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2011年10月

2011年10月30日 (日)

チェロ発表会 Wind & Strings Concert 2011

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先週の信州での一枚。渋峠の紅葉は昨年の方(こちら)が良かったなぁ。


昨日はチェロの発表会「Wind & Strings Concert 2011」とタイトルは仰々しいが仲間うちの発表会のようなもの。

4人で2パートに分かれてミシェル・コレットのソナタハ長調。繰り返しでパートを交代して全員が曲の全体を挽くことができるように構成した。終わっての感想? まぁ80点かなぁ。

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なによりも術後4年半で、こうして楽器演奏を楽しめることだけで幸せである。演奏がうまくいけば、なお幸せである。こちらは己の才能と練習次第だから、頑張ってもそれなりの運命が待ち構えている癌とはちがい、己の才能を呪うというわけにはいかない。

チェロを弾く上で難しいことは、ひとつの音から次の音にいかに到達するかを知ることだ。パブロ・カザルス

を実感した演奏会だった。知ることができても体がついていかないのだが。音を値切らないで弓を十分に使う。しかし次の音に出遅れない。で、かつ音のつなぎ目が不自然にならないように。人生いかに生きるべきかよりも、こちらの方が難問のような気がする。

みなさん自分のチェロを持参しているので控え室で楽器を取り替えて弾いてみたが、それぞれに音色が違う(あたりまえだが)。モンターニャは繊細で高音が澄んでいる。私のゴフリラーは低音の響きが朗々としている。他のモデルとはやはりひと味違う音作りだ。カザルスもゴフリラーであった。

ハ長調はチェロがもっとも豊の朗々と響く。バッハの無伴奏チェロ組曲第3番がハ長調であり、バッハが喜びを表現するときに好んで用いたキーであるそうだ。無伴奏組曲第3番のプレリュードは音のシャワーがほとばしる。ネタを明かせば、2009年カナダのケベック作家連盟文学賞を受けたエリック・シブリンの『「無伴奏チェロ組曲」を求めて ─ バッハ、カザルス、そして現代』に書いてあった。カザルスが弾くプレリュードを聴きながら書いているが、確かに音のシャワーがほとばしっている。

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2011年10月28日 (金)

治すのはあなた自身です

「市民のためのがん治療の会」に掲載された吉村光信さんの「がんと心もよう」がすばらしい。

吉村さんは製薬会社で新薬の臨床開発に従事していた方です。健康診断でたまたま肝がんが見つかり、当初は手術可能といわれたが、いつのまにかステージⅢbで手術不可に。当時は肝がんに効果的な抗がん剤はなく、それでも臨床試験で5-FUを試したら劇的に腫瘍が縮小した。そして手術が可能となったが、難しい手術を引き受けてくれる病院がない。それでも自ら調べて東京医科歯科大学の有井教授に行き着いて執刀してもらう。がんとの闘いは情報戦であり、情報収集の大切さも強調している。

「治療法はありません」と言われたときの受け止め方としてこのように書いている。

不幸にも医療者の心ない言動に傷つきそうになった時には、この人たちは正解のある問題に解答するのは得意でも、患者のこころというアナログ的な課題には苦手なんだと思えば、余計なストレス・怒り、不信感をそらすことができるかも知れません。

二人に一人ががんになる時代だから、「どうして俺が」ではなくて、「妻でなくて良かった」と発想を変えてはどうかとも提案する優しい方です。

新薬の臨床研究に関した仕事をされた方ですが、代替療法についてもエビデンスがないと拒否するのではなく、「直接的な治療効果を示すデータがないということがすなわち、その療法がその人に無効ということではありません。」と里芋パスタやアーユルヴェーダなど経済的負担にならないものを選択して実行しています。

がん治療においては、正常細胞のごとく身を隠しているがん細胞を見破り攻撃できる自らの免疫力が決め手になると考えています。この免疫力はストレス、絶望感、うつ状態により極端に低下します。
私は超越瞑想(Transcendental Meditation)という瞑想を時間が許す限り行っていました。この瞑想は精神的・身体的ストレスを低減するということで多数の医学・科学論文が公表されており、がん患者に対してはQOLの改善に有効であるという報告があります。また、マインドフルネス瞑想という釈迦の教えにヒントを得た認知療法を、初期乳がん患者に導入してストレスを減少させることで、免疫機能、QOLの改善をもたらしたという報告もあります。

と、これもまた私と同じ考え方です。瞑想は免疫を高める効果が確かにあると思います。ナチスの捕虜収容所から奇跡的に生還した精神科医であり実存主義心理学者であったヴィクトール・フランクルの『夜と霧』からの一節

強制収容所において人々の生死を分けたのは、多くの場合、ものごとへの対処の仕方を決めるのは自分だということを自覚しているかどうか、その苦しみの中に生きる意味をみつけられるかどうかであった。

も引用しながら、

私は生命に対する不可思議さ、畏敬の念から、病気の治癒にはプラセボー効果を含め、人間が持つ自己治癒能力が非常に重要だと考えています。そのために、西洋医学的では根拠がないとされるようなことも含め、いろんな治療法も検討しました。その奥には、このような行動をつうじて、がん治療を医者任せにするのではなく、どんな時でもあきらめることなく、自分で治すのだという強いメッセージを、自らの身体に向かって伝えたいという思いがありました。

という。こうした姿勢こそが、統計を無視してサバイバーとなるための必要条件であろう。同じ考えでがんと闘い、サバイバーとなった同志を見つけた心境です。連載の続きが楽しみです。

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2011年10月24日 (月)

紅葉ドライブ・信州

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週末は信州への紅葉撮影ドライブでした。碓井軽井沢ICで高速を降りて、軽井沢-白糸の滝-日本ロマンチック街道を経て、嬬恋、このあたりでは土砂降りの雨。
万座温泉から渋峠、志賀高原-渋温泉で一泊。翌日は、戸隠高原の鏡池へ。戸隠神社の中社を拝観して善光寺門前のそば処「元屋」で絶品の手打ちそば。小布施で栗菓子とワインを買って小布施スマートICから高速に。往復600kmのドライブでずいぶんと欲張った日程でした。写真の整理もまだ手つかずですが、とりあえずの3枚。

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潤満滝(かんまんだき)はちょうど紅葉の見ごろでした。

アップルのS・ジョブズ氏はマクロビオテックやスピリチュアリストに頼って代替医療で治そうとしたようですね。そんなニュースが流れていました。その結果9ヶ月も手術を拒否したのだと。最悪のパターンですね。彼の膵臓がんは膵内分泌腫瘍という膵がんの中でも治りやすい種類だったといわれています。細胞診で顕微鏡をのぞいた主治医が突然泣き出したのは、非常に希な癌腫だったので、あまりの幸運に感極まったのでした。しかし、ジョブズ氏はそのチャンスを活かせなかった。

手術摘要の幸運が舞い込んだのに、食事療法などの代替療法だけで膵臓がんを治そうなどとは、あまりにも愚かな考えです。彼自身も後悔していたそうですが、企業経営に優秀な人物だからといっても、自分のがんに対して有効な対応をとれるとは限りません。世間がビル・ゲイツやジョブズを持ち上げすぎるのです。

久司道夫系のマクロビオテックなのでしょうか? 伝記が出版されればいきさつがはっきりすることでしょう。
近代医療を拒否してエビデンスのない代替療法だけに己の命を賭けるという、実際は愚かな、ごく普通の人物だったのでしょう。社会的地位も学問も、がんになったら何の役にもたちはしない。人間としての本質で闘うしかないのです。代替療法はあくまでも「補完」なのです。

2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは一躍有名になりました。そのスピーチの最期で「ハングリーであれ、愚か者であれ」と学生たちに訴えたのですが、手術を拒否してマクロビオテックを選ぶ「愚かさ」には感心しません。

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戸隠高原の鏡池。運良くつかの間の晴れ間に撮影できました。その後突然雨模様の天気に変わりました。

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2011年10月21日 (金)

がん患者は、食品の放射能汚染をどこまでなら許容できるか?

明日から一泊で信州・渋温泉へ旅行です。紅葉はちょうど見ごろですが、あいにくの雨の予想です。29日のチェロ発表会に向けて練習にも熱を入れているので、ブログの更新が滞っています。

文部科学省が「放射線量等分布マップ」サイトを新しく公開しました。電子国土版では自宅付近を大きく拡大できるので、ホットスポットも確認できます。これを利用して被ばく線量の計算に使えないかと考えています。

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というのも、ネット上にはいくつか被ばく線量計算プログラムがありますが、入力が煩雑だったり、ストロンチウムの影響を考慮していない。また、ICRPの線量評価モデルだけでECRRモデルとの比較ができないなどの不満があります。それなら自分で作ればいいだろうと、一念発起です。

埼玉県ではお茶のメーカーも倒産したりと影響が出ています。全国の食品放射能データを見ても、500Bq/kg以下の食品も結構見つかっていますし、二本松では500Bq/kgの米が検出されて話題になりました。暫定規制値以下なら「安全だ」という首長まで出てくるしまつです。放射能はどんなに少なくてもそれなりのリスクがあるのですが、それは実際どの程度なのか? 3.11以後はきれいな食べ物はないと覚悟すべきなのですが、ではどこまでなら許容して摂取するのか。

この答えを見つけるためには食品の全数検査を政府に要求しなければなりません。500Bq以下でもどの程度なのかを知ることで、消費者は自分で判断できます。生協などはその方向で取り組んでいるようです。それとともに、その汚染度ならどの程度のリスクになるのか、ICRPとECRRではどのように評価が違うのかを知る必要もあります。何ベクレルなのか、そのリスクは? 二つの情報が必要です。

がん患者にとっても、食べ物の放射能は気になるところです。今被ばくしても、立派な癌細胞に育つには10年、20年かかるから、がん患者は気にしなくてよいと、私も以前は考えていました。しかし、被ばくによって免疫機能が落ちる、特にストロンチウム90は、NK細胞を不活性化するとの研究もあり、がん患者にとってこそ被ばく問題は切実だと考え直しました。

被曝はガンの過程を2つの方法で促進させることもできる。最初のものはプロモーション、すなわち、細胞における複製の速度を一般的に増加させることによる(このために突然変異が起きる公算と損傷細胞の数もまた増加する)。2つ目のものは一般的な免疫システムにストレスをもたらすことによる。すなわち、免疫システムに基づく正常ガン細胞監視機構(normal cancer surveillance mechanisms)の抑制による。(ECRR2010より)

放射線量分布マップからは土壌の汚染度をkBq/㎡単位で知ることができます。その土地での地上1mの高さでの空間線量率は、IEAEのデータから求めることができます。この資料は放医研が「放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順」と題して日本語訳を出しており、これらを使って外部被ばくを評価できます。

土壌の汚染データを使う理由は、空間線量率では測定器による誤差が大きすぎるということと、セシウムとストロンチウムの影響を分けて計算するには土壌汚染のデータの方が扱いやすいという点です。安価な放射線測定器で測った空間線量率では、校正もされていないだろうし、機器による誤差が大きすぎます。

例えばセシウム137が100~300kBq/㎡程度に汚染されている土地は、茨城県でも結構広い範囲が存在します。ここに居住している人の年間被ばく線量はどうなるのか、全ての食物が500Bq/kgという暫定規制値なら、どの程度の内部被ばくになるのかを計算できます。まだ未完成ですが、ExcelのVBAでプログラミングして計算した結果を下図に示します。

Ws0027 外部被ばくが(屋外10時間/日)約14mSv、内部被ばくは ICRPのモデルで4.2mSvですから、食品安全委員会が年間5mSvとなるように暫定規制値を決めたということが確認できます。しかし、ECRRのモデルでは108.5mSv、なんと26倍!の被ばく線量になりました。これはICRPとECRRではベータ線放出核種であるストロンチウム90に対する係数が300倍も違うためです。

では、がん患者としてならどこまで食物汚染を許容できるか。これはそれぞれの個人が決めることですが、私は少なくとも100Bq/kg以上のものは避けるべきだと思います。都内に住んで土壌汚染は10kBq/㎡以下だとして、全食品が100Bq/kgのものを食べるときの被ばく線量は、
Ws0028 外部被ばくは0.5mSv程度だから許容できるとして、100Bq/kgで汚染された食物による内部被ばくは、ICRP:0.8、ECRR:21.7mSvになります。ECRRのモデルによる計算は、原発内の作業に従事している労働者の5年間で100mSvという許容線量を超える線量です。ICRPを信じるか、ECRRが正しいと考えるかは人それぞれでしょうが、双方の計算値を比較できます。これらの被ばくによりがんなどのリスクがどの程度増えるのか、それはもう少しプログラムに手を加える必要があります。

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2011年10月17日 (月)

100年に1度は福島原発並みの事故が起きると東電認める

こちらのニュースに注目。

注水停止20時間で炉心損傷、確率5千年に1回

 東京電力は17日、福島第一原子力発電所1~3号機で再び炉心が損傷する確率は、約5000年に1回とする試算結果をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。

 事故前の試算では1000万年に1回としており、2000倍も高くなった。保安院は、試算の内容を検証し、安定化の目標である「冷温停止状態」を維持するための施設運営に生かす。

 損傷確率の計算は、原子炉の注水系統の故障、外部電源の喪失、大津波など7項目を想定。それぞれの原因で、1~3号機の一つに約20時間にわたる注水の中断が起き、炉心損傷が起きる1200度に達する確率を合計した。

 炉心損傷に至る確率が最も高かったのは、大津波が原因で注水機能が回復できないケース。大津波そのものの頻度は700年に1回と見積もっている。
(2011年10月17日22時43分  読売新聞)

ということは、世界には431基の原発があるから、11年に1回の頻度で今回のような事故が起きるし、国内には54基あるので、93年に1回は同じ事故が起きるというわけだ!!  大津波の700年に1回も甘すぎるし、M9.0の地震はもっと頻繁にやってくるはずだ。

セシウム137は半減期が30年だから、93年後はまだ8分の1にしか減衰していない。そこにまた放射能が加わるわけだ。100年に1度の2度目が明日起きてもその後200年事故がなければ計算は合うのだ。1世紀ごとに同じ事故・放射能に耐えられるほど日本人は強いのか?

この種の計算は誤差50~100%と見積もってまちがいない。となると50年に1度の大事故も「想定の範囲内」ということかも。

2011年10月16日 (日)

ビタミンサプリメントとがん、最近の話題

ビタミンの抗がん作用のニュースが立て続けに流れました。国立がん研究センターが多目的コホート研究の結果を発表したものですが、時事ニュースでは、

ビタミン剤の摂取を続けた女性ではがんや循環器疾患の発症リスクが低下するとの調査結果を発表した。男性について関連は認められず、同センターは「男性の場合は、喫煙や飲酒の影響があるのでは」としている。

ところが、日経メディカル・がんナビでは、

日本人の女性で、ビタミンサプリメントを過去に摂取していた人々は、がんのリスクが17%上昇し、最近摂取を開始した人では24%上昇すること、一方で、5年以上摂取を継続してきた人では心血管疾患(CVD)のリスクが40%低下することが、多目的コホート研究(JPHC研究)で明らかになった。男性では、サプリメント摂取とがん、CVDの間に有意な関係は見られなかった。

と、同じ国立がん研究センターの発表に対して、女性のがんリスクに関しては正反対の報道がされました。もとの国立がん研究センターの発表内容はこちらです。内容が非常に分かりにくく、小見出しだけを見れば「女性では、ビタミンサプリメントの過去摂取者や摂取開始者で全がんリスクが高く、継続摂取者で循環器疾患リスクが低い・男性では変わらず」としたがんナビの記事が正しいようにも思えます。BMC Public Health 2011年11巻540の内容(英文)

これらの相反する報道に関して、健康産業新聞が10月11日付で次のような解説記事を載せています。

国立がん研の発表記事に、大きな疑問の声

 6日に開かれたエグゼクティブ会議で、国立がん研究センターが8月25日に発表したリリースに大きな疑問の声が上がった。エグゼ会議では当初、同センター発表に基づき、日経夕刊紙や化学工業日報などが報じた記事が真逆の内容になっていることから、「ビタミンサプリ摂取に関するがんリスクの増減と報道のあり方」というテーマで、シンポジウムは開かれた。パネリストの指摘で、化学工業日報は「循環器系疾患でリスク低減」と報じ、日経新聞は「ビタミンサプリ摂取でがんリスク高まる」と報じた。時事通信社などもサプリメントの有用性に言及した配信を行った。

 実験そのものはサプリ摂取とがんの関係がテーマで、90年代からスタートし、今回の発表は、サプリメントの摂取について、①調査開始時も5年後も非摂取、②開始時摂取、5年後非摂取、③開始時非摂取、5年後摂取、④開始時摂取、5年後も摂取の4グループで調査した。その結果、女性では①に比べ②で17%、③で24%全がんリスクが上昇したと報告、一方循環器系では、非摂取者に比べ5年の摂取者で発症リスクが40%減少したというもの。特に脳梗塞で有意にリスク低減が見られたとも。 

本来の趣旨からはサプリを取っていた人と取らなかった人という意味で①と④の比較が合理的で、ここでは両者の間で、全がんで8%、循環器系で40%の発生リスク低減が見られ、これを受けて「ビタミンの摂取を続けた女性ではがんや循環器系疾患のリスクが低減した」(時事通信社)と報じた。日経夕刊紙の報道に疑問はあるが、ニュースリリースでは、そのように読める内容となっており、極めて恣意的といわざるを得ないとの指摘がパネラーからも相次いだ。

 アガリクスのブック商法ががんについての社会的な責任を問われたのと同じように、今回の国立がん研究センターの研究が、膨大な国家予算を基に進められている事からすれば、その本質的な内容が曖昧であり、一般的に理解できるところのサプリを取っている人と取らない人の比較で行われるべき、まとめが、はずされていることなど、極めて奇異なまとめだといわざるを得ない。サプリメントが有用であるにもかかわらず、その事実が歪曲されるような発表であるならば科学者としての責任は重い。同センターの中立性という点からも問題は深刻で、改めて同センターの関係者の説明を求めなくてはならないというのが、共通した結論であった。

つまり、比較する組み合わせに問題があるとの指摘です。ビタミンを摂っている人と摂っていない人を比較すべきです。「当初摂っていない、5年後も摂っていない」グループと「当初摂っていた、5年後も摂っていた」グループを比較すべきということです。下の図1で、青とピンクを比較すれば、女性のビタミン摂取者のがんリスクが低下しているのは明らかです。
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男性については優位な関係は認められなかったのは飲酒や喫煙の影響ではないかとしていますが、事前にこうした交絡因子を排除して計画すればよいのではないでしょうか。専門家の仕事とは思えません。がん研究センターの発表が恣意的かどうかは意見の分かれるところでしょうが、国民的関心のあるニュースでしかも税金を使って長期間研究した発表ですから、もう少し丁寧な説明をすべきだったと思います。それとも、がん研究センターとしては「ビタミンサプリメントなど効くはずがない」との思い入れがあったのでしょうか。

それにしても、ビタミンAもB,C,E,その他をすべて一括りで「ビタミンサプリを摂っている、摂っていない」としたコホート研究に意味があるのでしょうか? それぞれ効果が違うでしょうに。あまり役立たない研究にムダな予算を付けたのではないかという気がします。(ビタミンDがなぜないのか?)

さて、海外でもいくつかのニュースがありました。

サプリメントの摂取は大半の人で不要、逆効果も 研究
  ビタミンサプリメントの摂取は大半の人では必要ない。それどころか、年配女性では死亡リスクが高くなる恐れもある。米国医師会(American Medical Association)の内科専門誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン(Archives of Internal Medicine)」に10日、このような研究結果が発表された。

 今回の結果は、ビタミンE、ビタミンA、ベータカロチンなど一部の抗酸化物質のサプリが有害になりうることを示す新たな証拠だとした上で、「ビタミンとミネラルのサプリは、少なくとも栄養状態が良い人には予防措置としてすすめられない」と記している。

 Bjelakovic医師らによると、年配女性、そして恐らくは年配男性にも有益と見られる唯一のサプリは、ビタミンD3という。食事または日光暴露により十分なビタミンD3を得られなかった場合に有効だという。

こちらもAFPのニュースですが、
ビタミンEのサプリメントで前立腺がんリスクが増加

これら二つのニュースについては、安西さんが「米国統合医療ノート」に解説しています。

Wshot00261 これらのニュースを見ても、私自身はマルチビタミンを摂ることを止める必要はないと考えています。もちろんメラトニンも続けます。

以前にも紹介したと思いますが、「がんサポート情報センター」にある大野智氏監修の記事「サプリメントはがん治療に役立つか?」にあるように、抗がん効果のあるサプリメントは皆無だと言って良い。しかしその中でもメラトニンとビタミンDには期待が持てると書かれている。このブログでは過去に私が摂取している理由は書いているが、今回のニュースでは私の方針を変える必要はないと言えます。

エビデンスは重要ですが、国立がん研究センターが永年研究しても、上のような程度のエビデンスしか得ることができないのです。がん患者には時間がないのです。きちんとしたエビデンスが揃うまで待っていられない。

  • ある程度の(ヒトに対する)研究成果があること
  • 重篤な副作用がないこと
  • 高価でないこと

これが私のサプリメント選びの基準です。

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2011年10月13日 (木)

必見!「市民・科学者国際会議」資料

昨日12日に東京・渋谷で開催された『市民・科学者国際会議:放射線による健康リスク~福島「国際専門家シンポジウム」を検証する~』の会議資料が市民放射線測定所のウェブにアップされています。また、会議を中継したUstreamの動画もリンクされています。

市民放射線測定所「市民・科学者国際会議」資料

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「市民・科学者国際会議」は先に山下俊一氏らが福島で開催した「国際専門家会議」が、低線量放射線被ばくに「安全」だというお墨付きを与えたのを受けて、それに反論する立場から開催されています。開催趣旨は次のように述べています。

去る9月11・12日に福島県立医科大学で開催された日本財団主催「国際専門家会議」は、山下俊一教授を中心に、国連科学委員会(UNSCEAR)・国際放射線防護委員会(ICRP)・国際原子力委員会(IAEA)・世界保健機関(WHO)など「最前線の研究者」「世界の英知」とは程遠い「一部の専門家」によって開催されました。原子力産業と親和性の高いこうした国際機関の外部評価によって、「県民健康管理調査」の予見①「福島第一原発事故による健康影響は極めて少ない」②「低線量被ばく(年間100mSv以下)は安全である」が正当化されようとしています。
 会議の内容は、「放射線の影響による不安を解消」するために、低線量被ばくは安全であるという「科学的知見」を情報発信するものであって、「結論と提言」においても被ばく低減化と健康障害の最小化に関する具体的措置が全く論じられていません。チェルノブイリ事故後も、WHOやIAEA国際諮問委員会によって健康被害調査が開始されましたが、放射線被ばくによる健康障害を「精神的ストレス」によるものと断定し、「どれほど大規模に詳細な疫学調査を長期間行っても自然発生のがんや遺伝的影響と区別できるような増加は将来も観察できない」とされ、「小児甲状腺がん」でさえもその増加が認められたのは10年後としています。また、チェルノブイリ原発事故によるがん死者数に関して、国際がん研究機関(IARC)がヨーロッパ全域を含め1万6千人としているのに対し、2005年のIAEA/WHO報告「チェルノブイリ・フォーラム」では4千人として健康影響を著しく過小評価しています。こうした国際機関による見せかけのリスク評価と恣意的な疫学調査を繰り返させてはなりません。

低線量放射線被ばく、特に内部被ばくについて、最近のデータも取り上げながら分かりやすく解説しています。

特に必見は、松井英介氏の講演資料と崎山比早子氏の講演資料(PowerPoint資料ではない方)です。

文部科学省は、去る4月19日福島県下の幼・保育園、小中学校などで、屋外の放射線測定値が一時間3.8μSv以上になる場合、校庭での活動を一日一時間以内に制限するよう通知しました。これはICRPの暫定基準値・年間20mSvまでの目安をもとにしたものだとしています。これに対して直ぐにドイツから鋭い批判がなされました。年間20mSvはドイツの原発労働者の基準です。それを日本政府は子ども基準値としたのはなぜなのかと言うわけです。この基準値をめぐっては、国の内外から引き続き抗議の声が上がりました。 日本政府はこれら抗議の世論に圧されて、年間1mSvを表明するとともに、除染キャンペーンを展開してきました。ところが、除染によって1mSv以下にする目処が立たないと見たのか、国の放射線審議会基本部会は、平常時の一般住民の被曝線量限度を緩和し、年1mSvから20mSv未満の間で「中間目標」を設定する提言をまとめることを、2011年10月6日公表しました。さらに注意しなければならないのは、この被曝線量限度がセシウム137だけに関するもので、ストロンチウム90やプルトニウム239などその他の核種による被曝を考慮していない点です。

胎児や小さな子どもは、細胞分裂の速度が速く、代謝もおとなよりははるかに活発です。体重あたりでみると、甲状腺に取り込むヨウ素131の量もずっと多いのです。カリウムはナトリウムなどとともに重要な電解質ですが、カリウムと似た化学的性質をもったセシウム137の影響は、子どもにとってずっと深刻だと考えなければなりません。体重や皮膚の性状、内臓の大きさなどが人間に最も近いとされるブタの臓器を使って、セシウムの体内分布を調べた木村真三氏(元放射線医学総合研究所研究員)によれば、セシウム137は心臓と腎臓に最も高濃度に集積していました。腎臓は排泄臓器ですから水溶性のセシウム137が集中するわけですが、24時間休みなく働き続ける心臓がカリウムと類似の挙動を示すセシウム137を高濃度に取り込んでいたという事実は注目すべき事柄です。

今回の核(原子力)事故で自然界に放出された放射性物質の量は、人類史上例を見ないものであると考えられます。その意味でも世界中から注目されていますが、1930年代から1940年代の無差別皆殺し戦争以来の深刻なできごとだと考えるべきではないでしょうか。 これから気の遠くなるほど長くつづく放射線による健康影響をどうするのか。どのように生きていけば良いのか。子どもたちを交えて、私たち一人ひとりの生き方の問題として、議論を深めて行きたいものです。

東電福島第一原発事故によってひろく福島県の自然環境を汚染した各種放射性物質の総量はチェルノブイリ事故のそれを超えるとされています。 IAEAへの報告書:放出量の試算値をご参照ください(図2)。セシウム137(物理的半減期30.0年)1.5×1016 Bqと、ストロンチウム90(物理的半減期29.9年)1.4×1014 Bqを比較すると、セシウム137に比べてストロンチウム90の放出量は約100分の1です。しかし、ストロンチウム90の健康リスクは、セシウム137の約300倍もあるので、決して無視できる値ではありません。

崎山氏の論文は、あの山下俊一氏も共同研究者であった論文を取り上げて、次のようにセシウムの環境汚染と体内汚染の関係を証明している。

低線量放射線に慢性的に被ばくした場合にどのような健康影響が出るのだろうか。チェルノブイリ事故で汚染された地域に住んでいる人々の健康調査が多面的に行われ,また現在も続けられている。

日本からも調査団が派遣され継続的な調査が行われた。福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーになられた山下俊一氏も共同研究者となっている2000 年に発表された論文を紹介する。ロシアのBryansk Oblast 西部地方に1991 年から1996 年に住んでいた5 歳から15 歳までの男女の児童2129~2760 人について,土地の汚染度,食べ物とセシウムの体内蓄積量の関係を調べている。体内蓄積量はホールボディーカウンターで計測された(計測回数は男児で1 万3287 回,女児で1 万2742回,合計2 万6029 回となっている)。図1 からわかるように,土地の汚染度と子どものセシウム体内蓄積量とは強い相関関係を示している。543 例(全体の2%)は年間公衆の線量限度である1 mSv を超え,6 例は5 mSv/年を超え,最も高い内部被ばくを示した例は9 mSv/年であった。飯舘村はこの図と比較して最も汚染された地区あるいはそれ以上に分類され,浪江町,大熊町はさらにこの図に示された値の上限を超える。
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沢田昭二氏の資料は専門的であるが、山下氏らの「国際専門家会議」で放射線影響研究所の児玉和紀氏の報告「被爆者疫学」への反論である。広島・長崎の被爆者疫学調査において、爆心地から2km以遠の住民(遠距離被爆者)に起きた脱毛や下痢は放射線以外の影響だとして、これらの住民を疫学調査における「コントロール群」としたのであるが、その欺瞞性を明確に暴いている。実際上5mSv以下に区分される2.75km以遠の遠距離被爆者をコントロール群とすることで「被爆者どうしを比較」することになり、放射線被ばくによる過剰発がんリスクを少なく見積もっているのである。広島・長崎の被爆者のデータがICRP勧告などの重要な根拠となってきたことを考えると、もっと注目されるべき研究である。

これらは、「フクシマ」以後の全国民にとって、必見の資料である。

2011年10月11日 (火)

横浜市でストロンチウム検出

岩上安身さんのツィターによると、横浜市港北区のマンションの屋上からストロンチウム90が195Bq/kg検出されたとの情報です。『虎の巻』の編集責任者である放医研の杉浦氏は、9月30日のNHKの首都圏スペシャルで「首都圏にはストロンチウムは飛んできません」と断言しました。さて、どのように釈明するのでしょうか。この番組では、ゲストの作家室井佑月さんが「暫定規制値は高すぎる。私は子どもを”暫定的”に育てているわけではないですから」と核心を突いた話をしていた。さすがに作家はうまいことを言うなと感心したものでした。岩本細説委員と室井さんの攻勢に、杉浦氏はたじたじでした。

バズビー氏は7月の段階で、首都圏を走っている車のエアフィルターからプルトニウムとストロンチウムを含む「驚くほど大量の放射性物質を」検出したと指摘していました。いまさら検出したと聞いても驚きませんが、世間ではセシウムだけが話題になっています。しかし、福島第一からはセシウムと同じ量のストロンチウムが放出されたはずです。ストロンチウムはベータ線しか出さないので、ガンマ線を出すセシウムのようには簡単に測定ができません。これまで測定しなかっただけのことです。

食品に500Bqのセシウムがあれば、ストロンチウムも500Bqあると覚悟するべきです。正常に運転している原発からは、常に放射性希ガスであるクリプトン85やクリプトン90が大気中に放出されています。日本の法律では薄めればいくら出してもよいからです。福島第一原発の爆発では、当然大量の放射性希ガスが出たはずです。そして、クリプトン90は、半減期32秒でベータ線を出してルビジウム90に、さらに半減期2.7分でベータ線を出してストロンチウム90になるのです。ガスの状態で原発から出て5分もすれば固体のストロンチウムになっているのです。八王子ではプルトニウムよりも毒性の強いアメリシウムが測定されています。ネプツニウムも飯舘村で検出されています。これはウラン239→ネプツニウム239→プルトニウム239とベータ線を出して崩壊します。つまり、ウランもプルトニウムも普通に拡散しているというわけです。

今はセシウムだけが問題かのように報道されていますが、プルトニウムもウランもストロンチウムも、セシウムと比べものにならないほど毒性が強いのです。米国では、核実験時代に子供の乳歯の中のストロンチウム90の含有量が増大しました。乳児死亡数とミルク中のストロンチウムの濃度に密接な相関があったのです。米国の各地の母親たちは何十万本もの乳歯を集めました。こうした母親たちの活動が、部分的核実験禁止条約締結への一助となったのです。

ストロンチウムの娘核種であるイットリウム90は、脳下垂体に蓄積される。空気を吐くとき、肺の中では、肺胞を開いた状態に維持するために不可欠な脂質が特別の細胞において生成されるが、これは脳下垂体からの化学的な制御によってなされる。ところが、出産前の2、3週間に脳下垂体が損傷を受けると、この不可欠な脂質の生成が不十分となる。出生直後は一見したところ普通の赤ん坊となんら変わらないが、肺機能の準備ができなり、呼吸器系疾患で死亡してしまうケースがある。従って、放射性ガスによる内部被曝による損傷は、外部被曝に比べ、呼吸器系疾患に対してずっと深刻な損傷をもたらす。(『赤ん坊をおそう放射能』の原文より要約)

フランスのラ・アーグ再処理工場でも小児白血病、脳腫瘍の増加とストロンチウムの関係があるとの研究があります。また、ウェールズにおいて乳がんの増加とストロンチウムの汚染の相関関係も発表されています。

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山田邦子、アグネス・チャンよ。ピンクリボンを付けて東電本社に抗議せよ!

文科省が発表した汚染マップによれば、群馬県の北部山岳地帯も奥多摩も汚染されている。水上町には首都圏の水がめである藤原ダムをはじめ8つのダムがある。奥多摩は言わずとしれた多摩川水系の水源、こちらも首都圏の水がめである。セシウムだけではなく、アルファ線、ベータ線を放出する核種の一刻も早い測定が必要です。

<補足>

10月5日のブログでも紹介した「大気中への放射性物質の放出量の試算値」によれば、ストロンチウムはセシウムの2桁少ない放出量となっている。しかし、ストロンチウムはセシウムに比較して人体への影響は300倍大きいとECRR等では指摘されている。したがって、人体への影響を考える場合、ストロンチウムはセシウムと同等か、それ以上に危険であると考えるべきである。

ストロンチウムSr-90は染色体に結びつく、しかしそれは2段階壊変事象原子(a second event decay atom)でもある。したがって、生物学的損害係数(WJ)によって30の強調を与えられ、内部同位体生化学的強調係数(Wk)によって10の強調が与えられる(DNA親和性)。そして、結果的には全体で300の強調となる。
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染色体に結びついたストロンチウムSr-90原子の最初の崩壊に続いて、64時間の半減期をもつ娘核種であるイットリウムY-90のその二回目の崩壊は、簡単に計算できるある確率で、誘導修復過程にあるその同じ細胞をヒットすることが可能である。外部放射線からの同じ被曝線量がそれと同じプロセスを起こすには消えてしまうほど小さい確率しか持たないのに対し、この内部被曝の場合には、そのターゲットとなるDNAはその放射線線源から数ナノメートル以内にあるからである。セカンド・イベント被曝の二つ目のタイプは、ミクロン、あるいはサブミクロンサイズの「ホット・パーティクル」によるものである。もしも臓器内にそれがとどまるとすると、これらはその10時間の修復複製期間の間に、その同じ細胞の内側で多数ヒットの確率を増加させながら、何度も何度も崩壊することになる。
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ストロンチウムSr-90同位体への0.2 mSvから1 mSvの間の累積的な被曝を受けた類似した集団についての変動を調査するために、イングランドとウェールズにおけるガン発生率を使用してきており、その核実験降下物への被曝における変動が晩発性ガンの発生率と高い相関関係を持っている(R=0.96)ことを示すことに成功している。グリーン・オゥディットの研究者達は、これがICRPリスクモデルに300倍の誤差があることを実証していると指摘している。両グループは、そこに物質が濃縮されるようになる、河口や河川の谷間のような降下物同位体を濃縮する地球物理学的要因の調査に取りかかっており、これらの地域でガンや白血病の過剰なリスクが一貫して示されていることを明らかにしてきている。RPHPの研究者達は、降下物中や核施設風下でのストロンチウムSr-90によって乳ガンが引き起こされるという証拠を提供してきている。

2011年10月10日 (月)

福島原発事故、遺伝子異常が現れるのは10世代先

スイスでは原発の二〇三四年までの段階的廃止と新設禁止を全州議会(上院)が承認して、脱原発の法案成立が確実になった。そのスイスのニュースを日本語で紹介してP1010901312919881 いるswissinfo.chに、スイスの内科医で、核戦争防止国際医師会会議スイス支部の支部長を2年務め、脱原発を推進する側に立ってきたヴァルター氏の談話が載っている。ヴァルター氏はチェルノブイリに政府からの派遣も含め5回行き、甲状腺がんの子どもの検診や治療にあたった。同じくチェルノブイリで甲状腺がんの検診をしたという山下俊一氏とは、同じ経歴でもこんなにも考えが違う。

ヴァルター氏は「人には2種類ある。原発に反対する人と、原発の危険性を知らない人と」と言う。

swissinfo.ch:9月30日に放射性プルトニウム239が福島原発から45キロメートル離れた飯館村など、県内6カ所で検出されたと公表されました。プルトニウム239は半減期が2万3000年と気の遠くなるようなもの。取り込むとどうなるのでしょうか。
ヴァルター:プルトニウムは一度体内に入ると、セシウムとは違いほぼ体外に排出されることはない。アメリカが何とプルトニウムを使った人体実験を1948年に行っており、クリントン大統領のときに公にされたので、これは間違いない。プルトニウムは骨や肺、肝臓などにとどまる。放射線を出し続けるので、がんを引き起こしやすい。

swissinfo.ch:では放射性セシウムですが、福島の多くの子どもの尿からセシウムが検出されました。長くて70日で体外に排出されますが、その間の内部被曝も問題でしょうか?
ヴァルター:その間の被曝量はわずかだ。しかし、問題はその土地に住み続けると排出されてもまた吸収し内部被曝が続くということだ。セシウムは10年間で6センチメートル地下に沈んでいくといわれている。従ってたとえ徐々に地表面から無くなっても畑で野菜が吸い上げ、それを食べればまた被曝する。すべての土地の表面を上下に掘り返す作業は膨大な労力と費用がかかるだろう。

さらに現在、安全だという被曝量はないというのが定説になっている。がんになるリスクを縦軸、放射線量を横軸にするとそれは正比例の直線になり、たとえ1、2ミリシーベルトでもがんのリスクはある。胸部や骨折のレントゲン撮影でもがんになるリスクはゼロではないといわれている。さらに慎重な医者は線量が少なければ少ないほどがんリスクは高く、正比例の直線が少量の値域では上向きにカーブするといっている

チェルノブイリでの研究の中に、学会では正式に承認されていないが、セシウムによって、子どもたちの心臓病が数年から10年後に増えたという報告もある。心臓のリズムなどが不規則になる病気などだ。
また、すべての放射性物質の被曝で4、5年後に子どもの糖尿病が増えたという研究もある。

swissinfo.ch:日本の基準値、年間20ミリシーベルトの上限をどう見ますか?
ヴァルター:短期なら分かるが長期的に年間20ミリシーベルトは高すぎる。しかも子どもや妊婦を含んで20ミリシーベルトは非常に高い値だ。たとえ原発に賛成する科学者にとっても高すぎる値だ。
スイスではたとえ事故が起きても放射線の限度を年間1ミリシーベルトに決められている。

1991年のチェルノブイリ原発から50キロメートル離れたポルスコエにスイス政府の派遣で行った。同行のジャーナリストと、子どもがかくれんぼをすると想定して建物の地下や低い茂みなどを測ったが、放射線量は事故から5年後なのに非常に高かった。また場所によって数値にかなりの差があった。

福島でも5年後同じことになるだろう。つまり、県内の多くの地点で今後とも線量はそう変わらないのではないだろうか。年間20ミリシーベルト以下の地域から、避難するほうがよいと思う。もちろん故郷を捨てるといった社会的な問題は残るが。

swissinfo.ch:放射性ヨウ素について伺います。8月18日付けの朝日新聞によれば3月24~30日にいわき市、川俣長、飯館村の1150人の子どもを対象に甲状腺被曝を調査した結果、その45%が被曝していた。14歳の男の子が「僕の体には放射性物質が入っているからゼロじゃないんですよね。本当に僕は大丈夫なのか教えてほしかった」と言っていました。実際のところ、被曝したこの子どもたちはどうなるのでしょうか。
ヴァルター:ということは、子どもたちが原発の爆発直後にヨウ素剤を服用しなかったということか?信じられない・・・(顔を曇らせ、データを見るためコンピューターに向かう)。スイスでは原発から半径20キロメートル以内の住人は、全員ヨウ素剤を持っている。それが原発を持つ国の安全対策の基本であり、国民に対する責任だ。たとえ持っていなかったとしてもすぐに子どもに配るべきだった。

甲状腺に被曝したということは、それがいくら低い値であろうと、この器官の細胞のDNAがダメージを受けてしまったということだ。従って、何人かは今後、甲状腺がんを引き起こす可能性があるということだ。そのため、毎年定期的に超音波でがんの発生を調べていく必要がある。

そもそも子どもの甲状腺がんは普通は存在しないものだ。以前ウクライナでは住民5000万人に対し3人の甲状腺がん患者がいただけだ。それがチェルノブイリ以降、2000~4000人の子どもがこのがんにかかった。

しかし、早期に発見し、甲状腺を摘出すれば大丈夫だ。チェルノブイリで私もこの超音波の検査に何度も携わったが、ベラルーシでもウクライナでも子どもたちはみんな手術を受けだ。しかも手術は95%成功している。
ウクライナでは、ある経験豊かな70歳の医師が750人もの甲状腺がんを手術した。わずか3人だけが術後の複雑な炎症が重なり亡くなっただけだ。
(わずか3人! 事故がなければ死ぬ必要のない幼い命だ)

また、たとえ甲状腺が摘出されても、その後ずっとホルモン剤を飲み続ければ、それで元気に大人になり普通に一生を送れる。
(一生涯甲状腺機能障害と戦わなければならない!)

swissinfo.ch:最後に、放射線による遺伝子の突然変異、それも低線量被曝の遺伝子突然変異について説明してください。
ヴァルター:チェルノブイリの事故から10年後の1996年にロシアのドゥブロバ(Dubrova )医師が英科学誌ネイチャー(1996Nature ;380:683-6)に報告した例によると、チェルノブイリでセシウムなどに汚染された地域の人に遺伝子突然変異が多く見られた。

また、イスラエルのヴァインベルク(Weinberg )医師の調査(Proc Biol Sci 2001;268 (1471) :1001-5)によれば、チェルノブイリの事故収束に働いた男性の2人の子どものうち、事故以前に生まれた子どもには遺伝子突然変異がまったくなかった。しかし、事故後イスラエルに移住して生まれた子どもにはある数の遺伝子突然変異が見られた。

放射能被曝によって父親の優先遺伝子が損傷されると子どもに病気が現れる。しかし、もし父親の劣性遺伝子が突然変異を起こした場合、子どもに受け継がれても、劣性遺伝子なので表面的には何の異常も起きない。これが、このイスラエルで生まれた子どもの場合だ。

しかし、もし遠い将来この子の子孫が偶然、同じ突然変異の劣性遺伝子を持った人と結婚し、劣性遺伝子同士が組み合わさるとさまざまな病気などが発現する可能性が考えられる。

ただ、何が発現するかは全く分かっていない上、こうしたことがチェルノブイリやフクシマで起こる可能性があるものの、さまざまな要因が絡むため約10世代は先の話だ。劣性遺伝子が発現するのは10世代先!)

ところで、ドゥブロバ医師などの方法で長崎と広島の被爆者の遺伝子を調べたところ、突然変異はほとんどなかった。原爆は瞬間的なインパクトを与えたが、長期の低線量被曝を起こさなかったということなのだろう。

従って、私には、低線量被曝が遠い将来の世代に与える遺伝的な影響が大きな問題だ。これは人類にとっての倫理的問題でもある。

宗教家で科学者の友人がイメージとして、こう語った。かつて、宇宙からの放射線量が徐々に減少したとき地球上に人類が誕生した。しばらくの年月人類は放射線を生産せずに生活した。ところが今、核実験や原発事故などで、自らの手で地球上に放射線量を増やし地球を住みにくい場所に変えようとしていると 。

2011年10月 8日 (土)

永平寺が反原発シンポジウムを開催

道元が開山した曹洞宗大本山永平寺が、原発問題を考えるシンポジウム「いのちを慈しむ~原発を選ばないという生き方~」を開催すると報じられています。

脱原発に対する議論が巻き起こる中、曹洞宗大本山永平寺(永平寺町)が、原発問題を考えるシンポジウムを十一月二日午後一時から、永平寺町山の「四季の森文化館」で開く。永平寺が原発関連の催しを開くのは初めて。布教部長の西田正法(しょうぼう)さん(56)は「原発は使用済み核燃料という負の遺産を後世に背負わせる。それは、すべての生物や自然を慈しむ仏教の教えに反する」と話している。

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 シンポのテーマは「いのちを慈しむ~原発を選ばないという生き方~」。曹洞宗の教えを市民に発信するための寺内組織で、西田さんが所属する「禅を学ぶ会」が企画した。命を重んじる考えのもと、これまで原爆に関する映画上映や展示会などを開いてきたが、東京電力福島第一原発事故を機に「原発のある暮らしを見つめ直しては」との思いで、テーマを決めたという。

 県内を拠点に長年、反原発運動に携わる小浜市の明通寺住職、中島哲演(てつえん)さん(69)と、福島第一原発事故の計画的避難区域内にある福島県飯舘村で酪農を営んでいた長谷川健一さん(58)が講演。作家朴慶南(パクキョンナム)さんの司会で、二人によるパネル討論もある。

 西田さんは「原発批判だけが目的ではない。電力をたくさん使う、便利すぎる生活は必要か、考える機会にしてほしい」と話している。
定員四百人、入場料五百円。問い合わせは禅を学ぶ会事務局=電0776(63)3456=へ。(東京新聞 10月7日)

若狭湾には15基もの原発があり、世界一の原発過密地帯です。もしもこれらの原発が事故を起こせば、永平寺も強制避難地域になるかもしれません。永平寺としては当然の意思表明でしょう。やっと宗教者の本山が立ち上がったかという思いで読みました。曹洞宗「人権・平和・環境」というブログにこのような投稿がされていました。「仏教タイムズ」2011年9月22日・29日合併号の記事を引用して、

さよなら原発5万人集会~僧侶の参加少なく
(「仏教タイムズ」2011年9月22日・29日合併号)

 脱原発を求めて作家の大江健三郎さんや澤地久枝さんらが呼びかけた「さよなら原発5万人集会」が19日、東京・明治公園で行われた。主催者発表では6万人。脱原発集会では最大規模となった。
 市民団体や平和団体、労組、学生組織、一般市民らで会場は埋め尽くされたが、宗教者、とりわけ僧侶は、日本山妙法寺と共に参加した日蓮宗僧侶、原子力行政を問い直す宗教者の会のメンバーなどにとどまった。(略)
 そして市民団体にまじって、菅笠に改良衣姿の禅僧が一人。「南無釈迦牟尼仏」と揮毫された手作り幟を手にして参加した。朝早く、千葉から来たという禅僧は「ブログで参加を呼びかけましたが、一人だけでした」と言い、デモ行進の隊列に加わった。 
 またある参加者は「なぜお坊さんの参加は少ないの。感心ないの」と宗教者の会の僧侶に問いかけていた。僧侶側も休日にはお寺の行事が立て込んでいることなどを説明していた。
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 実は、私もこの集会に参加していたが、記事のとおりで、まったく情けない思いをしたものである。東日本の苦難は、いまや解決の見通しのたたない放射能汚染にある。人命尊重、自然を守るという仏教の掛け声は、実は空念仏で、「お寺の行事」すなわち金にならないものには無関心なのである。こんな実態が、徐々に明らかになって行き、市民の仏教離れを加速させる。
 あるいは、日本国仏教は政府にベッタリだから、内心「原発」に賛成しているのかもしれない。これではお釈迦様が泣くだろう。仏教は政治も国境も越え、個々の人間を対象とし、その悲しみに寄り添い、それを除く(=「慈悲」)ことを目的とする。

と書いていました。

若き日の空海は、儒教は道徳を守ることによって立身出世を願う。道教は世を捨てて己の満足のみを求めている。しかし仏教は世の凡夫に寄り添い、貧民を救うことを願っているのだから、最も優れているとして仏教の道に入ったと言われています。また、孔子も老子も菩薩の化身であると説いたのです。

迷える者の禅修行―ドイツ人住職が見た日本仏教 (新潮新書) ドイツ人で座禅にあこがれて日本にやってきて、ついには住職になったネルケ無方の『迷える者の禅修行―ドイツ人住職が見た日本仏教 (新潮新書)』にこんなくだりがあります。兵庫県の山奥にある安泰寺で自給自足の修行をしていたときに阪神・淡路大震災が起きた。雲水たちは座禅にも仏典の勉強にも気合いが入らない。神戸でボランティア活動をしようと山を下りる雲水も出てくる。オウム真理教による地下鉄サリン事件も起きた。ネルケ無方も「仏教とは何か? 修行とは何か? 彼らをどうして救えなかったのか? どうして救わないのか? 果たして仏教にはその力があるのか?」と悩むのです。「私たち仏教修行者が目指しているのは、菩薩のはずです。菩薩とは、自分自身の救いより、人の救いを優先させる修行者のことです。」と悩むのでした。

1755年のポルトガルの首都リスボンを襲ったマグニチュード9.0の大地震は、ヨーロッパの思想世界を一挙に変えたといいます。当時主流のライプニッツ派哲学者は「神は間違ったことはなさらない。これは天罰である」との立場でした。さしずめ日本なら石原慎太郎というところか。これに対してヴォルテールは、

「すべては善である」と叫ぶ迷妄の哲学者たちよ、
ここに駆け付け、この恐るべき廃墟をよく眺めるがよい。
この瓦礫を、このずたずたの破片を、この不幸な屍を。
たがいに重なりあったこの女たちを、この子供たちを。
崩れ落ちた大理石の下に散らばっているこれらの手足を。
大地が呑み込んだ数万の不幸な人々を。
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あなたがたはこの山のような犠牲者をみて、それでも言うのか、
「神が復讐したのだ、彼らの死は犯した罪の報いなのだ」と。
どのような罪を、どのような過誤を犯したと言うのか、
母の乳房の上で、潰され、血まみれになっているこれらの子供たちは。
壊滅してもはや地上にはないリスボンは、それほどの悪徳の町だったのか、
ロンドンよりもパリよりも悦楽にふけっていたと言うのか。

3・11以後は、私たちのこれまでの暮らしは変わり、全ての国民が「ヒバクシャ」となる運命を孕んでいます。文学も思想世界も変わらざるを得ないでしょう。東日本大震災で一瞬のうちに死んだ2万人の出来事に対して、辺見庸が言うように「我々は表現することばを持ち合わせていない」のです。「がんばろう日本」などと、中身のないことばしか発することができない。思想家、宗教者、文学者こそが、新しい日本の思想世界を創造し、われわれが進むべき道を指し示す役割を持っているのではないか。他の宗派も永平寺に続け。

仏教者も捨てたものではないですよ。このような活動をしている人たちもいます。

原子力行政を問い直す宗教者の会

放射能から子どもを守る宗教者ネットワーク

2011年10月 5日 (水)

がん研究センターで放射線源を紛失。謝ることはないよ嘉山さん

築地の国立がん研究センター中央病院で、治療用に使った放射線源、ルテニウム-106を誤って廃棄処分したと報じられた。さっそく嘉山理事長が緊急の記者会見をして経過を説明している。紛失したのはルテニウム-106という放射線源で約6.1メガ・ベクレルだった。(がんセンター発表の詳細

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放射線同位元素が紛失・所在不明になった場合は、放射線障害防止法により「遅滞なく文部科学大臣に届け出る」ことが義務づけられている。当然がん研究センターもその義務を果たして届け出たものである。そして、文科省は「同事業所に対し、所在不明となっている放射性同位元素の発見に全力を尽くすとともに、所在不明に至った経緯、原因、再発防止対策等の報告を求めました。」と発表している。

ルテニウム-106はベータ線を放出する放射性同位元素で、たぶん、ぶどう膜悪性黒色腫と言われる腫瘍の治療に用いたのではないかと思われる。ベータ線しか出さないから、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜の総称)近傍のみに放射線を照射し、眼球の反対側まで届くことがない。

仮にこのルテニウム-106から1mの距離で1時間いたとして、被ばく線量は0.2μSvであるから健康に影響はない、と文科省は例のごとく言っている。しかし、がん研究センターの資料では、拾った人が素手で掴んでいたとき、皮膚への被ばく線量は、1時間あたり4.4Gyにもなる。相当に危険な線量であり、指が壊死して切断せざるを得なくなることもあるほどの線量だ。考えてみれば、眼球の腫瘍細胞を破壊するための放射線源である。近づけば危険なのは素人にでも分かる。

しかし、嘉山理事長にごまをするわけではないが、この程度の線源を紛失したからといって、謝ることはない。なぜなら、福島第一原発からはこのルテニウム-106も大量に放出されているからだ。

8月26日に原子力安全保安院が発表した資料「東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び広島に投下された原子爆弾から放出された放射性物質に関する試算値について」という長たらしい題名の文書がある。
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これによれば、ルテニウム-106は2.1×10^9、つまり21億ベクレルが放出されて「所在不明」になっているのである。がん研究センターが紛失した線源の約345個に相当する。もちろん、それ以外の核分裂生成物が大量に「所在不明」である。

ところが、文科省が東京電力に対して「所在不明となっている放射性同位元素の発見に全力を尽く」して「原因を究明し、再発防止策を報告しろ」とは言っていないのだ。(原発が文科省の管轄ではないことは分かっていますよ。しかしね。事業所境界外に出た放射性物質は文科省の管轄ですよ)

嘉山理事長。文科省に「この程度の放射線源が行方不明だからといって大騒ぎするんじゃない!」と言ってやればいい。
しかし、がん研究センターはトラブル続きだなぁ。内部で何が起きているのだろうか?

樹状細胞療法で延命した?スタインマン教授は膵臓がん

がんを狙い撃つ「樹状細胞療法」 (講談社プラスアルファ新書) ノーベル賞の医学生理学賞を受賞したラルフ・スタインマン教授が、発表前に膵臓がんで死亡していたニュースが話題になっています。昨日はテレビでもこの話題で持ちきりでした。そして自らが開発した樹状細胞療法で4年間も生存を果たしていたと報じられています。

樹状細胞はスタインマンとコーンによって1973年に命名されたものです。抗原提示細胞であり、自分が取り込んだ抗原を、他の免疫系細胞に伝える役割を持っています。いわば免疫系の伝令でしょうか。最新の癌免疫細胞療法―リンパ球療法から樹状細胞癌ワクチンまで日本では東京女子医大系のビオセラクリニックやセレンクリニック、瀬田クリニックが自由診療で治療をおこなっています。ただし、生存率などのデータは掲載されていません。あくまでも研究段階の治療法です。

スタインマン教授のノーベル賞受賞理由は樹状細胞を発見して、獲得免疫の仕組みを解明したのであって、樹状細胞療法を確立したからではないことははっきりしておかないと、いずれ、「ノーベル賞も認めたがんの治療法」などと宣伝する輩がきっと出てきます。

だれでもわかる最新のガン免疫療法―樹状細胞療法が切り開く近未来がんサポート情報センター」の特集に樹状細胞療法に関するまとまった情報があります。(ただし、このページはテラ(株)とセレンクリニックの援助で作成されています。都合の悪い内容を書くはずはありません。)

信州大附属病院では樹状細胞療法の治験を実施しています。その他の臨床試験を検索するには、こちらの臨床試験情報検索サイトでキーワードに「樹状細胞」と入れ、「癌領域」にチェックを入れれば検索できます。現時点では5件ヒットします。
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「樹状細胞」を使った新たな免疫療法 3人に1人のがん進行抑制

 信州大付属病院(長野県松本市)が、手術などでは治療が難しいがん患者を対象に、免疫細胞の司令塔とされる「樹状細胞」を使った新たな免疫療法を施したところ、3人に1人の割合でがんの進行が抑制されたことが分かった。副作用も少なく、同病院分子細胞診療室の下平滋隆室長は「がんの標準的な治療法にしたい」と話している。

 がん治療は手術、抗がん剤などの化学、放射線の3つを組み合わせた療法が基本だが体への負担や副作用が懸念される欠点がある。

 同病院は2008年11月から、症状が進行し他の治療が難しい患者に樹状細胞療法を実施。10代から70代の男女30人に施した結果、10人程度にがんの縮小や進行を抑えるなどの効果が見られた。胃がんの50代男性、卵巣がんの50代女性の2人からはがん細胞が完全になくなったという。

 ただ、この治療法は実績が少なく公的医療保険が適用されないため、患者の費用負担が重いのが課題。同病院は治療効果を証明するデータなどをまとめ、保険適用が認められるようにしたい考えだ。

樹状細胞療法:樹状細胞は人間の体を病原菌などの外敵から守る免疫細胞の一種。がん治療では患者の体内から樹状細胞を取り出し、がん組織をそれに与えたり、がんの目印を人工的に持たせたりしてがん細胞を外敵と認識させる。その後体内に戻すと樹状細胞はほかの免疫細胞に指示を出し、がん細胞を攻撃させる。

また、2009年には膵臓がんでこのようなニュースもありました。しかし、その後の成績はさっぱり公表されませんね。

進行膵臓癌に化学療法と樹状細胞療法が有用な可能性

 進行膵臓癌に、ゲムシタビン、S-1による化学療法と、膵臓癌関連抗原を利用した樹状細胞療法の併用が有効である可能性が示された。少人数の患者への投与で効果が確認されたもの。成果は4月18日から22日にデンバーで開催されている米国癌研究会議(AACR)で、武蔵野大学薬物療法学客員教授でバイオベンチャーのテラの取締役である岡本正人氏が発表した。

 岡本氏によるとゲムシタビンやS-1は、樹状細胞が働きやすくする環境を作るのに働いているという。

 発表された臨床成績は、セレンクリニックで行われた結果。進行手術不能膵臓癌患者で、S-1やゲムシタビンなどの標準的な治療で安定状態(SD)か増悪(PD)となった18人の患者を対象に治療が行われた。樹状細胞は、白血球除去輸血から顆粒球マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン4の存在下でCD14陽性単球を生産し、OK-432で成熟化させて、膵臓癌特異抗原(1例を除いてMUC1かWT1またはその両方)で刺激してから投与された。

 患者にはゲムシタビンとS-1の両方、またはどちらかと併用で、樹状細胞を1×10の7乗個を、14日間おきに4回から12回、皮内投与した。S-1とゲムシタビンの量は通常使う量よりも少ない場合が多かったという。

 その結果、18人の患者中2人(11.1%)で完全寛解(CR)が得られ、7人(38.9%)が部分奏効(PR)、5人(27.8%)が安定状態(SD)、4人(22.2%)が増悪(PD)となった。奏効率は50.0%だった。また長期間生存例もあった。

以上は樹状細胞療法に好意的な記事ですが、批判的な記事はなかなか見つかりません。リンパ球バンクの「がん治療と免疫」では、有益な批判記事が見つかるでしょう。

                 がん治療と免疫(樹状細胞)の検索結果

例えば次のように、樹状細胞はがんを認識できないのだと。

審良教授の業績により、樹状細胞の認識システムが如何に鋭敏かつ正確にバクテリアやウイルスを捉えるかが解明されたのですが、同時に、樹状細胞のセンサー群は、がん細胞に対しては反応しないことも明らかになっているのです。  もちろん、「無い」と証明するのは難しいので、今のところ、見つかっていない、というべきですが。

メディアは、話を飛ばすのが得意ですから、樹状細胞に関する偉大な研究成果が、樹状細胞が感染症対策を得意とすることを証明しているのに、樹状細胞でがんを治す、と言う風に話を挿げ替えていくのでしょう。

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2011年10月 4日 (火)

がん患者のためのインターネット活用術 (15)

がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した ネットの情報はすぐに古くなります。Kindle本『がん患者のためのインターネット活用術 2017年 第2版: 私はこれで膵臓がんを克服した』では最新の情報に書き直して出版しています。


Firefoxが頻繁にバージョンアップをしており、起動もサイトの表示もずいぶん早くなりましたが、アドオンの更新が追いつかないことがあります。アドオンのいくつかも動作が思わしくなく、これまでの14回の紹介記事も実情に合わない部分が生じてきました。(過去の記事も部分的に修正はしましたが・・・)

OptimizeGoogleは、まったく広告をカットできません。そこで、現在の私の設定をまとめて紹介することにします。

インストール済みのアドオン

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OpimizeGoogleはどうしてか広告がカットできなくなりました。しかし、不要な広告をカットするだけならAdblock Plus だけで十分です。インストール後の設定方法はこちらに。

Gmail を使っているのならBetter Gmail 2 を入れましょう。以前はWeb Mail AddBlockerを推奨していましたが、こちらはAdblock Plus との相性が悪いようです。Libron はこのシリーズで紹介済みです。MediaMarkerも紹介しましたが、アドオンのMediaMarker Add Binder Tab をインストールするとアマゾンのサイトからダイレクトに登録できます。

これまでに紹介していないのは、Read It Later です。文字通り、気になる記事を後で読むためのツール。

Auto Peger は分割された記事を1ページにまとめて表示してくれます。EverNoteに登録するときなど重宝します。

Greasemonkey、IE Tab 2、Stylishは別の用途ですから、説明は省略。

MouseoverDictionary はまだFirefoxバージョン7に対応していないので、ここでは表示していません。

Better Gmail 2 の設定が結構迷うと思います。私の推奨設定を紹介。

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2011年10月 2日 (日)

プルトニウムとストロンチウム検出

P1010664 昨年は巾着田の曼珠沙華を撮ったが、今年はこの一枚だけ。曼珠沙華は、法華経などの仏典に由来する。また、"天上の花"という意味もあるとされる。仏教でいう曼珠沙華は「白くやわらかな花」であり、巾着田には白い彼岸花があったが、これは近縁種ナツズイセンだったのか。


福島第一原発から40km離れた飯舘村でプルトニウム238、239,240が、80km離れた白川市などでもストロンチウム89、90が検出されたと、文部科学省が9月30日に発表した。6月に調査した100カ所の結果を発表するまでに3ヶ月も要している。

福島第一原発の敷地外では始めて検出されたと報道されているが、そんなことはない。6月13日には大熊町でキュリウムとアメリシウムが検出されている。これらの核種はプルトニウム由来のものであり、当然同時にプルトニウムも拡散していると分かったはずだ。6月23日には福島原発の沖合で、海底土からプルトニウム239と240が微量だが検出されている。原発から50km離れた三春町でテクネチウム99mが検出されている。これもプルトニウム由来の核種である。

東京周辺を走っている車のエアフィルターからもプルトニウムが検出されたとクリス・バズビー氏が発表している。つまり、80km圏内だけではなく、200km離れた首都圏にも微量ではあってもプルトニウム、そしてたぶんストロンチウムも拡散しているに違いない。ともにアルファ線放出核種であり、微量であっても肺に沈着すると肺がんの確率が相当高くなる。

プルトニウム、ストロンチウムが土壌に空気中に存在している中に、避難解除をして住民を住まわせようとするのは殺人的決定ではないのか。

しかし、文科省は仕事が遅いよなぁ。3ヶ月もかけて何をやっていたのか。

JCO事故から12年となる30日、東海村の村上村長の談話が立派だ。

原子力に向き合う以上は姿勢を正し、金のために魂を売ってはならぬ。人に冷たく無能な国に原発を持つ資格はない。

JCO事故の教訓は福島原発事故に生かされていない。JCO事故から学ぼうとするより、消し去ろうとしたのではないか。

JCO臨界事故も慢心が招いたもので、この国はいつまでも反省しないという印象だ。利益を追求するあまり、原発推進を「国策だ」と言い続け、安全神話を作るなど、極めて内省に欠ける国だということ。JCO臨界事故の時も思ったが、今回も案の定だ。何にも学んでいない。福島第1原発事故の初期対応を見ても、何という国だと思った。

日本は地震多発地帯で、1900年からの100年間でM8以上の地震回数は世界一という報告がある。そんな国に54基も原発を置いていいのか。正気の沙汰とは思えない。

福島第1原発事故を起こした以上、日本は脱原発について真剣に考える義務がある。脱原発を追求しなければならず、できるできないはその次でいい。自然エネルギーについても、ドイツやデンマークなどは既に取り組んでおり、技術開発も進んでいる。日本でも可能性はある。日本人の勤勉さやこれまで蓄積した技術からみても可能だろう。世界最高水準になれると思う。あとは政府のやる気次第だ。

金のためなら命を差し出してもよい、と考えることが可能なのは、安全地帯にいる人たちが原発推進を決定しているからだ。リスクは他者が負い、メリットは自分が受ける。地元にはおこぼれでわずかの金が落ちるわけだ。

P1010678

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