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2009年10月

2009年10月31日 (土)

城山三郎 『そうか、もう君はいないのか』

このところ6週間連続でチェロのレッスンが続く。年末年始の分をまとめてやっておこうということなので、それなりに気合いが入って通っている。いつものように蕎路坊で野菜天ざると酒。一時間ほど酔いを覚ましてレッスンに入る。左腕の五十肩もだいぶよくなってきたのは、チェロのレッスンが効いているのかもしれない。課題曲の「私のお気に入り」も今回でおしまい。初めのころに比べてずいぶんと上達したと自分でも感じる。テンポに乗っている。低音部とのハーモニーもきれいに調和している。先生もべた褒めだから気分がいい。

そうか、もう君はいないのか

城山三郎の『そうか、君はもういないのか』を読む。城山さんの没後に発見された愛妻への遺稿であり自伝のような本で、妻の容子さんが癌でなくなるまで の思い出でもある。ほのぼのしたいい夫婦だ。容子さんが高校生で城山さんが学生の時、突然の休館日となった図書館の前で、途方に暮れている二人が偶然にであう風景。『天から降りてきた妖精』のような赤いワンピースの容子さんに一目惚れした城山さん。親から反対され一度は分かれるが、数年後のまた偶然の出会い。こうなるともう結婚へとまっしぐらしか道はないよね。

新婚旅行の宿で、初夜の行為の結果としてベッドのシーツを汚してしまい、一生そのホテルには近づけなかったなど、笑ってしまう。容子さんが新婚旅行の報告を電話して、「とってもよかった」を連発したそうで、後日義兄から「あのときはすっかり当てられてしまった」と言われる。そんな天真爛漫というか、うぶな容子さん。

城山さんのこんな詩もある。

深夜
おまえの寝息を聞いていると
宇宙創造以来の歴史が
ふとんを着て
そこに居る気がする

生きていることの
奇怪さ
美しさ
あわれさ

おまえの寝息がやむと
大地に穴があいたように
寒くなる

さて
おまえの乳房をつかんで眠れば
地球ははじまり
地球はおわり

そんな容子さんが肝臓癌になる。診察を終えて帰ってきた容子さんは、鼻歌交じりにポピュラーな歌に自分の歌詞を乗せて歌いながら部屋に入ってくる。
「ガン、ガン、ガンちゃん ガンたららら・・・・・・・・」
癌があきれるような明るい歌声であった。城山さんの腕に飛び込んできた容子さんをただ抱きしめるだけの二人。

どうせ、あちらへは手ぶらで行く―「そうか、もう君はいないのか」日録

ニューヨークにいる息子さんが見舞いに来て、帰ろうとしたとき、突然病室のベッドから滑り降りて立ち上がり、直立して挙手の礼をする。息子さんも驚きながらも挙手の礼を返す。悲しいけれども、笑いたくなる最後の別れ、と書かれている城山さんはそのシーンを思い出すたびに、容子さんの最後にふさわしいフィナーレだったと思う。

別の一冊『どうせ、あちらへは手ぶらで行く』は城山さんが亡くなったあと発見された9冊の手帳の内容を整理したもの。

個人情報保護法に反対の立場の城山さんが、何度かテレビに出ていたことを思い出す。最愛の奥さんを亡くし、ご自身も体調を崩している状態で、生き残った特攻隊員の使命感からあのような行動を取られていたことを知る。

癌を告知され、余命を告げられて時、「残された時間を有意義に過ごす」などと、書いてある本をよく見かけるが、有意義な時間の過ごし方なんていうものは、われわれ凡人にはどう過ごしていいのか、はたと迷ってしまう。偏凡な日常を平凡に生きることでいいのじゃないだろうか。これまでよりは少しは物事をよく見て、ほんの少しよく考えて、食事や家族との時間を、これが大事な時間なんだとちょっと意識的に感じ取って過ごす。そんなことしかできそうにないし、それでいいのだと思う。やりたいことを精一杯にやる。死に対峙する妙案は、案外そんなところにあるはずだ。

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2009年10月29日 (木)

若林暢チャリティーコンサート

大田文化の森で開催された『若林暢チャリティーコンサート』に行ってきた。アフガニスタンで女性のための『希望の学校』を運営しているNGO等への募金活動のため、大田区在住の若林さんが賛同してのコンサート。

ちょうど昨日の新聞でもカブールの国連宿泊施設への襲撃によって12人が死亡したと伝えられていた。戦火によって夫を失った女性たちが、物乞いや子供の労働に頼って生活をしている。そんな彼女たちに教育の機会を与えようと、日本在住のアフガニスタン人、スルタニさんらが活動している。

コンサートはベルリンフィルの弦楽メンバーにピアニストのアルバート・ロトさんを加えて、曲目はシューベルトのピアノ五重奏曲変ホ長調作品44、ブラームスのピアノ四重奏曲ト短調作品25。チェリストのクリストフ・イーゲルブリンクさんが楽譜を忘れて登壇し、開演が30分ほど遅くなるというハプニングもあった。

ベルリンフィルのチェリストの演奏を間近で観察できる機会は滅多にないと、最前列に席を取って、もっぱらチェロの指使いやボーイングを注視していたが、ppで演奏するときには右手の中指を弓から離して弾いていた。ときどき左手の位置を確認してから弾き始めていることが印象に残った。プロでもやはり左手の位置は確認しながらでないと心配なのかもしれない。私などはしょっちゅう確認しているが、いくらか安心した。

「平和」を言葉でしか知らないアフガニスタンの人たちに比べて、平和が日常となっている日本で、たかが「がん」のために悩んだり闘ったりしているのが申し訳ないような、戦火の国民から見ると夢物語のような医療費をかけて治療をしているにもかかわらず、満足できないがん難民が多数いることが、おかしなことのように思われてくる。わずかに数十円の抗生物質がないためにバタバタと亡くなっていくアフリカの子供たち。ユネスコの新聞広告を見るたびに怒りがこみ上げてくるが、5分も経つとそんなことはすっかり忘れている自分にも唖然とする。

免疫療法だ、新しい抗がん剤だと、つぎつぎに話題が出てくるが、いったいいくらの治療費がかかるのか。最終的には健康保険が適用になるにしても、その負担は国民全員で負うことになる。一人のがんの治療費に何億円もかけることがまっとうなことだとはとても思えない。ほどほどの治療にして、あとはQOLを維持できる方法を考えた方が、まともな人間の考え方のような気がする。

2009年10月26日 (月)

「クローズアップ現代」みました。

「クローズアップ現代」の『実現するか "夢"のがんワクチン』を見ました。パンキャンジャパンが出てくるのかと思っていたら、アメリカのパンキャン本部、それにジョンズ・ホプキンズ大学。NHKの取材力に驚きます。予後の悪い癌の筆頭としての膵臓がんに焦点を当て、がんワクチンの将来性、日本での研究が抱えている困難に言及していました。がん患者も政治の問題として、また自分の命が政治に左右されているのだという点をもっとかみしめる必要がありますね。鳥越さんの「やんばダムの4000億円をがん研究費に回せ」も根本的な原因をついていました。短い時間での制約があるとはいえ、30分の番組としては濃い内容でした。

和歌山県立医科大学で、手術不能のすい臓がんと診断され、余命7ヶ月と言われた硲さんの場合、がんワクチンの投与によってQOLを維持して仕事にも従事しながら、2年以上も生きることができました。

しかし、手術不能のがん患者まで完全治癒するような「夢のワクチン」ではないということです。日本すい臓がん学会のステージⅣa、Ⅳbの生存率曲線によれば3年生存している例もあるわけで、がんワクチンを投与された硲さんの例が、これに比較して長期生存例とは言えないのではないでしょうか。

がん患者がもっと声を上げなければ、というのは正論です。ですが、すい臓がん患者には時間がない。あれよあれよという間にどんどん亡くなっていくんです。政治的な運動を思いつく余裕もないのです。ですから、アメリカのパンキャンも膵臓がん患者の遺族が運動を担っているのでしょう。乳がんや子宮頸がん、ある程度時間のあるがんとすい臓がんとは状況も違います。すい臓がんの患者団体すら存在し得ない状況です。

話題を変えて、**********************

安保徹氏がまたまたおかしなことを言っているようです。「NATRONの日記」に書かれているのですが、「現代医療は、がん患者を助けられるのか?」の記事で、

ガンの末期になると、痛みが強くなります。WHOが痛みを取り除く方法などと言って、麻薬(モルヒネ)の使用を推奨しています。私は、それにも反対です。

だと。世界標準のモルヒネを否定するのですね。末期がん患者の苦しみを知っていっているのでしょうか。と思っていたら、

患者さんに「その痛みを死ね気で一週間我慢していてごらん。そうしたら、ガンは見事に消えるよ」と言うんです。

とか、好き勝手なことをいっています。痛みを我慢すればがんが消える? どこかで「転移はがんが治る兆候」とも言っていましたね。ここまで来れば馬鹿を通り越してあきれてしまいます。NATRONさんの「安保氏自身ががんになってみればよいのに」と共感します。

しかし、最近こう思うようになりました。安保氏が存在していることで、役に立つこともある。なぜなら、彼と対談したり、同じ講演に出席していたり、あるいは安保氏を講師として招いているような団体、書籍など、これらは一切信用するに値しないのだということが、内容を見なくても判断できるじゃないか。難しいことを考えなくてもよい。安保氏をどのように評価しているかで相手を判断できる。これは非常に便利なリトマス試験紙であり試薬です。

「安保徹関係者リスト」があれば便利でしょうね。

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2009年10月24日 (土)

中村祐輔教授の新著

がんペプチドワクチン療法

中村教授の新著『がんペプチドワクチン療法』が出版されている。10月6日が発 売だが、購入を躊躇しているうちに(価格が・・・)アマゾンでは在庫切れ・入荷待ちになっているようだ。

やはりそれだけワクチン療法ががん患者の期待を集めているということだろう。この本の帯は「どのようにはたらき、どのくらい効くのか? 臨床医とがん患者の疑問に答える」となっているので、ある程度専門的な内容だと思われる。値段からしてそんな感じだ。

毎日新聞の昨日の夕刊(23日付)でも中村教授へのインタビュー記事があった。中村教授がヒトゲノム研究を自分の仕事と決めたいきさつなどが語られている。

大阪大学医学部を卒業後、外科医として大阪府内の病院に勤め、がん患者たちと向き合うことになった。「若い女性でしたが、私の白衣の袖をつかんで、泣いて訴える患者さんもいました。誰もが病気の回復を願っていますが、やはり全員を助けられるわけではなかったんです」。無力感が中村医師を襲った。 こうしたがん患者との出会いがきっかけで、アメリカで5年間、人間の遺伝子暗号と言われるヒトゲノムの研究に没頭した。<中略>
食道がんや、膵臓(すいぞう)がんなどに対して、これまでに行われた臨床研究の結果は、被験者の4割でがんの進行が止まり、2割でがんが小さくなったとの こと。これは、既存の抗がん剤と同程度かそれ以上の効果であり、副作用も抗がん剤より圧倒的に軽い。現在は、より早期のがん患者でも臨床研究を続けてい る。

月曜日の「クローズアップ現代」のがんワクチンの放送予定もある。ワク チン療法への期待が高まっている。

これもがんワクチンに関する情報だが、FWshot00036DAが「企業向けガイダンス-がん治療用ワクチンのための臨床学的考察」(ドラフト版ガイダンス)を出している。和訳はこちら

がん値ようようワクチンは、従来とは異なる臨床試験方法を採用すべきだという内容。しかし養子免疫療法(NK細胞療法など)とは一線を画す必要もあるとの提言である。

2009年10月23日 (金)

がん難民コーディネーターとホメオパシー:似非治療に騙されない

『ガンに打ち勝つ患者学』という本をWshot200054以前に紹介したことがある。肺がんになり余命1ヶ月と告げられたグレッグ・アンダーソン氏が、末期癌にもかかわらず10年以上も生存している全米の15000人の人たちに会い、その中からガンに打ち勝つための共通点を書いた本。この本を翻訳したのが藤野邦夫氏だった。

藤野氏はこの本の翻訳を機会に、自らを「がん難民コーディネーター」と 称して、無償のボランティアとしてがん患者と医者との橋渡し役として活躍することになった。彼の活動は2009年1月22日の「報道ステーション」でも『見放された患者と共に闘う "がん難民コーディネーター"』のタイトルで放映された。

がん難民コーディネーター~かくして患者たちは生還した~ (小学館101新書)

この藤野氏は、『がん難民コーディネーター』と、最近に『ガンを恐れず- ガン難民にならない患者学』の2冊の本を出版している。これらの著作の内容は、基本的 には『ガンに打ち勝つ患者学』の延長線上にあるものだと言えよう。がんと闘うための基本戦略として、①伝統的な西洋医学を中心にした治療を受ける ②進行したがんに対しては西洋医学では限界があるので、統合医療も求める ③大切なのは自己免疫力を高めることであり、ライフスタイルによる「非特異的免疫療法」を維持する、と紹介している。「非特異的免疫療法」は彼の造語であり、NK細胞活性化免疫療法などの従来に免疫療法に対して、ライフスタイル改善により自己免疫力を高める療法を「非特異的免疫療法」と呼んでいる。

非特異的免疫療法として

  1. 定期的な運動をする
  2. 十分な水分を摂る
  3. 毎日ぬるめの風呂に20分から30分、のんびりとつかる
  4. からだを冷やさないようにする
  5. イメージ療法をする
  6. 医師の予想や検査データに一喜一憂しない
  7. どんな時間帯でも寝るようにする
  8. 食事を大切にする
  9. 強い抗がん効果がある加熱した野菜を摂る
  10. フルーツ・シード類・ナッツ類を摂る

を述べている。これらの彼の独創といったものではなく、いろいろな人がこれまで書いてきたことを彼なりにまとめたというだけのものである。藤野氏もそう書いている。当然だが、私が手術後に実行してきたがん攻略戦略とも多くの点で合致しているし、書かれていることの一つ一つは概ね合点がいく内容だ。(中には首をひねるようなものもあるが)

しかし、見逃せない点がある。それはホメオパシー療法を勧めている点だ。2点の著作にはホメオパシー療法をはっきりと勧めて書かれているわけではない。『がん難民コーディネーター』に帯津良一氏との対談で、帯津良一氏がホメオパシーで自分の患者を治療したということが述べられているだけである。

ホメオパシー療法は、すでにランセット論文などでもプラシーボ効果程度の効果しかないことがはっきりと示されて、決着済みの問題である。ようするに似非治療の最たるものがホメオパシー療法である。(こちらに詳細に紹介されている)2点の書籍の内容とは何の脈絡もなく、報道ステーションではホメオパシーが奇跡の治療法のようにナレーションされていた。単なる砂糖粒にすぎないレメディーを高価な治療費を取っているのは詐欺に等しいといわざるを得ない。

また、『ガンを恐れず-ガン難民にならない患者学』では、最後の「あとがき」に突然「協和のアガリクス茸仙生露」や第一酵母という会社の「コーボンマーベル」等の健康補助食品を、免疫力を上げる食品として積極的に勧めている。「これらは僕とは利害関係はありません」とは書いてあるだが、これが効果があるという根拠も、治ったという症例も一切説明抜きで、本の内容ともちぐはぐに書いてあるから驚いてしまう。

協和のアガリクス・・・は、「この製品は2003年に、NCI(アメリカ国立癌研究所)で、日本の健康食品素材として始めてガン予防剤開発研究に採択され、前臨床試験の結果、肺がん、大腸がん、乳がんに対する予防効果が認められています。」と書いてあるが、そのような事実がないことがいくつかのブログでも紹介されている。20億円の研究費が付いたということだが、

アガリクス茸については、ある大企業が、ある大学教授と組んで、米国の国立がん研究所(NCI)から20億円も研究予算を取った、ということが、センセーショナルに健康産業関係のニュースで流れたことがあります。

 米国は、あくまで自らの国益にかなうことに対して、予算を出すのが建前ですから、米国事情にくわしい私は、ややおかしいな、と思いました。

 そこで、ワシントンDCを訪問した折に、以前より親しくしている米国国立がん研究所でがん相補・代替医療研究調査局の局長をたずねて、事実かどうか、真偽を、直接、あちらのVIPにたずねてみました。

 「20億円もの予算が出たのなら、まっさきに、そういう情報は私のところに来るはずだけど、聞いたことないな。また、米国では、アガリクス茸については、あまり関心をもたれていないのが実情だ。臨床試験に関してなら、必ずこちらに情報が入る。どうも、このプログラムは、予防に関してのものらしいが、それなら、アガリクス茸のがんについての効果についての研究にならないし。20億円もの予算が予防の研究で獲得できるとは思えないな。」

 局長は、はっきり、こういったのでした。それなら、あの日本の健康食品業界のフィーバーは、一体、なんなの?といった感じです。

私が少し調べただけでもこのような記事が出てくる。まして藤野氏は翻訳家であり、英文の検索などお手の物のはず、NCIの該当する論文なり、研究結果なりを載せて説明するべきであろう。

ハーネマンがホメオパシー療法など自身の主張をまとめた著作『オルガノン』が出版したのが1810年である。この時代の西洋医学は、病気を治す医学にはほど遠い状態であり、瀉血が唯一の治療法といってもよい状態であった。消毒という概念すらないのである。消毒の概念は、ハンガリー人の医師であるゼンメルワイスが1847年に始めて提唱している。一方我が日本では、すでに戦国時代のころには焼酎で傷口を洗うという知恵を持っていたのだ。経験知識としてアルコール消毒をしていたのである。当時の日本の方がよほど進んでいたのだ。こんな時代のヨーロッパのホメオパシーを、21世紀の日本でありがたく高い金を出している患者が哀れでもあり、滑稽でもある。

看護覚え書―看護であること・看護でないこと

ホメオパシーにはこんな逸話がある。ナイチンゲールの書いた『看護覚え書―看護であること・看護でないこと』にあるホメオパシーの薬についてだ。当時の一般大衆の医療知識について、

男性たちはよく、これら健康に関する法則を女性に教えることは賢明ではない、なぜなら彼女たちは自分勝手に薬を使うようになるからであり、そうでなくても現に見かける素人療法には目にあまるものがあるではないか―これは事実である―と主張する。ある有名な医師の話によると、医師の処方としては経験上考えられもしないほどの多量の甘汞が、急病時に、また常備薬として、母親や女家庭教師あるいは看護婦などの手で、子供たちに与えられているということである。また別の医師によれば、そのような女性が身につけている薬の知識といえば甘汞と緩下剤だけである、という。

つまり、素人判断で大量の薬を大人子供の区別もなく与えたり、ロンドンから取り寄せた薬の効用や副作用もろくに知らないのに、善意のつもりで貧しい人々に施したりする”立派なご婦人”がたくさんいたという。
(現在だって、●●が私のガンに効いたから、あなたも飲んでみたら、と勧める御仁はいますね。これを「善意の謀略」といいます。ナイチンゲールの時代並みの知識しか持ち合わせない方がたくさんいるということですが)

で、ナイチンゲールは皮肉っぽく次のように書いている。

ホメオパチー療法は素人女性の素人療法に根本的な改善をもたらした。というのは、その用薬法はまことに良く出来ており、かつその投薬には比較的害が少ないからである。その「丸薬」は、どうしても善行を施して満足したい人たちが必要とする一粒の愚行なのであろう。というわけで、どうしても他人に薬を与えたいという女性には、ホメオパチーの薬を与えさせるとよい。さしたる害とはならないであろう。

毒にも薬にもならないものだから、素人に与えても安心だというわけである。帯津良一先生や藤野邦夫氏よりもナイチンゲールの方がよほど科学的な考え方をしているということだ。

もちろん、藤野氏も活動を善意で始めたことには違いないと思う。ある強烈な経験=自分の癌が治ったという経験が、善意から、多くの人にもこのことを知らせたい、と考えることはよくあることに違いない。がんの患者学研究所の川竹氏もそうした一人だろう。しかし、善意も、組織を作って運営をしていくうちに変わってくる。善意だけでは組織と運動は維持できない。そしていつの間にか、最初の目的とはなんだか違うようになってくることもよくある話しだ。

「がん患者のあきらめない診察室」の「臨床医のひとり言」では、藤野氏に公開討論を申し込んだり、批判の文章がアップされている。こちらも一読の価値有り。

今朝の食卓にレンコンが出てきた。「テレビで新型インフルエンザに蓮根が効くといっていたわ」と妻が言う。別にそうだから出したわけではなく、我が家では朝によく出されるというだけのことだが、蓮根が八百屋で品切れ状態だったそうだ。ホメオパシーが新型インフルエンザに効くというニュースか番組かもあるらしい。私は知らないが。

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2009年10月22日 (木)

「クローズアップ現代」 がんワクチンの番組

10月26日(月)のNHK「クローズアップ現代」で『実用化近づく がWshot200055んワクチン(仮題)』の放送があるようです。

必見です。

国谷Wshot200056 キャスターがどのような取材をするか、楽しみです。
パンキャンジャパンのウェブでは『膵がん患者の声』とタイトルが書かれていますが、放送まではタイトルは未定ということでしょう。

たぶん、パンキャンにも取材に行ったし、膵がんで良い治療成績があったからということかもしれませんね。

2009年10月15日 (木)

こんなスイッチがあれば・・・

連日CDをパソコンに取り込んで保存している。別に死んだあとの処置を考えているわけでもない。まぁ、ハードディスクに保存してあれば、デリートキー一発で全て削除できるから、死んだ後には形のあるものを残したくはないという私には好都合かもしれない。その伝でいえば、この生身の体も簡単に処理できるといいのだが、癌で死ぬときにはそうもいかないらしい。やはり相当の期間苦しんでから逝ってしまうようだ。そのあとにはやっかいな葬儀が待っている。とは言っても死んだ本人にはまったく影響がないから、好きなようにしてくれればよい。できるなら、他人は一切呼ばず、身内だけの簡単な葬儀がよい。遺体は海にでも撒いてくれればよいが、これもいろいろと条例やらがあって面倒らしい。癌で死ぬのも一苦労だ。

今すぐに余命がどうのという状況ではないが、相手は名にし負う膵臓がんだから、今でも体内でエイリアンが活動しているに違いないと考えておく方が、変な希望を持つよりは間違いのないことだろう。そういえばこの頃少し疲れ気味だなと考えだすと、もしかして再発の兆候かとか、いらぬ心配の種が生じてくる。玄米菜食にも少し飽きてきたから、時々は肉を食ってみるが、罪悪感が残って旨くはない。どうせ俺の体だから、好きにさせてほしいのだが、何かを止めるとこれまでの経過が良かっただけに、万一悪化したときに「それ見たことか」とならないとも限らないから、方向転換するのも躊躇する。パソコンでCtrl + Alt + Delete キーを同時に押せシャットダウンする、こんな感じで、頭のツボと丹田と足のツボを同時に押せば、命が尽きて火葬が終わり、ついでにお経まで流れてくれる、こんな便利なキーは付いて・・・いないだろうなぁ。

「癌にならないための生活」に身も心も捧げる。こんな人生を送るつもりはないから、好きなことをやっている。毎日の晩酌は欠かしたことがない。疲れたら、昼間でも会社で寝る。夜は音楽を聴いたり、本を読んだり。テレビはばかばかしくて見る気にもならないからいいのだが、こんなわがままに日々を送っていると、月日の経つのがあっという間で、もう秋になってしまった。今年の紅葉はどこへ行こうか? 来年また紅葉を観られるという確証はないのだから、どこかに行きたいが、そうなると行きたいところがたくさんあって、全部に義理を果たそうとしたら、余命の間には周りきれそうもない。選ぶのも一苦労だ。

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2009年10月12日 (月)

三連休に三昧

この三連休は音楽三昧だった。「三昧」というのは「悟り」と関係がある言葉だそうだ。ヒンドゥー教で『瞑想』が深まり、精神集中の深まった状態が本来の意味、これを拡大解釈して「読書三昧」とか「贅沢三昧」(悟りにはほど遠い)とか使う場合が多い。

日がな一日音楽を聴いて、果たして「悟った」境地になるのかどうか、自信はないが、充実した時間だったことには違いない。

CDの置き場所に困ってきたので、これを全てネットワークディスクに入れて、LANでつないだパソコンから、どこからでもCDを再生しようというもくろみ。10年ほど前の古いノートブックが廃棄寸前で埃をかぶっていたので(起動やアクセスが遅くてWordやExcelを使うには役者不足、いや役立たず)、ほとんどのアプリを削除して身軽にしてやった。これでずいぶんと快適に起動するようになった。このノートPCを音楽再生専用にする。

CDのデータはApple Lossressで変換してあったが、どうも音に満足できない。で、同じ可逆圧縮であるFlacを試してみることにした。リッピングソフトはExact Audio Copy(EAC)を使い、CDの曲データはPlayerからCDDBを取得してEACに転送する。EACは高機能なリッピングソフトだが、取り込みにはiTunesよりも数倍の時間がかかる。一枚のCDをリッピングするのに20~30分といったところか。

Flacの再生にはfoobar2000を使ってみた。格段に音がいい。音の輪郭がより緻密で音場の広がりも自然で部屋全体に広がっている感じがする。例えていえば、200dpiのデジタル写真を見ていたのが、300dpiに解像度を上げたら、写真の雰囲気が変わる、そんなイメージとでも言えばよいだろうか。まぁ、分かる人にしか分からない。同じ可逆圧縮でもリッピングの善し悪しでこんなにも違うのかと驚いた。高橋真梨子の「オトコゴコロ」にある「勝手にしやがれ。舞台の真ん中に彼女がたっている姿が見えるようにリアルだし、パーカッションが狭い部屋を飛び出して、もっと右手から聞こえてくる。「風の谷のナウシカ」で藤原真理が弾くチェロは、峡谷を吹き渡ってくる風のようだ。目を閉じて聞けば、机上においたJupity301の、わずか5センチのフルレンジスピーカーから出ている音とは想像もできまい。

音楽も写真も同じことで、72dpiの解像度でディスプレイで見ておれば満足する人もいれば、350dpiでA3サイズに大きく印刷して見なければ納得しない人もいるようなものだろう。ただ、よいデータを記録できてもスピーカーはアナログだ。デジタルだからいい音が出ると勘違いしている向きもあるが、最後の出口はアナログ。DA変換に少し高価なものを使うことと、よいスピーカーだろう。昔のように数百万円する高級アンプは必要ない。できればYoshii9で聞きたいのだが、Jupity301でも音場の広がり方は十分に堪能できる。

CDに記録されている音楽データは相当の精密さで書き込まれているが、CDプレーヤーはリアルタイムでDA変換しなければならないから、完全に読み取るというわけにはならない。バッファがあるとはいえ、読み取りエラーを完全に修正することも難しいはずだ。この点PCなら、好きなだけ時間をかけて、完全なデータを読み取ることができる。

foobar2000とEACの組み合わせではReplay Gain(音量正規化)がリッピングと同時に設定できることもありがたい。CDによって録音された音量が違うし、CD中の曲によっても最大音量が異なって いる。頻繁にボリュームを調整しなくてはならず、これではゆったりと音楽に浸って三昧=悟りを開くということは難しい。

こうして500Gのハードディスクに200枚ほどのCDを入れたが、まだ20%ほどしか領域を使っていない。1000枚は余裕で格納できそうだが、持っているCDは500枚程度だから、これから毎月5枚ほど購入したとしても10年は大丈夫だ。CDの保存先は大丈夫だが、私の寿命の方が先に「大丈夫でなくなる」に違いない。そのときはそのとき、ドライブを買い足すか、葬儀の準備をするか、好きなようにしてくれればよい。と、「「悟った」ということは、「三昧」に至ったということかもしれん。

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2009年10月 5日 (月)

がんと心、サイコオンコロジー

「ストレスとガンとは関係がない。ポジティブシンキングは誤解されている。」
これは『がんと心』で、対談者の精神腫瘍医・内富庸介先生が言われている言葉です。

とくに初期のサイコオンコロジーの研究は五五人の患者さんを前向きな人、そうでない方に分けて一〇年間追跡して、前向きな人は長生きできたというデータがセンセーショナルに報道され、そしてもろ手をあげて受け入れられた。専門的にはパブリケーションバイアスといいまして、いいデータだけ結果的に、世に出ていたのですね。そういったことが重なって患者さんの背中を過度に叩いて、家族もスタッフもがんばれがんばれと応援したのです。現場の看護師さん、ドクター、家族はがんばれ、がんばれといっていればいいんだと。それが医療者の役割を果たしているということだったのです。が、最近それが立て続けに否定されて、転じて皆さん罪の意識を感じているわけです。とくに医療の現場は。

特別の性格、特別のストレスががんを直接引き起こすことはない。ネクラな人はネクラにやっていく方がいいだろうし、明るい人は明るくした方がいいだろうということだと思います。

精神腫瘍学は、①がんが心に及ぼす影響、②心ががんに与える影 響 を研究する学問だということです。が、この本では②に関する対談は多くなくて、ほとんどが①のがん患者の心の問題について対談しているようです。

精神腫瘍学、精神免疫学、精神神経免疫学と似たような言葉があり、私には違いがよく分からないのですが、どうも「免疫」という言葉が含まれていると、心ががんに与える影響を肯定的にこらえている場合が多いように感じます。例えば『こころと体の対話』神庭重信著などその例でしょうか。ワイルやサイモントンの著作を持ち出すまでもなく、こころががんの発生と治療に関して大きな役割を果たす可能性があるということを、信じてきたので、内富医師の「最近それがたて続けに否定されて」という根拠が知りたいのですが、この本には根拠となるものは紹介されていません。

このような問題を、誰の目にも明らかなように統計的に証明することは非常に難しいことだということは想像できます。「こころの有り様」という数値化することが困難なものを対象にしているのですから、実験の結果が二転三転することは大いにあり得ることです。

しかし、がん患者の立場としては次のように考えておけばよいのでしょう。

がんの”種子”を作り出す精神的要因が特定されたことはない。しかし、心理的なストレスはがんが成長するのに好ましい土壌に大きな影響を与えているだろう。少なくともがん細胞の成長を促す可能性があることは示されているのである。がんの要因は多種多様であり、人それぞれによっても違っているだろう。

心ががんを作り出すかどうかは、議論の余地があることだとしても、私たちはがんと診断されたとき、自分の生き方を転換するという選択肢を選ぶことができる。これを選ぶか選ばないかは当人の意志によるとしても、そうした方が回復の可能性が高いのであるなら、やってみても失うものはないでしょう。

対談者の岸本葉子氏も、「がんになるのに心は関係ない。でもなってからは関係あるといいたい」と述べています。この対談集は、死に対する考え方、受け止め方など共感する部分が多いです。

死を通過点、別の命への結節点としてとらえるのではなく、そこから先は一切が途絶える断崖絶壁としての死を措定してこそ、「生」という問題が人間にとって、この上ない集中度と緊張を持って成立する。

死後の世界を信じることができる人は幸せなのかもしれません。しかし、私はどうしても死後の世界というものを信じることができません。同じような悩みを抱えたがん患者がどのような心境にいたったのか、教えられることが多かったように思います。

苦悩をじゅうぶんに苦悩し得るための、健康的な自我を取り戻す

これは非常に精神的に強い生き方ですね。悩み抜くことが人間らしい生き方だというのです。動物は、苦痛を感じても苦悩を感じることはありません。

私としては心ががんに与える影響という点に引かれてこの本を買ったので、期待はずれでしたが、しかしそれ以上に得るものの多い対談集だということができます。何度も読み返したい本には違いありません。

がんと心 (文春文庫) がんと心 (文春文庫)
岸本 葉子 内富 庸介

がんから始まる (文春文庫) がんから5年―「ほどほど」がだいじ 四十でがんになってから (文春文庫) ちょっとだけ凹んでいるあなたへ―希望の言葉を贈りあおう がんとこころのケア (NHKブックス)

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