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2009年11月

2009年11月30日 (月)

新型インフルエンザワクチン

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土日は箱根で一泊の同窓会。高校時代の吹奏楽部で関東周辺に住んでいる方たちだけの集まりで、9名が集まった。 卒業以来初めて会う方がほとんどで、顔も名前もうろ覚えだが、名前を言われれば何となく面影が残っていると感じる。千円渋滞を嫌って早朝に出発した。奥湯河原が今紅葉の盛りだという情報に、ナビをそこにセットする。しかし、よい紅葉には出会えなかった。今年の紅葉はいまいちか。

薬をもらっている医院がこのところ結構込んでいる。新型インフルエンザの影響なのかもしれないと、先生に訊いたが、「これまで新型の患者は3名だけですね。季節性のインフルエンザの方が多い」とのこと。子供のワクチン接種に夫婦できている方がいる。新聞報道で子供の重篤化、死亡例が報道されたら、必死になってワクチンを打とうとする気はわかる。しかし、ワクチンを接種しても感染しないというわけではなく、重篤化に至らないかもしれないという程度だという。

私はワクチンを接種するつもりはない。がん患者に優先的に接種してくれるのかどうか知らないが、60歳以上は感染する可能性はごく小さいし、効果があるかどうかも不明なものに頼る気もない。高齢者で高血圧などの基礎疾患を持っていると、インフルエンザに羅漢した場合に重篤化する可能性が高いという。一方で、ワクチン接種との関連は不明だが、21の死亡例では、70歳以上で気管支ぜんそくや高血圧などの基礎疾患を持っている方が9割だという。つまり、高齢者で基礎疾患を持っていればインフルエンザに罹患したら重篤化するかもしれないし、ワクチン接種の副作用でも死ぬかもしれない。どちらの危険性が高いのかは所詮わからないままだろう。

そもそも体力のない人にワクチンを接種したって抗体がたくさんできて免疫力が高くなるわけではない。抗体をたくさん作るにも体力が必要なのだ。体力のない人に不活性化しているとはいえ、ウィルスを入れるなんて馬鹿げたことだ。免疫学が教えるところによれば、自然免疫系がまず働いて、それから獲得免疫系が動き出す。これが免疫学の基礎である。自然免疫(=体力)がないのにワクチンを打ったからといって獲得免疫が能率よく働き出すはずがない。

どうも日本人は何かというと薬に頼りたがる。『早めのパブロン』などという製薬会社のコマーシャルのその一因だろう。ワクチンの場合も、これを「打っておけば安心」という大いなる誤解がある。付和雷同的国民性もある。電車内でマスクをせずにくしゃみでもしようものなら周囲の非難がましい視線を覚悟せねばならない。お節介にも厚生労働者のインフルエンザ対策などという文書が業界団体を通じて送られてくる。うがいをしましょう、手を洗いましょう。マスクをしましょう。マスクやうがいがインフルエンザに有効だという証拠も説明もない。ま、成田空港で宇宙服まがいの検疫体制を敷いて世界中の笑いものになった厚生労働省の役人に、科学的裏付けを期待する方が愚かかもしれない。彼らが「右」と言ったら、眉につばをつけて「左」を向いた方が間違はない可能性が高い。

現役の厚生労働省医系技官である木村盛世氏がご自身のブログでこう書いている。

『いつの間にか「新型インフルエンザワクチンを打つと罹らない」とか「ワクチンで重症化が防げる」といった世論が形成されてしまった。・・・ワクチンの効果はその判断がなかなか難しいものである。』と。しかし、『現状のような新型インフルエンザパニック状態では国民に安心を与えるという意義は大きいということである。もし仮に用意したワクチンが無駄になったとしても、国民のパニックを防ぐことは危機管理の初歩である。』

つまり、効くか効かないかはやってみなければわからないが、危機管理の観点からやっているのだということだ。厚生労働省が「ワクチンなどは無駄だから止めましょう」とは言えないよな。そんなことをしたらインフルエンザで死亡した遺族からは訴訟の嵐が来る。それよりは、効かないかもしれません、副作用で死ぬ方が●%です、と言ってワクチンをやった方が責任問題にならない。

抗がん剤の標準治療でも同じことが言える。標準治療では抗がん剤の効果として生存期間が数ヶ月延長されるというだけのエビデンスが多い。副作用でQOLが下がる(この表現は控えめだ。実際は副作用に耐えながらやっと生きているだけ)ことは勘定に入っていない。統計的に見れば一部の人にわずかな効果があるだけである。効果がなく副作用だけを受けるという人もいる。しかし、エビデンスがあるというだけで標準治療さえやっていれば医者も病院も医療訴訟を巻き込まれる恐れはない。患者に安心して勧めることができる。

インフルエンザに罹ったかなと思ったら仕事を休んで、ゆっくり寝る。おいしいものを食べて体力をつけておく。これに勝る予防法はあるまい。
「早めのパブロン」ならぬ、「早めの休職、早めの就寝、美食」ということだ。

2009年11月27日 (金)

一粒の種

一粒の種
一粒の種 中島正人 砂川恵理歌

よしもとアール・アンド・シー  2009-02-18
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おすすめ平均  star
star語りかけるような歌詞が響きます
star泣けるというより、優しくなれる歌
starNHKを見て感動しました。

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砂川恵理さんの『一粒の種』が静かなヒットだそうだ。

末期がん患者が残した最期の言葉を看護師が詩にまとめ、沖縄のミュージシャンが曲をつけた。題は「一粒の種」。「人間は死ぬ力を持っている。誰でも」とは、先日のNHKスペシャル「思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む」で立花隆が言った言葉。城山三郎は「どうせ、あちらへは手ぶらで行く」と書いた。こちらに残せるものは何か、一粒の種でもいいじゃないか。「千の風になって」とどこか似ている印象の歌詞だ。

沖縄県出身の看護師、高橋尚子さんが勤務先の神奈川県の大学病院で、中島正人さん(当時46歳)の担当になった。前立腺がんの再発による2度目の入院。がんは全身に転移し、余命3カ月の宣告を受けていた。

中島さんは「手のかからない患者」だった。体の痛みや不安を訴えることもなく、いつも冷静で穏やかに笑っていた。看護師の誕生日に花を贈り、体の不自由な他の患者たちには親身になって面倒を見た。80代の両親との3人家族。親の体を気遣って見舞いも断り、独りで死と向き合っているように見えた。

 「中島さんも苦しいはずなのに」。高橋さんは不思議な思いで見守っていた。
 「余命」を過ぎた04年1月、検温のため病室のドアを開けると、中島さんが震える体を点滴台で支え、取り乱した様子で立ち尽くしていた。
 「死にたくない」。そう叫びながら、大粒の涙を流す中島さんを、高橋さんはベッドに座らせ、背中をさすった。本当の姿を見たと思った。
 「一粒の種になりたい」「一粒の種でいいから生きていたい」。中島さんはうわ言のように、何度も繰り返した。その夜、危篤状態になり、3日後に息を引き取った。
    *
 数日後、高橋さんは中島さんの「遺言」を1編の詩にまとめた。
 <ちっちゃくていいから/一粒の種になりたい>
 高橋さん自身もがんの疑いで手術をしたことがあった。「夫と子どもたちを残しては死ねない。体を何百回切り刻まれても生きたい」と願ったあの時の自分と、中島さんの言葉が重なった。「命と引きかえに中島さんが残した魂の言葉を、多くの人に伝えたい。言葉の種を、私が代わりにまこう」。そんな思いで書いた詩だった。
 中島さんの母親は息子を失った心労が持病の高血圧と重なり、脳梗塞(こうそく)で倒れ、言葉を話せなくなった。「この詩を歌にして、聴いてもらいたい」と思った高橋さんは、同じ沖縄・宮古島出身で知人のシンガー・ソングライター、下地(しもじ)勇さん(40)に作曲を頼んだ。
 下地さんは悩んだ。「無念の思いが詰まっていて、死を実感した人にしか書けない詩。自分に曲がつけられるのか」。いったんは断ったが、その後、父のように慕っていた叔父が急死。自らも死と向き合うことになった。
 高橋さんの詩を歌いやすい歌詞に変え、曲を付けた。そして「いつかまた必ず会える」との思いを込めた言葉を書き加えた。
 <命の種に必ずなるから/すぐそばにいるから>
 06年夏、下地さんがギターで弾き語りした試聴CDが高橋さんに届いた。最初の依頼から1年。歌を聴いた高橋さんは「あらゆる気持ちを包み込む、優しい歌」と感じた。早速、中島さんの父親に曲を送り、病床の母親にも聴いてもらった。
 「誰が歌っているの」。寝たきりになって約2年。この時、母親は初めて言葉を発したという。
    *
 下地さんにはこの歌を歌ってほしい人がいた。同郷で友人の歌手、砂川恵理歌さん(32)だ。
 歌手になるために上京した砂川さんは、夢をかなえる厳しさを知り、9年前に帰郷。高齢者施設の介護職員として働き、多くのお年寄りを看取(みと)ってきた。下地さんから声をかけられたのは、大好きないとこを白血病で亡くした直後だった。曲を聴き「私が歌いたい」との思いがこみあげた。
 約1年間はライブなどで披露した。シンプルでゆったりしたギター演奏に乗せて、砂川さんは語りかけるように、ひとつひとつの歌詞を歌う。「聴かせたい人がいる」「家でも聴きたい」。そんな声に後押しされ、今年2月にCD化。全国の学校や福祉施設、病院などで「一粒の種」を歌うチャリティーコンサート「スマイル・シード(種)・プロジェクト」も始めた。山形県から沖縄県まで115カ所に招かれ、約1万2200人が聴き入った。
 病院の個室で歌ったこともある。ある女性から「がんで余命3カ月の母のために歌って」という手紙が届いた。家族と主治医だけがいる個室で、砂川さんはラジカセの伴奏に合わせて歌った。「最後まであきらめず頑張るね」。母親は笑顔で砂川さんの手を握った。(ガン完全克服マニュアルより引用)

歌を聴けば涙腺がゆるむんですよ。でもね。何か違うんだよなぁ。何が、と明確に言えないけれど。死んだあともあなたを見守っているよというわけでしょ。死んだら何にも残りはしない。魂なんぞ信じることはできない。だから、私の死に方は、生きている間は生きるということ。例えがんで死んでも、それががんを克服するということ。人は生きて、死ぬ。当たり前のことが当たり目に生起する、ただそれだけのこと。お涙ちょうだいは要らない。アジアは『生きたい、生きたい』と考え、欧米は『死にたくない、死にたくない』と言う、とは堀田善衛だったか。日本はアジアから欧米型になったようだ。

砂川恵理オフィシャルブログ

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2009年11月22日 (日)

「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(4)

がんペプチドワクチン療法への疑問

がんペプチドワクチン療法

第4の治療法になるかと期待がふくらんでいるがんペプチドワクチン療法であるが 、素人の患者が思いつくままに疑問点を挙げてみたい。

「がんペプチドワクチン療法」と、遺伝子工学を駆使した新しい夢の治療法であるかのように報道されているが、本質的には、これまで世界中で研究されてきたが標準治療として採用されることもなかった樹状細胞療法の一種である。それでは何が新しいのか。

セレンクリニックなどが行なっている樹状細胞療法は、体外で樹状細胞(実際は単球等の前駆細胞から生育させた樹状細胞)に患者のがん組織から抽出したがん抗原を取り込ませたあとで体内に戻し、リンパ球にがんの情報を与えて教育する。そのリンパ球が体内を循環してがん細胞を見つけて殺す。対してがんペプチドワクチン療法では、合成したペプチドを皮下注射し、皮下組織あるいは表皮組織にある樹状細胞に取り込ませて、この樹状細胞がリンパ節に移動してリンパ球を教育して細胞障害性T細胞(CTL)とし、がん細胞をやっつけるんだ、ということになっている。また、遺伝子工学を駆使して、がん細胞の目印となるペプチドを人工的に合成することも違いのひとつだ。

中村祐輔『がんペプチドワクチン療法』の臨床編にある膵がんの臨床試験結果、生存率曲線を下に示す。(和歌山県立医大の膵がん臨床試験は、がん細胞を標的としたものではなく、がん細胞が栄養補給のために自ら作る新生血管の腫瘍新生血管増殖因子を標的としたものだが)

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和歌山県立医大の臨床試験対象患者のステージは書かれていないが、切除不能膵がんということからステージⅣa、Ⅳbであろうと思われる。比較の対象として、日本膵臓学会の学会誌「膵癌 Vol22.1」に「膵癌登録報告2007」がある。その中の切除不能膵癌患者(ステージⅣa、Ⅳb)の生存率曲線を下に示した。

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これを見ると、2001~2004年の1020症例においてMST(生存期間中央値)は7.8ヶ月であり、両者のMSTは同じである。3年生存率は3.2%となっている。2001年にジェムザールが膵がんの抗がん剤として保険適用承認されたが、それ以前とは明らかに生存率が違っている。

この二つのグラフを重ねたものが次のグラフである。

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18症例のデータと1020症例のデータを同じ土俵で比較すべきではないが、一定の傾向は読み取れると思う。

  • がんペプチドワクチンの方が生存率はよいように見えるが、違いはあってもわずかである
  • 治療開始初期は生存率が高くなっているが、臨床試験であることを考慮すれば当然である。臨床試験の対象となる用件として「3ヶ月以上の生存が期待できること」を要求されるのが通常である。つまり、条件の良い患者を選んでいるということ。
  • 一方で、ペプチドの投与量が0.5mg、1.0mg、2.0mgと異なる患者のデータである。全員の投与量が2.0mgであれば、これよりもよい結果となることも期待できる
  • MSTは7.7と7.8ヶ月であり、差はない。(前治療歴がなければペプチドの方が8.7ヶ月というが、それにしてもわずかである)書籍では「ジェムザール単独によるMSTは6ヶ月前後であり」とあるが、その根拠が不明である。
  • 24ヶ月で22%の生存率は、たった一人の硲さんが生きていたからであるが、今年の8月に亡くなっている。つまり、3年目で生存率ゼロということ
  • 1020例では3年生存率3.2%、ペプチド群は0.0% MSTのわずかの差をいうよりも、こちらの差の方が大きい
  • がんペプチドワクチンは副作用がないからQOLが維持できるという。しかし臨床試験はジェムザールとの併用試験であり、ジェムザールの副作用はあったはずである。これだって決して軽い副作用とは思えなかった。
  • がん細胞ではなく新生血管の阻害を対象とした試験でこの程度の成績である。他のがんで、がん細胞を相手にした試験成績はもっと悪いだろうと予測できる

これでは”夢のワクチン”と言うには早すぎる。ジェムザールが効かなくなり、「もう治療法はありません」と言われたときの次の選択肢という程度ではないだろうか。
(がんペプチドワクチンは、効果が現われるまで半年ほどの期間が必要である。「もう選択肢はありません。あとはホスピスですね」と言われてから、慌てて打っても間に合わないかもしれない)

●その他の疑問点

  1. オンコアンチゲンと名付けたがん特異的な抗原はほんとうにあるのか。あるとすればどうしてこの程度の成績なのか。
  2. 樹状細胞はウィルスなどの侵入時には、リンパ球を教育して退治するという役割をするが、がん細胞に対してもその仕組みが有効だとは認められていない。
  3. がんがあるから治療するのである。つまり、患者の体内には「がん抗原」はたくさんあるはずである。がんの目印はたくさんあっても、強力な免疫抑制状態になっているからがんを攻撃することにならないのではないか。
  4. T細胞がCTL化するのに樹状細胞は必要ないのではないか。がん細胞とT細胞を一緒にしておけば、樹状細胞があってもなくても時間をかければCTLが誘導される。つまり、抗原を提示することががん細胞を殺すことに必須ではないのではないか。
  5. CTLが誘導されたというが、in vitro での観察である。インターフェロンγ産制があったからCTLが誘導されたと結論しているだけである。患者の体内のがん組織にCTLが群がっていたという解剖結果はあるのか。
  6. CTLが誘導できたから長く生存できたと単純に言えるのか。CTLが誘導できるほど患者に免疫力があったから長く生存したのではないのか。関連性がある=因果関係がある、とは言えまい。
  7. 樹状細胞はほんとうにペプチドを取り込むのか。取り込みが悪いから欧米では電磁パルスで樹状細胞の表面に穴を開けて注入するようなことまでやっている。それほどペプチドの取り込みの悪い樹状細胞に皮下注射しただけでペプチドが取り込まれるとは思えない。
  8. 10人分のペプチドを投与するから「多勢に無勢」は解決できると言うが、樹状細胞はそんなに多くない。Tリンパ球が直接ペプチドを認識するのではない。樹状細胞を経由するのである。樹状細胞が受け取りきれないほどのペプチドを投与しても「多勢の無勢」を解消できるはずもなかろう。
  9. 皮下注射で大量のペプチドを体内に入れてもムダになっているのではないか。
  10. 強力なCTLを誘導するためには自然免疫系が元気でなくてはならない。ジェムザールとの平行投与は、患者の免疫力を低下させ、がんペプチドワクチンの効果を著しく減少させているのではないか。

もちろん、がんペプチドワクチン療法はまだ第Ⅰ相臨床試験の段階だ。結論を出すには早過ぎよう。仮に今のジェムザール程度の効果しかないとしても、耐性ができてジェムザールが効かなくなったときの次の選択肢ができるということだけでも存在理由がある。
今進行しているPEGASUS-PCの試験結果を待ってから結論を出しても遅くはない。

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2009年11月21日 (土)

リーマン予想 『魔性の難問』

「ガンペプチドワクチン療法」について続けて書いているが、ここでちょっと寄り道をして「リーマン予想」について。

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先日NHKスペシャルで放映された『魔性の難問 ~リーマン予想・天才たちの闘い』が興味深かった。

リーマン予想とは何だ? とてつもない数学上の難問らしい。素数が関係しているらしい。こんな疑問にわかりやすく答えてくれる。

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リーマン予想とは、数学的に表現すれば『ゼータ関数の自明でないゼロ点は、全て一直線上(x=1/2+i*t)にあるはずだ』となる。これでは?? 何のことかよく分からない。数学上の未解決問題のひとつであり、クレイ数学研究所はミレニアム懸賞問題の一つとして、リーマン予想の解決者に対して100万ドルの懸賞金を支払うことを約束している。これまで何人もの天才数学者たちが挑戦し、中には精神を患った者も出るような超難問である。

※X=1/2+i*t の i は虚数単位、つまり2乗して-1 になる数。

素数の配列には何かの規則性があるはずだと考えていた数学者オイラーは、次のような式を考えた。そして、この素数だけの式の値がある数に収束することを証明した。

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あらゆる整数は一意的な素数の積として表わすことができるので、次のように変換することができる。

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素数という、一見ランダムに出現するかに見える数を無限にかけていくと、完全な図形である円を表わす円周率が出現するのである。素数という単純な数が、ま だ我々には理解できない宇宙やこの時空を構成している基本的な法則と何らかの関係があるのではないかと想像され、ドキドキするではないか。整数や素数の級数を眺めていても円周率が出てくるような気配はまったく感じられないよね。しかし、突然πがでてくる。これには発見したオイラー自身も感動したそうだ。一 見ランダムに出現している素数に、何らかの規則性がありそうだということ。それが円周率と関係しているらしい。

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1世紀後、リーマンはオイラーのこの式を拡張して(2をXに置き換えて)ゼータ関数を定義します。

リーマンのゼータ関数は、

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で定義される。実際はXは複素数まで拡張されているが、X=2のとき、(これがオイラーの式ですが)

 

ここでpは素数の全体(無限個ある)である。(Σは和を、Πは積を表わす記号である)

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となる。整数の和が素数の積に変換されていることに注意。先に書いたように、この関数がある値に収束することを発見したのがオイラーである。X=2では、

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さて、リーマンはこの館数の値が最も小さくなる「ゼロ点」がどのようになるかを考えた。4つのゼロ点を計算してみると、ランダムに並ぶだろうという予想に反して、一直線上に並んだのである。

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手計算でやったのだからすごいです。

この計算、カシオ計算機の高精度計算サイト「keisan」でWshot00048計算することができる。試してみませんか?

ゼータ関数  ゼータ関数の自明でないゼロ点

X=2を入力すると、ζ(2)=1.6449340....... となる。π^2/6を計算すると確かにあっている。

さて、手計算で4個のゼロ点を計算したリーマンは、その点が一直線上にあるらしいということに気づく。で、多分他の全ての点も一直線上にあるはずだ!・・・これがリーマン予想というわけだ。

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もしも、ゼロ点が一直線上に並ぶなら、素数に何らかの規則性が存在するということが証明できることになるからだ。つまり、「素数の並びに意味はあるか?」という命題が「全てのゼロ点は一直線上にあるか?」という命題に置き換えることができる。これを証明すれば、素数に規則性があるということを証明したことになる、というわけだ。

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このリーマン予想の証明に取り組んだのが、映画『ビューティフル・マインド』にもなったジョン・ナッシュ博士である。しかし、この証明との格闘の結果、総合失調症になる。「ゼロ点は相対性理論の時空の特異点と一致する」と説明する場面で、総合失調症が発病し、講演はしどろもどろのうちに失敗に終わる。

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「ゼロ点」がアインシュタインの一般相対性理論における「時空の特異点」に一致するとはどういうことなのか。

次に登場するのがルイ・ド・ブランジュ博士。彼は素数の配列がミクロの世界と密接に関連しているのではないかと予想していた。それを例えでいえば、光がプリズムによって屈折され投影された位置は波長によって異なる(虹を思い出せばよい)。波長毎のこの位置がゼータ関数のゼロ点の位置に関係していると考えればよい。

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素数とミクロの世界が関係しているなんて、ばかばかしいと、多くの人は取り合わなかったが、二人の物理学者と数学者の偶然の出会いが驚くような結果を生むのです。

物理学者のフリーマン・ダイソン博士と数学者のヒュー・モンゴメリ博士はプリンストン高等研究所のお茶の時間に何気ない会話をしていた。モンゴメリ博士が、ゼータ関数のゼロ点の出てくる規則性が数式で表わされるんだと話して、その数式を書いて見せます。

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この式を見たダイソン博士の顔色が変わります。ダイソン博士は、ウランなどの比較的重い原子の原子核が取るエネルギー順位を著わす式にみごとに一致している、というのです。

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ウランなどの思い原子の原子核は、エネルギーが変動していて、しかもその取りうるエネルギーにはある規則性がある。(起動電子にもエネルギー順位があるが、それと似たような者) その取りうるエネルギーの間隔を著わす式が上の式。

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そして、二つの式が一致するということ。つまり、ミクロの世界と素数の配列には、何か宇宙の根本法則とでもいうような関連性があるということだ。

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数学界も物理学会も色めき立ちます。そして1996年に世界の物理学者や数学者を集めた「リーマン予想会議」が開催された。

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この会議で数学界の大御所、アラン・コンヌ博士が「非可換幾何学」がこの問題を解く鍵かもしれないと言う。「非可換幾何学」は我々の住むこの空間が一様ではなく、ひずみを持った小さな断片で構成されているとする幾何学であり、この幾何学を使えばミクロの世界とリーマン予想の関連が解明されるはずだと提案した。

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つまり、素数の配列に隠された規則性を解くことは、ミクロの世界から宇宙の世界までを司る根本法則=創造主による宇宙の設計図が分かるのではないかということだ。

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番組では触れられていないが、リーマン予想とカオス理論・複雑系とも多くの点で関連性がありそうだ。リーマン予想はファレイ数列で記述することが可能だが、ファレイ数列はカオス理論には頻繁に出てくる。重い原子核のエネルギー間隔という話しも、正確には量子カオスのことらしいのだが、映像化するのが難しくて原子核なんかを持ってきたのだろう、誤解を与える映像だという批判もある。

まぁ、専門家には自明のことかも知れないが、一般に訴えるにはこれも仕方がないと思う。


人間の身体は分子・原子で構成されている。当然だが、ミクロの世界の法則に影響も受けるだろう。がん細胞とリンパ球の闘いなどは化学反応ではあるが、がん細胞の表面に提示されたペプチド、CTLとの反応は、ミクロの世界であるとも言えよう。そしてヒトの身体は複雑系であり、この宇宙もまた複雑系である。我々はまだその仕組みのほんの一部を知っているだけであり、素数とリーマン予想の関係のように、隠された根本法則を理解するに至っていない。

がんの自然治癒という希な現象も、何らかの原因で免疫系にスイッチが入り、完全治癒に向かうのであろうが、その原因は分かっていない。素数が関係しているはずもないが、この時空の仕組みが関わっていない言い切ることはできないだろう。ガンペプチドワクチン療法に関していえば、ペプチドを注射して樹状細胞に記憶させ、この樹状細胞がT細胞を教育してガンを殺すのだという、単純な模式で良い結果が出るのだろうか。ヒトの身体はもっと複雑であるはずだ。

この宇宙も人間も、ほんとうにミラクルでワンダフルだ。

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2009年11月19日 (木)

「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(3)

臨床研究の現状

がんペプチドワクチン療法

ガンペプチドワクチンの臨床研究は、各地の大学病院で行なわれているが、書籍『ガンペプチドワクチン療法』からその現状を概観してみる。

●膵がん
NHKをはじめとしたマスコミでも報じられたように、和歌山県立医科大学での膵がんに対するガンペプチドワクチンの効果が注目されてきたが、我々膵臓がん患者にとっては大きな期待を抱かせるものである。

膵がんに対する臨床研究は、腫瘍新生血管を傷害するVEGFR2をターゲットとした方法である。HLA-A2402陽性で、前治療のない局進行切除不能、沿革転移を有する膵がん、再発膵がん患者18名を登録して実施された。VEGFR2ペプチドの投与量を、0.5mg、1.0mg、2.0mgとし、それぞれ6名の患者を振り分けた。ジェムザールの標準投与量(1,000mg/㎡)をあわせて投与した。

  • 18名中15名に局所皮膚反応が認められた
  • 15名のうち、PD(進行)は3名のみで、PR(部分寛解)とSD(不変)が12名であった
  • CTL誘導は、1.0mg、2.0mg投与群で67%と高い陽性率であった
  • 臨床効果的には投与量による差は認められなかったが、2.0mgの投与群で全生存期間が344日と最も長く延長した。
  • 18名の生存期間中央値(MST)は7.7ヶ月であり、前治療歴のない15名に限れば8.7ヶ月と良好であった(ジェムザール単独によるMSTは6ヶ月前後であり、1.7ヶ月の延長となる)
  • ジェムザールとの併用試験で唯一効果が確認されたエルロチニブでも、延長効果はわずか0.3ヶ月(10日間)であることと比較して好成績だといえる
  • 6ヶ月を過ぎる頃からハザード比が変化している。抗がん剤と違い、ペプチドワクチンは6ヶ月程度経過しないと効果が現われないと思われる

安全性を評価する第Ⅰ相臨床試験であることを考慮すると、現在進められている第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(PEGASUS-PCスタディ)の結果が期待される。

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24ヶ月生存していたのはたった一人で、クローズアップ現代でも紹介された硲禎己(はざまていじ)さんですが、今年の8月に惜しくも亡くなられています。

膵がん以外の他の腫瘍の臨床試験については生存率曲線は載せられていない。

●膀胱がん
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●腎がん

6例に投与中であり、途中経過。

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●肝細胞がん

  • 26例のすべての末梢血液中ペプチド特異的CTLの増加が認められた
  • 複数患者のがん組織内にCD8陽性CTLが多数浸潤していることが確認された
  • 画像評価で60%でSD(不変)、1例に腫瘍の消失や縮小が認められた

●大腸がん

  • 12例中1例で腫瘍が完全に消失。3年経過後も再発なく健在である
  • 4例で腫瘍の増大が、4~7ヶ月間くい止められた

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●食道がん

完全消失(CR)が1例、SDが3例、PDが6例であった

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●肺がん

完全奏功と部分奏功ともにない。成績が悪いがん。

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2009年11月18日 (水)

「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(2)

がんペプチドワクチン療法の特徴

●新規腫瘍抗原(オンコアンチゲン)を標的とする

がん特異的なタンパク質を見つける方法は、がん組織とPhoto正常な組織を比較して、がん組織に多く存在するタンパク質を探すという方法がとられてきた。しかし、この方法では正常な細胞も混ざってしまうという欠点があった。そこでレーザーでがん細胞だけを切り取る技術(LMM法)を使って、がん細胞だけに存在するタンパク質を見つけることに成功した。
また、がんに特異的に存在しているだけではなく、がん細胞の増殖に重要な役割を果たしている分子を同定し、これを標的とするがんペプチドワクチンを開発した。
がん細胞はある割合でHLAを発現しなくなる。がんの目印がなくなると、たくさんのCTLを誘導しても、がん細胞はCTLの攻撃から逃れることができる。しかし、がん細胞の増殖に必須である抗原タンパク質を標的にすることにより、がん細胞がこの分子を細胞表面に提示しなくなれば、がん細胞は増殖をすることができない。(ということが期待される。まだ仮定でしかない。)つまり、がん細胞が標的を出そうが引っ込めようが、いずれにしろがん細胞は攻撃から逃れることができないというジレンマに陥ることになる。

がん細胞に特異的に発現し、増殖に必須であり、抗原性を持った標的分子をオンコアンチゲンと呼ぶことにする。オンコアンチゲンを標的とすることにより、がん細胞はCTLの攻撃から逃れることができなくなり、CTL前駆体も多い可能性があるため、これまでの腫瘍抗原を標的としたがんワクチン療法よりも高い臨床効果が期待できる。

●新生血管細胞を標的とする

たとえ強力なCTLを誘導できたとしても、がん細胞がPhotoHLA分子を発現しなくなっ たり、消失すれば、がん細胞はCTLの攻撃から逃れることができる。一方でがん細胞の栄養を補給する新生血管の細胞では、HLA分子の発現や性質が安定している。また新生血管は、がんの浸潤・増殖や転移に重要な役割を果たしている。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)を標的としたがんペプチドワクチンは、多くの固形がんにおいて効果が期待される。

●「多勢に無勢」説

1gのがんは30回の分裂を繰り返した結果、およそ10^9(10億)個のがん細胞より構成されている。臨床的にはこれ以上の大きさ、10^10~10^12個のがん細胞を相手にしなくてはならないが、ヒトのリンパ球が10^10個あるとして、この一部に強力なT細胞を誘導して1000個に1個が細胞障害性T細胞(CTL)になったとしても、がん細胞との比は1:数万であり、「多勢に無勢」で歯が立たない。これが免疫療法が有効なのは外科手術後の微少残存の可能性がある時点での補助療法と考えられてきた理由である。

現在臨床試験において注射しているペプチドワクチンの量は1~3mgであり、ペプチドの分子量を1000とすれば、注射される抗原の量は6×10^17~2×10^18分子となる。がん細胞1個あたり1000個の目印抗原を提示しているとし、ヒトの全細胞数を6×10^13個(60兆個)とすれば、仮に全身ががん細胞であると仮定しても、1回の注射で10人分の量ということになる。がんペプチドワクチン療法では、大量のペプチドを注入することによって、「多勢に無勢」の状況を打開しようとしている。

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2009年11月16日 (月)

「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(1)

がんペプチドワクチン療法

10月26日の「クローズアップ現代」でも紹介されたように、がんのワクチン療法が最新の免疫療法として注目されている。大阪大学・久留米大学のWT1ペプチドワクチン、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らの進めている「がんペプチドワクチン療法」など、このブログでも情報をその都度紹介してきた。しかし、注目を集めている割には我々がん患者がそれらの治療法のどこが新しいのか、その全貌をつかむことは難しい。医学論文を検索すればある程度は把握できようが、医学的基礎のないがん患者に、論文を読んで内容を理解することは困難である。中村祐輔教授には「ゲノム医療」に関するいくつかの著作があるが、がんペプチドワクチン療法に関するまとまった著作はなかったが、このほど『がんペプチドワクチン療法』と、そのものずばりの著作が刊行されたので、その内容に沿って紹介しつつ、がん患者から見たいくつかの疑問点をあげてみる。そして、がんペプチドワクチン療法が第4の夢の治療法であるのか、考えてみたい。この著作の帯には「臨床医とがん患者の疑問に答える」と書かれているが、はたして疑問点が明らかになるかどうか。

がんペプチドワクチン療法の原理

ペプチドワクチンを注射するとどのような仕組みでがんを攻撃するようになるか。75_0001_3

  1. がん細胞には無秩序な増殖・浸潤・転移といったがんに特異的な性質に関係するがん特異的タンパク質(オンコアンチゲン)が存在する
  2. このタンパク質ががん細胞内で分解されて短い断片(ペプチド)になり、この断片とHLAのタイプがマッチングすると結合する
  3. 細胞内を移動して細胞表面に抗原として提示され、がん細胞の目印になる
  4. この目印を認識できる細胞障害性Tリンパ球(CTL)が存在していれば、がん細胞を外敵の侵入と見なし、パーフォリン・グランザイム・TNFなどの物質を放出してがん細胞を殺す

*HLA(human leukocyte antigen) ヒト白血球型抗原:自己と非自己を見分けるために重要な働きをしている分子で、白血球の血液型といってもよい。

しごく単純化すればこのような仕組みである。アンダーラインをした部分は、仮定の命題だと私が考えた箇所である。

がん細胞は元は自己細胞であり、変異がない限りリンパ球は攻撃しないはずであるが、それについてはこのように説明されている。

がん細胞とはいえ、もともとは自己のタンパク質であるため、理論的には変異などがない限り、それらに反応するリンパ球は排除されているはずだが、自己抗原に反応するリンパ球は100%完全に排除するには至っていないようである。

何となく歯切れが悪い表現だ。正常細胞を攻撃する恐れはないのか。それに対してはオンコアンチゲンを慎重に選ぶから正常細胞への影響はほとんどないと考えている、と説明する。

上の4.で述べた細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導するのががんワクチンであ20091116144648075_0002 る。

  1. 9~10アミノ酸からなるペプチドワクチンをアジュバント剤とともに皮下注射する
  2. 表皮または真皮の樹状細胞の上でこのペプチドが抗原として提示される
  3. 樹状細胞がリンパ節などに移動し、集まってきたT細胞を活性化(教育)して細胞障害性T細胞(CTL)に成長させる
  4. このCTLががんの目印を見つけて攻撃する

結局は「がんペプチドワクチン療法」とは「樹状細胞療法」の一種といってもよいだろう。テラ株式会社とセレンクリニックの樹状細胞ワクチン療法は、体外に取り出した樹状細胞にがん細胞の特徴を覚え込ませて、それを体内に戻し、リンパ節に移動した樹状細胞がTリンパ球を教育してがんを攻撃するという仕組みである。がんペプチドワクチン療法は全て体内でその仕組みが起きる点が違っている。

樹状細胞が関するCTL誘導の機序は、次のようになる。

樹状細胞(DC)上のHLA ClassⅠ抗原と抗原ペプチドを認識して、CD8陽性キラーT細胞が誘導される。その活性化にはCD4陽性ヘルパーT細胞に由来するIL-2(インターロイキン-2)や樹状細胞に由来するIL-12等のサイトカインが必要とされる。

しかし、こうした機序はウィルスやバクテリアにおいて解明されているものであり、がんにおいて樹状細胞がこうした機序でCTLを誘導することが必ずしも証明されているわけではない。

また、がん細胞の表面に提示されているといわれるHLA抗原は、常に提示されているわけではない。がん細胞にはある割合でこのHLA分子の発現が失われている。この場合はいくらCTLを増やしても効果がない。がん細胞が目印を隠しているのだから、CTLはがん細胞を認識できない。そこで中村教授らは、がん細胞が成長するときに新しい血管を作りながら栄養を補給することに目を付けた。オンコアンチゲンではなく、腫瘍新生血管細胞をターゲットにしたペプチドワクチンである。

新生血管内皮細胞には血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFRImg01 )が作られる。この受容体はがんのみにあるのではないが、がんでは非常に高率で発現している。新生血管内皮細胞は正常細胞であるので、HLA分子が発現しており、VEGFRの一部が抗原として表面に提示されている。これを目印としてCTLを誘導し、がんの新生血管を攻撃して殺し、がんを兵糧攻めにしようというわけである。

このように書くとすばらしい方法だと受け取るかも知れないが、要するにCTLが、がん細胞を攻撃してくれるという保証がないから、がんの周りの新生血管を攻撃して兵糧攻めにしようというわけである。NHK等で紹介されて大きな反響をよんだ和歌山県立医大の膵臓がん患者の臨床試験も、この腫瘍血管のVEGFRを対象にしたものだった。

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2009年11月11日 (水)

久留米大学ペプチドワクチン受付再開

久留米大学のがんペプチドワクチン療法の受付が再会し、これまでは進行癌だけを対象としていたのが、ステージの幅を広げて初期癌から進行癌まで受け付け可能となったようです。(11月2日より)
http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/F/index.html

これまで進行がんに限って受付をしておりましたが、当臨床試験における診療体制が充実して参りました為、11月2日より、受け入れ可能なステージの幅を広げて(早期がんから進行がんまで)受付を開始致します。

現在受付可能ながん種は「肺がん、乳がん、大腸がん,胃がん、すい臓がん、肝臓がん、胆のうや胆道のがん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、尿路のがん、子宮がん、卵巣がん、脳腫瘍、肉腫」です。

また、リンパ球のがん、甲状腺がん、皮膚がん、胸腺がんなどにつきましてもペプチドワクチン外来受診のご相談をお受けいたします。

相談ご希望の方は下記相談窓口までお電話下さい。

電話相談窓口   平日13:00より14:00  電話番号0942-31-7975

血液検査の数値が下記の基準を満たしている必要があります。

7.申込時の血液検査結果と、当院初診時の血液検査で基準値を満たしていること

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         
前立腺がん
              腎臓がん
              尿路上皮がん
肺がん
              乳がん
              子宮頚がん
              卵巣がん
              肉腫
肝臓がん
              膵臓がん
              胆道がん
              大腸がん
              胃がん
              悪性脳腫瘍
血色素数8.0 g/dL以上
白血球数2,500 /mm3以上
リンパ球数1,200 /mm3以上
血小板数80,000 /mm3以上50,000 /mm3以上
クレアチニン施設上限値の2.5倍以下施設上限値の2倍以下2.0 mg /dL以下
総ビリルビン施設上限値の2倍以下
              (ただし体質性黄疸では2.5倍以下)
2.5 mg/ dL以下
       

8.HLAがA2、A24、A26、A3、A11、A31、A33のいずれかであること(当院初診時に採血します)


大阪大学、久留米大学あるいは中村祐輔教授らの進めているがんペプチドワクチン療法について言えることですが、樹状細胞にがんペプチドを認識させ、樹状細胞がT細胞を「教育」してCTL(キラーT細胞、細胞障害性T細胞)を誘導するという過程を経る必要があるのです。ですからがんペプチドワクチン療法は「樹状細胞療法」の一種といってもよいわけです。

WT1ワクチンに対する否定的な見解も紹介しておきます。「がん治療と免疫」にリンパ球バンクの藤井さんが書かれています。こちらも

ちなみに、久留米大学で、テーラーメードながんワクチン療法の治験参加受付が始まりました。
こちらは、同じペプチド抗原であっても、個人個人のHLAタイプが、ある決まった性質の人でないと、うまくCTLを誘導できない、としています。
最初から、治療を受付ない人もいるのです、と、きっちりとHP上で説明しておられます。 これは、かなり前進ですね。
ただ、治療対象になる人は、限られてしまいます。また、正常細胞を攻撃しない保証はないこと、更に、免疫抑制を打破する仕掛けがないことにかわりはありません。

2004年の報告では、「CTLを誘導できた患者さんと、誘導できなかった患者さんの間に、全く生存期間の差がない」つまり、全然、効果がありませんでした、と、書かれています。厳密にいうと、CTLは何の関係もなかった、ということです。

但し、Ig-G抗体を誘導できた患者さんと、誘導できなかった患者さんとでは、顕著に生存期間の差が見られます。
結論として、
WT1ペプチドにより、Ig-G抗体を誘導できた場合は、延命効果がある、としています。 途中でデータが切れていますから、延命された方がその後どうなったかは読み取れませんが、Ig-G抗体が誘導されなかった患者さんは、ほぼ短期間で
亡くなっておられます、、、、
 
CTL誘導物語は空振りに終わっていますが、一応の「延命効果」はある、と見えますね。「治る」というレベルではありませんが。
但し、この手のデータは、解釈が難しいのです。Ig-G抗体を誘導する位、免疫力が
残っていた患者さんは長生きして、Ig-G抗体を作る力が残っていなかった患者さんは
もう、余命が尽きてしまった、ということかもしれないのです。相関関係がある、ということ イコール 因果関係とは限らないのです。 
 
また、2007年の報告では、CTLを誘導できた患者さんは殆どいらっしゃらなかった(ゼロではありません)となっています。
この惨憺たる結果は、ワクチン実施前に、サイトカイン療法をやりすぎたから?とか、書いてありますが、何の関係があるんでしょうね??

2009年11月 8日 (日)

笑っちゃう 『がん難民119番』

がん難民119番―救済・治療先進国アメリカに学ぶ

NPO法人 がんコントロール協会代表の森山晃嗣氏の『がん難民119番』がおもしろい。どのようにおもしろいかというと、笑っちゃうほどおもしろい。

開いて先ず違和感を持った。活字が大きいのだ。通常のこの手の本の1.5倍はある。普通の活字サイズにすれば半分のページに収まりそうだが、それではありがたみがないと思ったのか、価格を低くするのがいやで無理矢理ページ数を稼ごうとしたかだろう。

著者のプロフィールには「栄養素療法によって病気を克服した実体験をきっかけに、正常分子栄養学を学ぶ」とある。「生命の鎖理論に基づいた講演活動や健康相談を開始、とも。

栄養素療法?、正常分子栄養学? 生命の鎖理論? 始めて聞く言葉だが、私が馬鹿なせいだろうか。ネットで検索すると確かにたくさんヒットするから、巷では知られている療法かもしれない。生命の鎖理論とは、ロジャー・ウイリアムス博士が提唱する「栄養素は単独では働かず、チームで働く」ということらしい。当たり前じゃないか。○○理論というほどのことかい。

第一章から隠す気もないバイブル本の様相だ。東京神田の「キャンサーケアクリニック神田」の宣伝である。院長は菅野光男医師。米国自然療法医学の医師で、西洋医学の医師で、さらに牧師でもあるという。フィリピンの医科大学を出て日本の医師国家試験に合格している。牧師にもいろいろいるということだ。

62歳で膀胱がんの男性のがん治療体験レポートが続く。

  • 温熱器具で身体を温めながら、菅野院長のカウンセリング
  • コップ一杯の植物由来ミネラル液を飲む栄養カプセルとラウリン酸も摂取
  • 高濃度ビタミンC25gの点滴を開始(飛行機のファーストクラスのようなソファーだとわざわざ説明してある。)
  • またも食物由来ミネラル液と食物栄養物質をブレンドした液体ドリンクを飲む
  • 昼食は完全無農薬の玄米と、無用薬の野菜、ヒポクラテススープ、ニンジンドリンクなど
  • フロリダ産の無農薬有機栽培のニンジンエキス粉末とカナダの無農薬有機栽培の大麦若葉のエキス粉末を電子水でブレンドしたドリンクを摂取。
  • 電子チャージ風呂に入浴
    クラスターの細やかな電子水のお風呂にじっくりとつかる。
  • 遠赤外線温熱療法
    熱を6.27ミクロンという遠赤外線の振動に変換し、身体の水分子に反応を与える器具で、頭からつま先まで温めていく。
  • 夕食用に「健康回復弁当」をいただいて帰宅

ここまで似非科学用語を羅列するとは立派です。つかっている温熱器具は「グレミオ627」という特許も取った製品らしい。(特許 No.2968479)

グレミオ627

 グレミオ627は、パネル表面温度85℃±10℃と温度設定は一定です。
グレミオ627は、温熱波動(遠赤外線振動)に変えるため、ソフトに身体の深部まで到達します。温度を変えてしまうと、水分子を振動させる6.27ミクロン波動波長が変化をしてしまいますので温度は一定に保ちます。
 6.27ミクロンは、水分子の変角振動に反応しますので、直接腸内の水分子を振動させて、腸の温度を高めていきます。
この温熱波動を特に熱いと感じる時は手拭または、タオルを緩衝材として使用し、体感者に気持ちよく感じてもらいましょう。
 グレミオ627は、熱を振動に変換し、身体の水分子に反応させるため、器具は必ず2個使用します。波動は受け止める相手がいないと通り抜けてしまい、効果が半減しますので、波動製品は必ず2個用意します。

電子水をつかった電子チャージ風呂(普通の風呂だが)というものや電子チャージ機なるものの写真も掲載されている。オステオパシー(整体)やIPT(インスリン強化療法)、ゲルソン療法、コーヒー浣腸などがてんこ盛りだ。

さて、このクリニックの自費診療費の内訳

  • 【78gビタミンC 3本+強力ミノファーゲン 2本】  83,000
  • 【IPT療法+50gビタミンC 2本】×3回      235,950
  • 遠赤外線温熱療法・電子チャージ風呂 5回     45,750
  • オステオパシー                       1回                 7,000
  • 食養生                                                      18,000
  • コーヒー浣腸                                                7,245
  • 腫瘍マーカー検査      6項目 2回                   21,000
  • カウンセリング                                             10,000
  •                                   合計  444,495 → 315,000

合計 444,495円が、コース特別料金なら 315,000円と非常にお得になっています。(合計が合わないのは私の入力ミスではない。本に書かれたままである

(あれ? このクリニックのホームページには、400,495円→315,000となっている。)その後、このクリニックのページは削除されたようでリンクも切れています。

普通の風呂に5回入浴して45,750円ですか。あの食事で18000円?ぼったくりや詐欺罪にはならないんでしょうかね。

「波動」や「水分子のクラスター」なんていう言葉、「水は記憶する」でよく聞いたものです。がん治療にも進出ですか。しかし、こんな単純で子供だましのような治療でも、引っかかるがん患者がいるからやっていけるんでしょうね。

温熱器具の特許とやらを検索してみた。

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平9-313865
(43)【公開日】平成9年(1997)12月9日
(54)【発明の名称】電磁波による消臭及びカビ防止方法及びその装置
(51)【国際特許分類第6版】

(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、消臭剤等を使用しない消臭及びカビ防止方法及びその装置を案出することである。
【解決手段】 本発明は、空気中の水分子に電磁波、特に遠赤外線(波長λ=5μm ~15μm )を照射して、変角振動モードの水分子を活性化し、活性化された水分子を空気中の臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化することを特徴とする電磁波による消臭及びカビ防止方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1 】 空気中の水分子に電磁波、特に遠赤外線(波長λ=5μm ~15μm )を照射して、変角振動モードの水分子を共振させることにより活性化し、活性化された水分子を空気中の臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化することを特徴とする消臭及びカビ防止方法。
【請求項2】 遠赤外線をトルマリン層に照射することによりトルマリン層の静電気を強化することにより空気中の水分子を電気分解しその結果生じた水素イオン(H+ )又は水酸基イオン(OH- )を直接臭分子と結合させ、又は水分子と再結合して成るヒドロキシルイオン(H3 O2 - )を臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化する請求項1記載の消臭及びカビ防止方法。
【請求項3】 照射される遠赤外線の波長λが、λ≒6.3μm である、請求項1又は2記載の消臭及びカビ防止方法。
【請求項4】 空気中の水分子に電磁波、特に遠赤外線(波長λ=5μm ~15μm )を照射して、変角振動モードの水分子を共振させることにより活性化し、活性化された水分子を空気中の臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化する消臭及びカビ防止方法を実施するための装置において、ハウジング(1)は複数の開口(6)を有する窓枠(4)を備え、窓枠(4)に遠赤外線放射体(11)を備え、ハウジング(1)の内方に台枠(8)上にサーミスタヒータ(7)を備えたことを特徴とする前記消臭及びカビ防止装置。
【請求項5】 窓枠(4)が遠赤外線照射により静電気発生力を強化されるトルマリン層(5)を備えている、請求項4記載の消臭及びカビ防止装置。

消臭とカビ防止の発明だよ。確かに波長6.3ミクロン(温熱器具は6.27となっている)は出てくるが。がんはカビなんですか? 身体の中のカビでも取ってくれるということかも知れん。

このクリニックのアドレスはNPO法人がんコントロール協会と同じでした。(協会の中のフォルダにある) このNPO法人が開催したがんコンベンションの講師陣はこんな人たち。

安保 徹
小川 眞誠 
帯津 良一
寺山 心一翁
船瀬 俊介 
済陽 高穂

そうです。あの安保教授、船瀬俊介、済陽高穂(最近「がん再発を防ぐ完全食」という著作を出しています。) この陣容も見ればインチキNPOだとすぐに分かりますね。帯津良一医師については、私は以前は一定の評価をしていたのですが、最近はホメオパシーにも顔を出すなど、いささか懐疑的な目で見ています。というよりも胡散臭いといった方が正確かも。

この本の存在価値(があるとすればだが)は、あまりにもばかげた内容に、腹を抱えて笑えることで、それによってもしかすると免疫力が高くなるかもしれないということです。

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2009年11月 6日 (金)

千葉徳州会病院 がんペプチドワクチンの経過

6月9日のこのブログでも紹介したが、中村祐輔教授の開発したがんペプチドワクチンを使った千葉徳州会病院の膵臓がんの臨床試験について、その後の経緯がmsn産経ニュースに載っています。(11月6日付)

 「すごい効果が出るとは思ってなかったが、何らかの手応えは感じている」。千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)の浅原新吾副院長(消化器内科)は、ペプチドワクチン療法の印象をこう話す。

 同病院は3月から、日本のゲノム(全遺伝情報)解析研究を率いてきた東京大学医科学研究所(東京都港区)の中村祐輔教授(同研究所ヒトゲノム解析センター長)が開発したペプチドを使い、既存の治療法が尽きた膵(すい)がん患者を対象に臨床試験を行っている。

 膵がんは診断から1年以内で亡くなる人も多く、治療法が尽きた患者の余命は一般的に数カ月とされる。同病院が臨床試験を行っている患者の中には腫瘍(しゅよう)が縮小したり、マーカーが下がったりした患者もいたという。

 浅原副院長は約10年にわたり、癌(がん)研有明病院(江東区)で消化器がんの治療に携わってきた経験を持つ。肝がんなどの患者ではごくまれにがんが自然消失するケースがあったが、膵がんではそうしたケースはみたことがなく、臨床試験の経過を驚きながら見守っているところだという。

まだ途中経緯で、びっくりするような結果は出ていません。腫瘍が縮小したりマーカーがさがったりという程度ですね。抗がん剤と違ってQOLは非常によいはずです。

中村教授の新刊著作『がんペプチドワクチン療法』をやっと入手しました。出版社が中山書店ですから、医者をターゲットとした本でしょう。内容も結構専門的です。まだぱらぱらとしか見ていないので、これからです。

がんペプチドワクチンも現状では決して「魔法の弾丸」ではないですね。過大な期待は禁物ですが、膵臓がんでもう治療法がないといわれた患者にとっては、早く一般的に使えるようになってほしいと願っています。

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2009年11月 4日 (水)

信頼できるウェブを装ったアガリクスの宣伝

株式会社日本医療情報出版が編集している「週間がん もっといい日」というサイトがある。
「図書室」には推薦図書の一覧があり、例の安保徹氏の著作などが載せられているから、この一事だけで私は「信頼できないサイト」という烙印を押している。ここの記事を取り上げれば、中には参考になるようなものもあるが、本日更新された内容にこんなものがあった。
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TOPページのタイトルのすぐ下に「がん患者さんはどんなサプリを飲んでいるの?? 厚労省データ紹介 ↑ココをクリック」とのリンクが張られていた。

クリックすると「がんとサプリメント」との表題で、「厚生労働省がん研究助成金による研究班のデータ」なるものが出てくる。がん患者で何らかの代替医療を利用しているのが、55.4%で、その中でアガリクスを利用しているのが60.6%だという調査結果を述べたものである。これだけなら情報提供ということで、参考にすればよいだけのこと。

しかし、一番下に「おすすめサイト」として

アガリクスについてのご相談は・・・「電話で相談できるケーエーナチュラルフーズ」へ
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アガリクスの効果・情報ブログ「アガリクス健康日記」←アガリクスについて詳しくはコチラをクリック

未病医学・気血水について 「NPO法人気血水研究会」へ

いつまでも若く、美しくありたい 「サンプライズ株式会社」

などがずらずらと並んでいる。

要するにここは業者の宣伝サイトということ。すこしはまともな情報だって載せていないと読者が付かないだろうから、全部が間違った情報ではないだろうが、ほんとうの目的は「藁をつかみたいがん患者」を誘導して、アガリクスを買わせようということだろう。

まぁ、アガリクスを使うのならブラジル産でないと必要な成分が十分ではないということは分かるが、アガリクスにがんを治す効果などないことは明か。動物実験や試験管でいくら効果があるとのデータがあったにしても、ヒトの体、ヒトのがんははそんなに単純ではない。

更に不思議なのは、同じTOPページにこんなコラムがある。

「新作です。免疫療法のマンガ」
                        

バイブル本商法で一世を風靡したアガリクスに代わり、今は活性化リンパ球療法のような免疫細胞療法の宣伝が盛んです。
患者さんやご家族からの「がん免疫療法は効きますか」という質問が、学習交流会では必ずといっていいほど出ます。それに対しては「新聞や本に広告を出して宣伝しているものはインチキです」とお答えしています。
 けれど免疫療法の仲間に入るものの中にはちゃんとした医療もありますし、がん治療の進歩につながりそうな研究もあります。どの療法のことなのか、免疫療 法とひとことで言われただけでは、効くのかインチキなのか本当は言えません。
免疫療法の世界のこの複雑なありように乗じて、一部の企業や病院がたくみに金もうけをしているのが現状だと思います。
 新作マンガの『研究段階の治療は受けるなら臨床試験で』と『がん免疫療法はまだ臨床研究の段階です』は、免疫療法に関心のある患者さんが金もうけの餌食 にならないようにと作ったマンガです。早わかり教材として医療者のみなさまにも役立ちそうな気がします。免疫細胞たちのオリジナルキャラクターがかわいい ですよ!

まともなことを書いているではないか! ここではアガリクスをバイブル本商法でがん患者を餌食にしているものだと書かれている。免疫療法に関してもまっとうなことをいっている。だとすれば先のリンクとこの内容とはどのように整合するのだろうか。バイブル本のアガリクスはだめだが、ブラジル産のものはよいということか。出版元の編集方針がいかにもいい加減だといわざるを得ない。

「信頼のおける出版社の、信頼のおけるサイト」のように装って、こうした悪質な宣伝をする業者も多いので、騙されないように。「安保徹」の名前の載っているサイトは無視すれば、判断は簡単で間違いがない。

アガリクスに関してはこちらのブログを。
このブログのこちらなどにも書きましたが。

2009年11月 2日 (月)

血液検査の推移 がんとの闘いに金をかけない

いつもの病院でアヘンチンキと消化剤。血液検査の結果をもらった。
白血球数:5280
リンパ球比率:53.6%
HbA1c :5.3

『リンパ球比率がちょっと多いね』といわれたが、正常範囲の50%を少し超えている程度。むしろリンパ球を増やすように努力してきたのだから、私としては目標達成という気持ち。HbA1cもまったく正常で、反って『低血糖に気をつけた方がよいですよ』といわれるくらい。膵臓が半分以上なくてもインシュリンも十分分泌しているし、膵臓の機能もほぼ満足だ。血液検査の他の結果もまったく悪いところがなくて、”健康そのもの”の体だ。

2年前の手術のころからの血液検査の結果をグラフにしてPhotoみた。手術前の白血球数は4000前後。最初のデータは2005年のものであり、これが私の通常の値である。一般的にいえば、平均より少ないのが正常値ということになる。

膵臓切除の手術をしたとたんに急増して7000を超えるときもあった。手術後の炎症反応に体が対応した結果ではないかと思われる。そして術後補助化学療法でジェムザールを始めたとたんに白血球数が減り始めている。リンパ球の実数はさらに減少割合が大きい。抗がん剤が、分裂が活発なリンパ球をも攻撃している様子がよく分かる。

抗がん剤の投与が終わると徐々に白血球数もリンパ球実数も増加しつつあったが、さらにこのころマルチビタミンを服用しだした。主に抗酸化作用と腫瘍抑制作用のあるビタミンを多く含んだマルチビタミン剤である。これも結果的には効果があったように思う。そしてメラトニンを就寝前に服用しだした。一点おかしなデータがあるが、全体的には徐々に右肩上がりに増加している。

このようにして今の私の体にはこれまでの人生では最大のリンパ球攻撃部隊を傭することになった。小さな目には見えないほどのがん細胞を退治してくれているだろうと期待している。癌との闘いの帰趨を決めるのは、最後は『自己の免疫力』だ。それに体力。体力のない患者が長生きできるはずがない。気力に精神力も必要だ。要するに闘いは総力戦である。一つのサプリメントや魔法の特効薬ががんを治癒することなどあり得ない。この点に関してはがんペプチドワクチン療法などの免疫療法も同じだろう。戦争を遂行するとき、その国の経済力が戦略を決定づけるように、がんとの闘いにおいては免疫力・体力・気力・精神力などの総合力が闘いを決定づける。仮に一発の核弾頭を持っていたとしても長期戦においては経済力を初めとする総合力が帰趨を決める。北朝鮮を見よ。

30分以上の散歩を週5回以上、十分な睡眠を取る、ストレスを溜めない、玄米菜食(時には肉も食らうが)、たくさんの野菜と果物(昼食は果物だけというときも多い)などなど、どれもが効果があったに違いない。どれが効いたとはいうことができない。メラトニンの効果も不明だ。

今日の朝日新聞の夕刊に、夜勤の人にはがんの発生が有意に多いという記事があった。寝るべき時間に明るい環境にいると、メラトニンの分泌が減って来ることが知られている。それによって抗酸化作用は抗腫瘍作用が少なくなるためにがんが増加する。これは乳がんの患者の分析で統計的に明らかになっているが、他のがんでも同じことだろう。副作用のない安価なメラトニンだ。服用を続けることに問題はないと思う。

膵臓がんを再発・転移させない。そのためにできることは何でもやる。という気でやってきたが、金をかけないということも大事なこと。高価なサプリメントなら効果があるに違いないというがん患者の無邪気な誤解に、私は挑戦してきた。高ければ効くというものでもなかろう。ビタミンとメラトニンでは高価な薬を探す方が難しい。散歩には金はかからない。湯たんぽで暖めてはいるが、湯たんぽではしれたもの。ドイツ製だという少し高価な湯たんぽを買ったのではあるが、それでも3000円くらいだった。サプリメントよりは本代の方に金を使っている。

拾った命だから、のんびりいく。拾った命を、楽しんでいる。

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2009年11月 1日 (日)

物理学者・戸塚洋二 がんを見つめる

31日(土)15時から1時間のNHKヒューマンドキュメンタリーで、このブログでも先に書かせていただいた戸塚洋二さんのことが取り上げられた。戸塚さんのブログの内容に沿っての番組だったが、佐々木閑氏が対談のテープを残していて、肉声を聞くこともできた。

迫り来る死への恐怖に、佐々木閑氏との対談では『科学者として、死んだときどのようになるのか、その観察結果を報告できないのが残念だ』との趣旨に発言をされていた。がんのCT写真をデジカメで撮影してその大きさを測定し、時系列のグラフにして、抗がん剤の効果を判定しようとしていたのは、「実験屋の悲しい性です」という。しかし、ちょっと疑問なのは、CTは輪切りにして断面を撮影するわけで、輪切りにする位置が毎回微妙に違えば、腫瘍の大きさ(断面)も正確には撮影できないのではないかという疑問だ。そのあたりはどのように解決したのだろうか。

死ぬときは全ての人が大往生なのです。「壮絶な死」などいうものはない。自然現象であり、美しくもないし醜くもない。死ぬ瞬間は脳には大量のドーパミンが放出されるらしいので、外見は苦しそうにしていても本人はほとんど苦しむことはないという。
死ぬ瞬間は、トンネルの向こうに光が見える、すばらしい花園があり、とても幸せな気分になる。臨死体験をした人はそのように言う。

人はいずれ「無」に帰る。もとの宇宙を構成していた原子にばらばらになっていく。そのときにはこの「自分」は存在しないのであるから、存在しない自分は、自分が「無」になったことを知ることはできない。古代ギリシャの哲学者エピクロスは、

死は、もろもろの悪いもののうちで最も恐ろしものとされているが、じつはわれわれにとって何ものでもない。なぜかといえば、われわれが存在する限り、死は現に存在せず、死が現に存在するときには、もはやわれわれは存在しないからである。

と言っている。なるほどと思うが、いやそれでも死を恐れるのはどうしてか。それは生きている間に「死」を想像することができて、しかも死んだあとに自分が死んだということを認識できない。つまり、睡眠から目覚めたあとでは、自分がこの間寝ていたということを認識することができるが、自分が死んだということを自分では認識できない、ここに死の恐怖があるのではないか。これは、睡眠からはいずれ目覚めるが、死から目覚めることはないということと同じ意味になる。エピクロスのいうことは、逆に死を恐怖する理由になっているのではないか。 いずれもう少し考えてみよう。

戸塚さんは、ニュートリノに質量があることを発見して、世界を驚かした。ニュートリノに質量があるかないかは、この宇宙の未来を左右する。この宇宙は「無」から誕生し(ビッグバン)、それ以来膨張を続けているのであるが、宇宙の全質量がある値以上であればいつの日か収縮に転じる。これはアインシュタインの相対性理論から出てくる結論である。そしてニュートリノに質量があれば、宇宙の全質量はいずれ収縮する可能性がある。ということは、収縮してまた「無」に帰るということになる。われわれは「無」から「無」にいたる時間の間の、本の一瞬にたまたま生を受けているに過ぎない。戸塚洋二さんが成し遂げようとしたことは、このようなことなのだ。

だからどうした、と言ってしまえば身も蓋もないが、がん患者であろうがなかろうが、人は体力の続く限りやりたいことをやるのが、避けられない死、無に帰る死を穏やかに迎える秘訣なのかもしれない。

がんと闘った科学者の記録 がんと闘った科学者の記録
戸塚 洋二 立花 隆

戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい! 犀の角たち 余命半年 満ち足りた人生の終わり方 (ソフトバンク新書 96) 日々是修行 現代人のための仏教100話 (ちくま新書) がん哲学 新訂版 立花隆氏との対話

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