と人を食った内容だった。土佐のイゴッソウはかくあらねばならない。酩酊中川大臣に読ませたい辞表ではないか。

酒好きの兆民先生が芸者を相手に遊んでいるとき、自分のキンタマ(陰嚢)を拡げてそれに酒を注ぎ、芸者に飲めと勧めた。その芸者もたいしたもので、顔色一つ変えずに酒を飲み干したそうだ。そして「ご返杯を」と、熱燗を先生の拡げた陰嚢に注いだからたまらない。兆民先生は天井まで飛び上がって「悪かった。許せ、許せ」と謝ったそうな。

一年有半・続一年有半 (岩波文庫)

話が脱線したが、55歳の兆民は、旅先の大阪で喉頭癌が見つかり、帰京することもできずにそこで治療することになる。激しい痛みと食事も豆腐しか食えない。余命一年半と告げられて、一切の虚飾を廃止、一個人となって悠々闊達に政治と義太夫と身辺を語る。

「一年有半」は岩波文庫にあるが、漢文の素養のない私には漢文調の文字は読みづらい。中央公論社から『日本の名著36 中江兆民』が出ており、こちらは現在文に直してあるので、私にはこちらの方が取っつきやすかった。

    「一年半。諸君は短いというだろうが、わたしは悠久だと言おう。もし短いと言いたいなら、十年も短いし、五十年も短い。百年でも短い。生には限りがあるが、死後は限りがない。限りある生を限りない死後に比較すれば、短いどころではない。はじめから無なのだ。もし、することがあって楽しむなら、一年半はまさしく利用するのに十分ではないか。ああ、いわゆる一年半も無であり、五十年、百年も無である。つまりわたしは虚無海上の一虚舟なのだ。」

火の虚舟 (ちくま文庫)生命とは何か―複雑系生命科学へ

松本清張の小説『火の虚舟』は兆民のこの言葉から取ったものだ。「虚無海上の一虚舟」。この言葉もいい。人とは、命とは、所詮は超新星の爆発によってこの宇宙に散らばっていた原子・分子がたまたま集まってこの地球を作り、長い時間を掛けて生命を誕生させたものだ。わたしたちはその仕組みをまだ十分には解き明かしてはいないからそれを仮に「宇宙の叡智」と呼ぼう。その「叡智」により、今の自分が生まれたのだ。『生命とは何か=複雑系生命科学へ』が言うように、単に化学的反応に還元できない生命の神秘がある。しかし、所詮は大宇宙の物質の流れが淀んだようなものが生命であり、いずれはものと物質へと、元の流れへと戻っていくのである。その意味で「生まれる前も悠久であり、死後も悠久」である。生の百年なんかはまさに「無」でしかない。老子の言うように「死」とはもとの「静けさに帰る」ことだ。

正法眼蔵〈1〉

道元の『正法眼蔵』にも生と死に関して舟を例えに持ち出した章がある。「第二十二 全機」の現在語訳ならこのようになる。

    生というのは、例えば、人がふねにのっているときのようである。このふねは、私が帆をつかい、私がかじをとっている。私がさおをさすといえども、ふねが私をのせて、ふねのほかに私はない。私はふねにのって、このふねをもふねであるとさせる。この正にその時を功夫参学すべきである。この正にその時は、舟の世界にないということはない。天も水も岸もみな舟の時節となっている、決して舟にない時節と同じではない。このゆえに、生は自分が生じさせるのであり、私を生が私であるとさせるのである。舟にのっている〔とき、人〕には、身心依正(身と心と依報(環境)と正報(身心))、ともに舟の機関である。尽大地・尽虚空(全大地・全虚空)、ともに舟の機関である。生である私、私である生、それはこのようである。

私にとって死を納得させてくれ書物は老子であり、良寛、道元、兼行である。しかしそれだけでは足りない。宇宙とは、時間と空間とは、その中での生命とは何か。この世界の有り様を知ることも、死を納得する過程では避けて通るわけにはいかない。兆民先生も同じ思いだったようで、『続一年有半』は死の直前、わずか10日程度で書き上げたという唯物論哲学のエッセンスである。死の床にありながらこれほどの内容を、記憶だけを頼りに書き上げる精神力に圧倒されてしまう。別名を『無神無霊魂』というこれには、兆民の空間・時間・精神に関する哲学的考察が書かれている。エンゲルスの『自然の弁証法』にも匹敵するようなこの著作が明治の日本人によって書かれ、こんにち読んでも決して古くさくないことに驚くばかりである。

余命何ヶ月と言われ、何とか助かる魔法の薬はないものかと右往左往するのは見苦しい。今の自分に可能な手段を尽くしてそれでも駄目だと分かったなら、残された時間を意義あるものに使わなければ、それこそ「もったいない」。諦めてしまえと言うのではない。「癌とは闘え、しかし死とは闘うな」ということだ。死と闘っても負けるに決まっている。負けると分かった戦は気が滅入り、疲れるばかりか、逆に免疫力を損なってしまうだろう。治る癌も治らなくなるに違いない。どこかに「まぁ、こんなものか」という気持ちがなければ、いつまでも諦め悪く、癌の特効薬を探すばかりで貴重な時間を費やすのは愚かなことだ。短い人生が、わずかばかりより短くなったからといってオタオタすることではないではないか。

私はそんなことに頭を使わないで、今日も好きな本を読み、ショパンを聴き、チェロを弾いて、楽しい一日だったことに感謝している。

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2009年3月12日 (木)

中村裕輔先生の講演 がんペプチドワクチン

昨夜は国立がんセンターで行われた講演会に参加。「がん標準治療『後』を考える」とのテーマで、特別講演としてがんペプチドワクチンの開発者である東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔 先生が「がんペプチドワクチン療法 希望から失望、そして大飛躍への期待」と題して講演した。私もこの特別講演が目当てで参加したのだが、150人収容できる大会議室が満席で補助いすや立ち見の参加者が多数出るほどの盛況でした。マスコミの取材もあり、カメラが回っていましたからどこかで放映されるのでしょう。

中村裕輔先生の講演内容は、このブログの昨年11月26日にリンクしてあるビデオの内容とほとんど同じで、タイトルはまったく同じでした。もっともいくらかは最近のデータを盛り込んで紹介はされているようでしたが。ですから、内容を知りたければこのビデオをごらんになった方がよろしいでしょう。

驚いたのは、いきなり右のような本の表紙をプロジェクターで投影して、がん難民―なる前に読む、なってから読む処方箋 
(医学最先端シリーズ)「今の標準治療によってがん難民が増えている、ということでこのような書籍も出版され、マスコミでも放映されている。私がこのドワクチンを開発しようとした動機も、標準治療では救えない、再発後はいくつかの抗がん剤が効かなくなると『後はホスピスですね』と言われがん難民になっていく。こうした状況を何とかしたいということだったのです。」と話し始められた。がんの標準治療を押し進めてきた本丸である国立がんセンターの院長始めそうそうたる先生方が参加している場で、こんなことを言って大丈夫かと、人ごとながら心配になってきた。

中村裕輔先生の発言を私なりに要約すると、

エビデンスに基づく治療ということを、勘違いをしているのではないか。エビデンスは統計だと勘違いしている。たくさんの患者に同じ治療をしてその結果を統計的に処理しなければエビデンスではない、このような考えは違うのでないか。たった一人の症例でも、どうしてガンが消失したのか、あるいは逆にどうして効かなかったのかを考えることもエビデンスである。エビデンス・エビデンスと言っていると患者が見えなくなる。患者を診ないでがんを見ているから、患者はがん難民となっていくのではないか。

今までの免疫療法あるいはワクチン療法が効かなかったのは、癌細胞の数に比べて圧倒的にワクチンの数が少なすぎたためであろう。一人の警官が5万人のやくざを相手に戦争をするようなものであった。これでは追っつかない。がんペプチドワクチン療法では人体にある60兆個の細胞の10ないし100倍の数のワクチン分子を注入することで効果を上げようとしている。

本当に免疫力が高まってがんに対して効果があると言える状態になっているならば、免疫力が異常に高くなり、自己免疫疾患が発生しても良いはずである。そうならないのはまだまだ免疫力が足りないということだろう。ただ、現状ではがんペプチドワクチンを投与しても40%の患者には効果がない。20%は腫瘍の縮小が見られる。

このような内容でした。このワクチン療法も『魔法の弾丸』ではないし、これからの研究を待つべき薬のようです。国立がんセンターの治療開発部長 藤原康弘 先生が反対の立場から発言し、「第二の丸山ワクチンとならないことを祈ります」と、こちらも辛辣な発表でした。

現場の医師の立場から、JR東京総合病院血液・リウマチ科主任医長 小林一彦 先生は、「現場では明日どうしようか、ということが頭の中を占めていて、標準治療という言葉は浮かんでこない。」と発表し、ある乳がん患者の例を挙げていました。患者のがんの進展に合わせていろいろな抗がん剤をとっかえひっかえ使ってきた。その結果10年近く生存しているが、この患者の場合、どこまでが標準治療でしょうか、そのような線引きはできないでしょう、という発言。○○がんには、これとこれの抗がん剤、それが効かなくなれば、おしまい。こうした考えの医者には標準治療とは、マニュアル通りに治療をしていればよいバイブルでしょう。しかし、患者の立場で「さぁ困った、次は、明日はどんな治療戦略でいこうか」とまじめに悩む現場の医師には、標準治療はすでにやり尽くしていて、後はどうしようか、という切実な思いがあるのです。

がんペプチドワクチンは本来なら再発予防に効果があるはずですが、これのエビデンスを得ることは容易ではない。日本の現状では進行がんに対してのエビデンスを確立することが求められているからです。ASCO2008 では、ワクチンに対するエビデンスのあり方を、これまでの抗がん剤とは違う考えをするべきだという発言もあったようです。

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2009年3月11日 (水)

エレガントな宇宙と宇宙を織りなすもの

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する 宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上 宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 下 生命とは何か―複雑系生命科学へ

丸善書店を散策。福岡伸一の『動的平衡』が目に留まったので、ぱらぱらと見てみたが、『もう牛を食べても安心か』や『生物と無生物のあいだ』で述べられているシェーンハイマーの動的平衡とそれに関する彼の理論以上のものが無く、同じようなことを書いているように思われたので、『生命とは何か-複雑系生命科学へ』を買うことにした。

ブライアン・グリーンの『宇宙を織りなすもの 上・下』も思い切って買った。彼の前著『エレガントな宇宙』の続編ともいうべき著作である。『エレガントな宇宙』では「超ひも理論」をわかりやすく説明していたが、『宇宙を織りなすもの』は、一般相対性理論の描く「時間と空間の正体」とは何かという点に焦点を当てて書かれている。

アインシュタインの一般相対性理論はマクロな物理的世界に適用されて、その正しさが証明されている理論であり、シュレーディンガーとハイゼンベルクの量子力学はミクロな物理的世界を説明する理論である。ところがこの二つの理論を同時に適用すると、ある現象の起こる確率が100%以上になるというような矛盾が生じることになる。つまりはこの二つの理論もこの宇宙の法則を正しく説明しているとは言えず、まだ人類は世界を真に理解する方法論をもっていないということである。

そ こで登場してきたのが「超ひも理論」である。幅がゼロで長さがこの宇宙と同じ大きさの「ひも」の振動の仕方により種々のクォークや素粒子が出現するという「仮説」である。私たちの身体も分子・原子、つまりは素粒子やクォークでできているのであるから、それらが宇宙の振動によって出現している、宇宙とダンスを踊っている、生命も宇宙の全ての存在の影響を受けているのだということになる。チベット医学では生命は 宇宙とダンスをしていると考えているというが、まさに「超ひも理論」を数千年も前の祖先は感じ取っていたかのようである。

『生命とは何か』は、動的システムとしての生命を複雑系としてとらえて論じている。例えば癌と免疫との関係を考えてみたとき、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージ、T細胞、B細胞など多くの細胞が関与する生体内化学反応によって細胞の機能が達成されるのだが、これらの細胞が外部(敵)の存在を知るための情報伝達手段として細胞膜表面のレセプターが重要である。細胞が細胞膜を通して、外部のある場所の分子濃度の閾値に応じて自分自身の状態を変える。これはコンピュータプログラムのif・・・Thenに例えられる。このif ・・・Thenの論理式の連鎖によって細胞内の機能が記述できるというのが、現在の分子生物学の立場らしい。

これに対して、著者の金子氏は次のように問題を提起する。分子濃度には必ず”ゆらぎ”が伴う。レセプター付近で反応に関与する分子の総数はせいぜい1000個以下という少数である。確率的に変動する量は、√N程度の揺らぎが付随している。ある濃度の閾値といった場合、1/√N、つまりN=1000であれば3%くらいは判断を間違ってしまうことになる。一つの過程で3%の誤作動をするわけで、これが連続した幾十もの過程をへて本来の機能を果たすとき、3%の誤作動をする部品を10個集めて組み立てた装置と考えても良いが、これがまともに動くとは誰も思わないだろう。しかし、生物は見事にその役割を果たしていて、問題ないように見える。

NK細胞が、癌細胞かどうかの判断をするときに3%の割合で間違って正常な細胞を攻撃すると考えてみれば、こんな物騒なことはない。しかし、そんなことはなく、間違いなく癌細胞を攻撃してくれている。こうして生命を「計算機械」やプログラム的見方では生命とは何かという問いに正しく答えることはできないだろう。

生命をダイナミックな相互作用をする複雑系としてとらえることによって、「生命とは何か」という問いに迫っていくのである。癌とか免疫とかに触れているわけではないが、生命の不思議を図や数式を使ってわかりやすく解き明かしてくれる。

宇宙・空間・時間、これも本当に不思議な存在である。(存在しているものかどうかも問題になっているようだが・・)生命も宇宙に劣らず不思議で魅力的な存在である。まして人間の「脳」は、宇宙や生命に進歩に負けず劣らず複雑で神秘的な存在である。

ストレスをなくせば全ての病気が治るとか、「これだけで●●癌が消失する」とかの単純な説明でこと足りるようには人間(生命)はできていないということだ。

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2009年3月 7日 (土)

がんペプチドワクチン療法の中村祐輔氏の講演

話題のがんペプチドワクチン療法の開発者、中村祐輔氏の講演が国立がんセンター中央病院であります。入場無料。3月11日18:30から。

 「がん標準治療『後』を考える」をテーマにした国立がんセンター中央病院長主催の講演会が、3月11日午後6時半から、東京都中央区の同院管理棟1階特別会議室で開かれる。東大医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔氏が、「がんペプチドワクチン療法-希望から失望、そして大飛躍への期待」と題して講演する。
 講演会ではこのほか、同院の臨床試験・治療開発部の藤原康弘部長、JR東京総合病院血液・リウマチ科の小林一彦主任医長が、それぞれ治療開発、紹介医の立場から講演する。
 また、自らががん患者でもある東大医学部附属病院放射線治療医の加藤大基医師が、患者の立場から講演する。
 その後の総合討論では、同院の土屋了介院長も加わり議論する。

 定員は150人。入場無料。申し込み、問い合わせは、ncchtouroku@gmail.comまで。リンク先はこちら

参加する予定で申し込みました。がんペプチドワクチン療法は本来がんの再発予防に効果的なはずですが、現状では文科省の医療特区で研究体制が進んでおり、臨床試験は予防ではなく治療に重点が置かれています。そうした点への疑問と、今後の研究状況などを質問してみたいと思っています。

2009年3月 6日 (金)

飲酒・喫煙が膵臓癌のリスクを4.38倍にする

サンパウロ新聞によると、80万人以上を対象とした調査により膵臓癌と飲酒・喫煙との関係を明らかにしました。

膵臓ガン調査研究結果 予防には禁煙、禁酒、菜食を

 八十万人以上を対象に「飲酒と膵臓ガンとの関係」を調査していた科学者グループは三日、その結果を発表。結果によると、飲む頻度の高い人ほどガンの発生リスクが高まることが判明した。アルコールを飲む人は飲まない人に比べて、男性では四・三八倍、女性では一・九二倍ガンにかかりやすい。また喫煙も大きく影響、最も膵臓ガンにかかりやすい人はタバコを毎日吸い、緑黄色野菜を毎日食べない人。ガン死亡率の低い人はタバコを吸わず、毎日、緑黄色野菜を摂っている人。菜食・禁酒・禁煙がガン予防の近道だ。

 膵臓は胃の背面にある横に細長い三角形の臓器で、膵臓ガンは近年著しい増加傾向にあり、この二十年間に二・五倍にも増加している。病状は体重減少と痛み、黄疸で、早期診断が可能にありつつある。

2009年3月5日付

禁酒・禁煙・緑黄色野菜を食べる、何も膵臓癌に限らず癌一般に言えることでしょうが、膵臓癌ではよりリスクが高くなるということなのでしょうか。

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2009年3月 5日 (木)

定期検診

今日は3ヶ月ぶりの癌研での定期検診でした。CT検査はなしで、血液検査と主治医の診察だけ。

血液検査の結果は、ヘモグロビンA1Cの値が6.0で、正常値4.3~5.8を少し上回っているが、他の検査項目40個の全てに「異常なし」。膵臓癌になる前よりもよほど健康体です。

腫瘍マーカー、CEAもCA19-9ともに正常値の範囲内ですから、癌細胞はまだおとなしくお利口にしているようです。もちろん全ての癌細胞が手術で取り切れていて、残っていないのだという(私としてはそうあって欲しい)可能性もありますが、それは通常は不自然なことでしょう。切った腫瘍部が大動脈に近く、さらに上腸間膜動脈や下腸間膜静脈などの比較的大きな血管もあります。腫瘍がその数ミリ近くまで迫っていたのですから、血液に乗った癌細胞が"旅"に出ていることは考えておくべきだと思います。しかし近くのリンパ節は全て切除し、組織検査ではリンパ節から癌細胞は一切検出されていないので、仮に"旅"に出た癌細胞があったにしても少数でしょう。

白血球数が5000に上昇していました。手術前でも4000程度で、もともと白血球数の少ない体質ですが、自己免疫力の一応の目安となるこの数値が大きくなったことは嬉しいことです。自己免疫力を高めるためにいろいろなことにチャレンジしてきました。湯たんぽ療法が効いたのか、積極的に歩くことが効いたのか、ビタミンCやAか、それとも玄米菜食と黒ごま、あるいはヤクルトのプロバイオティクス効果なのか、サイモントン療法か、チェロの音が効いているのか。もちろん何が効いているのかは分かりません。相当数の同じ程度の病状の患者を集めて、上に書いた同じ療法をしてみれば、統計的に何が効いたのかが分かるかもしれませんが、癌患者の一人にどの療法が効いているかを特定することは難しいし、結局エビデンスなどというものは、患者本人にとってはあまり意味のないことです。要するに、効果がありそうで安全性に問題が無く、法外な金がかからなければなんでもやってみることです。『当たれば儲けもの』という考えでやってみる。高い薬だから効くということはないのです。化粧品と同じで、安い薬は効果も少ないという誤った常識があり、そうした心理につけ込む悪徳業者がたくさんいます。

ただ、膵臓癌の場合は時間がありません。いろいろと試している間にあっという間に症状が進展してしまいます。時間との闘いです。どの方法を選ぶかも寿命のうちと考えて、結果を受け入れることしかないでしょう。私も「これをやれば確実に治る」ということは書けません。現状で再発していないことが、どの効果によるものなのか、あるいは何もしなくても今の状態になっていたかもしれないし、逆に明日転移し再発するかもしれません。

「病院や療法を選ぶのも寿命のうち」と達観して、自分が選んだ方法に賭けてみる、その決意なしにサバイバーになることは難しいと思います。運が悪ければ、少し寿命が短くなる、いずれは何かの原因で死ぬはずの命が癌で死ぬ、それだけのことです。心のどこかに「まぁ、こんなものでいいか」という気持ちが持てるかどうかが、逆説的ですが、癌に勝つ心構えのように思います。『勝とうとしなければ負けることはない』という老子の教えに通じるのです。

「効果がありそう」かどうかは、自分で調べて判断する。そのために癌患者はいろいろな知識を学ばなければなりません。医者任せでは治るはずのがんも治らないことになります。医者は平均的な治療をしていれば、例えその癌が治らなくても責任を追及されることはないのです。しかし癌は、同じ組織の癌でも一人一人違います。癌は個性的です。統計で平均的には効かないはずの方法が、ある人には劇的に効果を現すということも珍しくないのです。

『魔法の弾丸』がどこかにないだろうか、と探している癌患者がたくさんいます。その気持ちはよく分かります。そんな心理につけ込む悪徳業者や巷で有名だといわれる医学博士がたくさんいます。そんな癌患者を食い物にしている連中の罠にはまらないように、自分の命に対して信念と責任を持つことにしましょう。


インシュリンを分泌するβ細胞、ランゲルハンス島が集中している膵体部や膵尾部を切除しているのに、どうしてインシュリンが正常に分泌されているのでしょうかと、今日の診察で聞いてみました。癌研の主治医の先生の答えは単純明快。『一般的にはそう言われていますが、膵頭部だけ残した患者さんでも、インシュリンを投与する必要のない貴方のような患者は珍しいことではないですよ。教科書にはそんなことは書かれていませんが』とのこと。癌研では年間50例以上の膵臓癌手術をしており、その何割かは私のように膵頭部を残した術式でしょうから、先生の言われるのは実体験に基づいた言葉です。これまでの疑問はこれで解決。

鼻の形が人それぞれ違うように、臓器の形や性格も人それぞれ違う。癌も人それぞれで個性的、ということが改めて分かったということです。

2009年3月 3日 (火)

チェロは癌に効くか?

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春が近いようです。京急梅屋敷駅近くの神社で、紅白の梅が競い合うように咲いていました。


先日のチェロのレッスンのとき、先生が「別のクラスのチェロの生徒さんも癌になったのですが、チェロを弾いているうちに癌が消えてしまったそうですよ。」と教えてくれました。

確かにチェロの音色は癌に効くのかもしれません。宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』では野ねずみの親子が病気を治して欲しいといって、水車小屋に住むゴーシュのところにやってきます。

「だって先生先生のおかげで、兎(うさぎ)さんのおばあさんもなおりましたし狸さんのお父さんもなおりましたしあんな意地悪のみみずくまでなおしていただいたのにこの子ばかりお助けをいただけないとはあんまり情ないことでございます。」

別冊宝島『がんにならない生活術』に「音楽療法のエビデンス」という記事がありました。副題が「体に優しく、免疫力が上がる 音響システムと曲名を求めて」となっています。音響システムは私も使用しているタイムドメインスピーカーが市販品の中では一番良いという結論です。さてそのエビデンスですが、6項目のアンケートによる体感調査と体温・手足の表面温度、アミラーゼ活性、赤血球画像撮影などを測定したと書かれているのですが、なんとその被験者は「健康で体調が安定している1名」だけ。

この程度の実験内容で「エビデンス」などという言葉を持ってこられると、読んでいるこちらが恥ずかしくなって賢治の壊れたチェロの穴にでも隠れたくなります。

その程度の低級な実験内容ですが、この本を監修しているのが『免疫革命』などのトンデモ本で有名な安保徹氏ですから、当然といえば当然です。

同様に、曲目の調査についてもいかさま的とも言えるような実験で、被験者は1名だけ。たった一人を対象とした実験から「モーツアルトの曲は免疫力が高まるものとして推薦できる」と書くのですから、図々しいものです。

この本に比べると、チェロの場合、野ねずみの親子と私と同じ教室でチェロのレッスンをしている3人(匹?)の病気が治り、少なくとも癌が再発せずにいるし、縮小した例もあるのですから、『チェロを弾けば、あるいはチェロの音を聞けば、癌も治る』と言っても、安保徹先生からお叱りを受けることはないと思われます。

もちろんこれは冗談ですよ。チェロで癌が治るはずがない。確かに音楽療法という言葉もあり、音楽を聴くことで免疫力には何らかの影響は与えることができるということは疑いないことだと思いますが、音楽だけで病気が治る、癌が治ると考えることはできません。そんなに大きな力があるはずはないです。(でもチェロの低音が体に響いてくると気持ちいいんだよね)

精神神経免疫学の知識によれば、心の有り様で癌が自然消失するという例だってあります。チェロかモーツアルトか、ではなく、どういう心の有り様になれば免疫力が高まるのか、これが問題の核心ではないでしょうか。

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