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2010年7月

2010年7月31日 (土)

問われる真偽 ホメオパシー療法

本日の朝日新聞「be report」欄に「問われる真偽 ホメオパシー療法」という記事が載った。記事によると沢尻エリカとか落合恵子などの有名人がファッション誌や育児誌でホメオパシーを推奨しているという。日本でも相当この似非療法が広まっている印象だ。

記事では似非科学を批判している大阪大学の菊地誠教授が、「分子が一個も残らないほど希釈するのだから、レメディは単なる砂糖粒」であり、「最大の問題は、現代医学を否定し、患者を病院から遠ざける点にある」と指摘している。梅澤医師のコメントも紹介されている。「自分が診た患者の中にも、ホメオパシーに頼った結果、手遅れになった患者がいる」"好転反応"という用語がくせ者。病気が進展して症状が悪化しても、ホメオパシーではそれは自己治癒力が向上した証の「好転反応」であると説明されるからである。症状が悪化しているのに、患者はレメディの効果が現われてきたと説き伏せられるのである。

前回のブログでも書いた山口での乳児死亡事故で損害賠償請求訴訟が提訴された件にも触れている。この助産師が所属するホメオパシーの協会はjpHMA(日本ホメオパシー医学協会)であるが、会長の由井寅子氏もインタビューに応じている。応じているのだが、記事全体はホメオパシーに批判的な論調で書かれているため、トラ子先生は早速噛みついている。

7月31日付の朝日新聞土曜版「 Be」で由井会長へのインタビューを含め「ホメオパシー」が特集され紹介されました。

最近、政府の統合医療推進の方針の中で、ホメオパシーも16の代替療法の検討候補に入るなど、ようやく日本でもホメオパシーの認識が高まってきました。
先日、国内のホメオパシー団体を代表して、由井会長が朝日新聞の1時間にわたるインタビューを受け、自然治癒力を触発するホメオパシー療法の説明、「症状はありがたい」というホメオパシー療法に取り組む上での基本的な考えかたや国際的な普及状況やなどを話されました。

なお、7月31日付の朝日新聞では「英国会は否定 No」とあたかも英国の健康保険制度からホメオパシーが外されることが決まったような誤解を与える記載となっておりますが、7月27日付で英国政府は、ホメオパシーの英国健康保険システム(NHS)の適用継続を発表。英国下院の科学技術委員会の勧告を否定しています。
また、信頼性に多くの科学者が異議を唱えた、2005年に科学誌「ランセット」に掲載された「ホメオパシーは効果がない」と結論づけた1論文のみを根拠に、ホメオパシーの有効性が否定されたような記事となっておりますが、ホメオパシーの有効性を肯定する数多くの研究結果や論文もありますので、詳しくはJPHMAホームページをご覧ください。

確かに英国保健省はNHSの適用継続を決めたが、それはホメオパシーの有効性を認めたからではなく、EU全体に広く用いられているホメオパシーに通常医薬品と同じ規制を持ち込めば、レメディは市場から姿を消すことになる、これは消費者の選択の幅を狭めるものである、と苦しい言い訳をしている。詳しい内容は「忘却からの帰還」に紹介されている。

トラ子先生は「薄めるときによく振ることで、毒のパターンが水に記憶される」ので、効果があるのだと例のごとく「水の記憶」を持ち出してくる。ホメオパシーがブラシーボ効果以上の効果はないことについては『代替医療のトリック』に詳しいからここでは書かないが、砂糖粒の原料であるサトウキビが、キューバの農場で風に揺れていたときの記憶は残っていないのだろうか?どうしてレメディの毒の記憶だけが砂糖粒に残るのか、私には説明されても理解できない。

帯津良一先生もレメディを作るのに一所懸命で振っていると、五木寛之氏との対談『健康問答』で言っていた。その姿を想像するとゾッとしてくる。

笑える動画がある。BBCのコメディ「ホメオパシー救急病棟」だ。最後にホメオパシーラガーを注文したとき、ウエイトレスが水に一滴のビールを入れるのだが、これではビールが多すぎる。よく振ってもっと希釈すれば、ビールの記憶が水に残って、泥酔するほどの効果があるに違いない!!と思うのだが。

朝日新聞とも今日でお別れ。一般の記者はときどきよい記事を書くのだが、論説主幹らにロクなのがいない。消費税増税に記者生命をかけている星浩。秋山耿太郎社長の改革路線にうまく乗り、30年間空席だった本社編集局長と論説主幹の上に立つ主筆のポストに起用された舟橋洋一、この人物は普天間移設容認を執拗に書いている。


続報

その後朝日新聞でホメオパシー関連の記事がいくつか続いています。

上記記事を執筆した長野剛記者のブログ「こちらアピタルです。」

ブログに多くの反響をいただきましたので、5日昼、続編を掲載しました。

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2010年7月25日 (日)

ホメオパシーを賞賛しなければよい本なんだが・・・

連日の猛暑日だそうです。今日は昨日までよりは少しは過ごしやすい気がします。さすがにこの厚さではバックパックを背負って30分以上の散歩をする気にはなりません。膵臓がんで助かって熱中症で倒れたのでは笑いものですから。しばらくは散歩は中止です。

がん最先端治療の実力―三大療法の限界と免疫細胞療法

幻冬舎からは免疫細胞療法の書籍が続けて出版されています。『がん再発を防ぐ活性化自己リンパ球療法 』、『免疫細胞治療―がん専門医が語るがん治療の新戦略 』があります。こんど新たに『がん最先端治療の実力―三大療法の限界と免疫細胞療法 』という本が出版されました。フリーライターの荒川香里氏は、母親のがんを機会に三大療法に疑問を抱くようになり、取材を続ける中で免疫細胞療法に関わるようになったそうです。

いま期待されている重粒子線治療についてコンパクトに理解できる内容で紹介されています。重粒子線治療では、ドカッと患部に穴があくようにがん細胞を焼き切ります。エックス線との比較では「拡大ブラッグピーク」があるために標的とする腫瘍以外の組織への影響が小さくなる。放射線は同じ患部には1回しか治療の適用ができないが、重粒子線なら例えば同じ患部に再発した場合でももう一度照射することができるなど、患者が本当に知りたいことが書かれています。もともと重粒子線治療は軍事技術として、敵の人工衛星を無力化する宇宙兵器として開発されたものなのです。そのことには残念ながら触れられていませんが、重粒子線治療は半世紀もの開発の歴史があり、最近になって安全に治療への適用ができるようになったことも紹介されています。

この本のメインは免疫細胞療法の紹介です。それもANK免疫細胞療法といわれるリンパ球バンク(株)が開発して京都の東洞院クリニックがリンパ球の培養を行なっている治療法です。リンパ球バンク(株)の社長である藤井さんのブログ「がん治療と免疫」は私も良く参考にさせていただいています。この本でも藤井さんの考えが随所に紹介されています。

「大きくなったがんの固まりの中心部は、ほとんど分裂しないないことが分かっています。化学療法剤で叩くことができるのは、がんの固まりの表層部分だけ。しかも、その間に正常細胞が受けるダメージは比べものにならないほど大きいのです。」

CTやMRI,PETが導入されたことで、あるていど腫瘍の大きさが目に見えるようになった。その結果、腫瘍の大きさで抗がん剤の効き目を判断する「腫瘍縮小効果」という考えが出てきた。ただし、この腫瘍縮小効果は、現在では新しく開発された薬の判定基準としては否定されています。延命効果がなければ新薬は認定されないことになってきたのです。しかし、以前に「腫瘍縮小効果」という判定基準で承認された抗がん剤が未だに使われていることは問題でしょう。もっとも「延命効果」にしても医薬品の開発現場では平均余命がわずか3ヶ月長くなっても「すごい」ということになるのですが、がん患者の期待する治療・延命効果とはかけ離れたものになっています。

ある薬の効果を数値化するとき、例えば腫瘍縮小効果と免疫打撃効果のふたつの基準を置くとします。こうした性質の異なるふたつのデータを無理に統計処理しても、どちらの重みを持たせるかで薬の効果は恣意的に白にも黒にもなる。実際の統計データはいつも正しいわけではなく、むしろ単純すぎるというのが実情です。

化学療法を受けたら免疫は隔日に低下します。しかも化学療法の後最初に増えてくるのは、免疫を抑制する働きを持つリンパ球です。

今話題の「がんペプチドワクチン療法」についても、ペプチドワクチンでがん特異物質と確認されたものはありません。そもそもペプチドのような単純な構造の物質が本当にがんの目印になるのかどうか、明かではないのです。樹状細胞がペプチドを取り込む効率は非常に悪く、仮に取り込んだとしてもそれを抗原として提示しなければなりません。それが達成されて初めて、樹状細胞の提示する抗がんでがん細胞を攻撃するCTLを誘導できるかどうかという基本的問題に取りかかることができるのです。

このように免疫細胞療法を考える際の、免疫に関する基本的な問題点が歴史的経緯とともに要領よくまとめられています。そして、巷で一般的に宣伝われている各種のリンパ球療法の問題点も指し示しています。NK細胞を使った免疫細胞療法以外は、本当の効果は望めないというのが、著者らの主張したい点でしょう。藤井さんのブログと合わせて読めば、免疫細胞療法に関心のあるがん患者には大いに役立つことはまちがいないと思います。

しかし、問題がふたつあります。ひとつはANK細胞療法の費用は高額であること。もちろん健康保険の対象にはなりません。12回を1クールとして、1クールあたり概算で400万円だといいます。再発予防なら1クールも必要ないらしいですが、末期のがんなら2クール以上。しかしお金の問題は考え方次第です。末期がんを標準治療で治療しても、患者の最後までに係る費用は2000万円だという数字もあります。もちろん患者の負担のその3割の600万円で、高額療養費を考えればもっと少ないでしょう。高級車の一台分だと考えれば、経済的に余裕のある患者には躊躇するような金額ではないかもしれません。私には選択の対象外ですが。

この本でいちばん問題なのは「ホメオパシー」を好意的に取り上げている点です。がんという結果(タネ)は、それを育てた私たちの身体(土壌)があるから発生したのであり、私たちの身体の状態を改善しないかぎり本当の治癒はあり得ない。この考えはほとんどの統合医療支持者が言うことです。それなのになぜ「ホメオパシー」なのか。「ホメオパシーの根幹にあるのは免疫です。免疫の働きを利用して病気を治す手助けをする。」ヨーロッパの上流社会ではホメオパシーのほうが主流であり、一般のドラッグストアよりもホメオパシーの店の方が多いくらい庶民にも根付いている、というのが主張の根拠です。しかし、サイモン・シンの『代替医療のトリック』でも紹介したとおり、ホメオパシーにはプラシーボ効果以上の効果はなく、イギリスでも保険適用から除外されてきている。上流社会に人気があったのは、チャールズ皇太子の力入れによるところが大きいのではないでしょうか。

ホメオパシーは有効成分の1分子も含まないほどに希釈するのですから、害になるはずはありません。問題はホメオパシー以外の治療法を受けさせないようにすることが頻繁に起きているということです。患者の正統な治療の機会を奪って、ときによっては死に至らしめることがあることです。最近も毎日新聞で報道されました。ホメオパシーとは書かれていませんが、記事を読めばレメディーを与えたのだと分かります。

損賠訴訟:山口の母親、助産師を提訴 乳児死亡「ビタミンK与えず」

 助産師がビタミンKを与えなかったのが原因で生後2カ月の長女が出血症で死亡したとして、山口市の母親(33)が同市の助産師に約5640万円の 損害賠償を求める訴えを山口地裁に起こしたことが分かった。厚生労働省の研究班は新生児の血液を固まりやすくするためビタミンKの投与を促しているが、助 産師は代わりに、自然療法を提唱する民間団体の砂糖製錠剤を与えていた。

 訴状によると、母親は09年8月に女児を出産。生後約1カ月ごろに発熱や嘔吐(おうと)などを起こし、急性硬膜下血腫(けっしゅ)が見つかった。入院先の病院はビタミンK欠乏性出血症と診断し、10月に亡くなった。

 民間団体によると、錠剤は、植物や鉱物などを希釈などした液体を砂糖の玉にしみこませたもの。訴状によると、助産師は母子手帳にビタミンK2のシ ロップを投与したと記載していたが、実際には錠剤を3回与えていたという。助産師は毎日新聞の取材に「錠剤には、ビタミンKと同じ効用があると思ってい た」と話している。

 昨年10月、助産師から今回の死亡事故の報告を受けた日本助産師会(東京)が、民間団体にビタミンKの投与を促したところ「『ビタミンKを与えないように』とは指導していない」と答えたという。【井川加菜美】

分子標的薬と抗体医薬品の違い、ADCC活性の興味深い働きなど、面白く読めました。ホメオパシーに関する記述を除けば、役立つ本には違いありません。

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2010年7月21日 (水)

朝日新聞の購読を止めました。

朝日新聞の購読中止を販売店に電話で告げた。「何か私どもに落ち度があったのでしょうか?」と電話に出た店主らしい方が、戸惑ったように問い返してきた。「いいえ、そうではありません。朝日の論説は消費税の積極的な増税論だし、星浩はテレビでも消費税の大幅なアップを主張しています。もちろん新聞社の報道・言論の自由ですから尊重します。しかし、われわれ庶民は、消費税が増税されたら真っ先に新聞の購読から節約するのだよと、本社に伝えてください。」

こんなことを書いても大新聞社には痛くもないだろう。彼らにとっては購読料は紙代とインク代を補う程度の金額であり、利益は広告収入であるからだ。広告主の機嫌を損ねない記事を書くのが第一なのであろう。しかし、読者がいるから広告を出すんだという単純な基本的事実を忘れてはいないのか。

私の地域の販売店は昨年倒産したのか、閉鎖されて、別の販売店が配達を引き受けるようになった。新聞本社からは大量のオシガミ(拡販用の宣伝紙)を無理矢理押しつけられて、販売店の経営が立ちゆかないということはよく分かっている。販売店にはまったく申し訳がないのだが、私としてはこんな論調の新聞を購読し続けることはできない。そもそも消費税が創設されたとき、「将来の福祉のために」ということだった。中曽根は「小さく産んで大きく育てる」とうそぶいたものである。いままさに「大きく育てる」という時期に来たようだ。1997年に3%から5%に増税したとき、9兆円といわれる医療費の負担増とも相まって回復しつつあった経済をどん底に突き落とした。10%になれば、今消費税を100万円納めている町工場は200万円になる。増税分はそっくり下請けが背負い込むことになる。たしかに帳簿上は10%の消費税が払われたことになっているだろう。しかし、いまでも「消費税分は値引きを・・・」というのが日常的に要求されるのである。暗黙の要求であり、むしろ「消費税分は値引きしますから」とも言わないような業者ははなから使わないのである。「ギリシャのようにならないために・・」と菅総理は言っていたが、ギリシャは消費税を18%から21%へとあげ、一方で法人税を40%から20%に下げた結果、あのように税収に穴があいて財政破綻したのである。菅さん、『あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの』よ。

消費税の賛否を書くのはこれくらいにするが、われわれがん患者にも大きな影響がある。医療費の明細には消費税という項目がない。消費税はかからないのである。しかし病院が購入する医療資機材には消費税がかかってくる。つまり病院は患者から消費税はもらえないが負担しなければならないということだ。今でも赤字の病院経営はますます大変になることは予想できよう。それが患者に良い結果をもたらすはずがない。

朝日の購読は10数年来である。その前は読売を20年以上購読していた。読売が(なべつねが)「憲法9条の改正」を主張しだしたので、今回のように購読を中止して朝日に替えた。今また朝日を止めることになった。こうしてみると、日本の新聞界が徐々に右傾化してきた軌跡が、我が家の新聞購読という窓から透けて見える。当面東京新聞を購読することにしたが、別段紙面が気に入ったからではない。一番安いからというだけである。紙面が気に入らなければニュースはインターネットで見ればよい。

みんなが一步右による。少し遅れて自分も一步右へ。ときによってはみんなより先に右に一步移動する(朝日新聞のように)。この繰り返しによって、相対的な自分の位置を「中庸」に保とうとする。そして頑固に自分の主義を曲げない、「中庸」だった人間がいつの間にか「左」の烙印を押される。烙印を押されたくなければ「まぁ、世の中こんなものですから」などと言って、素知らぬ顔で一步右に寄るのである。ときの権力を監視しない新聞なら、折り込み広告の入れ物でしかない。こんな新聞は存在する必要がない。朝日も毎日も読売化することを目指しているかのようだ。しかしその方向なら先例がある。産経新聞だ。自民党の機関紙化した産経が今どうなっているか。購読料2950円でスポーツ新聞並みではないか(サンケイスポーツのほうが高い)。こんな未来を夢見ているのだろうか。

いつか来た道、こうして歴史は繰り返す。

2010年7月18日 (日)

腫瘍マーカの数値は信用できるのか?

足利事件でDNA鑑定により犯人とされた菅家さんの無罪が確定したというニュースはまだ記憶に新しいが、先日(7/16)は神奈川県警で科学捜査研究所のDNA誤登録が原因で別人を逮捕したという事件が報じられた。

DNA型鑑定の精度は足利事件当時とは格段に向上して、同一パターンが出現する確率は4兆7000億人に1人といわれる。ところが、一般に実験・試験において検体の取り違え、何らかの記載ミス、事故などにより間違いを犯す確率は、公表はされていないが多くの専門家はそれを100分に1程度だとしている(『たまたま』レナード・ムロディナウ著、P.58)。仮に試験機関においてミスを犯す確率が100分の1としよう。試験機関がミスを犯す確率とDNAのパターンが一致する確率は独立した事象だと見なせるから、DNA鑑定において無実の人が犯人とされる確率は、これらの合計である。(偶然の一致と人為的ミスはどちらもあまり起きそうにないから、両方が同時に起きる確率は無視して差し支えない。したがってどちらか一方が起きる確率を求めればよいのであり、統計学では独立した事象のどちらかが起きる確率は、それぞれが起きる確率の合計であることを教えている)

そして4兆7000億分の1は100分の1に比べて無視できるほど小さいから、えん罪の起きる可能性は100分の1として差し支えない。これはどうみても無視できるような数字でない。

つまり、足利事件裁判においてはDNAの鑑定精度を云々するよりも検体の取り違えなどの人為的ミスの確率を問題にすべきであった。そして人為的ミスの確率は決して小さくはなく、人間は必ずいつかはミスを犯すだろうから、これからもえん罪は起き続けるだろう。さらに、人為的ミスではなく意図的に検査結果の信憑性を低下させるような行為があるとしたら、誤鑑定の確率は10分の1程度に上昇しても不思議ではない。

がん患者にとって重要な検査項目である腫瘍マーカにおいて、こうした人為的ミスがあるとしたらどのような影響があるだろうか。CA19-9が500→300→200と下がってきた。患者は安心して現在の治療法が効いているのだと思うし、医者も同じように考えて今の治療法を継続するだろう。しかしその測定値がミスによるものであって、実際は300→400→500なのかもしれない。測定値が信頼できなければ治療方針に確信が持てない。もちろんどのような測定にも誤差はある。誤差の範囲を考慮して検査結果を判断すべきである。しかし、その検査に人為的ミスだけではなく、意図的な悪意に満ちた、いい加減な検査があるとしたら、ことはがん患者の命に関わる重大事である。「現在のガン治療の功罪」で梅澤医師がその実態を書いている。それも最近のできごとらしい。

大手といわれる試験機関において検査の信憑性が疑われており、それを指摘されているにもかかわらずいまだに公表も弁明もしていないという。梅澤医師はマスコミの取材を通じて公になるはずだと予告している。ある医療事件で患者の立場に立ち、内部告発をしたこともある梅澤医師である。今後の展開に大いに期待したい。

今はどこの病院も経営が苦しい。従って外注経費の削減は至上命令であろう。外注に出す検査費用も安いところを優先するに違いない。そして試験機関も単価を安くしなければ病院から仕事がもらえない。そのためにはどうするか。手っ取り早いのが高価な試薬を薄めて使う、あるいはより安価な試薬に変更するということが日常的に行なわれているとしても不思議ではない。詳細は忘れたが、何年か前にそのような事件が報じられたという記憶がある。鰻や牛乳、赤福に白い恋人。医療の検査ではこのようなことは起きていないと思う方が、脳天気すぎると言えるに違いない。

つまりは、より安く、より利益を上げるという経済論理が医療の分野でも横行しているのである。公平な競争は必要であり、無駄は省く必要があるが、現在の医療行政のもとではそれが常識的な水準を超えており、もはやまともな経営者では経営ができないというレベルにまで悪化してしまったということではないだろうか。営利企業である検査会社だけではなく、民間資本を導入した病院経営の行き着く先を暗示しているできごとである。

腫瘍マーカの数字がまったく信用できないということは、われわれがん患者は目隠しをされて横断歩道を渡らせられているようなものである。大きな不安と憤りを感じる。

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2010年7月16日 (金)

切除不能な膵胆管癌にはハイパーサーミアが有効

7月14~16日まで下関で開催された「第65回日本消化器外科学会」における発表です。温熱療法と化学療法、放射線療法の併用で生存率、生存期間で高い効果が得られたという内容です。

切除不能膵胆管癌に温熱化学放射線療法が有効【消化器外科学会2010】
 切除不能な膵胆管癌は、まだ有効な治療法が定まっていない。7月14日から16日まで下関市で開催されている日本消化器外科学会で、群馬大学病態総合外科学の小林力氏は、こうした癌に対する温熱化学放射線療法の有効性をレトロスペクティブに検討した結果を報告した。

 対象は、1995年1月から2010年6月までに経験した切除不能膵癌30人、切除不能胆管癌23人。温熱化学放射線療法は、ゲムシタビン400mg/m2/週、2Gy/日(計50Gy)、放射線照射野の中心部を最高温度43℃で60分間加温 ――という方法で行った。

 その結果、膵癌では、ゲムシタビン単独群20人の奏効率が5%だったのに対し、温熱化学放射線療法群10人では30%。胆管癌では、ゲムシタビン単独群6人の奏効率が0%、放射線療法群12人の奏効率が17%だったのに対し、温熱化学放射線療法群5人では40%と高い効果が得られた。

 生存率についても、膵癌ではゲムシタビン単独群の生存期間中央値が151日、1年生存率が5.3%だったのに対し、温熱化学放射線療法群ではそれぞれ247日、22%と延長していた。胆管癌ではゲムシタビン単独群の生存期間中央値199日、2年生存率0%、放射線療法群はそれぞれ273日、7.7%であり、温熱化学放射線療法群ではこれを471日、25.0%に延長できた。

 小林氏は、「温熱療法の併用によって、化学放射線療法の効果を高めることができたと考えられた。今後、ゲムシタビンの使用量を増やす試みや、他の抗癌剤との併用なども検討していきたい」と期待を込めた。

ハイパーサーミアは健康保険も適用できます。U先生は、以前は巷の民間代替療法と同じで「効果はない」と書かれていたが、最近ではその効果に期待感を持っているようすがブログに書かれています。このブログでは米原万里さんの『打ちのめされるようなすごい本』の紹介の中で米原さんのハイパーサーミア体験にも触れています。参考に。

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2010年7月12日 (月)

血中ビタミンD値は頻度の低い癌のリスクと関連しない

「米国統合医療ノート」の安西さんから適切なコメントをいただきました。ぜひコメントと合わせて閲覧してください。


先に「ビタミンDとメラトニン」という記事を書きましたが、これに反する内容の大規模研究結果がでました。「血中ビタミンD値は頻度の低い癌のリスクと関連しない」との米国国立癌研究所(NCI)を含めた計10件の独立した研究機関でも結果です。

NCIニュース 2010年6月18日

血中ビタミンD値が高いほど癌の発生リスクは軽減されるかもしれないという希望が持たれていたが、大規模な研究により非ホジキンリンパ腫や子宮内膜癌、食道癌、胃癌、腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌に対しては予防効果が無いことが認められた。

この研究は、米国国立衛生研究所の1機関である米国国立癌 研究所(NCI)をはじめとするその他多く研究機関の研究者たちによって実施され、計10件の独立した研究で採取した血液サンプルのデータを総合して、血 中ビタミンD高値の人々がこれらの稀な癌に罹りにくいのかどうかを調査した。これらの分析の詳細はThe American Journal of Epidemiology誌のオンライン版に2010年6月18日に発表され、2010年7月号の印刷版に発表された。

試験参加者は研究によっては30年以上も追跡調査を受けた。試験責任医師らは、血中ビタミンD値の高い(75 nmol/L以上)、あるいは低い(25 nmol/L以下)参加者における癌発生率と、血中ビタミンD値が正常範囲内(50~75 nmol/L)の参加者における癌発生率を比較した。

これらの研究において、少数ではあるがビタミンD値が100 nmol/L以上の試験参加者の間では、膵臓癌の発生率が高まるという結果を認められたが、他の部位の癌に対しては発症率の上昇は認められなかった。この 因果関係を明確にするために更なる研究が推奨された。

これまで研究者および臨床医らはビタミンDの癌予防への有効性について期待してきた。ビタミンD値が高ければ直腸癌のリスクは低いという相関性がいくつかの文献で示されたものの一貫した根拠はない。

「今回のコホートデータの統合解析では、ビタミンDは骨の健康には有効性が高いにもかかわらず、これらの頻度の低い癌の発症リスクの軽減と関連していなかった」とAlbanes氏は結論づけた。

これまでの小規模な研究ではビタミンDはがんのリスクを減少させるという結果であったのが、大規模な研究では否定されたということです。さて、どのように考えればよいのでしょうか。一般論でいえば、往々にして大規模な統計では過去の小規模な統計結果と異なる結果が出ることは珍しくないことです。これは統計という手法の性格から言えることであり、大規模な統計になるほど母集団の均質性を保つことが難しくなるからです。一方で小規模な統計でその集団における傾向はつかめても、全体の傾向は分からない。統計とは難しいものですね。

もともと一種類のサプリメントにがんの予防・治療効果を期待することが無理なわけで、明確ながん予防効果を示すサプリメントは存在しないのです。「がんを治すことのできる代替療法は一つもないが、自己治癒力・自然の防衛力を無視することもナンセンスである」とのシュレベールの言葉にあるとおり、過大な期待は禁物ですが、さりとてまったく効果がないとも言いきれない。他の効果もあり、副作用が問題にならないのであればせっかちに決めつけないで続いて服用を続けるつもりです。

がんの補完代替医療ガイドブック 第3版』なども参考にして、自分で判断して決断する。これしかないでしょうね。

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2010年7月 8日 (木)

がん患者は先ず運動不足解消を

梅雨で湿度が高く、歩くと汗びっしょりになります。最近はバックパックに必ず下着の替えを入れています。会社に着くとタオルで汗を拭き取って新しいシャツに着替えると気分もすっきりとします。

がん患者、がん経験者はもっと歩くべき、というレポートが出ました。

癌サバイバーに対する運動推奨ガイドライン 

癌、 フィットネス、肥満および運動の専門家13人からなる委員会は、癌患者や癌経験者に対する最も重要なメッセージの1つとして「運動不足の回避」であると発表している。

同委員会は、積極的な癌治療を受けている患者および治療を終了した後の患者を対象とした運動や身体活動に関するガイドラインを作成するため、米国スポーツ医学会(ACSM)により昨年招集された。

運動の有益性は多くの癌症例で証明されており、例えば生活の質に直接影響する倦怠感や身体機能の分野で認められている。生存が最終的な評価項目である一方、米国では推定1200万人の癌サバイバーがいてその数も増加しているなか、生活の質の改善の重要性が急激に増加している。

NCI癌制御・人口学部門のDr. Rachel Ballard-Barbash氏は、積極的治療を受けている患者や治療を完了した患者における身体活動とQOL改善を結びつけるエビデンスは「非常に強 い」と述べた。

最も頑強なエビデンスは、積極的な癌治療を終了した患者にて認められている。
最近のASCO年次総会における運動と癌に関する教育セッション中、Courneya氏は 「患者は化学療法や放射線療法を受けているときでさえ、われわれの元来の想定を超えた多くのことを行うことができると判明しました」と述べた。

Ballard- Barbash氏は、「これは重要なことで、短いウォーキングなど、適度な運動でさえ有益です。何もしなければ利益は得られません」と強調した。


私は手術直後に、身体にチューブがつながれたまま、点滴スタンドを肩に担いで病院の階段を上り下りしていましたが、これはさすがに「転んだらどうするの!」と看護師に禁止されました。こんなことは推奨しませんが、ベッドから動けなければ足だけでも動かして運動する、部屋の中を歩いてみる。退院したら自宅の近所の散歩から始める。無理のない範囲で持続的に運動することが、がんの予後にも必ず良い効果があります。

食事療法やサプリメントに関心がいくのも結構ですが、まずは運動から。ろくな運動もしないでいて、高価なサプリメントだけに関心があるがん患者が多いように思います。

歩けばリンパ液も血液も良く循環します。結局人間は二本足で歩くようにできているのです。がんと闘うのは、最終的には「免疫力も含めた体力」である、ということでしょう。体力がなければ、抗がん剤・放射線をはじめとする積極的な治療に耐えられるはずがありません。また、体力を保持できないような極端な食事療法には懐疑的なのです。だから「私のがん攻略法」に書いた第一番は「ともかく歩け、歩け」なのです。

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2010年7月 7日 (水)

セルジーンがアブラクシス・バイオサイエンスを買収へ

転移性乳がんの第二選択薬で承認されたアブラキサンが固体腫瘍におけるセルジーンの地位を確立し、血液がんにおけるリーダーとしての地位を補強非小細胞肺がんの第一選択薬および膵がんの第一選択薬としてのアブラキサンに関してASCOとAACRで最近発表された臨床データは、顕著な成長機会を明示。セルジーンが2010年度非GAAP業績見通しを再確認/本買収は2011年度の非GAAP利益に対してやや希薄化をもたらし、2012年度以降は増益をもたらす見込み/買収により2015年度の売上高が約10億ドル増加すると期待。

アブラクシス・バイオサイエンスの買収によって、腫瘍治療の世界的リーダーになるというセルジーンの戦略が加速化されます。本取引で注射懸濁液用アブラキサン(ABRAXANE®)(注射懸濁液用のタンパク質結合パクリタキセル粒子)(アルブミン結合)が、当社の一流がん製品から成る既存ポートフォリオに追加されます。アブラキサンは2005年1月に米国食品医薬品局(FDA)から、転移性疾患に対する併用化学療法の不応後、または補助化学療法によって6カ月以内の再発後に乳がんの治療で承認されました。それまでの治療法では、臨床的に禁忌を示さない限り、アントラサイクリンを使用する必要がありました。アブラキサンは2008年1月に同じ適応症で欧州医薬品庁から承認されました。アブラキサンはまた、IIB-IV期の黒色腫と膵がんで希少薬指定を受けています。

セルジーン・コーポレーション最高経営責任者(CEO)のBob Huginは、次のように語っています。「アブラクシス・バイオサイエンスの買収はこれまでになく当社の戦略に適合するものであり、これにより腫瘍治療の世界的リーダーになるというセルジーンの戦略に勢いがつきます。当社は自社の臨床、規制関連、商業の各領域における能力を活用して、転移性乳がんの患者にアブラキサンという革新的な治療薬を提供できることができ、非常にうれしく思います。当社はまた、非小細胞肺がんや膵がんといったほかの悪性固体腫瘍も治療できる潜在機能にも大いに期待しています。最後に、アブラクシスが開発したnab®?ベースの治療薬が持つ潜在力は、セルジーンの革新的科学とともに、患者、医師、当社の全利害関係者に長期的な価値を提供する可能性を秘めています。」

アブラクシス・バイオサイエンスのPatrick Soon-Shiong執行会長(M.D.)は、次のように語っています。「当社のnab技術プラットフォームは難治性がんの治療でパラダイムチェンジを引き起こしつつあります。当社は世界中の患者の生活を改善する上で、アブラキサンその他の当社治療製品のリーチをさらに拡大するための理想的なパートナーをセルジーンに見出しています。」

nab®駆動型化学療法について

アブラクシス・バイオサイエンスは同社独占的なナノ粒子アルブミン結合(nab)技術を開発しました。これはアルブミンのナノ粒子を活用することで、腫瘍の化学療法剤を活性化状態で標的に届けるためのものです。このnab駆動型化学療法は血液間質のバリアを浸透して腫瘍細胞に届けるための新パラダイムを提供します。nab駆動型化学療法剤のデリバリー機構としては、腫瘍によって活性された未確認のアルブミン特異的な生物学的経路をヒト血液タンパク質のアル ブミンを含むナノシェルで標的にすることが考えられています。このナノシャトル・システムは、カベオリン-1で活性化されたカベオラ輸送を利用して、増殖している腫瘍細胞の細胞壁で、アルブミン特異的な(Gp60)受容体が媒介するトランスサイトーシス経路を活性化すると考えられています。このアルブミン 結合薬剤が間質の微小環境に置かれると、第2のアルブミン特異的結合タンパク質SPARCによって選択的に局在化される可能性があります。このSPARC は腫瘍細胞が間質に分泌するタンパク質です。その結果、腫瘍細胞を取り囲む間質が破壊されることでnab化学療法剤が腫瘍細胞自体の細胞内中心部に運ばれやすくなる可能性があります。

アブラキサンに関する最近の臨床データ:進行性膵がん

最近のASCO総会では、ゲムシタビン・ベースの治療で進行した進行性膵がん患者においてアブラキサンを評価する第2相臨床試験のデータも発表されています。治療の結果は、患者の58パーセントが6カ月の全生存期間(OS)を達成し、生存期間中央値は7.3カ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は1.6カ 月でした。患者5人が追跡期間中央値12.7カ月で生存し、うち1人が治療15サイクルで安定(SD)しています。2010年4月に開催された第101回 米国がん研究学会(AACR)年次総会で、アブラキサンとゲムシタビンの併用を対象とする第1相・第2相試験のデータが発表されましたが、上記の結果はこのデータの後に出たものです。この試験では進行性膵がんの第一選択治療で生存期間の延びが実証されました。125 mg/m2のnabパクリタキセル(アブラキサン)とゲムシタビン(1000 mg/m2)の推奨投与量で治療した患者44人のOS中央値は12.2カ月で、ゲムシタビン単独の歴史的対照と比べ生存期間は2倍になっています。進行性転移性膵がんの第一選択治療として、nabパクリタキセルとゲムシタビンの併用、ゲムシタビン単独を比較評価する第3相臨床プログラムで登録が進行中です。

アブラキサン(ABRAXANE®)について

アブラキサンは転移性乳がんに対する溶媒フリーの化学治療オプションで、アブラクシス・バイオサイエンスの独占的なnab®技術プ ラットフォームにより開発されました。このタンパク質結合化学療法剤は、天然のヒトタンパク質であるアルブミンと、パクリタキセルを組み合わせたもので す。アブラキサンは有効成分をアルブミンで取り囲んでいるため、患者に対して高用量で投与することができ、溶媒を使用したパクリタキセルと比べて高濃度のパクリタキセルを腫瘍部位に届けることが可能です。アブラキサンは現在、転移性乳がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、膵がん、胃がんといった広いがんに対する治療でさまざまな段階の臨床試験が行われています。

米国食品医薬品局は2005年1月、注射懸濁液用アブラキサン(注射懸濁液用のタンパク質結合パクリタキセル粒子)(アルブミン結合)を、転移性疾患に対 する併用化学療法の不応後、または補助化学療法によって6カ月以内の再発後に乳がんの治療で承認しました。それまでの治療法では、臨床的に禁忌を示さない限り、アントラサイクリンを使用する必要がありました。アブラキサンの処方に関する完全な情報についてはhttp://www.abraxane.comをご覧ください。

セルジーンについて

米ニュージャージー州サミットに本社を置くセルジーン・コーポレーションは国際的な総合バイオ製薬企業で、主として遺伝子とタンパク質を調節することでが んと炎症性疾患の新規治療薬の創薬・開発・商業化に努めています。詳細情報については同社のウェブサイトwww.celgene.comを ご覧ください。

2010年7月 2日 (金)

「アブラキサン」承認手続きへ

nab-paclitaxel(アブラキサン)が乳がんを対象として承認されそうです。大鵬薬品工業は膵がんについても研究開発をしていると報道されています。TS-1も大鵬薬品工業ですよね。TS-1の売上減少になるから申請を遅らせる、なんてことはないでしょうね。

薬事・食品衛生審議会薬事分科会は6月29日、新たな治療ターゲットを持つ抗リウマチ薬「オレンシア」、国内初の骨形成促進タイプの骨粗鬆症治療薬「フォルテオ」の2品目を審議・了承すると共に、新たな選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)「ビビアント」、サリドマイド誘導体の「レブラミド」など13品目について報告を受けた。オーファン指定を受けているレブラミドについては、事前に書面で分科会の確認を得た上で、6月25日に厚生労働省が承認している。残る14品目は、今月にも正式承認される見通し。

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「アブラキサン」承認手続きへ

 この日の部会では、議題となった15品目以外に、医薬品第2部会の了承後に特定ロットへの異物混入が発覚し、承認が先送りされていた抗癌剤「アブラキサン点滴静注用」(大鵬薬品が製造販売、有効成分はパクリタキセル)の取り扱いを厚生労働省が報告。医薬品医療機器総合機構による国内外の製造所に対するGMP調査で、品質上の懸念が払拭されたため、時期は流動的だが、正式承認の手続きに入ることになった。
薬事日報7/1より

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がんペプチドワクチンとパクリタキセルの情報

がんペプチドワクチンに臨床試験結果について、最近の結果が読売の記事に触れられています。昨日書いたように、びっくりするほどの有効性は出ないだろうと推測しています。むしろ再発予防に使った方が効果的ではないでしょうか。

がんペプチドワクチン療法… 免疫細胞増やし対抗

 横浜市内に住む女性(34)は約2年前に手術で膵臓がんを切除したが、約3か月後に肝臓への転移が判明。抗がん剤治療を始めたが、がんは2か月後に倍以上に肥大し、医師からは治療の継続が困難と告げられた。

 同療法の臨床研究が行われている千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)を知り、昨年4月から、最初の2か月間は週1回、その後は月2回、太ももの付け根にワクチン(1回1cc)の皮下注射を受けてきた。がんは3センチまで増大したが、今年5月中旬には4分の1に縮小。女性は「一時は緩和ケアも考えましたが、最後までがんに向き合う気持ちが持てました」と話す。

 同研究所は2006年8月から今年5月中旬に、全国59施設で約1050人に実施。生存期間の延長効果などを分析中だが、明確な結論は出ていない。発熱や注射部位の皮膚の炎症などがあるが、重い副作用は確認されていないという。

 中村さんは「標準治療を尽くして免疫力が低下した後ではなく、より早い時期にワクチンが使えれば、さらに効果が表れる可能性がある」と強調する。

もうひとつ別の膵がんについての記事。

転移性膵腺癌に FOLFIRINOXレジメンが生存のベネフィットをもたらす可能性【WCGC2010】

 転移性膵腺癌に対するFOLFIRINOXレジメンは、標準治療のゲムシタビンと比べて全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、疾患が進行するリスクを53%減少させ、QOLの低下も抑える可能性があることがフェーズ3試験の結果から示された。毒性はやや高いものの管理可能と考えられた。6月30日から7月3日までスペイン・バルセロナで開催されている第12回世界消化器癌学会で、フランスCentre Alexis VautrinのThierry Conroy氏が発表した。

さらに、こちらは膵がんではなく乳がんですが、先に紹介したパクリタキセルが日本人の乳がんでも効果があったという記事。膵がんにおいても臨床試験の早急な実施が求められます。

ゲムシタビン・パクリタキセル併用療法は転移・再発乳癌に有望【乳癌学会2010】

 転移・再発乳癌患者に対するゲムシタビン・パクリタキセル併用療法(GT療法)は、日本人患者においても海外の報告と同様の奏効率が得られ、忍容性も良好であることが、フェーズ2試験の2年間の経過観察報告から示された。6月24、 25日に札幌市で開催された第18回日本乳癌学会学術総会で、大阪大学大学院乳腺・内分泌外科の中山貴寛氏が発表した。

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2010年7月 1日 (木)

「初のすい臓がんワクチン」開発に青信号

韓国からの情報です。

「初のすい臓がんワクチン」開発に青信号
2010年7月1日10時4分配信
(C)YONHAP NEWS

【ソウル1日聯合ニュース】国内バイオ企業のKAEL-GemVaxが最終臨床試験を続けている膵臓(すいぞう)がんワクチン「GV1001」について、商用化の可能性を高める公式中間報告書が示された。

膵臓がんは、がんの中でも最も予後が良くないとされるが、まだ十分な治療薬が商用化されていない。「GV1001」ワクチンが最終臨床試験に成功すれば、韓国バイオ企業が「世界初の膵臓がんワクチン」というタイトルを手にする可能性もある。

KAEL-GemVaxによると、英リバプール大学の臨床研究センターでは現在、さまざまな国籍の膵臓がん患者を対象に「GV1001」の臨床第3相試験を進めている。

臨床試験に関わっていない専門家で構成された独立機関「データ・モニタリング委員会」は、最近まとめた報告書で、臨床第3相試験が順調に進んでいると評価した。現在までに、患者目標数1100人のうち7割に当たる755人の募集が完了しており、このまま進めば来年10月ごろに試験が成功裏に終了すると見込んでいる。同委員会は、分析結果に基づき試験の継続・中断を臨床試験委員会に勧告する権限を持つ。

このワクチンは、さまざまな形態のがんで過度に発現する細胞の生存に関連する「テロメラーゼ」という酵素を調節することで、がんを抑制する。同社は、臨床試験が7割ほど終わった段階で肯定的な報告書が出され、今後の臨床試験がさらに流れに乗るものと期待を示した。来年には最終データを基に、販売許可取得を進められるだろうと話している。

中村祐輔教授のがんペプチドワクチン、ペガサスPCの結果はどうなったんでしょうかね。そろそろ結果が出てもいいころ。いまだにニュースになりません。私はあまり期待できないのでは?と感じているのですが。

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プラシーボ効果を利用する

ストレスが少ない乳がん患者は、死亡や再発のリスクが低い」という研究結果が明らかになった。同じ研究チームの以前の研究では、乳がん患者への介入プログラムの有無で生存率に差があるということだった。この研究はいろいろな書籍でも引用されているので、ご存じの方も多いだろう。その研究は継続されており、こんどは乳がんが再発した患者の死亡リスクについても差があったという結果である。

がんとこころのケア (NHKブックス)

心理的な要因が、がん患者の予後に影響を与えるということは、ほとんど実証された事実であるといっても良いのではないだろうか。(『がんとこころのケア』明智龍男 ではこの研究に異論を唱えているが)

であるならば、われわれがん患者が知りたいことは、どのようにすれば心理的要因を上手に利用してがんの治癒を獲得することができるのだろうか、ということである。つまりは、プラシーボ効果は利用可能なのか、ということだ。

二十世紀中頃まで治療は原始的・非科学的でほとんど効果がなく、(現代人からすれば)ショッキングであったり危険であったりするものであった。何千年にもわたって医師たちは、現在では無効で、ときに有害ですらある薬剤を処方し続けてきた。今日われわれは、これらの手技や薬剤の有効性は、非特異的要素つまりプラセボ効果であったことを知っている。事実、最近に至るまで医療の歴史は本質的にはプラセボ効果の歴史であった。無効は方法を使用していたにもかかわらず、医師は尊敬され名誉を与えられてきたが、それは彼らがプラセボ効果を治療に使えたためである。少なくとも近代の科学的医学の黎明まで、プラセボ効果は医療そのものであり全盛を極めていた。

パワフル・プラセボ―古代の祈祷師から現代の医師まで

『パワフル・プラセボ』の一節である。ハーネマンがホメオパシーを提案した時代、患者は、下剤を飲まされ、吐かされ、毒を飲まされ、切られ、吸角療法で吸われ、水疱を作られ、瀉血され、凍らされ、熱せられ、発汗させられ、蛭で血を吸われ、ハエやロバの糞を塗られ、ショックに陥り続けたのであった。むしろ治療しないほうが治癒する可能性が高かったに違いない。ホメオパシーのレメディは1分子も存在しないほどに薄められているのだから、これらの治療法にとって替えれば危険性はなくなり、患者が殺されることから免れる道理である。それにプラシーボ効果が付け加わるのだから、庶民に歓迎されたのも頷けよう。その意味では、当時は有効な治療法であったとも言える。しかし、現代医学である程度の疾患が治るようになったにもかかわらず、少なくとも間違った治療法で殺される患者は滅多にいなくなったにもかかわらず、いまだにホメオパシー療法を褒め称えている帯津先生のような医者もいる。

医療とプラシーボ効果は分かちがたく結びついている。プラシーボ効果は、あらゆる治療行為において数十%、ときには60%もの割合で有効性を発揮するという。EBMが強調され、二重盲検法が推奨されるとき、プラシーボ効果は、検証しようとする治療法にとっては”雑音”であり、取り除くべき対象である。しかし、プラシーボ効果が医療と分かちがたく結びついているであるのなら、現場の医師は「プラシーボ効果も処方できなくてはならない」。アンドルー・ワイルが言うように「強力なプラシーボ効果を利用して悪いことはない」のである。

プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬

『プラシーボの治癒力』は、このプラシーボ効果を治療に用いるためには何が必要かを説いている。もちろんプラシーボ効果について分かっていることは少ない。また、免疫に関する知識は加速度的に増えているとはいえ、まだわれわれはその入口に位置しているに過ぎないだろう。まして脳の解明はほとんど進んでいない。プラシーボ効果が心(脳)と免疫とに関係するのであれば、我々にはほとんど分かっていないことばかりだという点は、留意しておくべきである。安保徹氏が言うように「ストレスをなくすれば癌は治る」ほどには人間の身体は粗雑にはできていないのである。

したがってこの本『プラシーボの治癒力』の内容も、「こうすればプラシーボ効果が利用できて、病気が治癒する」と断定的な方法を提起しているわけではない。しかし、現在までの研究成果を網羅して、プラシーボ効果の機序とそれにうまく対処する方法を提案しているのであり、がん患者として一読してみる価値はある。

(プラシーボ反応を)コントロールする「画期的な発見」はまだない。しかし、さまざまな分野でヒントとなりそうなものはたくさん見つかっている。この本では、これらのヒントを体系化して、プラシーボ効果という現象を解き明かし、強力な治癒効果を誰もが利用できるようにするための、明快かつ科学的価値のある理論に到達することを目指している。

  • 「意味づけ仮説」と著者が言うある一連の状況が存在するとき、症状が大いに改善する。
  • これまでのプラシーボ反応の例を挙げ、用語の定義をする。
  • 「体内の製薬工場」理論について検討し、理解する。
  • プラシーボ反応の作用理論である「期待論」と「条件付け論」から新しい「意味づけ仮説」を導入する。
  • プラシーボ反応が西洋医学と代替医療との接点で果たす役割について考察する。
  • 「回復したい」という欲求と、他者及び自分自身への寛容な態度について考察する。

本書の結論部分で著者は「プラシーボ反応を予測可能な、自分の意のままになるものとして扱うようになったら、皮肉なことにプラシーボ反応は私たちを助けてくれなくなるだろう。助けてくれるとしたら、ひとつには私たちがそれを神秘的だと思い続けているかぎりにおいてなのだ」という。

著者はまた、「意味づけ仮説」に基づいて「物語を織り上げる」ことを推奨する。

病気に対処するための第一ステップは、病気にいちばんよい説明を付けることである。どのようにして病気があなたの人生に入り込んできたのか、その原因は何か。過去のあなたの経験と似ている点はないか。病気に対処することであなたに変化はあったか。こうして織り上げられた「物語」には人によって三つのタイプがある。

「混乱の物語」は病気に打ちのめされて、恐怖と混乱に陥った物語である。がんを宣告された最初には多くの人がこうした物語を織り上げる。「どうしてこの私ががんにならなければならないのよ」「何かの間違いだろう」というわけである。しかしその期間は長くは続かない。いずれはみんな、次の「復活の物語」を語るようになる。

「復活の物語」は、正しい治療の結果病気はすっかり治って、過去の不愉快な思い出に過ぎなくなるというわけである。たいていの医師が語りたがる物語であり、多くの患者もこの物語を聴きたがる。現代医学に批判的な人たちは別の「復活の物語」を作りたがる。標準的な治療をするが結局うまくいかず、患者は絶望して自分で自分の病気を治すべきだという結論になる。そして代替医療の治療家にたどりつき、彼らのすばらしい「食事療法」あるいは「全体医療」で治ってしまう。担当の医者はびっくりして悔しがる、という物語である。しかし復活の物語には偽りがある。慢性疾患を抱えて治癒できなくても生存はできるようになった。インスリンを打ち続ければ糖尿病を持って生活することはできる。しかし、私たちはいずれいつかは死ぬのであり、病気とつきあって生きているのだということを忘れさせてくれるわけではない。多くの病気は「復活の物語」では救われない。末期癌になってもまだこの物語にしがみついているとしたら、人生を勿体なく過ごしているのだ。

傷ついた物語の語り手―身体・病い・倫理

「冒険の旅の物語」はアーサー・フランクが『傷ついた物語の語り手』で述べた興味深い物語である。これは主人公がドラゴンを倒したり、不幸な乙女を救うという「おとぎ話」に通じる物語である。主人公はさまざまな冒険をし、それに勝ったり負けたりしながら成長する。あるときはすばらしい武器を手に入れることもあれば、魔法使いに騙されることもある。こうした困難に打ち勝って、最後の闘いに臨むための資格を証明しなくてならない。しかし、任務は達成できることもあれば、失敗することもある。いつも必ず達成できるわけではない。この物語の核心は、「最終的に主人公が変容している」ということである。さまざまな体験によって鍛えられ、最初の青二才ではなくなっている。任務が達成できたのは、冒険によって身につけた新しい知恵と能力を使ったおかげであり、任務が達成できなかったとしたら、最初の野望はばかげた気まぐれであり妄想であったということである。彼の人生を真に満たすものは最初に考えていたものとはまったく違うということに気付くのである。

治療がうまくいくという希望がある間は「復活の物語」を織り上げるべきであり、「冒険の旅の物語」は時期尚早である。しかし、「自分もいつかは死ぬという事実をうまく受けいれることができたとき、私たちは体内の製薬工場を解き放ち、最高の働きをさせることができる」のである。死を受けいれることを納得したとき奇跡的な治癒が起こるという例はたくさんある。私のブログでも断片的に、著者と同じことを書いてきた。この本に出会って、自分の考えてきたことは的を射たものであったと確信できる。

やはり「こころの有り様」ががん患者の予後に大きく影響することはまちがいないのである。

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