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2009年6月

2009年6月27日 (土)

五十肩になりました

久しぶりのチェロの話題。
もちろん毎週のようにチェロのレッスンに通っています。癌があろうがなかろうが、当たり前の生活を続けた方がよいのです。一日一日があっという間に過ぎていきますが、なんとか今日の日を有意義なものにしたい、記憶に止まるような日にしたいという思いで過ごしています。

五十肩で左腕を伸ばすと激痛が走ります。チェロを弾くことにあまり支障がないのですが、それでも第一ポジションで腕を高くすることが難しい状態です。知らず知らずかばっているのかもしれません。音が少しずつ高くなっていることに気づきます。こんな状態が半年くらい続いています。五十肩は放っておけばそのうちに治る場合が多いと聞き、そうしていたのですが、我慢しきれないで整形外科に行きました。癌の「骨転移」ということも考えなくはないのですが、肝臓に転移する前に骨に転移することはあり得ない。

「慢性になっていますね。」との先生の診断です。「注射をすればだいぶ良くなりますが、何か別の病気はありますか?」と聞かれたので、「膵臓がんで闘病中ですが・・・」というと、目を丸くされて、「膵がんですか?」
「ええ、2年になります」というと、さらに目を大きく見開いて「膵がんで2年ですか!」

何となく"絶滅危惧種"を見ているような目つきでしたね。

「注射はやめておきましょう。主治医の先生にこの薬をやってもいいかどうか、聞いてきてください。」ということで、痛み止めのパッチだけを貰ってきました。

チェロの課題曲は「星に願いを」。ディズニー映画『ピノキオ』の主題歌です。ルイ・アームストロングがジャズにアレンジした曲も有名ですね。
優しい曲を丁寧に弾くことは大事です。スラーでスムーズに音が繋がらないので、ゆっくりと弾いて確認してみました。どうも左指が弦を押さえ終わらないうちに右手の弓が音を出しに行っていることが多いのに気づきました。弦を押さえてから弓を動かすという基本中の基本がおろそかになっているようです。

カザルスのCD9枚組、EMIが所有しているカザルスの全音源を納めた完全版。これがなんと2600円、発売前から予約していたのが、発売予定日が遅れて最近届きました。モノラル録音ですが、カザルスの全演奏を持っていることの幸せを感じています。ホワイトハウスでの「鳥の歌」の演奏は入っていないようですが、これは既に持っているから良いか。

今日は61歳の誕生日でした。

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2009年6月24日 (水)

オンコセラピーが膵臓がんのワクチン承認申請へ

オンコセラピー・サイエンスが高い。一部で、2010年末にも膵臓がん向け治療用ワクチン「OTS102(開発番号)」の承認を申請する、と報じられており、手がかり材料となっている。臨床試験(治験)で安全性を確認できたため、有効性確認の治験に移行する。早期承認されれば日本初のがん治療用ワクチンとなるという。
オンコセラピーの株価は、6月24日15時00分現在17万0400円(△20,400円)。

こんなニュースが株式関係を駆け巡っています。膵臓がん患者にとっては株価はどうでも良いのですが、ペプチドワクチンとして早期に承認され保険で使えるようになればと期待しています。

2010年末まで頑張って生きていましょう。

OTS102に関する情報はこちら 

OTS102は、がんに酸素や栄養を供給する異常な血管の内皮細胞に多く発生するが、正常な組織にはほとんど見られない「VEGFR2」と呼ぶたんぱく質 を製剤化したワクチン。接種したOTS102により免疫機構がVEGFR2を攻撃。異常な血管の増殖を抑えてがん細胞を“兵糧攻め”にできる。

2009年6月21日 (日)

『がんと仲良く暮らす』ひろさちや・佐藤昂

「がん」と仲良く暮らす

『老いてはがんに従え』という佐藤昂氏の著作があります。読みたいと思いつつ、手に入れられないでいます。アマゾンで購入すれば簡単に手に入るのですが、私の本購入の基準は、まず区の図書館から借りてみる。そして手元に置いておきたい本であれば購入する。こんな基準で本を買っています。欲しい本を手当たり次第に買っている余裕はないし、本棚がいっぱいになってしまいます。読んでみたらたいしたことは書いてなかったという経験も多かったためということもあります。

そんなわけで図書館にない『老いてはがんに従え』は読んでいなかったのですが、3月に佐藤昂氏がひろさちやとの共著で『がんと仲良く暮らす』を出版されました。こちらは図書館にあったので早速借り出して読んでみたというわけです。

佐藤昂さんの闘病記が「がんサポート情報センター」にアップされていますから、治療の経緯などはこちらを参照することができます。
がんと生きる 闘病記 佐藤昂さん

世の中には多くの「がん闘病記」が出回り、がんと壮絶な闘いをした人の記録が注目を浴びている。しかし、がんに対する恐怖ばかりが強調されるのではなく、がんと共生し、がんから生き方を教えられながら生きている人が多いことも知ってほしいと、佐藤さんは力説するのである。

この考えは共感できます。がんと壮絶な闘いをして破れたけれども立派に闘った。こんな闘病記だけが闘病記ではないし、こんな闘病記ばかりでは希望の持ちようがありません。これまでの生き方を反省して、180度方向転換して普通に暮らしていたらがんが消えてしまった。あるいは大きくならないで何年も生きている。こんな闘病記がたくさんあって欲しいと私は思います。

『がんと仲良く暮らす』で、ひろさちやはこう言います。生きることが厳しい砂漠の地から生まれたキリスト教は、人間は自然と闘って生きるために神から命を貰ったのだから、病気になれば病気と闘って生きる生き方が賞賛される。勝つために闘うのではなく、負けると分かっていても闘うことが賞賛されるのです。神は必ず味方をしてくださるから、勝ち負けは考えないで闘って生きなさい、というのがキリスト教、西洋の考えです。

東洋の考えは、病気になったら病人として生きよ。とうことですが、現在の私たちは西洋風の「闘って生きよ」の方に重きを置くようになってきたようです。壮絶な闘病記が注目を浴びるのはそんなふうに私たちの考えが変わってきたということなのかもしれません。私たち日本人の本来の生き方は、良寛さんの言葉を借りれば、

災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候。
死ぬ時節には、死ぬがよく候。
是ハこれ災難をのがるる妙法にて候

ひろさちやも同じ良寛の言葉を引用して、「がんになれば、がんになるがよく候です。がん患者として生きるほかないのだから、がん患者として生きればよいのです。」と言います。私は更にこう言いたいのです。「是ハこれがんをのがるる妙法にて候」

がんになったらがんを受け入れる。死ぬときが来たら死を受け入れる、そんな心の有り様になったとき、身体の免疫力が高まり、がん細胞が小さくなっていくに違いないのです。がんを恐れ、死を恐れてびくびくと生きるのではなく、笑ってのんびり生きる、これががんと闘う妙法です。

どのような生き方をしたいのか、これを決めるのが先であり、そのあとにどんな治療を受けるかを決めるべきです。どんな副作用や苦痛も我慢して、使える限りの抗がん剤を使って数ヶ月あるいは数年の命を延ばす方を選ぶのか、がんをありのまま受け入れて、死ぬ時を決めるのか天命、それまでの時間を有意義に過ごす方を選ぶのか、ということでしょう。

「残された時間を有意義に過ごす」。このことばも闘病記やいろいろのところで聞かされます。でも「有意義な人生」ってなんでしょうか。立派な科学的真理を発見し、ノーベル賞を貰うことでしょうか。あるいはマザー・テレサのような人生でしょうか。だとしたら我々凡人には「有意義な人生」は無理だということになります。先日のブログに書いたニュートリノに質量があることを発見し、ノーベル賞候補だといわれた戸塚洋二さんでさえブログでこのように書かれています。

残りの短い人生をいかに充実して生きるか考えよ、とアドバイスを受けることがあります。このような難しいことは考えても意味のないことだ、という諦めの境地に達しました。私のような凡人は、人生が終わるという恐ろしさを考えないように、気を紛らわして時間を送っていくことしかできません。

戸塚洋二さんでさえ「凡人は」というのですから、私のように正真正銘の「凡人」は有意義な生き方に迷ってしまいます。

いずれは死ぬと分かっているのだから、ギャンブルや女遊びをやりたいだけやって、自堕落に生きることでしょうか。まぁ、これも有りかもしれませんが、「のんびりと自由に生きる」ことです。「人生を楽しむ」ということは、楽しい時には楽しいことを楽しむ、音楽を聴くもよし、写真を撮るもよしです。人間は目的を持って生まれてきたわけではないのですから、生きがいなんてものを探すことは無意味です。人生は「幸福を実感する」ためにあるのです。逆に、苦しいときにはその苦しい時を「楽しむ」のです。実感するのです。苦しめばよいのです。泣きたいときに泣けばよいのです。多くのサラリーマンは上司や顧客の無理難題に怒りたいが怒れない、泣きたいが泣けない思いをしてきたに違いありません。これでは人生を生きていると言えないでしょう。だから、せっかくがんになったんだから、悩めばよいし、泣きたければ泣けばよいのです。苦しいときは苦しめばよいのです。<私も良寛さんに少し近づいてきました>
これが人生を生きる、有意義に生きるということでしょう。こんな「有意義に生きる」なら、私のような凡人にもできそうです。

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2009年6月18日 (木)

2年目のCT検査 再発・転移なし

P1000515_2今日は先週のCT検査結果を伺いに癌研へ行きまし た。
CTの結果は異常なし。再発・転移ともありません。

腫瘍マーカー値は、

  • CEA          4.3(上限   5.0)
  • CA19-9    32.6(上限 37.0)

で正常範囲内。

白血球数は4600で3ヶ月前の5000より少し減少しましたが、測定値の変動範囲内だと思います。私の場合もともとが低いからこんなものでしょう。

驚いたのは、血液像の値。

  • 好中球     36.3%     実数 1670/μ
  • リンパ球         50.9%     実数 2340/μ

リンパ球は免疫力の指標となるものですが、これが51%です。実数で2000以上あれば免疫力は満足できるといわれていますから、白血球数は少ないですがリンパ球は十分あります。

身体の免疫力がたいへん好ましい状態になってきていることが、この数字で実感できます。仮にどこかにがん細胞が残っていても、自然免疫を担っているマクロファージが食いちぎり、NK細胞が退治してくれているに違いありません。(サイモントン療法をやっているときも、こんなイメージを描いています)
残存している敵に対して、我が軍の装備や兵員数が増え、軍事力が強大になってきたという戦況です。これまでの戦略の効果が現われてきました。

今日まで実行してきたすべてのことが正しいのだと確信が持てます。

先生も「いやー いいですね。顔色もいいし、元気そうだし」と言われました。「次回は半年先でいいでしょう。3ヶ月後の血液検査は要りませんね。」と12月の検査予約を入れました。その後、ASCO 2008の術後補助化学療法の発表のこと、今年のASCOで術前放射線療法が無効であった(卵巣癌ですが)などの話題で話が弾みました。

2009年6月17日 (水)

ビタミンDの腫瘍予防効果

このところビタミンDが心臓病やがんの予防に有効であるというエビデンスが急増しているようです。「海外癌医療情報リファレンス」を翻訳したものが「がんサポート情報センター」に「ビタミンDと癌に関する最新研究発表」としてアップされています。

近年ビタミンDが心臓病やがんをはじめとする疾患の予防効果を示すというエビデンス(科学的根拠)が急増している。特にこの5年ほどの間に、がんの発症率とビタミンDとの関連を検討する多くの大規模臨床試験が実施されており、注目が高まっている。(中略)

これまで最も有力なエビデンスは、ビタミンDと大腸がんとの関連を立証したものである。数多くの優れた臨床試験において、ビタミンD値が高い人は、低い人 に比べて大腸がんになるリスクが半減し、ビタミンD値が高い人々は、低~中程度の人々と比べて、大腸がんで死亡するリスクが約75パーセント低くなること が報告された。 (中略)

その他、口腔がん、食道がん、膵臓がんおよび白血病のリスクが大幅に減少することも複数の試験で示唆されている。 (中略)

さらに、ビタミンD値が高いと、特定のがんの生存期間を延長することも示唆されている。ビタミンDの供給源が、食品やサプリメント、あるいは日光(紫外線)であるかどうかにかかわらず、いずれの供給源も有用であったという。 (中略)

ビタミンDの有効血中濃度を得るためには、多くの人はビタミンDを1日約1000IU(国際単位)、ビタミンD値が低い傾向にある人は、おそらく 1500IU摂取する必要があるとみられる。これまで推奨されてきた米国成人のビタミンD摂取量200~600IU/日では低すぎて、がんの予防はもちろ ん骨の保護効果を得ることすらできない。ビタミンDの健康効果に関するエビデンスの増加を受け、米国小児科学会では、最近、小児のビタミンD推奨摂取量を これまでの2倍に増やし、またカナダがん協会では、秋冬期間の成人のビタミンDの一般的な推奨摂取量を1000IU/日に引き上げた。(中略)

ビタミンDは、一般的に食品にはあまり多く含まれていないが、サケ、サバ、イワシ、マグロなどの魚類は比較的豊富である。

カナダの小児科学会も、ビタミンD摂取を劇的に増やすべきだという勧告を発表しています。妊娠中・授乳中の女性は2,000 IU/日、新生児は最初の1年は400 IU/日、未熟児でも200 IU/日必要というものです。厚生労働省の安全性・有効性情報では「妊婦と授乳婦は経口摂取で400Uまでならぼ安全であるが、それ以上の大量摂取は避けるべきである。」と書かれているのとは驚くような違いです。日本の行政のデータは、世界よりも数年遅れて更新されるのが常識ですから、驚くことではないでしょうが。

さまざまな細胞がビタミンDのレセプターを持っており、ビタミンDには免疫を調節したり、細胞の増殖や分化を抑制する作用があるとのことです。こうした作用が癌の抑制効果に繋がっている可能性があります。<PubMedのデータ

日本人の平均摂取量は316IU/日ということですから、低すぎます。日本のビタミンDの推奨量はわずか100 IU/日(米国は400 IU/日)、許容上限量は日米とも2,000 IU/日です。ASCO 2008でもビタミンDに関するたくさんの報告がありましたが、いずれも現在よりも大量の摂取が腫瘍抑制効果のためには必要だというものです。「1」「2」「3

ビタミンDを多く含む食品としては、アンコウの肝、イワシ、ニシン、スジコ、イクラ、サケなどで、100g中に110-30μg(4,400-1,200 IU)含まれます。キノコ類も豊富に含んでいます。
100gの乾シロキクラゲ中に970μg(38,800 IU)と、桁違いに豊富に含まれています。乾キクラゲ100g中には435μg(17,400 IU)です。

マイタケは、D-フラクションを多く含み、アメリカではアガリスクなんかはほとんど販売されていなくて、マイタケの腫瘍抑制効果に関する研究が、有名なアンダーソンがんセンターなどで行われているようです。さらにビタミンDを多く含んでいるのですから、高額なアガリスクを買うよりも、せっせとマイタケやキクラゲを食べた方が利口だということです。

しかし、食事だけから1000、2000IU/日のビタミンDを摂ることは難しいでしょうからサプリメントに頼らざるを得ないでしょう。私が摂っているマルチビタミンにはビタミンDが1000IU/カプセル含まれており、これを朝晩2錠飲んでいますから、十分足りています。(国産のマルチビタミンは含有量が低く、コストパフォーマンスが悪いです)

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2009年6月15日 (月)

『がんと闘った科学者の記録』戸塚洋二・立花隆

がんと闘った科学者の記録

妻につきあってヨーカドーに買い物に行きました。女の買い物は長いので、短気な私はとうていつきあっていられません。ひとりで館内にある書店をぶらぶらしていたら、ある本が目に付きました。『がんと闘った科学者の記録』です。

物理学者である戸塚洋二さんの闘病記ブログを立花隆が編集したものでした。戸塚洋二さんは、ニュートリノに質量があることを発見され、「次回のノーベル物理学賞候補」といわれてきた人です。彼が昨年の7月に亡くなっていたこともはじめて知りました。そして一年間に渡ってブログに闘病記を書いていたことも。

ブログはまだ残されています。→ The Fourth Three-Months

2000年に大腸癌が見つかり(ステージ3a)、直腸と結腸を30センチも切除したとのこと。時期といいがんの部位といい、私とよく似ています。私も2000年に直腸を切除しています。戸塚さんと立花隆さんの対談に書かれていますが、手術した後5年生存率は80%だ、と言われたそうです。私も確か70か80%といわれた記憶があります。

私は他人の闘病記は読まない、まして闘病の結果亡くなってしまった方のブログは読まないことにしています。しかし戸塚さんのブログは、私も同じ物理学を学んだ(といっても世界的な物理学者と比較するのは不遜ですが)者として、また同じ大腸癌だということもあり、興味を持って読んでいます。(まだすべてを読んではいませんが)

やはり科学者ですね。自分の癌のCT写真をデジタル化して、腫瘍の大きさを計測してグラフ化したり、抗がん剤の投与と腫瘍の大きさの関連性を論じてみたりと、科学者が故にデータを駆使して考察しようとする姿が書かれています。病院からいただいたエックス線写真をビューアーの上に載せてデジカメをマクロモードにして腫瘍の写真を撮っています。私もまったく同じことをしています。Ca19-9やCEAの数値もExcelで時系列的に追っかけています。

冷静に自分のがんを見つめ、「私はがん克服を人生目標にしているのではありません。がんを単なる病気の一種と捉え、その治療を行っているに過ぎません」と言い切ります。勤務地の近くの草花や木々のこと、教育のことなどへの言及もおおく、闘病記と言うよりはエッセイと言えると思います。

壮絶な闘病記で、研究者としても立派な業績を残され、がんと正面から闘った姿には感動します。

しかし、私は「違うんじゃないかなぁ」と思います。同意できない点が多々あります。もちろんこれは価値観・人生観・哲学の問題であり、戸塚さんの人生観をどうのこうのというのではありません。

本人も書かれていますが、5年生存率80%と言われて安心してしまったのでしょうか。退院後も手術以前と同じ研究生活に戻るのです。それ以上に、報道もされましたが、スーパーカミオカンデの事故があり、その復旧の責任者として昼夜に分かたず多忙な生活を送ることになります。これでは再発しても当たり前ではないかというような生活です。
これまでの多忙で無茶な生活ががんを作ったのであるから、生活習慣を180度転換しない限り、がんが治ることはない、という考え方が見られないことです。抗がん剤で再発したがんが治ることはないと理解しながらも、それ以外の治療法を考慮していないようなのです。(休眠療法に関する記述はありましたが)

ゲルソン療法とまでは言わないまでも、食事を変え、ストレスを極力減らし、仕事も任せられるものは任して、自分の健康に責任を持つことを考えるべきでした。自分自身に優しくなるべきでした。がんになる人はまじめで仕事熱心、彼に任せておけば大丈夫、こんな信頼されている人ほどがんになるのです。これは統計的にも明かです。

彼ほどの科学者なら、心と病気の関係、精神腫瘍免疫学が近年成し遂げた理論的成果も理解できたはずです。後数ヶ月の余命と覚悟をしています。何が何でも、奇跡的にでもがんを治すんだという気構えがないのです。科学者らしくデータ通りに余命を受け入れ、データ通りの標準的抗がん剤治療で少しでも延命しようとします。しかし、私が思うに、死を受け入れることと、がんと闘って打ち勝つファイティング・スピリットは両立しうるものなのです。

もっともっと物理学の統一理論をひっくり返すような大発見も、彼が生きていれば成し遂げられたに違いありません。残念です。

出版された本はブログの一部であり、すべてに目を通したわけではないので、見当外れのコメントかもしれません。決して戸塚さんの行ったことを駄目だと評価しているのでもありません。科学的に証明されマニュアル化された治療だけを信じていたように思えて、科学者の性を見たような気がします。

できることならば私のブログも彼のような深い内容のあるものにしたい、そんな気にもさせられるブログと本でした。

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2009年6月13日 (土)

薬・抗体医薬

週末は音楽と読書三昧。チェリスト長谷川陽子の師であるフィンランドのアルト・ノラスのCD『チェロ・カンタービレ』を聴く。静謐なチェロの音色にオーケストラの華麗な響きが伴って、ときには激しく、時には静寧な彼の演奏に魅了される。ドヴォルザークの「森の静けさ」を聴いていると、なぜかソローの『森の生活』の一場面を思い起こした。『森の生活』にあるようなスローライフなら、がんにはならないに違いない。

ブルーバックスから2冊

新・現代免疫物語 「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異 (ブルーバックス)

『新・現代免疫物語 「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異』
「自然免疫」は「獲得免疫」に比べて程度の低い機能だと思われていた 従来の知識は、近年では見直されつつある。自然免疫なしに獲得免疫が機能することはないということらしい。がんに関していえば、獲得免疫はB細胞、樹状細胞などを使おうとするがんペプチドワクチン療法など、一方自然免疫のほうは、ナチュラル・キラー細胞でがんをやっつけようとするANK療法ということになるのだろうか。

慢性関節リュウマチの新薬開発の章では、リコンビナント抗体で劇的に治るようになった関節リュウマチの二重盲検法による臨床試験を実施していたときの話しがある。通常の二重盲検法の治験では、医者も患者も自分がプラセボを処置されているのか、新薬を投与されているのかは、分からない。しかしこの新薬の時は数ヶ月で分かってしまった。なぜなら新薬投与群の患者は「みるみるうちに顔色が良くなり」症状が改善していった、と書かれている。

本当に効果のある薬とはこうしたものだろう。多くの抗がん剤は自分がプラセボ群なのか新薬投与群なのかは、治験が終わってもよく分からないほどその効果は小さい。先にも書いたように、統計を使って薬の効果を説明をしなければならないということは、統計を使わなければ説得できないほどの効果しかない、ということなのです。

分子レベルで見た薬の働き 第2版 (ブルーバックス)

『分子レベルで見た薬の働き』
薬がどうして効くのか、という当たり前だがまか不思議なことをわかりやすく説明している。薬、多くの場合タンパク質、は20種のα-アミノ酸で構成され、その立体構造が薬の働きに大きく影響している。立体構造を取ることによって、一次元の並びの上では遠く離れた分子同士が、水素結合すること。この立体構造の「くぼみ」が薬の作用機序にとって重要だという。第3章「がんとの闘い」では、白金製剤シスプラチン・分子標的薬イマチニブ・代謝拮抗薬フルオロウラシル、針葉樹キャラボクから抽出されたタキソールなどの開発話しと、分子的に見た抗がん作用が、図を用いて説明されている。素人にもわかりやすい。免疫が抗体という驚異的な分子構造によってどのようにがんをやっつけるのか、専門的な内容が簡潔にまとめられている。

がん患者は抗がん剤の名前は知ってはいても、自分の身体の中でどのようにして働いているのかはよく知らない。生物は分子による化学反応で生きていることを思い知らされる著作である。

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2009年6月11日 (木)

ブログ開設2年目

P1000512


アジサイの時期になりました。この花を見ると「一年経ったんだ」という実感が沸いてきます。

ブログを立ち上げて今日で2年目です。思い起こせば、膵臓癌かもしれないといわれたとき、真っ先に考えたことが、ブログを立ち上げようということ。闘病の記録という意味や自分自身の考えを客観的に見ることができるだろうと思っていたのでしょうか。

今日は癌研で定期検査。CTを撮りましたが、主治医の先生が出張で、結果が分かるのは来週になります。楽しみは取っておこうということで・・・。

昨年の今頃のブログを読み直してみると、CT結果についての先生とのやりとりがあったり、セカンドオピニオンに行った結果があったり、我ながらよく頑張っていたなぁと思う。
Conko001
ASCO 2008に出されたCONKO-001の全生存率曲線を再び眺めてみると(統計値は気にしないようにしているのだが)、2年(24ヶ月)生存率はほぼ50%、5年(60ヶ月)生存率が25%ほどだから、現在は2人に1人のうちには入っている。決して油断できる状態ではないということがよく分かる。4人に1人が5年生存だから、あと3年は現在の治療法を続けなければ。一年前に書いたことは、しっかりと実行している。(パソコンの前に座る時間を減らす、これはできていないなぁ)

  • 心の持ち方を切り替える
  • 仕事のやり方を変える⇒真面目を止める
  • ストレスをためない
  • 早寝早起き。夜更かしはしない。
  • 玄米菜食を続ける
  • できる限り運動をする。通勤は徒歩(30分)
  • パソコンの前に座る時間は減らす
    ブログの更新も「義務」にはしない

グラフを妻に見せて、「まだまだ、気は抜けないね」と言ったら、「2年経ったら、5年後も生きている人は、2人に1人なんでしょ。大丈夫じゃん」。う~ん、確かにそうなる。確率50%なら、丁か半ということだ。悪くはない。彼女の方が楽天的だ。前の直腸がんのときも、手術で入院だというのに、前日まで大掃除はさせるし、蛍光灯を買いに行かされ交換させられた。今でも病人扱いはしてもらえない。
でも、この性格に救われている。

2009年6月 9日 (火)

千葉徳州会病院で「がんペプチドワクチン療法」 募集中

中村祐輔教授の研究室にあるPDFファイル「がんペプチドワクチン療法」が更新されており、膵癌に対するワクチン療法の病院に、千葉徳州会病院が追加されています。

千葉徳州会病院のHPを見ると、

今回私どもが行う研究は、東京大学医科学研究所との共同研究であり、膵癌の細胞に発現するペプチドを用いたがんペプチドワクチン療法です。
正式な名称は標準療法不応、進行・再発膵癌に対する新規腫瘍抗原KIF20A由来A2402拘束性エピトープペプチドを用いたペプチドワクチン療法;第I/Ⅱ相臨床試験」です。

今回は試験全体で約30名の参加を予定しています。
ただし、対象となる方をかなり限定させていただいています。

最も重要な参加条件は、

  • これまで手術や化学療法、放射線治療などをお受けになり、いずれも最終的に効果がないと言われ、他に治療方法がなくなってしまった方   
  • HLA(白血球抗原)のタイプが “A2402” である方   
  • 通院で治療が可能な方

ジェムザール、TS-1の治療薬を継続中の方はお受けできませんのでご注意下さい。

千葉徳州会病院の臨床試験は予定の30人に達したので、7月9日で募集を締め切っています。

その他の膵癌対象病院は下記です。

・ 膵癌に対するワクチン療法
千葉徳洲会病院 消化器内科 TEL: 047-466-7111(施設HPをご参照下さい。)
      責任者 浅原 新吾
札幌医科大学 第一内科 TEL: 011-611-2111
      責任者 篠村 恭久
      担当医 細川 雅代
九州大学 先端分子・細胞治療科 TEL: 092-641-1151
      責任者 谷 憲三朗
      担当医 伊賀 睦了
川崎医科大学 臨床腫瘍科 TEL: 086-462-1111(施設HPをご参照下さい。)
      責任者 山口 佳之
東北大学 がん診療相談室 TEL: 022-717-7115
      責任者 森 隆弘

(臨床研究準備中)
福島県立医科大学 第一外科 TEL: 024-547-1111
      責任者 後藤 満一
      担当医 木村 隆
東京女子医科大学東医療センター 外科 TEL: 03-3810-1111
      責任者 小川 健治
      担当医 塩澤 俊一、金 達浩
東京女子医科大学 消化器外科 TEL: 03-3353-8111
      責任者 山本 雅一
      担当医 有賀 淳

(治験実施中)
和歌山県立医科大学 第二外科 TEL: 073-447-2300
      責任者 山上裕機
      担当医 谷眞至、宮澤 基樹

2009年6月 8日 (月)

ASCO 2009 膵臓癌関係の発表

ASCO2009も終わったようです。今年はすい臓がんに関するビッグニュースはなさそうですが、パンキャンによると74題の演題があったようです。

  • 術前・術後補助化学療法     7
  • 局所新興膵癌                  12
  • 進行膵癌(1st Line)          32
  • 進行膵癌(2nd Line)           3
  • 免疫療法                         2
  • 治療効果・予後予測          10
  • 腫瘍マーカ                        4
  • 研究                                4

との内訳が出されていました。

ASCOの今年のテーマは「がん治療の個別化」で、ASCO会長のオープニング基調報告では、がん治療のオーダーメイド化(個別の患者にあった治療法を選択する)を訴えています。
「がん患者は、一人一人が生物学的・臨床的に異なり、また、社会的・経済的にも異なるなかで、すべての患者をひとつの方法でマネジメントすることは適切ではない」。新しい診断ツールにより、患者の薬物代謝など予後に関連する特性で容易に分類できるようになったことが指摘された。こうした薬物代謝の違いは遺伝的な多様性からきていることもわかってきた。血液検査を行うことで、副作用が少なく、予後が改善される治療へと患者を誘導することが可能だ。

年齢や性別、がんの進行状態に関わりなく、一律に抗がん剤を投与して副作用で苦しませる治療方法は、もはや見直されるべきだということでしょう。がん患者個別の状態に応じた『さじ加減』が必要だということです。こんなことは本来当たり前のことであり、これまでの「標準的抗がん剤治療」が患者の立場に立っていなかったということです。日本での今後の治療法にも影響することを期待したいと思います。

膵臓癌に関する発表では以下のものが注目されます。

  1. このブログの4月21日で紹介したセレンクリニックの樹状細胞療法がASCO2009でも発表されています。「The 2009 ASCO Annual Meeting」参加のご報告 ~膵がんに対する樹状細胞ワクチン療法について報告
  2. 膵がん術後の補助化学療法、ゲムシタビンと5-FU/FAの間で生存期間に差なし (がんナビ)
  3. ESPAC-3(v2) 試験:膵管腺癌切除後患者において術後補助化学療法としての5-FU/LV療法とgemcitabine療法を比較する国際的多施設共同非盲検無作為化第III相試験
  4. 進行膵臓がん患者に第一選択薬とエノキサパリンを併用で静脈血栓塞栓症リスクが有意に低下  (がんナビ)
  5. 進行膵癌に対する化学療法±低分子量ヘパリン(エノキサパリン)同時併用のランダム化比較試験: CONKO 004試験

2と3、4と5は同じ発表のリンク先が違うものを挙げてあります。

2009年6月 7日 (日)

すい臓がん患者 希望のニュース

先日も作家の栗本薫(中島梓)さんがすい臓がんで亡くなったというニュースがありました。私のブラウザではGoogleニュースの検索オプションに「 -訃報 -葬儀 」を設定してあり、通常ではこれらの語句が含まれる記事は表示されないようにしてあります。この設定で見たくない記事はほとんどカットされるのですが、先日の栗本薫さんの死亡記事はこの設定をくぐり抜けて表示されてしまいました。

Web上の闘病記もなるべく読まないようにしています。がんに徐々にむしばまれていく様子を書き記した闘病記は、読んでも私に希望を与えてくれません。そしてしばらく更新がないなぁと思っていると、患者の伴侶か子供が「○○は先日闘病の末、亡くなりました。ブログで応援してくださった皆さんに感謝します」などと書かれています。もちろん、当の患者にとってはすばらしい闘いであったのかもしれませんし、悔いのない最期だったのかもしれませんが、私としては、すい臓がんに打ち勝って今も健康だよという、そんな話題が欲しいのです。希望を与えてくれるニュースが。

そんな望みをかなえてくれるようなニュースがありました。読売新聞の鹿児島版に載った記事です。短期間で削除されると思うので全文を掲載しておきます。

がんと闘う命の調べ

がんと闘いながら活動を続けている作曲家が7日、鹿児島市でオリジナル曲の発表会「自然と命のコンサート」を開く。鹿児島女子短期大名誉教授・斉藤正浩さん(77)(鹿児島市玉里団地2)。「来年できるとは限らない」との思いでタクトを振る。(梅野健吾)

 斉藤さんは鹿児島大教育学部音楽科を卒業し、高校や短大などで教べんをとった。その傍ら、鹿児島市や転勤先の宮崎市などで、地元の人を集めて合唱団、吹奏楽団を結成。作曲家として手がけた曲は300曲を超える。

 膵臓(すいぞう)がんを発症したのは1987年。94年には脳出血で倒れた。後遺症のため、歌うこともピアノを長時間弾くこともできなくなった。 2年前には直腸にもがんが見つかった。それでも、「病気になって、逆に良かったかもしれない」と話す。「自然の中で生かしてもらっていることを実感できたから」

 発表会は60年から開いてきた。今回は2003年以来、11回目。しかし、4月から5月初めにかけて、リンパ浮腫で静脈が詰まり、足が膨れ上がっ て入院した。「発表会は今回が最後になるかもしれない」。そんな思いが頭をよぎった。しかし、妻律子さん(69)が「いいコンサートにしましょうね」と笑 顔で励まし、出演者の手配など事務作業の一切を取り仕切ってくれた。

 発表会では19曲を披露する。ニュージーランドの大自然を歌った組曲「美しき雲ニュージーランド」は、脳出血で倒れる前日に書き上げた作品。律子 さんが作った詩を基にした「皆既日食」や、歌人与謝野晶子の詩「白樺」などに曲をつけ、日本女性の感性を表現した歌もある。地元の女性たちでつくる合唱団 「アンサンブル・シャンテ・フォー」や高校生の合唱団らが歌う。

 斉藤さんは「作曲家、演奏家、聴衆の心が一つになった、安らぎのある内容にしたい。お世話になった人たちへの感謝の気持ちも表現できればいい」と話す。

 発表会は鹿児島市の宝山ホールで午後2時開演。一般2000円、学生1000円。問い合わせは斉藤さん(099・220・1700)へ。

(2009年6月6日  読売新聞)

1987年にすい臓がんを発症したと書かれていますから、20年以上も生存しているサバイバーなんですね。しかも2年前に直腸がん。 私は直腸がんが先でしたから、私とは逆ですね。すい臓がん・脳出血・直腸がん、今はリンパ浮腫。こんな状態で「病気になって良かった」と言える斉藤さん。すばらしい生き方です。多くのサバイバーが斉藤さんと同じように「がんになって良かった」と話していますね。いや実際は、「がんになって良かった」と思えるような心の状態を持てるかどうかが、サバイバーになる条件ではないかと思います。

再発するか転移するかと、明日のことを心配しながら生きるのではなく、今日のこの日を生かされていることに感謝し、楽しいこと、やりたいことを精一杯やる。命を楽しむ。これがサバイバーに近づく一つの道でしょう。

元気の出るニュースでした。

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2009年6月 6日 (土)

メラトニンについて(3)

メラトニンについては前回で終わるつもりだったのですが、「米国統合医療ノート」にメラトニンに関する記事があったので紹介します。

メラトニンとがん治療

このブログでは、文献データを見る限りは、現状でがん治療と併用してサプリメントを摂るのなら、メラトニンが第一推薦だろうと書かれています。論文として発表されたデータを元にして、数字で客観的に評価をされています。説得力があります。 こちらこちら

もしもがん治療と同時並行して何らかの抗酸化サプリメントを服用するのなら、現時点ではメラトニンを第一推薦にすべきではないかと思います。

メラトニンは脳の松果体(図)から分泌される睡眠を司るホルモンとして知られていますが、このところがんとの関連が注目されています。検索すると、高名なテキサス大のMDアンダーソンがんセンターやスタンフォード大が、メラトニンを用いたがんの臨床試験をいま何件も平行して進めています。

このブログはアメリカ在住でAnzai & Associates 代表 安西英雄氏のものですが、アメリカにおける統合医療(補完代替医療と通常医療の統合)、サプリメントの状況に非常に詳しいようで、示唆に富んだ記事がたくさんあり、たいへん勉強になります。

抗がんサプリメントの効果と副作用徹底検証!

メラトニンに関しては、キャンサーネット・ジャパンが三省堂から出版して いる『抗がんサプリメントの効果と副作用 徹底検証』にも記載されています。

こちらは安西氏とは違って否定的な印象です。一般に公的な機関の出すものは、はっきりとした科学的なエビデンスがない限りはサプリメントを勧めるはずがありませんから、当然このような書き方になってしまいますね。

メラトニン
「俗に期待されている効能」 免疫力を高め、抗がん作用があると考えられている。

「科学的に検証すると・・・」 がん患者を対象とした複数の臨床試験があり、その中には興味深いデータもあります。

「副作用と禁忌」 安全性については十分なデータがありません。副作用についても明らかではありません。

動物実験や試験管内の実験では、がん細胞に対する増殖抑制効果を示すことが確認されています。メラトニンは,まともに議論するに足る健康食品の一つだと言えるでしょう。しかし、現状ではがんへの有効性を示す臨床試験やエビデンスの数、質は十分とは言えず、現段階で無条件に「がんの治療や予防に有効」という結論を引き出すには無理があると思われます。

この本を読んでサプリメントを選ぼうと考えている読者はがっかりすることでしょう。なぜなら「科学的検証」というくくりで、ほとんどすべてのサプリメントが切り捨てられていますから、厳密に安全や効用を証明されたものを選ぼうとしても、この本からはそのようなサプリメントを選び出すことは難しいからです。

メラトニンに「安全性については十分なデータがない」といわれても、特許の取れないものに対して企業が積極的にデータを取るはずがないことは既に書きました。10年以上もアメリカでは大量に服用されており、FDAにも重大な副作用が報告されていないということは、これが、安全性のデータだと言えないでしょうか。サプリメントに対して、医薬品と同じようなエビデンスを求めることに問題があるように思われます。

抗がん剤の有効性を証明するのに、二重盲検法による統計的な手法がどうして必要なのか、考えてみてください。ある事象について統計的な手法を使って説得しなければならないということは、その事象が統計的な手法を使わなければならないほど不確かだからだ、ということなのです。ある抗がん剤が、誰が見てもすべての患者のがんに有効だということであれば、統計的な手法を使って説得する必要などはないのです。効果があるのかないのか一見して分からない。あるにしても、ごくわずかの違いしかないから統計的に処理せざるを得ないのです。心臓冠動脈のバイパス手術にはエビデンスはありません。しかし、手術しなければ死んでしまう患者が大勢いたから適用されてきたのです。また、FDAは、「CT検査に関しては、何らの有効性を証明するデータは持ち合わせていない」と言っています。6月は雨が多く降るということを統計的に証明する必要はありません。経験的にみんなが知っているのです。

サプリメントに対して抗がん剤と同じようなエビデンスを要求することは、愚かなことです。安全で、ある程度科学的に効用が期待でき、高額でなければ、「何もしないでいることは不安だ」というがん患者は使ってみればよいのだと思います。ダメモトでよいのです。

今話題のがんペプチドワクチンにしても、中村裕輔教授などは、「このワクチンに対して抗がん剤と同じようなエビデンスを要求することはできない。エビデンスの考え方を変えなくてはならない」という趣旨の発言をしています。

決してメラトニンを勧めているわけではありません。私が調査し、考え、今の時点で思っていることを書いているだけです。書かれた内容についても、素人の判断ですから鵜呑みにしないでください。

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2009年6月 5日 (金)

モーツァルトと脳内物質ドーパミン

モーツァルトが求め続けた「脳内物質」 (講談社プラスアルファ新書)

音楽療法という分野があり、特にモーツァルトの音楽には糖尿病が治った、血圧を下げる、がん細胞の増殖を抑える、などの効果があるという説があります。
多くの書籍でも紹介され、音楽療法用のCDもたくさん販売されています。

今年の3月に出版された『モーツァルトが求め続けた脳内物質』(須藤伝悦)では、他の作曲家の曲には反応しないラットが、モーツァルトの曲を聞かせると落ち着いてのんびりしてくる。実験してみるとラットの脳内ドーパミンの合成を調整する化学反応が活発になることが分かり、なかでも高周波数の音域が重要であったと紹介されています。

どうしてモーツァルトの音楽にはそのような効果があるのか。著者はその秘密に科学的に迫ろうとします。合わせて脳内麻薬といわれるドーパミンとは何かも紹介していきます。
モーツァルトが10代のときに作曲した曲、ディヴェルティメントや教会ソナタが特に効果的で、ディヴェルティメントニ長調 第三楽章のアダージョ(K.205)を平均65デシベルの音量で聞かせたときが一番大きな変化が起きたといいます。

そして、モーツァルト自身が抱えていた病気を癒すために、自分が心地よい曲を作曲したのだという結論です。モーツァルトは注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群サヴァン症候群などの病気を持っていて、晩年は高血圧を併発していたという精神科医らの研究があるようです。映画「アマデウス」に登場するモーツァルトはそのような病気を持った奇声を発したりする人物のように描かれていましたね。これらの病気は脳内ドーパミンの分泌と深く関わっており、著者はモーツァルトが幼年期にてんかん症を患っており、のちに統合失調症となったのだろうと推測しています。

モーツァルトの音楽の特徴として

  • 高周波数領域の音が多く、創造性を活発にさせるエネルギーを持っている
  • 独自の音楽の反応スペクトルを持つ。スムーズな音の流れを生み出すフレーズの速いパッセージがあり、音の連なりに大きな運動性がある
  • 子供の心臓が脈打つような生理的リズム

を挙げて、こうした特徴がドーパミンの合成を促すのだと結論づけています。ドーパミンは情報伝達物質であり、免疫系とも深く関わり合っています。騒音よりは楽しい音楽がストレスを緩和することは、経験的にも自明のことです。

行きすぎた商業主義によって、モーツァルトの音楽には奇跡的な効果があるかのように宣伝されていますが、ある種の効果はありそうだという一定の科学的根拠があるのですから、クラシックが好きなら、そうした効果を期待してモーツァルトを聴く分には弊害はないでしょう。

モーツァルトの曲では、チェロはほとんど重要な役割を演じていないのですね。チェロのパートがすばらしいという曲がありません。これまでどうしてだろうかと思っていたのですが、この本を読んで、チェロのような低周波数の音は、彼の気分を良くする効果がなかったからだろうと納得した次第です。

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2009年6月 4日 (木)

久留米大がんワクチン治療 第二期募集

久留米大のがんペプチドワクチン治療(自由診療)に応募者が殺到して、受付を中止していましたが、第二期患者募集を7月1日より開始するようです。

2009年6月1日
がんワクチン外来の第二期患者募集を7月1日より行う予定です。募集の詳細については6月15日午前10時より久留米大学ペプチドワクチン事務局ウェブ ページ(当ページ)ならびに、テープによる自動案内電話(0942-31-7350)にて公開いたします。 

2009年6月 3日 (水)

メラトニンについて(2)

メラトニンとストレス
マエストロらのマウスに対する実験では、マウスにウイルスを投与したのち、Melatonie 空気孔のあいた筒に閉じ込められたマウスにメラトニンを与えたところ、与えられなかったマウスは1週間以内に死亡したが、メラトニンを投与されたマウスはウイルスを撃退し、82%が生き残った。
コーネル大学のウータモーレンがおこなった二重盲検法の実験では、被験者の唾液中の免疫グロブリンAの値が、250%増加し、学内で流行していた風邪に対する免疫が確認された。

マエストロらは、ヘルパーT細胞にメラトニンのレセプターがあることを突き止めた。メラトニンがこのレセプターに結合するとインターロイキン-4と同種のサイトカインが放出され、NK細胞、細胞障害性T細胞、食細胞、B細胞らの主要な免疫系の細胞に刺激が連鎖的に伝達される。

ミラクルホルモン メラトニンの真実

メラトニンと癌
モントリオールに住むドーラは、甲状腺癌が肺に転移したことを1993年に知らされた。手術を拒否した彼女は、地元の医師の薦めで、毎晩6ミリグラムのメラトニンの服用をはじめたら、翌年の春の検査では肺の腫瘍は1センチ以上も小さくなっており、転移も見られなかった。奇跡的治癒の例としては、16歳の骨原性肉腫になった少年の例がある。メラトニンと放射線療法との併用で、すっかり腫瘍が消失した。
乳癌にメラトニンを投与する研究はPubMedでもたくさん見つけることができる。化学療法、放射線療法との併用で有意な結果を得たことが報告されている。

また、メラトニンは糖尿病を防ぐ効果があるとの研究もあります。グラナダ大学のCastroviejo教授らの研究では、メラトニン生産を停止した時点(マウスでは5ヶ月)からメラトニンを長期投与すると、加齢に関連したすべてのプロセスの影響を弱めると明らかにしている。 人間の場合は、30歳あるいは40歳ぐらいから毎日メラトニンを摂取すると、神経変性疾患(例えばパーキンソン病)そして糖尿病などの病気に関連した合併 症などの加齢に関連した病気、やフリー・ラジカルと炎症プロセスに関連した病気を予防したり遅らせる可能性があるとしています。PubMedで検索したこちらの論文でも、メラトニンがインシュリンの分泌に影響を及ぼすことが示されています。

否定的見解

メラトニンの服用に否定的な意見もあります。メラトニンはこれまでのと ころ重篤な副作用は全くないとはいっても、長期間の服用による影響は未知数であることが主な否定的意見です。また、メラトニンが人体で生産されるホルモンであるがゆえに、長期間の服用は慎重にするべきだという意見もあります。遅れてから副作用が知られることとなったサリドマイドのことを考慮すべきだということです。もっともサリドマイドは今ではがん治療にも使われて効果を上げていることは知られるべきでしょう。薬はいつの場合も毒になり得るということです。

アンドルー・ワイルは、彼の処方するサプリメントにメラトニンを含めていませんが、メラトニンを勧めない理由を次のように言っています。

メラトニンはごく少量で効果のあるホルモンであることに留意すべきである。大用量を服用した場合の副作用に関して、私たちはまだ少しのことしか知らない。メラトニンは化学療法との併用で生存率に一定の効果があることは示されている。また化学療法の副作用も低減することも知られている。標準的治療では助けられなかった進行癌患者に対して、残された選択肢の一つであることを信じている。しかしながら、高用量、長期間の服用についての安全性はもっと研究されるべきである。


メラトニンを服用すべきか?

  • 優れた抗酸化作用がある
  • 重篤な副作用は報告されていない
  • IL-2とメラトニンとの併用で腫瘍縮小効果・延命効果がある(主として乳がん)
  • メラトニン単独では、腫瘍縮小効果は少ない、あるいはほとんどない

長期服用による副作用があるかもしれないが、膵臓癌患者にとっては5年後、10年後の副作用は考える必要はないでしょう。なぜならそれまで生存している可能性は非常に小さいからです。再発予防効果についての大規模なエビデンスはないし、今後も出てこないでしょう。先に書いたように、特許の取れないメラトニンの大規模な治験がおこなわれる可能性はほとんどないからです。

健康な人がメラトニンを長期に服用することは、慎重に考えるべきでしょうが、癌患者が、これまでに知られている研究にも関わらず、メラトニンの服用を躊躇することはもったいないような気がします。日本の医学界がどうしてメラトニンに関心を示さないのか不思議です。自然界の存在する物質ですから、研究者の成果には繋がらないからでしょうか。

サプリメントや代替医療全般に言えることですが、100人に1人に対して効果があるサプリメントが100種類あれば、運良く自分に合っているものに当たれば100人全員が恩恵を受けることができるのです。現にクレスチンなどは抗がん剤として認定されているが、キノコ由来のサプリメントです。しかし、巷には高額なサプリメントをあたかも万能であるかのように宣伝している業者も多い。自分で調査し、考え、不十分ではあっても科学的な根拠に基づいていると思われるのであれば、自己責任で決定するべきでしょう。

決してこのサプリメントを勧めているわけではありません。私が調査し、考え、今の時点で思っていることを書いているだけです。書かれた内容についても、素人の判断ですから鵜呑みにしないでください。

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