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2009年8月

2009年8月28日 (金)

直腸がんの検査を受けました

10年前に手術をした直腸がんで、毎年術後の定期検査を受けていたのですが、2年前の検査は膵臓がんになり入院していたため受けることができませんでした。予後の悪い膵臓がんになった時点で直腸がんの再発なんかを心配する必要もないので、そのままにしておいたのですが、6月に癌研で2年目の定期検査を受けたとき、主治医の先生がこのように言われたのです。

「前に直腸がんをやっていますよね。3年くらい放っておくとポリープが育ってがんになる可能性もあるから、一度大腸の検査をやっておいた方がよいですよ。癌研でなくても良いから近くの病院で受けておいたらいかがですか」

2年経って膵臓がんの転移も再発もないので、もしかすると長期生存例になるかもしれない、主治医の先生はこのように考えて言われたのかもしれませんね。私の希望的観測かな、やっぱり。

まぁ、せっかくだから、直腸がんの手術をした大学病院でCTと肛門からの内視鏡の検査を受けました。一昨日がその結果を聞く日でした。結果は異常なし。ついでに肝臓と肺も診ていただいたのですが、問題なさそうでした。やれやれです。

しかし、気になるのが腫瘍マーカーの値です。CA19-9が始めて基準値を超えていました。37の基準値に対して41.0。CEAは問題なく基準内です。ちょっと気になります。

手術後の膵臓の病理検査は、静脈侵襲:V2、リンパ管侵襲:ly2という結果で、セカンドオピニオンでは「肝臓への転移が高い確率で起こる可能性がある」と言われたのでした。あれから1年半ですが、いつまで経っても検査数値には神経を尖らせています。

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あまり頼りにならない腫瘍マーカーの中で、CA19-9は膵臓がんに対して陽性的中率90%という比較的精度の良いマーカーです。それだけにこのアップは気になります。しかし、基準値を超えたといってもごくわずかです。進行膵癌では10000程度にもなるマーカーですから、41程度でオタオタしているのはみっともないです。これまでも結構上がり下がりもありましたし、試験機関によって数値が違うことは良くあるそうです。別々の病院での数値を比較することに意味があるかどうか疑問です。

次回の検査は12月です。それまでは自分で決めたがん攻略法に従って自己治癒力を高めることに専念するのみです。

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2009年8月26日 (水)

各政党のマニフェストで「がん対策」は?

投票日は帰省する予定をなので、期日前投票に行ってきました。投票所の入口に行列ができるほどのたくさんの人でした。これまでの選挙にはない熱気を感じます。

がん患者としては各政党の「がん政策」が気になるところです。マニフェストを調べて、がんに関する部分を抜き出してみました。

二人に一人ががんになるという時代ですが、政党の認識は総じて危機感がないように感じます。がん難民がなぜ増えるのか、経済的負担への対策は、など具体策はなきに等しいです。「がんと診断されたら、身体障害者手帳を交付する」などという政党があっても良さそうに思うのですが。そうすればずいぶんと経済的に助かるに違いない。財源はどうするかですか? 軍事費を削減すればよい。オバマは軍事費削減を打ち出しています。

自由民主党

難病対策、肝炎対策、がん対策の充実
難病の方々の医療費負担を軽減するため、助勢の対象(現在45疾患)に緊要性の高い疾患(11疾患その他)を追加するなどの難病患者の医療費助成、難病の診断治療方法の研究開発を進める等の難病研究拡充等、難病対策を充実させる。国内最大の感染症である肝炎について、肝炎の早期発見、早期治療、治療水準を向上させるため、「肝炎対策基本法」を制定し、B型、C型肝炎への医療費助成の拡大・充実を含めた総合的な肝炎対策に取り組む。わが国の死因の第一位となっている「がん」についても、検診、予防ワクチン、放射線療法や化学療法、緩和ケア等のがん医療の充実や均てん化を行うとともに、患者の立場に立ったがん対策を充実させる。

抽象的で総花的。「均てん化」などという難しい言葉を使うなんて、国民に理解してもらおうという姿勢がない。なにやら分からんが、やってくれそうだという雰囲気を作りたいのだろう。官僚的文章の典型。がん対策基本法にも触れていない。「肝炎対策基本法」なんて、政権政党なのだから、これまでにどうしてやれなかったのか。そんな政党が今後も実行できるのか疑問だろう。

均てん化(がん医療の)
均霑化(生物がひとしく雨露の恵みにうるおうように、の意)。全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること、だそうです。


民主党

がん対策
乳がんや子宮頸がん、大腸がん、肺がん、胃がんなど有効性が高いがん検診の受診率を大幅に向上させるよう、受診しやすい体制を整備します。また、がん予防に有効なワクチンの開発・接種の推進、禁煙対策の徹底化等、最新のがん関連情報の提供や相談支援体制などを充実させます。がん患者や家族も加わった 「がん対策推進協議会」の運営で「がん対策推進基本計画」が着実に推進されるよう取り組みます。がん登録の法制化を検討します。

地域がん診療拠点病院では国立がんセンターと協力し、化学療法専門医・放射線治療専門医を養成します。

早期発見早期治療がメインということか。子宮頸がんを想定しているのか、予防ワクチンに触れている。がん登録制度の法制化も「検討します」であって、「実行します」ではない。

公明党

がん対策
基本計画の個別目標の中間報告を実施
●がん対策推進基本計画の5年後の見直し(2012 年度)を前に、2009 年度末に中間報告を義務付け、がん検診率50%以上など、個別目標を達成させます。

拠点病院の機能を強化
●がん診療連携拠点病院の機能強化を進め、がん治療の地域格差を是正し、全国どこでも最適ながん治療を受けられる体制を整備します。

がん治療を選択できる社会へ
●がん治療の柱である手術、放射線治療、化学療法のうち、整備が遅れている放射線・化学療法の普及を図り、専門医を育成します。

がん相談業務と情報発信、普及啓発を拡充
●病院選びや治療方針、がんに関する不安や悩みを抱える患者や家族を支援するため、がん相談支援センターの相談業務の拡大とともに、がん治療情報の発信を拡充します。がんを広く国民に知ってもらう普及啓発活動も促進します。

がん対策予算を拡充
●がん対策推進基本計画にうたわれている個別目標を達成させるため、がん対策予算を拡充します。また、がん検診を支援するための地方交付税をさらに充実させます。

がんの痛みをとる緩和ケアを推進
●治療の初期段階から、がんの痛みをとる緩和ケアを受けられるようにするため、5年以
内に、がんを担当するすべての医師への緩和ケアの研修を強力に推進します。

セカンドオピニオンの体制の整備
●患者自らが適切な治療法を選択できるよう、主治医に遠慮せず、気軽にセカンドオピニ
オン(別の専門医の診断)を受けられる体制を整備します。

学校におけるがん教育の見直しと教科書や副読本を充実
●小・中・高校生に対するがん教育を見直し、教科書の内容充実や副読本の配布を促進します。生活習慣との関わりなどを知ってもらい、がん予防を促進させます。

がん検診の充実
●無料クーポン事業でがん検診受診率の向上を図るとともに、前立腺がんなど高齢化によって増加している男性特有のがん検診の普及を図ります。また、2年に1回のがん検診の無料化を図り、受診率を向上させます。

女性のがん検診の充実
●女性特有の子宮頸(けい)がん、乳がん検診の受診率の向上を図るため無料クーポン券、検診手帳などの事業を継続します。また乳がん検診の精度向上のため、マンモグラフィー検診に加えて超音波(エコー)検診の導入・併用を進めるとともに、読影医の養成・確保など検診体制の充実・強化を図ります。

子宮頸がん予防ワクチンの早期承認・公費助成の導入
●若い女性に急増する子宮頸がんの征圧へ、予防ワクチンの早期承認とともに、ワクチン
接種に対する公費助成の導入を推進します。

がん研究・開発等の推進
●免疫療法・抗がん剤・粒子線治療など新たな治療方法・治療薬の研究・開発を推進する
とともに、新たな医薬品等の承認審査の迅速化と国内での利用普及を図ります。
また、禁煙対策の推進など予防対策を強力に進め、がん罹(り)患率や死亡率の低下を図
ります。

「がん治療を選択できる社会」と書いてあるのでてっきり「混合医療の解禁」かと思ったが、放射線・抗がん剤の普及が遅れている、と。どうもピント外れな政策だ。セカンドオピニオンについても同様。しかし、項目は多く、内容はともかく説明はわかりやすいと思う。

がん検診への国庫補助を廃止した公明党が、無料クーポンでがん検診の受診率を向上させると主張するのですか? 自分のとった政策を反省することが先ではないだろうか。

社民党

がん対策、肝炎総合対策、難病対策に取り組みます

○がんの予防と早期発見の推進、がん検診の質の向上、がん医療の均てん化の促進に取り組みます。専門的な知識や技能を有する医師等の育成、医療機関の整備を推進します。
○がん対策基本法に基づいて制定された「がん対策推進基本計画」を着実に実行します。

○薬害肝炎感染の拡大が国の責任であることを明確にし、全国的な肝炎治療体制の整備と医療費助成や治療中の生活支援を柱とする総合的な肝炎患者支援法を制定します。
○難病の調査研究費を増やし、特定疾患の対象を拡大します。難病患者の治療の確保、負担軽減、療養環境の向上の観点から難病対策基本法をつくります。

がんに関しては最初の2点だけ。早期発見と予防。がん対策基本法の実行。混合診療の解禁には反対。

日本共産党

〔がん対策〕
日本国民の死因の第1 位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、政府・与党は、窓口負担増、保険証とりあげなど、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。自民党政権が、がん検診にたいする国庫補助を廃止したために、各地で、がん検診の有料化や対象者選別、検診内容の劣悪化などの事態が起こっています。
医療崩壊が進行するもと、がんの治療・予防の地域格差が深刻な問題となっています。がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。

政党の中で唯一これまでのがん政策を批判した上で、対策を提示している。経済的負担の問題などはここでは触れられていないが、医療政策全体の中で詳細に政策が述べられている。混合診療の解禁には反対。

改革クラブ

お年寄りの健康づくりや難病対策を推進します。
世界一の長寿国である日本で、お年寄りが一日でも長く健康な状態で暮らせるよう
に、健康づくり施策を進めます。
また、新型インフルエンザ対策、難病対策、がん対策、肝炎対策等、国民の健康に
関する問題にきめ細かく対応します。
今あるものの活用はすべての分野に共通ですが、例えば自治体や企業による健康診
断を受ける人は少なく、受診をしていただくよう告知していきます。

コメントに値しない。

国民新党・みんなの党・新党日本

「がん」についての個別政策はない。

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2009年8月22日 (土)

金馬師匠から笑いの治癒力をもらった

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夏休みも終わって今週からはチェロのレッスンが毎週連続します。練習曲も新しくなって、「私のお気に入り My Favorite Things」。ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の挿入歌でしたよね。原曲は8分の6拍子ですが、ジャズにアレンジして4分の3拍子にしたものを練習します。ジャズのノリで弾くのがなかなか難しいです。(私にとっては)

レッスン前にチェロの先生がこんなことを。「私の知り合いで、肺がんで6センチぐらいの腫瘍が見つかったのですよ。でもその方、思いっきり笑って過ごす。大声で笑って治すという気でやったら、ほんとうに腫瘍が消えてしまったんです。」

ノーマン・カズンズの『笑いの治癒力』をそのまま実行して治った、腫瘍が消えてしまったということですね。こんな例はもっとたくさんあるのではないでしょうか。がん患者のブログでも、悪い情報はインターネットにアップされがちですが、治った情報というのは少ないです。治ってしまったらブログなんか書く必要もないというわけでしょうね。仮にいきなりブログで「私はこうして笑って治しましたよ」なんて書かれても、信憑性がないですし、何かのサプリメントの宣伝かと疑った方がよいようなものです。一年、二年と闘病記を書いてきて、その結果「治ったよ」というブログなら信憑性も高くなろうというものです。 そんなブログになるようにと願っているのですが、5年は経たないと自慢にはなりません。

リンクしてあるU医師のブログにも笑いの効用が書かれていました。引用は御法度ということですから、リンクを張っておきます。こちら。毎日多くのがん患者さんに会っている医師ならこうした感想を持つのは至極当たり前のようです。先日の講演会で講師として呼ばれた際にも、何人もの先生方から同じことを伺いました。

チェロを弾くことも笑いと同じような効用があるように思います。証明はできませんが、自分でそのように感じています。自分が感じればよいのです。自分の体ですから。いろいろなサプリメントについても同じことが言えるのではないでしょうか。やってみて、自分の体に聞いてみる。いいと思えば続ければよいし、3ヶ月ほどやってみてあまり効果がないと感じたら止めることです。でも私なら、高額なサプリメント(高いサプリメントはほとんど偽物と思って間違いない)に金を出すのなら、その金で落語のCDでも買いますね。あるいはチェロのCDでもいい。

今日もチェロのレッスンのあとインターネット落語を聞きました。久しぶりに三遊亭金馬師匠の顔を拝見しました。ずいぶんとご高齢になってしましました。落語会では最長老だそうです。たくさん笑わせていただき、治癒力がアップしたに違いありません。
インターネット落語会はこちらです。 今は「圓朝まつり2009奉納落語会」から三題が出されています。

何でもいいから、たくさん笑ってください。無理にでも笑っていると、ほんとうに愉快になってくること間違いないです。こんな安上がりの治療法はないですよ。

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2009年8月20日 (木)

最近の驚いたこと三題

驚いたこと その一

ドクター中松氏が幸福実現党の大川隆法氏とツーショットでポスターになっています。立候補しているのかな?それは知りませんが、彼の『ミサイルUターン技術』というのがすごいですね。私は選挙目当てのブラックユーモアかと思っていたのですが、本人は本気らしく、『バカと天才は紙二重-ミサイルUターン発想法』という本まで出版しているようです。
すでに発明が終わっている技術かと思いきや、これからだという。ミサイルの制御システムに外から電波を飛ばして方向を180°転換し、北朝鮮に向かわせようという「発明」らしい。

日本が導入しようとしているミサイル迎撃ミサイル構想には何兆円もかけようとしているが、この発明があればそれが不要になる。その分を老人医療費・母子加算・障害者の自立支援法など、小泉改革で痛めつけられている弱者に回せる。防衛予算が削減でき、消費税の増税も不要になる。アメリカと北朝鮮の両方に売れば、ミサイルによる核攻撃が無力になるし、すべての核保有国が核の廃棄を行なうだろう。核廃絶を誓っているオバマ大統領も大歓迎に違いない。ドクター中松氏はアメリカの名誉市民としての栄誉を授けられるだろう。いや、ノーベル平和賞だって確実だ。IBMの発明したフロッピーディスクを自分の発明だといっている人物です。ご自分が発明された「ぴょんぴょんシューズ」を履いて飛行機に乗ろうとして頭をぶつけたそうですが、その後遺症が残っているのでしょうか。

驚いたこと その二

この幸福実現党と共闘を宣言したのが、小泉チルドレン、次期自民党総裁候補ともいわれた、東京10区から出馬されているあの方です。予想される自民党の負け戦に慌てたのか、藁をも掴みたい心境になったのでしょうか。共闘相手と一緒に街頭演説を始めたのですが、相手が「北朝鮮にレンジャー部隊を送り込み、金正日を拘束して東京で裁判にかける」と演説し、さらに「ミサイルUターン技術に○○先生もご理解を示されています」と演説したものですから、この女史は慌てて車に乗って立ち去ってしまったそうです。

幸福の科学と創価学会の仲の悪さは周知の通りですが、この女史はそれを知らなかったのでしょうか。創価学会票が逃げていくことを考えなかったようです。落ち目になれば醜態をさらす、どこにでも良くあることです。

小泉さんは「自民党とぶっつぶす!」と言われましたが、本当に彼は自民党をぶっ潰すことをされたようです。80円切手を貼れば日本全国どこへでも届く郵便、しかも赤字でもない郵政公社を「郵政改革」するという錦の御旗に熱狂した国民がいたことを忘れてはならないでしょう。いままた「官僚政治の打破」という馬鹿の一つ覚えのように、マスコミが騒いでいます。今の悪政は変えなければなりませんが、やってくる新しい政治に対して、よく目をこらして監視しないと、単に政権が変わっただけで、暮らしが楽になるとは限りません。

ひとつの「悪役」を十字架に架けて、熱狂的な大衆の支持で政治を動かしていく。この手の手法に騙され浮かれた人々が、ヒットラーによる悪夢を見たことを、もう忘れかけているようです。

驚いたこと その三

帯津良一のホメオパシー療法―こころ、からだ、魂に響く (地球人ブックス 1)

帯津良一氏が新しい本を出しました。『帯津良一のホメオパシー療法  こころ、からだ、魂に響く』という題名です。彼のがんに対する考え方には共感する部分が多く、がんになったら真っ先に読んでおくべき本として彼の本を挙げたことがありました。

しかし、この出版物を見てから考え込んでしまいました。(読んでいないし、読む気にもなりませんが)

ホメオパシーとは、「水が記憶する」という例の江本勝の『水からの伝言』と同類です。希釈を繰り返して10^60というアボガドロ数を遙かに超える希釈率、一個の分子さえも残らないようなRemedyと言われる偽薬にはプラシーボ程度の効果しかないと証明されているにもかかわらず、帯津先生はどこから道を誤ったのでしょうか。そもそも最初からこのような傾向の持ち主だったのでしょうか。だとすると私の不明の致すところです。

Amazonで「帯津良一」で検索すると165件の本がヒットしました。監修したものもありますから、全部が著作ではないにしても、かの安保徹先生を遙かにしのぐ出版数ですね。代替医療なら何にでも、ありとあらゆる分野の著作があり、さながら代替医療のデパートです。

機会があればこの本を読んでみますが、しかし、ホメオパシー療法ですか?? 帯津先生のこれまでの評価が急落してしまいそうです。

対象を常に善か悪か、二者択一的に考えるのは日本人の悪い癖です。人はよい部分もあれば、ときには間違えることもある。動的で複雑な存在です。 この本だけで彼のこれまでの業績を評価することは間違ったこと・・・とは分かっているのですが。

2009年8月15日 (土)

心と癌と量子力学の関係(6)

複雑系としてのがん(2)

前回、「いま切実にがんの治癒を願っている患者は、がんを複雑系と考える立場をどのように自分の治癒へとつなげばよいのでしょうか」と書いて宿題にしてありました。私の答えは次のようになります。

がんの成長を抑制するための方法をすべて文字通りに実践しない限り自分の身を守れない、というわけではない。人間の体は、それ自体、各機能が他の機能と相互作用を起こすような、均整のとれた巨大システムである。その機能のうちたったひとつにでも変化があると、必ず全体に影響が及ぶ。だからこそ、食事療法、運動、精神面の訓練、もしくは人生にこれまで以上の意味や意識をもたらしてくれる何らかのアプローチ法のうち、自分が実践しやすいものから始めればよいのである。人それぞれ状況も性格も異なるのだから、やり方もそれぞれであるべきだ。ただし、すべてのアプローチ法に共通している重要なポイントは、生きたいという願望を強めることができるかどうかという点である。

人間は高度な複雑系であり、なかでも脳はもっとも高度な複雑系です。この脳が免疫系とも相互作用をしており、免疫系は精神活動、「こころ」といわれるものとも相互作用しているのです。複雑系は、システムを構成している各要素間が強い相互作用をしていて、さらに部分が全体とも相互作用をしている。複雑系の基本性質は、「ほんの少しWshot00013条件が変わるだけでまったく違った結果が生み出される」ということです。これはローレンツの「バタフライ効果」ともいわれています。ローレンツが「ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスの竜巻を引き起こすか?」という題で講演を行なったことが起源になっています。

ローレンツは、流体力学をもとにした単純な三つの数式により、気体の示 すカオス的行動をシミュレーションして感動的な図形をつくった。これが蝶々のような図形になっていたのです。この図形がアトラクターと言われるものです。(ストレンジアトラクター  )

3変数の微分方程式でのアトラクターの例。対流運動を簡単化した方程式で、このアトラクターが初期の差を増幅し続けてカオスと呼ばれるアトラクターであることをローレンツが証明した。こちらのページに、方程式とアトラクターを描くシミュレーションがあります。

気象も複雑系のひとつです。複雑系は非線形系でもあるのです。非線形系では、ある規則性を理解しても将来の予測は不可能だという性質があるのです。だから天気予報は当たらない。つまり、スパコンを使って温度や気圧や太陽熱や地形等のデータをすべて使って計算しても、ほんの少しの「ゆらぎ」があれば、そしてゆらぎは必ず存在しますから、明日の天気は当たる確率が高いとしても、一週間後、一ヶ月後の天気予報はほとんど当たらないということになるのです。これがカオス理論です。
(非線形系については、このブログのここここでも紹介しました)

がんが増殖する要素(逆に言えば縮小する要素)がN個Wshot00016あったとする と、今の私のがんの状態はN次元の状態空間におけるある一点で表わすことができます。N次元空間を我々は思い浮かべることはできませんから、仮にN=3の場合を考えると、3次元空間のある点で表わすことができます。X軸に「食べ物の抗がん作用」、Y軸に「運動による体質改善」、Z軸に「こころの免疫賦活作用」を考えるとすると、この3要素の現在の値をプロットした点に私のがん=健康状態を表示することができます。3要素が変化すると、この点はそれに応じた軌道を描きます。この図は便宜上3次元で3要素しか書いていませんが、実際はもっとたくさんの要素があります。

そして人間にはホメオステーシス(恒常機能)といわれる、健康な状態を保とうとする性質があるのですから、これらの3要素に少しのゆらぎが生じても(微少ががん細胞が発生しても)、もとのあるべきところに戻ろうとするはずです。十分な時間がたったあとで、これを状態空間の軌道として描けば、いろいろな軌道を描きながらもある正常範囲の領域に落ち着いてくるはずです。つまり、アトラクターとして固定点あるいは固定された領域に落ち込むことになります。

人間は治ろうとしている。だから治る方向にちょっと肩を押してやれば、そのちょっとの摂動が複雑系全体に大きな影響を与えることがあるのです。

食事を変えれば体質が変わる。がん細胞の餌となる有害なものが体外に排出され、細胞内の分子がよりよい環境になる。瞑想をすればストレスに強いこころが育まれて、NK細胞が活発になる、脳からも免疫活動を補強する情報伝達物質が放出され、食事によって改善された体質のなかを効果的にがん細胞まで移動する。動物性タンパク質よりも植物性タンパク質を多く摂ると積極的に運動をするようになる。瞑想やヨガは自分の体への意識を高め、胃への負担や体全体への影響を感じるようになり、バランスの悪い食事は避けたくなってくる。放射線や抗がん剤による影響を低減し、治療の効果を高めることができるようになる。このようにすべての要素が相互作用をしているのです。

複雑系のある要素に少しの摂動を与えれば、それが「ブラジルの蝶がテキサスの竜巻を起こす」ように、大きな影響を与えることになるのです。あるいは気象の例でいえば、つい最近も大雨による水害で多くの人命が失われましたが、大雨の降りやすい地形があります。主に南東側の斜面です。天気予報を当てることは難しいかもしれないが、南東側の斜面には大雨による水害が起こりやすいということが分かってれば、被害を防ぐ対策を立てることができるのです。がんについても、確実とは言えなくても有効だと思われる対策はたくさんあるのです。

つまり、これをやれば100%がんが治るという治療法やサプリメントは、複雑系の基本的性質からいってもあり得ないということです。しかし、効果があると思われる(エビデンスがあるということではなくて)ものを、いくつか実践していけば、アトラクターがある軌道に徐々に落ち着くように、がんが治癒する可能性が格段に高くなるということは言えるでしょう。

玄米菜食で必ず治るとか、体を温めればがんは消滅するとか、笑っていればそれだけでがんは逃げ出すとか、このような「これだけで」「100%治る」という言葉をもてあそんでいる者たちは信用してはならないということです。もちろん玄米菜食だけで治ることもあるはずです。ですからまったくウソというわけではない。それはその人のN個のがんが治る要素のなかで、玄米菜食による要素が高かった、あるいは他の要素との相互作用でそのような結果になったということです。「これさえやれば」という考えは、がんも人も複雑系であり、各要素が相互作用しているという事実を無視しているのです。

ガンになったら読む10冊の本―本えらびで決まる、あなたの命

話題は少し変わって、船瀬俊介氏の最近(2009/7)の著作に『ガンになったら読む10冊の本』があります。10冊の本として次のような本が挙げられています。

  1. 『医者が患者をだますとき』  ロバート・メンデルソン
  2. 『「薬をやめる」と病気は治る』  安保徹
  3. 『病気にならない人は知っている』  ケヴィン・トルドー
  4. 『癒す心、治す力』  アンドルー・ワイル
  5. 『新版・ぼくが肉を食べないわけ』  ピーター・コックス
  6. 『新・抗がん剤の副作用が分かる本』  近藤誠
  7. 『ガン食事療法全書』  マックス・ゲルソン
  8. 『「ガン・治る法則」12か条』  川竹文夫
  9. 『ガン絶望から復活した15人』  中山武
  10. 『病院に行かずに「治す」ガン療法』 船瀬俊介

船瀬俊介氏といえば、『新・知ってはいけない!?』が「2009年トンデモ本大賞」に輝いています。「秋葉原惨劇のルーツはブッシュ政権」というこじつけ、「グルメ番組は石油・穀物・食肉メジャーの陰謀」といった陰謀論、「宅間守は化学物質のせいで殺人鬼にになった」「野生動物は断食で病気を治す」「骨髄造血は否定されている」といった珍説の数々を紹介している本らしいです。(読んでいません)

彼の『ガ ンになったら読む10冊の本』にも首をかしげるような箇所がたくさんあります。放射線が腫瘍を発生させるというが、問題は放射線の量でしょう。自然放射線でも年間で2.4mSvの被曝があります。どんなに少ない放射線でも危険だというのなら、自然放射線も避けなければなりません。不必要な医療被曝を避ける、というのなら理解できますが。

代替療法が普及しないのは「医療マフィアの陰謀」だという相も変わらずの陰謀説。第3章の『病気にならない人は知っている』を紹介した箇所では、

  • 有害な電磁エネルギー
  • 携帯電話中継タワーからはエネルギー波を発している
  • 携帯電話からは協力で不自然なエネルギー
  • 高圧電線からはマイナスエネルギー
  • コンピュータからはマイナス電磁エネルギー
  • マイナスイオンは健康を増進させる
  • ビル風はプラスイオンを含んでいて健康に有害

などと書かれています。
マイナスのエネルギーとは物理的にどんな状態を指すのでしょうか。マイナス電磁エネルギーて何なのでしょう。 彼には活性酸素とフリーラジカルとマイナスイオンの区別もつかないようで、全部ひとくくりにして「有害」だと言っています。九州大学理学部に籍を置いた人物の書いたものだとは、とても信じられません。この点だけを見ても、彼の他の記述をまともに信じては危ないということが断言できます。一見科学的に見える言葉を使って、都合の良いように解釈しているだけです。もっともこの本に書かれていることがすべてでたらめというわけではなくて、正しい指摘の部分もありますが、いかんせん、すべての記述に関してその根拠が示されていない。私はアンドルー・ワイルの主張がすべて正しいとは思っていませんが(特に霊性に関して)、しかしこの本に取り上げられることは不本意なのではないでしょうか。安保徹氏と一緒くたにされてはかわいそうです。

一面の真実でも、それを唯一の真実だと主張したとたんに似非科学への仲間入りをすることになるという見本です。

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」 この本の対極にあると言えるのが、先日のブログにも紹介した『がんに効く生活』です。医学研究者でありガン患者でもあったシュレベールが、客観的な研究者の目で、実験結果をわかりやすく、根拠のあるデータを集めて、科学的に裏付けられた実践的データによって「ガン患者が何を為すべきか」を語っています。しかもそれは著者自身が実践して効果を確かめたことばかりです。自分自身をがんから守るための重要なポイントは、

  1. 体質をケアする必要性
  2. 体が本来もっている防衛力に対する意識
  3. 防衛力同士が組み合わさって起こる作用の相乗効果

だと言います。そして成功の鍵は「昨日までの自分を変えること」だと。

がんを、作らない、育てない、あきらめない

『がんになったら読む10冊の本』よりも、私はこの一冊で十分だと言うことができます。最初に書いた私の答え(青いフォントの部分)も、実はシュレベールがこの本で述べていることを借用したものなのです。

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2009年8月12日 (水)

心と癌と量子力学の関係(5)

複雑系としてのがん

いくつかのブログで「がんは複雑系」というテーマが語られています。

粘る希なガン患者さんの「複雑系」では、

私に言わせれば、「宇宙全体、天候現象、経済現象、人間社会、政治、ひとつひとつの生命体、あるいは精神的な現象などは、みな複雑系である」とあるが、単に、これは現在の人間の認識・判断・処理能力と「比して」複雑すぎるということを述べているにすぎない。

SeaMountさんの「SeaMountの雑記と書庫」では「ガンと複雑系」として、

 ガン治療については、現在の主流の西洋医学的なものについての批判はいろいろとあるが、では、どうしたらいいのかということについては、さまざな情報がある。その根底には、ガンというものをどうとらえるのかという問題があると思うが、それをここでは、「複雑系」という言葉から考えてみたい。

内科医のDr.フロッガーのブログ「生命システム」では、

生命はいくつもの遺伝子を持ち、その遺伝子は科学的に証明しやすい比較的単純な役割を持っている。その遺伝子がお互いに相互作用を起こしつつ、マクロな(より高次な)生命としての振る舞いが表れ出ている。マクロでの振る舞いがさらに下位の遺伝子に作用し、また外界や他の生命ともかかわりあっており、開いたシステムでかつ自己を維持している。
それは複雑系であり、おのおのの遺伝子の機能がわかったからと言って、生命の振る舞いの説明は出来ないだろう。分子生物学の発展により、単純な要素としての、ミクロな生命現象が日々解明されているが、それと実際の生命の振る舞いとは大きなギャップがある。簡単に言えば、木を見て森を見ず、といった感じである。

三者三様にがんと複雑系について書かれているのですが、それらに触発されて、私も複雑系について考えてみました。

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

シュレーディンガーの『生命とは何か』に触発されるように、生命科学は、生物を分子のレベルから解明する道に突き進んできた。 分子生物学は、分子の言葉で生命現象の普遍的性質を語ろうとして始まったが、この流れはワトソンとクリックのDNAのα二重らせん構造の発見によってピークを迎えることになる。これによって「遺伝」という現象が分子レベルで疑問の余地なく解明されたのである。半世紀たった今日では、分子生物学なしには生命現象の記述はできないまでになっている。この分子生物学の成果は、がん治療におけるアバスチンなどの分子標的薬として我々癌患者にはおなじみです。

こんにちの分子生物学の立場は、たとえば次のようになろう。

  1. 細胞膜に到達するシグナル分子の濃度があるしきい値を超えると、
  2. 化学反応を通して、ある遺伝子が発現するようになる。
  3. その結果あるタンパク質がつくられ、細胞の状態が変わる。

つまり、シグナル分子の濃度によって遺伝子がオン/オフのスイッチの働きをし、それに応じて細胞のある働きが現われたり消えたりする。つまり、ある遺伝子と細胞の機能との間には「一対一の関係」があると考えるわけです。場合によっては複数の遺伝子が関わる場合もあるので、最近のゲノム計画は遺伝子発現の組み合わせを探究する方向に向かっているようです。

我々に多くの恩恵を与えてくれた分子生物学ですが、分子生物学の問題点が明らかになりつつあります。遺伝子の機能と分子は必ずしも一対一に対応しておらず、分子生物学の研究が進むにつれて関与する分子が次々に見つかり、生命現象を記述するには膨大な生体内分子を考えなければならなくなったのです。

こうした「分子の多様性」のために、分子と細胞の機能を「要素還元的」にWshot00007_2、一対一で記述しようとする分子生物学の立場は軌道修正を迫られているのです。

右の図は、ExPASy(Expert Protein Analysis System)にある大腸菌内の代謝反応のネットワーク図ですが、 さまざまな化学反応サイクルが複雑に絡み合っている様子が分かります。しかもこれは代謝反応の一部でしかないというのです。(図のリンク先はこちら

更に、分子や遺伝子はいつも同じ機能を果たすわけではなく、状況に応じてその役割を変化させます。たとえば細胞膜にあるシグナル伝達分子が到達した場合、細胞内の状態がどのように変化するかは、一対一対応ではない。上の図からも明らかなように、細胞内のシグナル伝達経路にあるタンパク質からは多くのパスが枝分かれしている。たとえばRasというタンパク質を通る経路はたくさんの機能に関係している。線虫では排泄管の形成、雌雄同体における陰門の形成、減数分裂の制御、臭覚にも関係している。

免疫系ではインターロイキンというサイトカインは状況に応じてさまざまな役割を果たしていることが明らかになっているし、近年注目を集めているp53というがん抑制遺伝子は細胞周期、血管の新生の抑制、アポトーシス、DNA修復などの機能を持っているという。

がん抑制遺伝子としてのp53遺伝子(ウィキペディアより)

Rbに次いでがん抑制遺伝子として同定されたのがp53遺伝子である。p53は 1979年に単離されて以来がん遺伝子と考えられていたが、がん遺伝子として機能するのは変異を起こしたp53であり、元々のp53遺伝子はがん抑制遺伝子であることが示された 。p53遺伝子の機能を失わせたノックアウトマウスは、ほぼ正常に発生するにもかかわらず、成長後に多くの組織でがんを発症することが分かり、がん抑制遺伝子のがん発生における重要性が確認された 。また、ヒトの腫瘍の約50%にp53遺伝子の変異が認められる ことから、p53は現在までに同定された中ではもっとも重要視されるがん抑制遺伝子となっている。p53の機能はきわめて多岐にわたるが、G1/S細胞周期チェックポイント制御機能、アポトーシス誘導機能、転写因子としての機能がよく知られている。

分子標的薬が当初期待されたほどのがん治療効果を上げることができず、重篤な副作用が発生していることは、分子と細胞の機能が一対一対応ではないということからの当然の帰結であると思われます。標的分子の機能が複数あり、さらに多くの分子と相互作用しているのであれば、分子標的薬が、ねらった通りの機能に対して効果を起こせるかどうかは分からないことになります。と書いていたら、FDAが2つの癌標的治療薬の使用を制限すると添付文書を改訂とのニュースが流れていました。案の定という感じですね。

2つの癌標的治療薬の使用を制限すると添付文書を改訂 

FDAはセツキシマブ(アービタックス)およびパニツムマブ(Vectibix:ベクチビックス)について、転移大腸癌で腫瘍が特定の遺伝子変異を起こしている患者には使用しないよう忠告すべく、添付文書改訂を行うことを承認した。この変更は、両薬剤がKRAS遺伝子に特定の変異がある患者に対しては効果がないことを明らかにした数件の臨床試験を調査したレトロスペクティブ研究の結果に基づいている。いずれも上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)を標的とした治療薬である。

1 月、米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、すべての転移大腸癌患者にこれらの遺伝子変異についての検査を実施し、変異が認められた患者にはいずれの治療薬も投与すべきではないとする、「暫定的な臨床的見解」を表明した。患者を不要な毒性から守ることができるのに加え、今年既に発表された研究では、KRAS検査の結果に基づいてこれらの薬剤を使用することで年間6億ドル以上削減できると試算されている。

細胞のなかにはたくさんのタンパク質分子がラッシュ時の満員電車のように密に 充填されており、一つの分子の隣り合った原始同士よりも、別の分子にある原子との距離が近いことも少なくないのです。原始単位で見た場合、隣り合っている分子間での原子同士の相互作用も考慮しなければならなくなります。(量子力学的影響が無視できなくなる)

ということは、ある一つのタンパク質を細胞からとりだしてその振る舞いを研究しても、タンパク質分子間の相互作用が無視できるほど小さいという前提が成立しない限りは、本当の振る舞いは分からないということになります。細胞内の分子は機械の部品のようにとりだしてあれこれと説明することは不可能なのです。

「要素間の強い相互作用」は細胞内の分子だけではなく、細胞と細胞の間でも起こります。細胞間のコミュニケーションが、細胞内の化学的過程に対して小さな摂動しか与えないという保証はないのです。「部分が全体を知っている」ということがいわれますが、例えば肝臓の細胞は肝臓全体の様子を知っているように振る舞います。肝臓移植で切除したとき、残った肝臓細胞は直ちに増殖を始め、肝臓が元の大きさになったときに増殖を止めます。これは「細胞が肝臓全体を知っている」ということです。ですから要素間の強い相互作用があることは疑う余地がありません。

取りだして試験管に入れたがん細胞の振る舞いが、実際の組織の中での振る舞いと同じにはならないのです。試験管レベルの実験では効くはずの抗がん剤が、患者に投与されたときも効くかどうかはまったく分からないということです。

これ以上深くは書きませんが、たとえばシグナル分子がある濃度以上であれば、ある遺伝子が発現するという場合、「濃度」には「ゆらぎ」があります。シグナル分子の数はせいぜい1000個程度ですが、確率的に変動する量の平均がNであった場合、必ず√N程度のゆらぎが存在します。つまり1/√1000≒0.03、3%程度の変動があるわけです。ある遺伝子が発現するかどうかという現象が、3%の不確定さがあるということです。

生命とは何か―複雑系生命科学へ

生命とは何か 複雑系生命科学へ』にはこうした分子生物学の要素還元主義に対する問題点を列挙しています。(シュレーディンガーと同じ書名にしたのは著者の”新しい生命科学”への意気込みが見て取れます。)著者らは「構成的生物学」を複雑系としての生命の普遍的性質を解く方法として提起しています。この本のなかで「がん」に言及している箇所を挙げておきます。

ルビンは、マウスのある系列の細胞を、培地の条件を変えることで、全体の数を保ちつつ、実効的に高密度で強く相互作用している場合と弱く相互作用している場合をつくり、その違いを調べた。その結果、がん化する細胞の割合が前者ではずっと大きいことをみいだしている。一定のランダムな突然変異でがん化が生じているとしては説明できない現象であり、細胞間の相互作用が細胞のがん化に強く影響していることを物語っている。

彼らの実験によれば、がん細胞の生じる率は密度とともに増加していく。その生成率は細胞数でなく密度によっているのである。このことはがん化が細胞間で独立に生じる突然変異によるものでなく、相互作用が本質的であることを示唆している。

また、細胞が化学的多様性(偏った化学的成分をもつような)を喪失した場合、速く増殖することがある。(がん細胞)この細胞内での反応ネットワークは、正常な細胞よりも単純であり、細胞間のコミュニケーションも失われていると説明し、

がん化した状態が細胞内部の性質だけで規定されているのではなく、相互作用によってつくられた状態であることから、うまく内部状態と相互作用の関係を変えれば分化の形態を変えられるのである。

以上にがんと複雑系、生命の複雑系としての考えを紹介しましたが、がんを複雑系として見る研究方向はまだまだ端緒についたばかりです。いま切実にがんの治癒を願っている患者は、がんを複雑系と考える立場をどのように自分の治癒へとつなげばよいのでしょうか。

長くなったので、これについては、日を改めて書こうと思います。

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2009年8月 9日 (日)

がん患者のためのインターネット活用術 (6)

がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した ネットの情報はすぐに古くなります。Kindle本『がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した』では最新の情報に書き直して出版しています。


検索オプション

これまで紹介してきた検索方法は、Googleのキーワード入力エリアに検索構文を指定する方法ですが、構文を知らなくてもGoogleの「検索オプション」で指定することができます。
Wshot200016

「検索オプション」をクリックすると、次のような画面が開くので、それぞれにキーワードを入力すればよいのです。

Wshot200017_3  

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2009年8月 8日 (土)

サイモントン療法の新しい本

サイモントン療法を紹介した「がんのイメージコントロール法」は在庫がなく、オフィシャルウェブ上では「改訂版を準備中」となっていました。古本でも5600円という高い値がついていましたが、8月6日に改訂版が発売されたようです。

サイモントン博士は6月18日(米国時間)にお亡くなりになっています。4月8日に日本大記念講堂での講演をお聞きしましたが、そのときは歩行は困難そうでしたが、元気に見えました。私は川端伸子さんの朗読するCDをiPod nanoに入れて毎日聞いています。

ご冥福をお祈りいたします。

サイモントン療法――治癒に導くがんのイメージ療法(DO BOOKS)
川畑 伸子
449558491X

こちらも改訂版です。私もサードオピニオンを受けました四次元ピンポイント放射線治療の植松稔先生の著作。

明るいがん治療―切らずにピンポイント照射 明るいがん治療―切らずにピンポイント照射
植松 稔

明るいがん治療〈2〉身体に優しいピンポイント照射 明るいがん治療〈3〉「明るいがん講座」30話   

by G-Tools


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2009年8月 7日 (金)

糖尿病治療薬が膵がんのリスクを高める

がんナビに報道された記事によると、

糖尿病の治療薬であるメトホルミンが、糖尿病患者の膵がんリスクを低下させることを示す、米テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのDonghui Li 氏らによる研究結果が、Gastroenterology誌8月号(2009,137,482-488)に掲載された。
この研究では、 1838 人の膵がん患者(うち 973 人は腺がん)と、がんではない863 人の対照群を比較した。膵がん群には 259 人の、対照群には 109 人の糖尿病患者が含まれている。
面接調査で、がんの家族歴、生涯の喫煙歴、飲酒歴、BMI(体格指数)などの情報を、また糖尿病患者の場合は使用した治療薬と投薬期間の情報を入手した。
糖尿病の患者でメトホルミンを服用していた場合、単独か他の治療薬との組み合わせかに関わらず、メトホルミンを服用しなかった人々と比べて、膵がんのリスクが 62 %低減することがわかった。喫煙歴など、他の糖尿病のリスク要因は、この関係に影響しなかった。
一方、インスリンまたはインスリン分泌促進薬を使用した糖尿病患者では、それらを使用しなかった患者と比較して、それぞれ、膵がんのリスクが 4.99 倍と 2.52 倍に増加した。その他の治療薬については、患者数が少なく結論が出なかった。
「さらなる検証が必要だが、今回の結果によって、メトホルミンが膵がんに予防的に働く可能性が示された」とLi氏は述べている。

見直されたビグアナイド―塩酸メトホルミン

日本では糖尿病の内服薬としてはメトホルミン次いでスルホニル尿素(SU)薬の使用が多いそうで、私が服用しているアマリールもSU薬の一種です。メトホルミンは一時次のような副作用がアルトいわれました。

日本においては、一般医家に「メトホルミン恐怖症」というのが染みついているようである。だが、米国糖尿病協会などの最近の動きを見ると、糖尿病患者には初期からのメトホルミン投与がスタンダードになりつつあり、単に忌避するだけではどうかな、という気がしてくる。

乳酸アシドーシスは、 1000人年当たり0.06程度で、頻度としては少ないが、その恐ろしさがメトホルミン恐怖症を招いているようである(Journal of the American Board of Family Practice)。乳酸アシドーシスは、頻度は稀だが重大な副作用である。症状・兆候はケースにより様々で非特異的、吐き気、嘔吐、意識変容、易疲労 感、腹痛、口渇などを訴える。重篤で生命危機に至る場合は、透析によって急激に除去し得る。血中重炭酸の低下、anion-gap(陰イオンギャップ)の 増加、乳酸値の増加のほか、「anion-gap metabolic acidosis」として知られている所見を示す。メトホルミン中止後、症状とともに検査所見も改善するのが通常。

しかし、この副作用は懐疑的ということで、最近ではまたよく使われているようです。
膵ガンのリスクが5倍から2.5倍になっているとしたら、こちらのリスクの方が「怖い」のではないだろうか。糖尿病患者は膵がんになるリスクが高いという研究も報告されているが、治療のために服薬したSU薬などの結果でそのような高リスクになっているのかもしれない。つまり、糖尿病治療が膵がんを誘発している可能性がある!かもしれない。

現在糖尿病で治療をしている人は、定期的に超音波検査で膵臓の検査をすることが大事です。超音波検査では、「膵臓をよく見てください」といわないと、一般的な検査では見落とすことが多い。超音波で膵臓をよく見えるようにするには、寝そべって検査を受けるだけではだめで、体を45°にして超音波を当てる必要がある。

自分の服用している薬を知り、主治医の先生とよく相談した方が良いでしょう。


主な糖尿病の内服薬 ()内は商品名

スルホニル尿素(SU)薬
すい臓からのインスリン分泌を促進して、血糖降下作用を発揮しWshot200012 ます。低血糖に対する注意が必要です。

グリベンクラミド(オイグルコン)、グリクラジド(グリミクロン)、グリメピリド(アマリール)、アセトヘキサミド(ジメリン)

フェニールアラニン誘導体
速効・短時間にインスリン分泌を促進させて、食後血糖値を降下させます。必ず食直前に服用します。また、薬の服用直後から薬の効果があらわれます。したがっ て、この薬を飲んだ後10分以内には、食事をとってください。食事をはじめるまでに時間がかかってしまうと、低血糖を起こす可能性があります。

ナテグリニド(スターシス)、ミチグリニド(グルファスト)

α-グルコシダーゼ阻害薬
小腸粘膜に存在する二糖類分解酵素(α-グルコシダーゼ)の作用を阻害し、糖の消化を抑制し吸収を遅らせ、食後の高血糖を抑制します。必ず、食直前に服用します。食後では効果がありません。副作用として、腹部膨満感、放屁の増加、消化器症状などが認められます。まれに肝機能障害が報告されており、定期的な肝 機能検査が必要です。低血糖に対しては、必ずブドウ糖を服用してください。砂糖では吸収が阻害されてしまいます。

ボグリボース(ベイスン)、アカルボース(グルコバイ)

ビクアナイド(BG)薬
肝臓での糖の産生の抑制、消化管からの糖の吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善などにより、血糖降下作用を発揮します。インスリン分泌促進作用はなく、血糖降下作用は穏やかです。高齢の患者さんで肝機能障害、腎機能障害や心機能障害のある場合には、乳酸アシドーシスを起こす可能性があります。

塩酸ブホルミン(ジベトスB)、塩酸メトホルミン(グリコラン)

チアゾリジン誘導体
インスリン抵抗性を改善して、血糖降下作用を発揮します。副作用として、貧血、浮腫、血液検査値の上昇などが認められる場合があります。肝機能障害が報告されているので、定期的に肝機能検査を行います。

塩酸ピオグリタゾン(アクトス)


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2009年8月 6日 (木)

がん患者のためのインターネット活用術 (5)

がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した ネットの情報はすぐに古くなります。Kindle本『がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した』では最新の情報に書き直して出版しています。


ファイル形式指定検索

がんに限らず、論文や研究発表の資料はPDFファイル形式でアッWs001プされていることが圧倒的に多いのです。一部は、そのほかのファイル形式(Word、Excel、PowerPoint)でアップされていることがあります。また、医学系の雑誌、学会の 出している会報などもPDFファイルでアップされていることがあります。

単にキーワードを入力して検索した場合でも、PDFファイルが検索にかかるときもありますが、

   膵臓がん 生存率 filetype:pdf

と指定すれば、PDFファイルのみを検索の対象 とすることができます。

右の図の例では、国立がんセンターの膵臓がんを含む各種がんの治療成績や、日本膵臓学会が出している「膵臓」という雑誌の記事を検索することができました。

「膵臓」のVol. 22(2007) No.1 には「膵癌登録報告2007」のすべてがPDFファイルとしてアップされて、その巻頭には次のように紹介されています。

2001 年から2004 年の症例をまとめて、年次ごとのデータとして報告するとともに、長期生存例、2cm 以内の膵癌についてまとめ、前回報告されなかった膵管内腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、内分泌腫瘍、その他の腫瘍についても詳細に報告する。報告図表の量が膨大であるため、冊子体ではなく、J-STAGE の電子媒体としてインターネット上に公開されるのも今回がはじめてである。
このような、きわめて多数の症例を母数とした集計例の解析は世界に類を見ず、貴重な資料となるものである。多くの方に利用していただきたいと念じている。

この資料は、膵臓がん患者なら一度は目を通しておきたいデータでしょう。

例えば、ステージ毎の切除例、非切除例別の生存率曲線、組織型別、化学治療・放射線治療別の生存率曲線など、膨大なデータがあります。「非切除例者の5年生存率の年代と治療法」などという、気になる資料もあります。

Ws002 Ws003


タイトル検索

キーワードがWeb上の記事本文だけではなく、タイトルにも含まれていれば、その記事は重要な情報を含んでいる確率が高いと考えられます。Wshot00002

  allintitle:膵臓がん

で検索してみます。

2930件のヒットがあり、大阪府立成人病センターの膵臓がんの治療成績などが検索され ました。大阪府立成人病センターは切除できた膵臓がんの5年生存率が50%という、世界的にも優れた成績を出している病院です。

私のブログも上位に顔を出しています。

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2009年8月 5日 (水)

緑黄色野菜のがん予防効果。 世界初、科学的に証明

緑黄色野菜の抗がん効果に関してはこれまで、疫学的には様々なデータがあるといわれてきました。がん予防には野菜や果物、ファイトケミカルを摂ることはいわば常識のようになっていたのですが、これを科学的に証明したという報道がありました。毎日新聞の地方版に掲載されています。

緑黄色野菜:食べると大腸がん予防に効果 世界初、科学的に証明 /埼玉
 ◇県立がんセンターと筑波大の研究グループ

 緑黄色野菜を食べると、大腸がん予防に効果あり。県立がんセンターと筑波大の研究グループは31日、緑黄色野菜の摂取が大腸がんの発生を抑えることを世界で初めて、科学的に証明したと発表した。27日に「米国科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載した。

 同センターの川尻要専門員によると、緑黄色野菜を多く取ると大腸がんの発生リスクを抑えることは疫学上の一般的な見解とされる。世界保健機関(WHO)も「野菜の摂取は大腸がんに対して予防効果がある」と提言しているという。

 グループは、人間の大腸がんの原因となるβ-カテニンを分解する特定のたんぱく質が働かずに腸がんが多発する遺伝子異常のマウスを準備。これらのマウスに緑黄色野菜に多く含まれる有機化合物の一種のインドール化合物を含む飼料を与えた。すると、AhRと呼ばれる別のたんぱく質が活性化し、β-カテニンの分解を促進。がんの発生件数が、飼料を与えなかったマウスよりも3分の1近くまで低下することを発見した。

 インドール化合物は特にブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科野菜に多く含まれるという。川尻専門員は「野菜を多く食べる健康な食生活が、大腸がん予防に有効だと示せた。AhRを活性化させる物質を化学的に作れば、さらなる予防にもつながるかもしれない」と話している。【岸本悠】 (毎日JP 2009/8/1地方版)

今回は大腸がんに関する実験ですが、多くのがんに対しても有効だろうと推測できます。 7/30のブログで紹介した『がんに効く生活』(ダヴィド・S・シュレベール著)にも、「アブラナ科の野菜(キャベツ・芽キャベツ・チンゲン菜、白菜、ブロッコリー、カリフラワーなど)に含まれるスルフォラファンやインドール3カルビノール(I3C)には、強力な抗がん作用がある。一部の発がん物質を解毒する力があり、全がん状態の細胞が悪性腫瘍に変わるのを防いでくれる。また、がん細胞のアポトーシスを促し、血管形成を抑制する働きもある。」と記載されていました。(212ページ)この本のすばらしいところは、このような効果を記述するのに、必ず巻末に根拠となる科学論文を示している点です。その論文も膨大な数です。シュレベールがたくさんの論文を読破して自分の考えに根拠を与えているかを知るにつけ、驚くばかりです。

がんを予防し、治癒への道を選択したいのなら、肉を控えて野菜をたくさん食べる。これが「科学的に証明された」ということですよね。

逆に、緑茶のがん予防効果には確証が得られなかったという記事(全文はこちら)。

アメリカ健康最前線

緑茶の癌(がん)予防効果の確証得られず

 過去20年にわたる51件の研究を対象としたレビューの結果、緑茶の癌(がん)予防効果については、未だ明確な答えが出ていないことが示され、医学誌「The Cochrane Database of Systematic Reviews(コクランシステマティックレビュー・データベース)」7月8日付オンライン版に掲載された。

 今回のレビューでは、肝癌、乳癌および前立腺癌については緑茶による予防効果がある程度認められたものの、膀胱癌リスクは逆に増大する可能性が示された。食道癌、大腸(結腸直腸)癌、膵癌など消化管の癌では一致する結果が得られず、著者らは肺癌、膵癌、大腸癌の予防効果については限定された証拠しか認められなかったと記している。「これほど多数の研究について検討しても、緑茶の癌予防効果については明確にできない」と、筆頭著者であるドイツの癌研究グループ(Oncology Study Group)の一員、Katja Boehm氏は述べている。

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2009年8月 3日 (月)

がん患者のためのインターネット活用術 (4)

がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した ネットの情報はすぐに古くなります。Kindle本『がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した』では最新の情報に書き直して出版しています。


今では統計的にいえば、夫婦のどちらかが癌になっても不思議ではないのです。ですから、がん患者といっても特別な存在ではない。腰痛や糖尿病や、いろいろな病気の一つとして「癌を持って」生きている人間と考えた方がよいのでしょう。癌との闘いにおいて、インターネットから情報を得ることができるかどうかは、場合によっては余命を左右することもあります。例えば、癌ペプチドワクチン療法の臨床試験の情報を知っていて参加できたとすれば、治癒へのチャンスを掴むことになるのかもしれません。

しかし、人生は癌との闘いのためだけにあるのではない。治る、あるいは延命することは切実な願いですが、いくらかの延命が果たせたとしても、その時間をインターネットの検索などに費やしてしまったとしたら、これは賢明な選択とは言えないでしょう。信頼でき、自分に必要な情報を「効率的に」収集する。そのためにはインターネットの検索術、テクニックを上手に使いたいものです。そして浮かした時間は、人生を有意義にするために使ってもらいたい。それに少しでも役立てればということで、このシリーズをアップしています。

ドメイン指定検索
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ドメインとは、インターネット上のパソコンやネットワークを区別するために付けられた「住所」のようなものです。「ドメイン指定検索」は、この住所を指定して、キーワードで検索しようということですから、信頼のおけるサイトを指定できるという特徴があります。

ドメイン指定検索は、キーワードの後ろにスペースを空けてから、「site:ドメインの一部」という形式で指定します。

例えば、

      ワクチン site:pancreatic.cocolog-nifty.com/oncle/

で検索すれば、この私のブログの記事の中で「ワクチン」というキーワードが含まれた記事の一覧が検索されることになります。

私のブログだけを対象にして検索しても、信頼性がないよね、と思ったら、より信頼のおけそうなドメインを指定すればよいのです。代表的なメイン・ドメインは次のようなものです。

Ws000002

これらから公的な機関のドメインを指定すれば、より信頼性のあると思われる情報にアクセスすることが可能になります。Ws000007

「癌ペプチドワクチン療法」は主に国立大学の附属病院や研究機 関で実施されたいるのですから、「ac.jp」 でドメイン指定検索すれば、より効果的に検索できると予想できます。下の例ではAND(の代わりにスペースを入れている)、OR、フレーズ検索とドメイン指定検索を合わせて使っています。

(癌 OR がん) AND "ペプチドワクチン" site:ac.jp

としても同じです。

久留米大学、大阪大学、東京大学などのサイトにキーワードに一致する情報があることが分かります。

もし、アメリカの政府機関で「膵臓がん」を検索したければ

     pancreatic cancer site:gov

と指定して検索します。

Ws000005

国立がんセンターのサイトから「膵臓がん」のキーワードで検索したければ、

               膵臓がん site:ncc.go.jp

とします。さらに、(膵臓 OR すい臓 OR 膵 OR すい) AND (癌 OR がん OR ガン) site:ncc.go.jp とすればより確実に検索できます。

Ws000003

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2009年8月 2日 (日)

癌ペプチドワクチン療法が免疫との関係をはじめて立証

東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らが進めている「癌ペプチドワクチン療法」と免疫との関係がはじめて立証された、という報道が産経ニュース(2009/7/28)に掲載されました。

免疫力を高めてがん細胞を攻撃するペプチドワクチン療法の臨床試験で、ワクチンに反応するリンパ球が陽性の患者は陰性の患者に比べて生存日数が2倍以上長く、末期患者も半数が400日以上生存することが28日、東京大学医科学研究所の中村祐輔・ヒトゲノム解析センター長のまとめで分かった。免疫反応と治療効果の関係が科学的に証明されたのは初めて。体質に合った効率的な治療に役立つと期待される。

中村センター長は全国の大学病院などの協力を得て臨床試験を実施。平成18~20年に行った130人の長期生存患者の血液を分析し、ペプチドワクチンに対するリンパ球の反応を調べた。その結果、陽性患者では半数以上が400日以上生存し、800日を超えた患者も4割近かった。一方、陰性患者では半数が200日以内で亡くなり、400日以上生存した患者は約2割だった。

中村センター長は「ワクチン療法の効果を科学的に実証できたのは画期的。患者ごとの治療効果を早期に検証することが望ましい」と話す。

ペプチドワクチン療法は、がん抗原からアミノ酸化合物のペプチドを人工的に合成し、投与する。強い副作用がないとされ、外科療法、抗がん剤療法、放射線療法に次ぐ「第4の治療法」として注目されている。

癌ペプチドワクチンがリンパ球を活性化した患者では生存期間が有意に延びたということです。逆にリンパ球が活性化しなかった患者では生存期間は短いという結果でした。このデータを元に、癌ペプチドワクチンと免疫との関連がはじめて実証されたとしています。

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2009年8月 1日 (土)

どろ亀さん

樹海―夢、森に降りつむ

まさか自分が膵臓がんになろうとは思いもしなかった4年前の夏、夫婦で北海道をドライブした。「北の国 此処に始る 倉本聡」と記念碑がある布部駅から、布部川沿いにドラマの主な舞台である富良野市麓郷地区に向かってレンタカーを走らせると、カーナビに「東京大学北海道演習林」と表示が見えてくる。

『へぇ、こんな所にも東大の土地があるんだ』と思いつつ、そういえば6年前に京都・美山町の「かやぶきの里」に行ったときにも「京都大学演習林」があり、ブナ林が見えたことを思い出した。旧帝大はいろんな所に土地を持っているんだなぁ、とその程度の認識しかそのときは想い浮かばなかった。_mg_5444_thumb

最も古いロケ地である「麓郷の森」からほんの少し行くと、ここにも「東京大学演習林」の看板が掛かっていた。

その後に調べて分かったのだが、麓郷展望台から撮影したこの写真にも広大な森が見えるが、実は麓郷地区というよりは、富良野市が三方を「東京大学北海道演習林」に囲まれているのだ。

その演習林の林長を長らく務めた「どろ亀さん」の話

高橋延清さんは自分のことを「どろ亀さん」と呼ぶ。赤い登山帽が似合う東京大学名誉教授であった。ところがこのどろ亀さん、ドクター論文も書いたこ とはないし、そもそも論文なんて大嫌い。教授会にも一度も出席せず、「生きた教材がないキャンパスなんて意味がない」と、本郷の教壇に立ったこともないと いう、なんとも不思議な東大名誉教授である。

どろ亀さんが生涯をそこで過ごした樹海(東京大学北海道演習林)は、2万3千ヘクタール、東京山手線区域内の3.5倍の広さを持つ広大な演習林だ。どろ亀さんは1938年に着任して、退官後も死ぬまでそこで過ごした。

  どろ亀さん
  どろ亀さん
  どこへ行く
  クマザサこいで
  峰こえて
  還暦すぎて
  どこへ行く
  トドマツさんが呼んでいる
  キネズミ君が待っている
  樹海の中に生きていく
  樹海の中で生きていく

戦後日本の林業は皆伐林業だった。林野庁と営林署は、山の木を根こそぎ切り倒し丸裸にしたあとに、金になる杉や檜だけを植林し、国有林の大伐採と自 然破壊の元凶となった。手入れを怠った針葉樹林は材木としての値打ちもなく、各地で水害やスギ花粉症の原因となっただけであり、今日では林野庁の誤りは明 らかなんだが、その当時どろ亀さんは、この林野庁の方針に真っ向から反対し、あらゆる樹木を混成させてバランスをとる『林分施業法』に基づいて演習林を育 てる実験に取り掛かったのである。

林分施業法は、森林生態系の法則に従い、環境保全機能と木材生産機能との両立を持続させることを目的としている。専門外の私には難しすぎるが、「百 年単位で、森の生態系と最小単位である林分の行く末を見極めつつ、森の中の伐るべき木を選定する」ことだろう。それぞれの林分が極相林に早く達するのを手 助けするのである。極相林とは、森の中で枯れていく木と成長していく木の比重が同じ状態をいい、その直前が木材の生産量も多く、活力のある状態だという。

こうして林分施業法の6原則によって、極相林一歩手前の状態の森林がもっとも木材の生産性の高い森林であり、森にすむ生物も一番豊富なんだと証明したんだ。

そうして、木との対話、森のいのちとの対話がどろ亀さんの生き方となった。

どろ亀さんはこの「林分施業法」によって「学士院エジンバラ公賞」を受けるんだが、「百年たてば必ず分かってもらえる。ただ、生きてるうちは無理だから、森の根っこになって朽ちようと思っていたのに・・・」と新聞社へのインタビューで述べている。

  老いて
  二度童子(わらし)になった
  どろ亀さん
  科学者の目を落として
  森の中へ
  見える 見える
  よく見えてくる
  今まで気がつかなかった
  森の中の小さな
  美しいデザインも・・・・・・

  動かずに
  黙って座っている、と
  生きものたちが
  心を開けてやってくる
  ともだちにならんか、と。


老子が言うように、人間はとかく爪先立って背伸びをしたり、先を急いで大股で歩こうとしたりするが、どろ亀さんの心はそんな生き方とは正反対の命のありようだ。

どろ亀さんの育てた演習林は樹木の種類も豊富で、しかも木材生産性も日本一という、自然保護と材の生産性を両立させた森になっており、世界中から林業の研究者たちが見学にやってくる。

金を儲けようとか、有名になろうとか、新説をたてて学会をあっといわせようとか、そんな欲望をすっぱりと捨てて、意識も分別もなくして己を無にして 空っぽになったとき、向こうから自然がやってきて己と一体になる。こうして人間は命の根底に至るのである。どろ亀さんはこうして生きた人だった。

Inoti_2_thumb どろ亀さんの詩文集『樹海 -夢、森に降りつむ』には、すばらしい富良野の森の写真が添えられている。水越武さんの写真もまた「森を知り、森のいのちを知り尽くした」写真家の、命の根底にいたった作品である。

本当の人生の幸せは、どろ亀さんのような生き方にあるのだと、癌をもったいまでは痛切に感じます。

【参考文献】

樹海 -夢、森に降りつむ-  世界文化社
森に遊ぶ  -どろ亀さんの世界-  朝日文庫
樹海に生きて  -どろ亀さんと森の仲間たち- 朝日新聞社

樹海―夢、森に降りつむ森に遊ぶ―どろ亀さんの世界 (朝日文庫)

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