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2011年12月

2011年12月31日 (土)

1年をふりかえって

今年も最後になりました。この1年をふりかえると、我が家では兄ヨークシャーの龍馬が慢性腎不全になったこと。さいわい輸液の注射のおかげで元気にしています。ただ、がん患者の私よりも、こいつの医療費が多くかかるのが悩みです。

家族全員健康で私のがん細胞もおとなしくしてくれているようで、再発の兆しはありません。ビックリするような良いこともないが、悪いこともない、そんな1年でした。こうして普通の日々が過ぎていくことが一番の幸福なんですが、そのただ中にいるときは幸福は実感できません。失ってみて始めて普通の生活がいかに大切か、宝物であるのかが分かるのです。

そのあたりまえの生活を突然失った、東日本大震災の津波によって亡くなった方々と福島第一原発の事故で故郷を追われた人たちがいる。

3.11以降は、このブログも闘病記なのか脱・反原発ブログなのか分からなくなりました。分かったのは専門家と言われてきた人たちの無責任さ。政治家の無能と官僚の優柔不断、責任回避。企業人のこの期に及んでも人命よりも経済優先主義。

原発は「絶対安全」だ、リスクはゼロだと言ってきた。そのリスクが現実になったとたんに、世の中にリスクがゼロのものはないのだから、この程度の放射線被ばくは受け入れよと言う。科学技術の不確定さを多くの国民が再認識するようになったのもこの1年の特徴です。

リスクは「損害の発生確率」×「損害の重大さ」で表わされる科学的なリスクではなく、自分にコントロールできるリスクなのかによって、利益を受ける者とリスクを背負い込む人が違うときにはより大きなリスクとして「受入れ難さ」を感じるのです。リスクを回避する行動がとれないときには実際よりも大きく感じ、便益がないのに損害だけを受けるときには更に大きなリスクとして感じます。これは科学の問題ではなく、むしろ正義の問題です。別の言い方をすればトランスサイエンス的要素を加味したリスク論が必要だということでしょう。

低線量被ばくは、発生確率は小さいでしょう。しかしがんが発症したときの「損害の重大さ」は受け入れがたい。毎日の食事による内部被ばくはコントロールが困難である。ましてや福島第一原発による直接の利益は受けていないのであれば、大きなリスクと感じるのが当然です。だから、「直ちに健康への影響はない」とか「CT1回分の被ばく線量よりも小さい」とのリスクの説明では反って不信感をもたれてあたりまえです。

がんの治療においても、抗がん剤が効果があるのか、寿命を縮めるのかは確率的にしか分かりません。しかしがん治療では自己決定権がある。リスクも利益も自分の体で受け取るのです。代替療法にしても、科学的にいえばエビデンスはない。しかし、エビデンスがないということは「効かない」と同一ではない。科学的に分かっていることとまだ分かっていないことを知識として把握した上で、自己責任で選択するのであれば、代替療法全体を否定するべきではないと思います。

科学的であるとはどういうことなのか、科学やエビデンスとの付き合い方について、改めて考えさせられた1年でした。そして、一番大切なのものは何であるかということにも。

新しい年が、少しでもましな1年でありますように。

2011年12月29日 (木)

NHKがICRP基準の欺瞞性を検証!

昨夜の、NHK 追跡!真相ファイル「低線量被ばく揺らぐ国際基準ICRP」は見応えがありました。28分の番組という制約の中で、核心にズバッと切り込んでいました。

ICRP勧告では100mSv以下の低線量被ばくにおけるがん死リスクを半分にしている。それに根拠のないことが元ICRP委員が取材に応じて証言したのです。このこと自体は、ECRR勧告でも、小出裕章氏らのかねてからの主張でも論じられていたことです。線量・線量率効果係数(DDREF)という係数を導入しているのですが、私のブログでも「中川恵一 × 近藤誠 (2)」で言及しています。

DDREF(線量・線量率効果係数)は、ICRPが根拠もなしに「低線量域ではがんになる確率は半分で良いだろう」と持ち出した仮定である。無理矢理値切っているのであり直線仮説を採用するという趣旨に反する

番組は低線量被ばくでも、特に内部被ばくにおいてはICRPがいうがん死リスクよりもはるかに高い確率で発がん、がん死するとの主張が貫かれています。チェルノブイリ事故の放射能降下物による汚染が起きたスウェーデンの例ではトンデル博士の研究を紹介していました。そしてトナカイの肉などを通じた内部汚染により、ICRP基準では説明できないような大きながんの発症が起きているのです。これなどもECRR勧告やクリス・バズビー氏らによって主張されてきたことです。

ECRR は2003年に報告書を出した。あくる年の 2004年、スウェーデンのトンデル博士が新たなモデルを発表した。チェルノブイリにより、スウェーデン北部の町で1キロ平方メートルあたりのセシウムのベクレル数が百キロベクレルの場所で、11%のガンの増加があったというのである。

この数値を見ると、ICRPは600倍もの過小評価を行っていたことがわかる。この数値とほぼ同等のものが、前年に出されたECRRの2003年報告によっても言明されていたのである。

欧州では小児白血病も観察されている。そのデータからも、ICRPはリスクを500-2000倍も過小評価しているのがわかる

神戸大学大学院・山内知也教授の「ECRRとICRPそれぞれの勧告について」では次のように言及しています。

いくつかの切り口はあると思うが、最も分かりやすいのがスウェーデン北部で取り組まれたチェルノブイル原発事故後の疫学調査に対する対応において両者の違いが端的に現れている。

その疫学調査はマーチン・トンデル氏によるもので、1988年から1996年までの期間に小さな地域コミュニティー毎のガン発症率をセシウムCs-137の汚染の測定レベルとの関係において調べたものであった。それは、同国だからこそ出来た調査でもある。結果は100 kBq/m^2の汚染当り11%増のガン発症率が検出されている。このレベルの土壌汚染がもたらす年間の被ばく線量は3.4 mSv程度であり、ICRPのいう0.05 /Svというガンのリスク係数では到底説明のつく結果ではなかった。ECRRはこの疫学調査が自らの被ばくモデルの正しさを支持する証拠だと主張している一方で、ICRPではこの論文を検討した形跡が認められない。おそらく、結果に対して被ばく線量が低すぎるという理由で、チェルノブイル原発事故による放射性降下物の影響ではあり得ないと考えていると思われる。

結果に対して線量が低すぎるので被ばくの影響ではないという議論は、セラフィールド再処理工場周辺の小児白血病の多発や、ベラルーシにおけるガン発生率の増加に対しても、劣化ウラン弾が退役軍人や周辺の住民にもたらしている影響に対しても行われてきているものである。すなわち、ICRPの理論によれば低線量被ばく後にある疾患が発症すると、その原因は放射線によるものではないと結論される。その一方で、ECRRの理論によれば新しい結果が出るたびにそれは自らの理論の正しさを示す証拠になる。

「被ばく線量(実効線量)は20mSv以下だから、将来もがんの増加はないだろう」これはこの前の記事で書いたように、中川恵一氏らの思考方法です。多くの放医研や放影協に属する御用学者らの言っていることも「ICRP基準ではがんが増加するはずがない。だから福島でもがんは増えない」と、逆立ちした主張です。

日本ではICRPは科学者の自主的な中立的組織であり、その勧告は科学的であり信頼できる、との認識が一般的です。しかし、番組に登場した元ICRP委員らの証言は「ICRPは政策的決定をする機関である」と断定していました。さらに、低線量被ばくのリスクは上げるべきであるとの主張を抑えるために、あえて低線量ではリスクが低くなると主張したのだと証言しています。つまり、現在の直線仮説すらも政治的な妥協の産物であり、更にその上、DDREFを持ち出してリスクを半分に値切っているのです。この根拠について彼らは「科学的な根拠はないが、まぁこんなものでいいだろう」と言い切っています。

番組での論点を整理すると、

  1. 低線量被ばくのリスクは根拠なしに半分にされている
  2. 更に放射線作業に従事する場合のリスクは20%小さくされている
  3. なぜなら、原発作業員の安全を考慮すると原発の運転はできないからだ
  4. スウェーデン北部はチェルノブイリ事故によるセシウムで年間0.2mSv。事故前に比べ年34%がんリスクが上昇。食品基準は日本の暫定規制値よりも低い300Bq/kgだった
  5. アメリカイリノイ州の原発周辺で脳腫瘍・白血病他の州に比べて30%増。小児がんは2倍に。放射性トリチウムによる地下水汚染。
  6. 福島の現状を受けて、ICRPが低線量被ばくリスクの見直しを始めている。多くの委員から現状への疑問が出されている。

放射線影響協会、放射線医学総合研究所、国立がん研究センター、これらをはじめとする医学関係の原子力ムラの先生方よ。ICRP勧告なんぞは、所詮はICRPに資金を出している原発推進団体の意向を受けて作成されているだけであり、「科学的」とは無縁のものなのです。

「放射線を正しく怖がりましょう」と放医研の理事長は言いますが、ICRPの委員だった人物が「根拠なく決めた」と証言している基準を後生大事にしていて、どうして正しく怖がることができるのでしょうか。

もうそろそろICRP勧告の呪縛から抜け出すべき時ではないのかね。

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スウェーデン北部ではチェルノブイリ事故による放射性セシウムによる年間被ばく線量が0.2mSvとされる地域でがんの発症率が34%以上増加している。

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食品の規制値を300Bq/kgに制限しても、この結果である。日本の暫定規制値500Bq/kgが安全なはずがない。 Pdvd_019_2

被ばく線量10mSv以下でもがん発症のリスクが増加しているとトンデル博士。Pdvd_029

イリノイ州にある3つの原発周辺では水道水へのトリチウム汚染が深刻。もちろん日本の原発も日常的にトリチウムなどの核種を放出している。

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脳腫瘍・白血病が30%以上増加、特に小児がんは2倍になった Pdvd_043Pdvd_045 Pdvd_048

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これがICRP委員の本音。科学低根拠はない。原発推進のために「どれだけの人に死んでいただくか」を決定する機関だからだ。

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10月のICRP国際会議は紛糾したようだ。さすがに福島原発事故に置ける日本政府の対応を見ていれば、彼らなりに今後の原発推進に悪影響が出ると心配したのだろう。

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広島・長崎の非学者の線量が実際は少ないことが明らかになり、その結果がんのリスクは2倍になった。しかし、低線量ではそのままに据え置かれた。

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そうしなければ核兵器開発・原発運転に市況が出るからだ。さらに放射線に従事する労働者の被ばくによるリスクは20%引き下げられた。 Pdvd_073 Pdvd_075

科学的根拠はなかったと明言ICRP名誉委員 チャールズ・マインホールドド氏)

下のように、ICRPに資金を出しているパトロンの要求に忠実に従っているだけの組織 Pdvd_078

脳腫瘍になって奇跡的に生き延びたセーラさんの言葉は重い。福島・日本の子どもたちの未来の姿にならないことを願うばかりだ。

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つるりん和尚と川村妙慶尼

12月19日の東京新聞の特報欄に『福島「つるりん和尚」の決断 地域汚染土 預かろ』との記事が載っていました。それ以後、つるりん和尚さんは取材攻勢に責められているようです。

福島県知事や福島市長に対して、歯に衣着せぬ批判を続けている「つるりん和尚のああいえばこうゆう録」の12月28日のブログにこのようなことが書かれています。

一日に200通を超えるメールでの悩み相談にすべて応えてきた川村妙慶尼は、「自ら悩みを作り出す人の癖」をこう表現しています。

  1. 現実をみることができない
  2. 先のことばかり考えすぎる
  3. 決断力がない
  4. 自分を客観的に見ることができない
  5. 白黒・勝ち負けをつけたがる
  6. 心に決め事を作りすぎる
  7. その場しのぎで深く考えず行動する
  8. 何故私だけがこんな目に?と思う

さすがに、日々人の苦悩に向き合ってきた方だけに見事に捉えているなと思います。

目の前の問題をどう受け止めるかで政策は変わります。
自然災害は避けられない事実を直視せず目の前のエサだけに気を取られ、原発再開を望んでいる原発立地市町村・県はまさにこれにあたります。

「絆」もいいでしょう。
「心」もいいでしょう。

しかし、もっと私たちの共有すべきテーマがあると私は感じます。
綺麗な言葉でいかに取り繕おうとも、私たちにつきつけられている問題の解決にはいたりません。

川村妙慶さんは京都市在住の真宗大谷派の僧侶でありアナウンサー。「川村妙慶の日替わり法話」では親鸞の言葉を多く紹介しながら、たくさんの気づきを与えてくれるブログです。もちろん著作も女性には人気があるようです。

上に紹介した8つの癖、がん患者として読んでみると、なるほどと思うことしきり。再発したらどうしようなどと「先のことばかり考え」、抗がん剤・代替療法が「効くか効かないか」と二分法で「白黒をつけたがり」、挙げ句の果ては「何故俺だけが・・・」と嘆く。

信仰のない私ですが、我が家の菩提寺も浄土真宗です。墓参りにいくと「親鸞聖人750回大遠忌」の垂れ幕がかかっています。来年2012年が750回大遠忌にあたります。

来年は親鸞のことも少し書いてみようなどと考えていますが、「先のことばかり考えすぎる」癖と言われかねないので、予告はしないでおきます。

ほっとする親鸞聖人のことば ほっとする親鸞聖人のことば
川村 妙慶 高橋 白鴎

こんな時親鸞さんなら、こう答える―妙慶尼さんの元気エッセイ 「思い込み」を捨てる48のヒント 心の荷物をおろす108の智恵 親鸞 「イヤな自分」を克服する本 (知的生きかた文庫) いまさら入門 親鸞 (講談社プラスアルファ文庫) 女の覚悟 -ひとり悩むあなたへ贈る言葉

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2011年12月28日 (水)

西尾院長(北海道がんセンター)の「福島原発災害を考える」

市民のためのがん治療の会」に、北海道がんセンター院長の西尾正道先生(放射線治療科)の連載が始まりました。「福島原発災害を考える①」です。

Drvisit111226_011 その前に、同じ放射線治療医である例の中川恵一先生のことを。アピタルのドクター・ビジット「がんを知る 備えることで防げる」と題して、名門横浜雙葉学園で講演というニュースです。

 さて、みなさんの家では、放射線の被曝(ひばく)のことを、結構気にしているかな? 僕は放射線科の医者だから、被曝のことにもすごく関心がある。でも、福島でがんが増えるということはあまり考えられないと思っています。といっても、100年後に見たら、やっぱり2011年から福島、あるいは日本全体でがんが増えてしまうような恐れもあると心配しています。それは被曝によるものではありません。
 日本の野菜は汚染されているんじゃないかとか思って肉ばかり食べて、野菜や魚を食べない。日本の女性を世界一長生きにした野菜中心の食事が失われてしまうと、がんが増える原因になりかねないんです。

福島で将来がんが増えても、それはストレスや野菜不足が原因だろうと、いまから予言をしています。福島産の野菜を摂ることを強制せず、汚染されていない野菜を福島に供給すれば良いだけのことです。これへの批判はこの程度で措いておきますが、女子校での講演に、権威付のための白衣を着てとは、何を着ようと勝手だが、みっともないこと甚だしい。

西尾院長の連載ですが、

 原発事故による放射性物質の飛散が続く中、地域住民は通常のバックグランド以上の被曝を余儀なくされて生活している。私は事故直後に風評被害を避けるために、3月14日に「緊急被曝の事態への対応は冷静に」と題する雑文を短期収束を前提に書いてインターネットで配信(MRIC by 医療ガバナンス学会)させていただいた。

 しかし事故の全容が明らかになり、放射性物質の飛散が長期的に続くとなれば、全く別の対応が必要となる。4カ月を経過したが、放出された放射性物質の詳細な情報の非開示と、不適切な被曝対応が続いている事態は世界から呆れられている。

同じ放射線科医でもこんなにも感じ方が違います。西尾先生は内部被ばくに関しても豊富な知識をお持ちのようです。自衛隊ヘリによる注水についても私と同じような感想を持っています。

自衛隊ヘリによる最初の注水活動「バケツ作戦」では、被曝を避けるために遮蔽板をつけ、飛行しながら散水した。遮蔽板を付けるくらいならばその分、水を運んだほうがましであり、最適な位置に留まって注水すべきである。

 この論理でいえば我々は宇宙から注ぐ放射線を避けるために頭には鉛のヘルメットをかぶり、地面からのラドンガスを避けるために靴底にも遮蔽板を付けて、常に動きながら生活することとなる。医療で部位を定めて照射する直接線(束)からの防護と、空間に飛散した放射性物質からの防護の違いを理解していない。必死の覚悟で作業している自衛隊員が気の毒であった。

理解していないのは中川先生も同じですね。

 今回の事故後の健康被害をチェックするための被爆線量の測定は、外部被爆の測定だけであり、それもガンマ線だけの測定である。科学的な見地からはこんな片手落ちなことはない。関係している専門家と称される人達の見識を疑うものである。

「専門家」というのは、銭と地位のためにしっぽを振っているだけの輩です。

今回は放射線の基礎知識、単位の説明なども丁寧にされており、ICRP基準に則った立場であるとはいえ、『しかし私は、「年間20mSv」という数値以上に内部被曝が全く考慮されていないことが最大の問題であると考えている。』と、まっとうな見識をお持ちです。政府や福島県、放医研の対応は、内部被ばくなどまるでないかのようです。

次回の記事に注目しています。

2011年12月27日 (火)

ドラッグ・ラグ解消へ一歩前進か

Twitterの「膵臓がん」タイムラインをサイドバーに表示していましたが、暗いつぶやきばかり多いので削除しました。Twitterもやる気にもならないし。


27日の朝日新聞のニュース

未承認薬、条件つき容認へ 重病患者を対象、厚労省方針

 厚生労働省は、ほかに治療法がない重い病気の患者に対し、国内では承認されていない薬を一定の条件で使えるように制度化する方針を固めた。26日夜、薬事行政の見直しを検討している厚労省の審議会で大筋了承された。同様の制度は欧米にあり、がん患者らが要望していた。
 日本は欧米に比べて薬の承認時期が遅れるため、欧米で受けられる最新の治療を受けられないことがある。医師や患者が海外の薬を個人輸入して使っている例もあるが、偽造薬を買わされる危険性や、副作用が起きたときに対応ができるのか、などの問題がある。
 創設する制度では、欧米で承認済みで、国内で承認を得るための臨床試験(治験)が始まっている薬を対象とする。医療機関が厚労省に必要な届け出をすれば、複数の病気を抱えているなど治験に参加できない患者に、この薬を使えるようにする。患者にとっては治療の選択肢が広がることになる。

この記事だけでは詳細がよく分からないが、ドラッグ・ラグ解消への第一歩となるのでしょうか。未承認でも保険で使えるようにするのでしょうか。それとも混合診療禁止の例外として、この薬には保険適応はできないが、他の保険診療との併用を認めるという意味なのでしょうか。

ただ、これだけでドラッグ・ラグがすぐに解消するとは思えません。ドラッグ・ラグの問題は厚生労働省の承認審査が遅いという側面もありますが、それ以上にグローバルな製薬企業から見たら、日本での臨床試験、承認を経ての販売には魅力がなく、後回しになっているのも原因です。今回の厚労省の方針も「国内で承認を得るための臨床試験(治験)が始まっている薬を対象とする」のですから、製薬企業が臨床試験を始めないかぎりは使えないし、すぐに多くの臨床試験が始まるという見通しにも乏しいのではないでしょうか。

11月25日にイレッサの添付文書が改訂されたことは、大きくは報道されませんでした。「イレッサ:EGFR遺伝子変異陽性例のみの使用に

薬害イレッサ原告団の「全面解決要求書」にある、

3 国は、イレッサの再審査にあたり、少なくともイレッサの適応をEGFR遺伝子変異が陽性の患者に限定したうえで、今後の投与症例につき全例登録を義務づけるとともに、EGFR遺伝子変異陽性患者に対する、全生存期間を主要評価項目とした比較臨床試験を義務づけること。

との要求の一部を遅まきながら認めた格好です。わずか半年という短い審査期間で承認され、多くの患者に有効であったと同時に、たくさんの間質性肺炎による死者を出した結末が、今回の添付文書改訂だとしたら、藁を持つかむ気持ちで投与されて死んでいった患者の想いが通じたと解釈すべきでしょうか。

今回の未承認薬への方針によって、イレッサのような例が起きないことを願うばかりです。もちろん、がん患者として、末期で「これ以上治療法がありません」といわれたとき、海外にはあるではないか、それを使いたいという気持ちは当然です。仮に重篤な副作用があるかもしれない、日本人への効果は証明されていないとしても、それでも良いからと一縷の望みに掛けようと考えることも自然な感情です。がん患者は誰でも「自分には効くかもしれない」と生きる希望をつなぐのですから。

一歩前進かもしれませんが、詳細が待たれます。

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2011年12月25日 (日)

「最悪のシナリオ」は今後も起こり得る

毎日新聞12月24日の記事『福島第1原発:「最悪シナリオ」原子力委員長が3月に作成』はやはりそうかという感慨と、この政府は東日本の国民が致死的な大量被ばくすることも覚悟していたのだと、驚愕を覚える。

福島第1原発:「最悪シナリオ」原子力委員長が3月に作成

Wshot00274  東京電力福島第1原発事故から2週間後の3月25日、菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が「最悪シナリオ」を作成し、菅氏に提出していたことが複数の関係者への取材で分かった。さらなる水素爆発や使用済み核燃料プールの燃料溶融が起きた場合、原発から半径170キロ圏内が旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の強制移住地域の汚染レベルになると試算していた。

 近藤氏が作成したのはA4判約20ページ。第1原発は、全電源喪失で冷却機能が失われ、1、3、4号機で相次いで水素爆発が起き、2号機も炉心溶融で放射性物質が放出されていた。当時、冷却作業は外部からの注水に頼り、特に懸念されたのが1535本(原子炉2基分相当)の燃料を保管する4号機の使用済み核燃料プールだった。

 最悪シナリオは、1~3号機のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇。余震も続いて冷却作業が長期間できなくなり、4号機プールの核燃料が全て溶融したと仮定した。原発から半径170キロ圏内で、土壌中の放射性セシウムが1平方メートルあたり148万ベクレル以上というチェルノブイリ事故の強制移住基準に達すると試算。東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同250キロの範囲が、避難が必要な程度に汚染されると推定した。

 近藤氏は「最悪事態を想定したことで、冷却機能の多重化などの対策につながったと聞いている」と話した。菅氏は9月、毎日新聞の取材に「放射性物質が放出される事態に手をこまねいていれば、(原発から)100キロ、200キロ、300キロの範囲から全部(住民が)出なければならなくなる」と述べており、近藤氏のシナリオも根拠となったとみられる。(毎日新聞 2011年12月24日)

原発事故…その時、あなたは! 私は3月15日のブログ記事「政府は、妊婦と乳幼児を直ちに避難させよ!」で京大原子炉実験所の、いまは亡き瀬尾健さんの著作『原発事故…その時、あなたは!』から福島第一原発の放射能拡散予測図を引用して、次のように書いた。『ここは慌てることなく対応しようではないか。「慌てることなく」というのは、取りあえず急性障害を避けることに専念し、晩発的影響(発がんリスク)は、これからの医学の進歩に任せようということだ。「一個の原発で、百万年に一度しか起こらない」という専門家の詭弁にだまされた結果、それが3~4個も同時に起き、1000年に一度の大地震・大津波も同時である。津波の被災者に、ロシアンルーレットを突きつけているのである。』

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瀬尾健さんの作成した図2の「厳しい非難基準」が、近藤俊介原子力委員長の作成した「最悪のシナリオ」の半径250kmにほぼ対応している。瀬尾さんがこれを発表したときは注目もされなかったが、彼の先駆的な仕事は今回の事故を体験して始めて明らかになった。

近藤委員長の「最悪のシナリオ」は、さらなる水素爆発や4号機の使用済み核燃料プールの燃料溶融を仮定してのものであるが、3月15日までの初期の段階においても4号機の燃料溶融があり得たわけで、そうならなかったのは福島第一の現場作業員の方々の献身的な作業と、たまたま運が良かったということだけである。これにほんのわずかの差で津波による全電源喪失を免れた東海第二原発が「最悪のシナリオ」になっていたとしたら、と考えると、私の100キロ以内の妊婦・子どもは避難すべきだとの記事もまったく控えめであったとすら思う。

田口ランディ氏が3月19日に「最悪のシナリオという脅しにだまされないために」(同じ内容だが、こちらの記事が読みやすい)と題して東北大学の北村正晴氏らとのメール交換をした内容について書いている。「楽観はできないがチェルノブイリ級の破滅的事象はない見込み」と、原子力委員会委員長がチェルノブイリ級もあり得ると考えていたのと比べると、情報が限られた中での見解とはいえ、あまりにも楽観的すぎた見方だった。

22万人が犠牲になった史上最悪の2004年のスマトラ沖地震(M9.1)では4ヶ月後にM8.6、3年後にM8.5の余震があった。今後数年はM8級の余震が確実に来ると覚悟すべきであり、そのときに崩壊寸前の福島第一原発4号機の使用済み核燃料プールが倒壊しないと考えるのはよほどの無知か楽観論者であろう。それまでに急いで対策をしなければ、本当に「最悪のシナリオ」になるはずである。

それでも懲りずに、ただお湯を沸かしてタービンを回すために原発を再稼働させようという呑気な連中がいる。今の日本では正気を保つのにも勇気が要るようだ。

良寛のこんな詩を。

       炊くほどは 風がもてくる 落葉かな

電気を湯水のごとく使う生活でなくても、煮炊きに必要なものは風が運んできてくれる。

2011年12月22日 (木)

がん研での定期検査

血液検査は10時に、その後11時からダイナミックCT。今日はいつもと違って肺の方まで検査したようだ。腫瘍マーカは、CEA=4.1、CA19-9=23.7 でともに正常値の範囲内。

CTの結果も、主治医と放射線科医の判断で、ともに転移・再発の兆候を認めず。

「次回の検査は半年後、それで5年目ですね。すばらしい成績ですよ」と先生の嬉しそうな言葉でした。もちろん私も嬉しい。再発しているはずはないと確信していましたが、一抹の不安はなくなりません。この不安な気持ちは癌患者でなければ分かりませんね。しかし、がん研は2時間後にはCTの結果が判明するので、結果判明まで1週間などという病院に比べると、不安でいる時間は短いのです。これはこれでありがたいことに違いありません。

「ロハス・メディカルに石井先生の名前があって、ペプチドワクチン担当副部長だそうですが、がん研でがんワクチンの治験をされているのですか?」との質問には、中村祐輔教授らのがんワクチンの治験をやっているとのことでした。WT1、樹状細胞療法までは手を広げていませんが、やっていますよと。がん研がやらないはずはないですね。確か、オールジャパン大勢のペガサスPCプロジェクトに入っていたように思います。

「再発・転移した膵癌は対象にならないのでは?」との問いには、「そうとも限りませんよ。ま、その時が来たら相談しましょうか」と笑っていました。ただし、5年、10年経っても膵癌は再発・転移することが最近分かってきました。これまではそこまで生存した患者が少なかったから分からなかったのですが、ジョンズ・ホプキンス大などのデータが出ています。と、安心してはいけませんよ、と脅かされました。ま、そんなこと気にしてもしかたありません。これまでの自分なりの対処法を続けるだけです。

検査結果で気になるのは、白血球数が3600と減っていること。リンパ球数実数が1620あるから大丈夫だけれども。GOTも高いがGPTは正常範囲(といっても少し高め)。これはたぶん焼酎の飲み過ぎが原因だ。休肝日を設けようか。

今日はこれからチェロのレッスンで、その後忘年会です。ま、飲み過ぎないように注意しましょう。(酔っ払ったらこの約束を忘れるから困るのです・・・)

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下は手術後の全データですが、1回だけCA19-9が正常値越えの他は、問題なし。

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このグラフを見ると、手術後は別にしてマーカの値に2度のピークがあります。「正常値の範囲内だから値を気にすることには意味がない」と考えるのが医学的には正しいのかもしれません。しかし、医学なんてまだまだ分からないことばかりです。がんですら完全には治せないではないか。それに私の腫瘍マーカは、腫瘍があった手術前の検査でも正常値の範囲内でした(グラフの左端のデータ)。正常値内だからと安心はできないのです。値よりも、上がっているのか下がっているのかの傾向が重要です。

だから、2度のピークは体内で何かの異変が起きたシグナルであり、その異変を危ういところで免疫細胞が退治してくれたのだと考えることにします。とするならば、今後も『がんに効く生活』を続けるべきであると。医学的にどうとかは関係ありません。ひとりの患者としては、このように考えて対処するのが、正しい判断でしょう。こう判断をしたからといって何らかの不利益をこうむるわけではないし、真実は誰にも分からないのですから。

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2011年12月21日 (水)

新しい食品規制値は妥当か?

 

2011122199021253  食品に含まれる放射性セシウムの問題をめぐり、厚生労働省は現行の暫定規制値に代わる新たな規制値案をまとめた。野菜や魚、肉などは「一般食品」にまとめられ、新規制値は5分類から4分類に減る。案によると、新設の「乳児用食品」と「牛乳」は50ベクレル、「飲料水」は10ベクレル、「一般食品」は100ベクレル。ベクレルの値はいずれも1キログラム当たり。

 暫定規制値の200ベクレルまたは500ベクレルに比べ、4分の1以下になる。案を22日の薬事・食品衛生審議会に提案し、了承されれば来年4月から適用される。暫定規制値は福島第1原発事故後の緊急対応として定められた。汚染食品による内部被ばく線量の上限は暫定規制値では年間5ミリシーベルトと設定されたが、新規制値では年間1ミリシーベルトに引き下げられる。

 その上で、「飲料水」は全ての人が毎日飲み、代替品がないことなどから、世界保健機関(WHO)が年間の被ばく限度とする0.1ミリシーベルトに従い、10ベクレルを採用した。

 暫定規制値でそれぞれ500ベクレルとされた「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」は、新規制値では「一般食品」に集約した。年齢別や性別、妊婦など10区分し、食品摂取量やセシウムからの影響の受けやすさを考慮して数値を算出し、最も厳しい値を案としたという。(2011/12/21 中日新聞)

私は少なくとも100Bq/kg以下にすべき、できれば50Bq/kg以下にと書いてきたのですが、成人に対してはまあ妥当で、測定限界、測定の高率を考えれば、現状では仕方ないのかなと思います。ただ、乳幼児と妊婦に対しては飲料水と同じ規制値にすべきでしょう。

食品については、福島県以外であれば一部の猪の肉やキノコ類を除いては100Bq/kgを超えるものはそれほど多くはありません。むしろ魚介類に注意すべきだと思います。

今回の規制値はセシウム(Cs-134+Cs-137)の合計値に関して決められていますが、他の核種についても検討はしています。セシウムの放射能が測定が比較的容易であるので、全体に対するセシウムの寄与率を85%前後に定めることで、他の核種による実効線量も評価したことになっています。

平成23年11月24日開催の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会資料、「資料2-1:規制値設定対象核種について」によれば、セシウム134、セシウム137の他に、ストロンチウム90、プルトニウム(238、239,240,241)、ルテニウム106が対象となっています。
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半減期1年未満の核種と放射性ヨウ素およびウランは対象外です。ただし、

これらの核種の寄与については、今後、食品中のモニタリングを詳細に実施し、また、土壌中の環境モニタリングを監視すること等によって、その影響を把握し、規制値の妥当性の検証を随時実施することが望まれる。

と念を押しています。

同じページの資料の「資料2-2:食品摂取による内部被ばく線量評価における放射性セシウムの寄与率の考え方」によれば、セシウムの寄与率は、土壌中の核種分布、農産物、畜産物への移行係数を考慮しています。また、Cs-134とCs-137の線量係数と半減期の違いにより、加重した影響は減衰していきますが、事故から1年後の加重した線量係数を用いるとしています。この時点での影響が一番大きいのですから、これも妥当な判断でしょう。

7. 結論
以上の解析により、

  • 規制の対象は保安院試算値に基づき環境への放出が認められる放射性核種のうち半減期1年以上の核種全体とすること
  • 放射性セシウムには規制値を設定すること
  • 放射性セシウム以外で規制対象とする核種については、内部被ばく線量に占める放射性セシウムの寄与率を用いて管理すること
  • この前提で、規制値を誘導する際は、事故から1年後の放射性セシウムの寄与率である、1 歳未満86%、1~6 歳86%、7~12 歳84%、13~18歳、84%、19歳以上88%を用いること

が妥当であるとの結論に達した。

セシウムの寄与率85%前後として放射能値で100Bq/kgとしておけば、他の核種の寄与率は15%程度であり、それを含めても年間で1mSvを超えない、という検討委員会の結論です。私の作成した「被曝リスク計算」マクロでもほぼ同じ実効線量になります。ただし、ECRR基準を採用すれば、新しい規制値でも5mSv/年になります。

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問題点

  • 土壌中のSr-90/Cs-137比を0.3%としているが、妥当なのか?
       1%以上だとのデータもある。
  • 土壌から農作物へのSr-90とCs-137の移行係数比(表3)によれば、根菜類で6.7倍、玄米で3.3倍である。しかし、10倍以上とのデータもある。
  • 実際の食品中におけるSr-90/Cs-137比を、サンプル調査することが必要である。

Cs-137が100Bq/kgの根菜類には、0.3×6.7=2.01%のSr-90があることになる。ICROの実効線量係数は、Cs-137で1.3E-8(Sv/Bq)、Sr-90で2.8E-8と2倍であるので、1%でも10%でも全体の実効線量には大きな違いは生じない。しかしECRRによる実効線量係数は、Cs-137で6.5E-8、Sr-90は9.0E-6で、ICRPの5倍と320倍である。ベータ線放出核種のストロンチウム90を過小評価してはならない。

福島の農家にとっては厳しい規制値になるでしょう。農家への迅速な補償がされなければなりません。

2011年12月20日 (火)

ロハス・メディカル 「がんワクチン、なぜ効くのか」

75111 ロハス・メディカル12月号に「がんワクチン、なぜ効くのか」と題した、がん研有明病院消化器内科ペプチドワクチン療法担当副部長の石井浩 医師が監修した記事が載っています。がん研には「ペプチドワクチン療法担当」の部長さんたちがいるのですね。知りませんでした。明後日の定期検査の時に主治医に訊いてみよう。

がんのワクチン療法に関する長所と短所、WT1、樹状細胞療法、今後期待される「がんの増殖に必須な分子由来のがん抗原」に注目したワクチン=エルパモチド(OTS102)にも言及してます。がんワクチンの現状の全体像を把握するには良い記事です。

 実際、ペプチドワクチンは実用化に向けて様々な医療機関で臨床試験が行われています。
 例えば現在、日本で開発が順調に進んでいるのが、「エルパモチド」(開発コードOTS102)です。効果が認められれば、世界初のがん治療用ペプチドワクチン誕生となる可能性もあります。当面、適応が予定されているのは、生存率が低く克服することが難しいすい臓がん。胆道がんの臨床試験も進んでいます。副作用はほとんどないとされ、その実力に期待がかかっています。(なお、エルパモチドは厳密には、がん特異的タンパク質を標的にしているのではありません。


がん特異的なタンパク質と一口に言っても、実際にはさらに2通りに分けられます。

  • がんになった結果として現れてきただけで、がんの増殖に必須ではない分子
  • がんの増殖に必須の分子

 従来のがんワクチンは、この両者を区別せずに開発が進められてきました。しかし、がん特異的タンパク質は変異によって発現が低下し、傷害性T細胞の攻撃を逃れてしまうことがあり、それをコントロールするのは困難です。前者を狙ったがんワクチンだと、その場合、目印を失うことになります。一方、後者の「がんの増殖に必須な分子(由来のがん抗原)」を標的としたワクチンの場合、発現しなければがんも増殖できずに自滅してしまいますし、発現すれば細胞傷害性T細胞にやられることになります。
 このように、がん細胞から標的分子が消えて細胞傷害性T細胞による治療効果が発揮できない事態がありえる、という従来のがんワクチン療法の短所を補う方法として、「がんの増殖に必須な分子由来のがん抗原」が注目されているのです。
 そして実は、先にご紹介したエルパモチドも、同じく従来のがんワクチンの短所を補うことが可能です。というのも、がんそのものではなく、がんに栄養を供給するのに欠かせない新生血管に特異的なタンパク質を標的としたペプチドワクチンなのです。新生血管に対する強い免疫反応を誘導して、がんの増殖を妨げます。これならば、がん自体に変異が生じても標的が失われることはありません。

ロハス・メディカルの他の「がん」関連紙面アーカイブにも注目です。「がん きのんのき」「抗がん剤はなぜ効くのか」など。

一方、がんナビには「全粒穀物の食物繊維が大腸がんを防ぐ」という記事が載りました。

また、海外癌医療情報リファレンスには「高血糖は大腸癌リスクを高める」との記事が。

どちらも大腸がんに関するものですが、私が注目するのは、全粒穀物と血糖値ががんに及ぼす影響です。大腸がんに関係するのなら、他のがんにも関与しているはずです。

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2011年12月19日 (月)

ストロンチウム90は膵臓がんを発症させる

人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために人間と環境への低レベル放射能の脅威』には、米ソの過去の大気圏核実験の降下物、いわゆる死の灰と日本の子どものがん死亡率との相関関係を指摘しています。もちろん因果関係があるとは断言できません。

翻訳者の肥田舜太郎医師も次のように訳注を付けています。

訳注
* 1  日本における 2009年の乳児死亡数(対10万)は約2,800人であり、主な死因は先天奇形、染色体異常、呼吸障害、血管障害、乳児突然死症候群などである (2009年厚生労働省人口動態統計年報)。 自然流産は全妊娠の1O~15% とされ、その原因は胎児(受精卵)にある場合と母体にある場合とがある。大部分が胎児に問題があるとされ、流産した胎児の60~80% に染色体異常が認められているが、分娩時には0.6%程度になっている 。

*2  厚生労働省の人口動態統計によれば、小児ガン罹患率は、70年代から2000年代にいたるまで変化しておらず、すなわち戦前に比べ、6倍高い率が継続されている。5歳以上の子供の病死原因の第一位ががんであり、年間に2,000~2,500人の子供ががんと診断され、多くの幼い命が失われているが、その診断、治療の進歩の結果、治る可能性が高くなった。ただし、原因はほとんど不明なため、予防は困難である。

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この本の著者であるスターングラス博士のインタビュー記事があります。そこでストロンチウム90と膵臓がんの関係について重要な指摘をされています。

S博士「ついでに、もう一つ重大な話をしよう。ストロンチウム90から出来るのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、すい臓に集中する。すい臓というのは、糖尿をおさえるホルモン、インスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの二倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより率が高いのだ。日本では、戦後から現在にかけて、すい臓がんが12倍にもふくれあがっている。50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、すい臓に最も高い集中見られたのだ。インスリンがうまく生産されないようになって、血糖値が上がってしまうのだ。今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかったのだ。未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、すい臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。」

Ws0075 上は国立がん研究センターのデータですが、確かに膵臓がんは突出して増加しています。1958以降のデータですが、縦軸は対数の方対数グラフです。

ストロンチウム90(Sr-90)は骨に蓄積しますが、その娘核種であるイットリウム90(Y-90)は膵臓に高濃度に蓄積されます。実は先の横浜でのストロンチウム検出騒動でも報じられたように、ストロンチウム90の測定は非常に手間がかかるものであり、イットリウム90からのベータ線が高いエネルギーを持っているので、そのエネルギーを測定してストロンチウム90の存在量を計算するのです。ストロンチウムが怖いというのは、ベータ壊変の結果できる娘核種のイットリウム90による影響も大きいのです。ストロンチウムの半減期は29年であり、1000分の1になるには300年かかります。イットリウム90の半減期は64時間ですが、ストロンチウム90から耐えず生成されるので、放射平衡、つまり常に一定量が体内に存在するのです。結局、一生涯イットリウム90による膵臓がんへの被ばくが続くことになります。

純粋なSr-90は初期にはY-90を殆ど含まないが次第に増加し1ヶ月程度で放射平衡に達し、約3900分の1のY-90を定常的に含むようになる。Y-90のβ崩壊エネルギーは2279.783±1.619 keVと、Sr-90の545.908±1.406 keVよりもかなり高く、より透過性の高いβ線を放射し危険性も高い。その透過力は1cm厚さの水を通す程度であり、体内に取り込まれると充分に細胞を損傷し得る。

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ストロンチウム90によってナチュラル・キラー細胞が非活性化されて、免疫力が弱くなったところへ、さらにイットリウム90によって膵臓がん細胞ががん化する、というメカニズムがありうるわけです。

膵臓がんが右肩上がりに増えているのは、食事の欧米化が原因だとされていますが、この主張とても確かな証拠があるわけではありません。戦前と戦後の膵臓中のイットリウムの量が分かれば傍証にはなるのでしょうが、そのようなデータはありません。ですからあくまでも「仮説」の域を出ないわけですが、疫学データの多くはそうしたものでしょう。相関関係から因果関係を証明することは、いつの場合も難しいものです。

皮肉なことに、このイットリウム90は放射線療法に用いられています。半減期が64時間と短く、モノクローナル抗体などの分子に結合させることができるので、がん細胞などの体内の標的を探し出して、それに結合させることが可能となるのです。それほど強力なイットリウム90が膵臓にあれば、膵臓がんを発症するというのも納得できるのではないでしょうか。

2011年12月18日 (日)

福島原発行動隊 山田恭輝さんは悪性リンパ腫だった

マスコミでも何度か取り上げられた「福島原発行動隊」の理事長山田恭輝氏、理事の平井吉夫氏が、頑張らない医師・鎌田實氏と対談した内容が「がんサポート情報センター」に掲載されています。「がんで死を覚悟した60 年安保の闘士がなぜ、福島原発に乗り込むのか

山田氏は悪性リンパ腫、平井氏は大腸がんの患者です。

東日本大震災が誘発した東京電力福島第1原子力発電所の事故は、日を追うごとに重大な事故であったことが明らかになり、収束に向けて必死の作業が続けられている。そこに60歳以上の高齢者グループが、ボランティアによる現地支援を申し出た。一時は「老人決死隊」とも呼ばれた(社)福島原発行動隊である。がん患者さんでもある。隊員がなぜ福島原発に乗り込むのか。

鎌田  抗がん剤で小さくなりましたか。
平井  ほんのちょっとだけ(笑)。あとの手術は担当の先生にすべてお任せでした。
鎌田  もしかしたら助からないかも、と思いました?
平井  思いました。先生も「どうなるか、わからん」とおっしゃっていましたから。
山田  私はお見舞いに行って、「死ぬ覚悟をしろ」って言いました(笑)。
鎌田  いいなぁ、そういう友人がいるのね(笑)。で、覚悟はできた?

私もつい最近、高校時代の仲間に「死ぬときは死ねば良いんだよ。でも急ぐなよ。来年の桜くらいは一緒に観よう」と言いました。幸い手術がうまくいって経過は良好です。

鎌田  山田さんのがんは?
山田  悪性リンパ腫です。PTCL-NOS(末梢型T細胞リンパ腫-非特定)で、特効薬がありません。CHOP療法をやっても5年生存率が3割というのが定説のがんです。その抗がん剤をうつとき、担当医が「放っておくと5年生存率2割だが、抗がん剤をうてば3割になる」と言っていました。
鎌田  今は消えてるんですか。
山田  寛解状態です。今年で3年になります。ただ、収まってからがつらかったですね。「3カ月先のコミットメントをするな」と言われましたから。長期のプロジェクトは全部他の人に渡して、3カ月以内の短い仕事ばかりやりました。そうしたら、イライラしてどうしようもなくなり、やけ酒をくらって、重症急性膵炎になりました。
鎌田  そんなに飲んだの。
山田  飲みました。ダメなことは自分でもわかっているんですが、しらふでいるとつらいんです。止まらなかった。その悶々とした時間があって、やっと、がんで死ぬ覚悟ができました。悪性リンパ腫の患者会に出たことがありますが、元気で楽しくやればがんを克服できる、というような考え方にはついていけませんでした。死を受け入れた上で今を楽しく、という考え方でないとダメだと思います。死の覚悟ができないまま、死にたくないと思いつつ、がんに倒れていくのは、不幸ではないでしょうか。
平井  私は最近、死に対する恐怖が鈍っています。もともと人間が死を避けるのは本能ですが、それは種の保存の本能があるからです。しかし、私は子どもも残したし、死を恐れなくなっているように思います。
鎌田  死を受け入れるほうが強く生きていける。
山田  私は死を覚悟したときから、いろんなことが美しく見えるようになりました。コンサートで音楽を聴いて初めて涙し、自分が変わったことを実感しました。

5年生存率2割、3割でやけ酒を食らうなら、膵臓がん患者はどうすれば良い? 切除できない膵臓がん患者の希望は、手術が可能になるまで縮小してくれること。しかし、手術できても5年生存率は15%程度です。「3カ月先のコミットメントをするな」は同感です。私も半年先の予約はしないことにしています。

「死を受け入れた上で今を楽しく」はまさにその通り。このブログでも何度も同じようなことを書いています。最後まで全力を尽くしてがんと闘う、は一見勇ましいですが、ほんの少し思い通りにならないと挫折して、脆く崩れてしまうのではないでしょうか。

平井  私も大きな手術をしたあと、ようやく飯が食えるようになったとき、見舞いをいただいた大勢の人に礼状を書いたんです。その中に、「授かった余命だから、これからは役に立てるよう、大切に生きましょう」と書いたことを覚えています。おまけに授かったいのちですから、有意義に使わなくちゃと。

「役立つように大切に生きる」も大事ですが、私も最初の直腸がんの後はそのように考えました。しかし、この「有意義に生きる」との考え方は、またがんになる生活に戻る可能性を含んでいます。これまでの生活を一大転換しなければダメでしょう。案の定、私は7年後に膵臓がんになったわけです。

       拾った命だから、生かされるままに生きよう

が私の心境です。これには「死を受け入れる」ことも含まれています。価値観は人それぞれですから、どれが正解というものではないですが。

福島原発行動隊は、現実的にまだ成果を上げていません。東電も彼らに中を見られたくないのかもしれません。

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最大の危険は、現実判断が自らの嘘から強く影響される政府

「直ちに」のツケをそろそろ払わされ

と、川柳が新聞に載っていた。

政府や野田総理、御用学者の言説を聞いていると、嘘から自らの正気を保つのに努力がいる。

メルトダウンで嘘をつき、除染すれば故郷に帰れるかのような嘘をつく。「冷温停止」に「状態」を付けて新たに造語し、これまでの法規制をないがしろにして20mSvは住んでも良いと、御用学者が恥ずかしげもなく言いつのる。

加藤周一が「夕陽妄語」で「嘘について」(2000年6月22日 朝日新聞夕刊)

天下国家の安泰は、みだりに嘘をつかぬ政府によるところが大きいだろう。その次には、むやみに嘘をつくが、みずからはそれを信じない政府。最大の危険は、その現実判断がみずからの嘘から強く影響される政府である。第一の政府は、民主主義的、第二の政府は非民主主義的・現実的で、第三の政府は非現実的・狂信的といえるかもしれない。今の日本政府はそのいずれの型に属するだろうか。その答えは、つまるところ、日本国民の判断に待つほかはない。

と喝破したが、当時は森喜郎首相であった。自民党から民主党に変ったが、政府の型は何も変っていない。もちろん、当時も今も、日本の政府は第三の型である。幸い、政府の「収束」宣言、「冷温停止状態」には、さすがに日本のマスコミも一部は除いて反論している。ネット上ではほとんどが否定的意見で占められている。「日本国民の判断」は確かである。ここに希望がある。

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2011年12月17日 (土)

終末期の積極的抗がん剤治療は寿命を短縮する

来週の木曜日は半年ごとの定期検査です。いつものことですが、検査の前になると、再発・転移をしていないかと気がかりです。体調には変化もなく糖質制限食のおかげなのか、ウォーキングでも以前より体が軽く感じられるほどです。軽い低血糖も、アマリールを半分に減量してからは自覚症状もありません。

再発・転移したときの選択肢としては、抗がん剤を使うのかどうかです。手術できない場合は、抗がん剤で転移したがんが治ることはほとんどありません。再発・転移した膵臓がんにたいして、抗がん剤が余命を延長するとのエビデンスはありません。国立がん研究センターが、再発膵癌のエビデンス作りを計画しているそうです。現状は、初期がんに対して有効だから再発がんにも有効であろうと期待して治療をしているのです。

私の選択肢は二つです。

  1. 無治療で症状が出るまでは治療はしない。症状が出ても最低限の緩和ケアでQOLを重視した治療をする
  2. 低用量抗がん剤療法を症状が出る前から始める。未承認の抗がん剤は使わず、保険の利く範囲内で対応する。症状が出たら早期に緩和ケア(可能なら自宅で)を合わせて行なう

標準的な抗がん剤治療で、大量の抗がん剤の投与はしない。ジェムザールに耐性ができたらTS-1、その次はタルセバと、次々に標準量を投与して、単に生きているだけの生活はまっぴらごめんです。

膵臓がんに適用できる承認された抗がん剤が次々に増えています。近いうちにはエルロチニブ、FOLFIRINOX、オキサリプラチン、イリノテカン等が承認されるでしょう。患者の選択肢が増えることは歓迎すべきですが、自分の癌に効果があるのかどうかは別問題であり、どのような生き方(死に方)を選ぶかは患者の価値観次第です。これらの抗がん剤で対処している間に新たな未承認薬が使えるようになるから希望を持ちましょう、という戦略は、確かにそれで延命する患者もいるでしょうが、逆に寿命を縮める患者もいるのです。効果があった患者はマスコミなどに登場しますが、寿命を縮めた患者は「死人に口なし」で表に出ることはありません。新しい抗がん剤が、必ずしも希望の星ではありません。

私の価値観からいえば、標準量を投与しても良いと思えるのはジェムザールだけ。TS-1すらも飲みたくはありません。

再発がんに対するエビデンスはないと書きましたが、転移性非小細胞肺がんに対する第Ⅲ相試験が、2010年のASCOやThe New England journal of Medicine に発表されています。この手の試験としては唯一の第Ⅲ相無作為化比較試験であり、標準的な抗がん剤治療によって命を縮めている患者が少なからずいることを明らかにしています。がんの再発後や終末期への対応を迷っている方の参考になるかもしれません。

日経メディカルオンラインに次のように紹介されています。

緩和ケアは肺癌患者のQOLだけでなく生存を延長させる
2010. 8. 23

 転移性非小細胞肺癌患者に対して、標準的な治療に早期からの緩和ケアを加えることによって、QOLやうつ症状が改善するだけでなく、生存期間も2カ月以上延長することが、無作為化試験で確認された。米Massachusetts General HospitalのJennifer S. Temel氏らの研究グループが、New England Journal of Medicine誌8月19日号に発表した。

 研究グループは、転移性非小細胞肺癌と新たに診断された患者151人を、標準治療のみを行う群(74人)と、標準治療と早期からの緩和ケアを行う群(77人)に無作為に分けた。緩和ケア群の患者は、登録後3週間以内に緩和ケアチームのメンバーと会い、外来で月に1回以上、症状改善の治療や精神的サポートなどの緩和ケアを受けた。一方、標準治療群は、患者本人や家族、臨床腫瘍医の希望があったとき以外は緩和ケアを受けなかった。

 患者の平均年齢は標準治療群が64.87歳、緩和ケア群が64.98歳とほぼ同じで、女性の割合はそれぞれ49%、55%、白人が95%、100%を占めた。脳転移のある患者の割合はそれぞれ26%、31%。開始時の治療は白金製剤ベースの併用療法が47%、45%、単剤療法が4%、12%、経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が両群とも8%だった。また放射線療法を受けた患者は両群とも35%だった。

 試験開始時と12週後にFunctional Assessment of Cancer Therapy - Lung(FACT-L)を用いてQOLを評価した結果、FACT-Lスコア(0~136点)は緩和ケア群で平均98.0点、標準治療群で91.5点と、緩和ケア群で有意に高かった(p=0.03)。またTrial Outcome Index(TOI)スコア(0~84点)も、緩和ケア群で59点、標準治療群が53点(p=0.009)で、試験開始時と12週後のスコアの変化は、緩和ケア群は2.3点、標準治療群が-2.3点と有意差が見られた(p=0.04)。

 不安やうつ症状をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)で評価した結果、うつ症状のある割合は緩和ケア群で16%だが、標準治療群は38%だった。Patient Health Questionnaire 9(PHQ-9)では、大うつ病の症状のある患者が緩和ケア群は4%だが、標準治療群は17%だった。

 さらに終末期の積極的なケアを受けた患者の割合は緩和ケア群が33%、標準治療群は54%だったが、生存期間中央値はそれぞれ11.6カ月、8.9カ月(p=0.02)で、緩和ケア群の方が有意に長い結果となった。

Ws0075 Ws0076

早期から緩和ケアを受けることで、QOLも高くなりました。精神的緩和ケアを受けることによって、標準治療群と比べて終末期にも積極的な治療を望まない患者が増えたにもかかわらず、反って生存期間中央値は長くなったのです。<元の英語論文はこちら

この試験の意味するところは重要です。WHOが推奨している早期からの緩和ケアの重要性を明らかにすることが試験の目的でしたが、一方で、標準的な抗がん剤治療によって命を縮めている患者が少なからずいることを明らかにしているからです。

QOLも生存期間もではなく、QOLが高かったから生存期間が延びたのです。あたりまえといえばあたりまえで、地獄のような副作用に耐えることに必死の状態では、長い余命が期待できるはずがありません。これは梅澤医師も常々言っていることです。苦痛を与えるような治療で長生きできるはずがありません。医者は、医療の現場で日常的に感じていることではないでしょうか。

 

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2011年12月16日 (金)

18モデルケース試算の疑問

12月14日のブログに書いたように、福島県のホームページに「県民健康管理調査」進捗状況発表(平成23年12月13日発表)が掲載され、その中に放射線医学総合研究所が作成した「外部被ばく線量の推計について」(以下「推計」とする)というPDF資料があります。

この推計は、今後福島県が全県民を対象とした健康影響調査を行なう際の、個人被ばく線量の推定方法を明らかにしたものであり、モデルケースとして18例の試算を行なっています。

しかし、もっとも被ばく線量の大きい例が19mSvであり、都合良く20mSvを超えていないと聞かされると、私の頭の中のアラームが鳴り響くのです。土壌への沈着量から計算した私のごくおおまかなアルゴリズムによる計算結果とは数倍の違いがあることによって、さらにアラームの音量が大きくなります。

長文になりそうなので、最初に結論を書いておきますが、線量評価にいくつかの疑問点があり、被ばく線量を小さく見せようと意図して計算されている、と判断せざるをえません。

  • 衣服・皮膚などに付着した放射性物質からの外部被ばくを考慮していない
  • 線量低減係数(建物遮蔽計数)を小さく評価している可能性がある
  • 周辺線量当量から実効線量(成人)への換算係数 0.6 は小さくはないか。照射ジオメトリー(放射線の方向性)として、どれを採用したのか不明である。

順番に見ていきます。

外部被ばくの原因は?

放医研は、IAEA-TECDOC-1162を翻訳した「放射線緊急事態時の評価及び対応のための一般的手順」を公表しています。この83ページには「線量評価の概要」の「考察」として、

事故時には、個人の被ばくは、外部被ばくも内部被ばくも発生するだろうし、そして種々の経路を通じて被ばくするだろう。 外部被ばくは、線源、空気中のエアボーン放射性核種(イマージョンや頭上のプルームによる被ばく)、地面上にならびに、人の衣服および皮膚の上に沈着した放射性核種からの直接照射に起因するだろう。 内部被ばくは、プルームから直接か、もしくは汚染された表面からの再浮遊のいずれかによる放射性物質の吸入、汚染された水および食品の経口摂取、または汚染された外傷を通じて生じる。

今回の試算は外部被ばくのみであり、内部被ばくは対象外です。(これも大問題ですが)しかもその外部被ばくを計算するのに、空間線量率のみを用いています。文科省のモニタリングデータやSPEEDIのシミュレーションでは、既に通過したプルームを正しく評価しているとは考えられません。空気中の放射性核種の濃度が分かっていませんから、放射性プルームによるガンマ線外部被ばくによる実効線量、空気イマージョン線量は推計されていません。また降下した放射能が衣服や頭髪や皮膚に付着したでしょうが(避難所のサーベイで汚染が明らかになった人もいる)、それらのガンマ線による被ばくも皮膚ベータ線量も試算の対象にはなっていません。

線量低減係数(建物遮蔽係数)の疑問

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線量低減係数(建あ物遮蔽係数)が、3月15日を境に係数が変っているが、2号機は3月15日にベントを開始している。その直後に爆発音がしサプレッション・プールが破損したらしいと東電が発表しています。3月21日 4時頃 - 5時半頃、茨城県北東部(日立市)から茨城県東部(鉾田市にかけて、再び高濃度放射線量の南下が観測され、鉾田市では、5時30分に最大2.908マイクロシーベルト/時が観測されています。

つまり、3月21日までプルームが通過した可能性がありますが、当然建物の中にも侵入するので、線量低減係数は3月14日以前と同じにするべきでしょう。

「IAEAで設定された値」とは表E4のことだと思われますが、この遮蔽係数は「表面に沈着した放射性物質について」示したものであり、建物の中が汚染されていれば、この係数をそのまま用いることはできません。少なくとも、「代表的な範囲」のMAX値を用いるべきでしょう。実際、簡易測定器で測った家の中でも大して線量率は下がらなかったと書かれているサイトもあります。まして屋根が汚染されていれば、天井方向からの放射線による被曝が多くなるはずですが、推計ではそうしたことは考慮されていません。

Capt1

推計の13,14ページのモデルケースの詳細には()内に低減係数が書かれていますが、ほとんどが0.4とされています。さいたまスーパーアリーナの0.1は納得できるとして、ビッグパレットふくしまが同じ0.1とは、どうにも不可解です。

実効線量への換算係数

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周辺線量当量から実効線量への換算係数は、核種ごとのガンマ線フルエンスや放出率を考慮して、ICRP Publ.74の式にしたがって計算するとしている。そして「安全側」の換算係数として0.6を採用している。しかしこの推計では照射ジオメトリーとしてどれを採用したのかを明らかにしていない。照射ジオメトリーとは、人体にどの方向から放射線が入射したかによって臓器への影響が異なるので、それをいくつかのパターとして近似したものである。ICRP Publ.74には次のような照射ジオメトリーが記載されている。

  1. 20111216132101759 AP:前方-後方ジオメトリー  身体の長軸と直角の方向から、放射線が体の前面に入射する
  2. PA:後方-前方ジオメトリー 身体の長軸と直角の方向から、放射線が体の背面に入射する
  3. LAT:側方ジオメトリー  同じく体の片方の側面から入射する。右⇒左(RLAT)、左⇒右(LLAT)と区別することもある
  4. ROT:回転ジオメトリー  体の長軸の周りに均等に放射線が入射する。広く広がった面線源からの照射(環境汚染)の近似と見なしうる。
  5. ISO:等方ジオメトリー  単位立体角の粒子フルエンスが方向に依存しない放射線場。放射性ガスの大きな雲中に人体が浮遊しているような場合。

光子エネルギー(ガンマ線エネルギー)と実効線量との関係をICRP74では以下のように記載しています。(これは単位空気カーマあたりであるので、数値は違うだろうが、適当な図がないので)

Img

Img_0002 例えばセシウム-137の代表的エネルギー0.6MeVを例にとれば、RLAT=0.600からAP=1.024と2倍近くも違う。換算係数もこれに対応して異なるはずである。

今回の推計にはROTジオメトリーが適当であろうと考えられるが、放医研の資料にはどのジオメトリーを採用したかの記載がありません。仮にISOジオメトリーを採用していたのであれば、ROTジオメトリーとでは0.6MeV付近では約1.2倍違うので、0.72程度の換算係数となると思われます。

いずれにしろ、どのジオメトリーで推計したのかを明らかにしてもらいたい。

このように、いくつかの係数がいずれも被ばく線量をより小さくするように採用しているのではないかという疑問がつきません。

  • 難しげな式を持ち出してガンマ線のエネルギーごとの寄与を詳細に計算しています。
        (マイクロメータで測って)
  • 建物による線量低減係数をちょっと小さめにして、3/15~3.21のプルームは過小評価
         (チョークで線を引き)
  • 換算係数が小さくなるようなジオメトリーを採用する
          (斧でぶった切る)

マーフィーの法則どおりに推計をしているのではないかと、疑っています。

被ばく線量の正確な計算は所詮は不可能なのです。何らかの推定、仮定を設けて計算せざるを得ません。外部被ばくですらこのようですから、内部被ばくの評価などもっといい加減なものです。しかし、いったん数値として公にされると、その数値が一人歩きします。相当幅のある推定値だということが忘れ去られます。今回の推計も、0.5~2.0倍の範囲で考えておくべき値であろうと思います。つまり19mSvは9.5~38mSvまでの範囲での、ある仮定に基づいた計算値である。このように考えておくべきものでしょう。

広島・長崎の被爆者の被ばく線量を計算した計算推定方式が、T65D、DS86、DS02と変更されてきました。しかし、この推定式が被爆者認定の裁判でも有力な証拠として、入市被爆者や遠距離被爆者に被爆者手帳を交付しない根拠とされたのです。放医研のアルゴリズムによるこの推計が、福島原発事故による被ばく線量評価として公のものとされるならば、福島県民の健康への影響とその補償に関して広島・長崎の原爆被爆者と同じ事態にならないとも限りません。

放医研のこの推計やアルゴリズムの詳細な内容をオープンにさせる必要があります。

2011年12月15日 (木)

保安院が認める 福島第一は地震で配管損傷

今朝の東京新聞「こちら特報部」が衝撃的な記事を掲載しています。これまで脱原発派の技術者、田中三彦・後藤政志らが主張してきた、福島第一原発は津波の到達前に地震で重要な配管が損傷し、それが水素爆発とメルトダウンにつながったのではないかという疑問に、保安院が事実上追認したという内容です。

保安院から示されたのが「福島第一原発1号機 非常用復水器(IC)作動時の原子炉挙動解析」。最後にこう結論付けていた。
 「破損による漏えい等の可能性が議論されているため、漏えいを仮定した感度解析を行った。漏えい面積○・三平方培以下の場合は、原子炉圧力・原子炉水位の解析結果と実機データとに有意な差はない」

津波で壊れたというのも仮説、地震で壊れたというのも仮説であり、数十年は炉心に人間が入れないことを考えると、真の原因の特定は困難であろう。だとすると、浜岡原発や玄海原発が妻に対策を下から再稼働しても大丈夫、とはならない。もともとM9の地震に耐えられるようには原発は設計されていないのだから。

東京新聞の大スクープです。

首都圏にお住まいの方は、朝日・読売・産経を止めて東京新聞に変えよう。

福島1号機配管 地震で亀裂の可能性
                         2011年12月15日 07時00分

 経済産業省原子力安全・保安院が、東京電力福島第一原発1号機の原子炉系配管に事故時、地震の揺れによって〇・三平方センチの亀裂が入った可能性のあることを示す解析結果をまとめていたことが分かった。東電は地震による重要機器の損傷を否定し、事故原因を「想定外の津波」と主張しているが、保安院の解析は「津波原因説」に疑問を投げかけるものだ。政府の事故調査・検証委員会が年内に発表する中間報告にも影響を与えそうだ。

 これまでの東電や保安院の説明によれば、三月十一日午後二時四十六分の地震発生後、1号機では、非常時に原子炉を冷やす「非常用復水器(IC)」が同五十二分に自動起動。運転員の判断で手動停止するまでの十一分間で、原子炉内の圧力と水位が急降下した。この後、津波などで午後三時三十七分に全交流電源が喪失し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が使えなくなったため、炉心溶融が起きたとされる。

 一方、経産省所管の独立行政法人・原子力安全基盤機構が今月上旬にまとめた「1号機IC作動時の原子炉挙動解析」は、IC作動時の原子炉内の圧力と水位の実測値は、ICや冷却水が通る再循環系の配管に〇・三平方センチの亀裂が入った場合のシミュレーション結果と「有意な差はない」と結論付けた。圧力と水位の急降下は、〇・三平方センチの配管亀裂でも説明できるという。〇・三平方センチの亀裂からは、一時間当たり七トンもの水が漏えいする。

 東電は二日に発表した社内事故調査委員会の中間報告で、「津波原因説」を展開、地震による重要機器の損傷を重ねて否定している。  (東京新聞)


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2011年12月14日 (水)

【追記あり】18モデルケース「山下」マーフィーの法則的試算

福島第一原発の事故で、周辺の市町村から避難した人たちの外部被ばく線量を、18のモデルケースとして試算したとNHKで報道されています。

18のモデルケースを作成し、空気中の放射線量の推移と照らし合わせて、事故発生翌日の3月12日から4か月間に体の表面に受けた放射線量=外部被ばく量を試算しました。このうち、原発から20キロ圏内の川内村で、最も線量が高かった場所から3月13日に村内の小学校に避難し、さらに3日後に郡山市に再避難した人の場合、4か月間の外部被ばくは0.7ミリシーベルト程度と推定されています。また、飯舘村で、線量がもっとも高かった場所にとどまり、役場の機能が移転するのにあわせ、6月21日に福島市に避難したという想定では、19ミリシーベルト程度に達しました。このケースでは、避難後の被ばくなども含めると年間では、国が避難の目安とした20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、事故直後の情報公開の在り方など、政府の対応が改めて問われそうです。

放射線医学総合研究所の試算ですが、この程度の試算なら事故後すぐにでもできたはずです。電卓ひとつあれば誰にでもできる程度の計算でしょう。しかも被ばく線量を少なく見積もっている。それを証明してみます。

私の作成したウェブページにアップしてある「被曝リスク計算プログラム」のExcel-VBAに少し手を加えて、期間外部線量が計算できるように修正してみました。これを使って検算してみます。

ケース1:(汚染度はCs-134+Cs-137の合計)
3月12日  川内村の土壌汚染  1000kBq/㎡       0.1mSv
3月13日  河内村小学校        300                   0.1以下
3月16日-7月11日  郡山市    60                     0.5
                           合計                              0.7mSv

Cap1

郡山市内では河内村小学校よりも土壌汚染が高いところがあります。避難したら余計に被ばくしたということもあり得ます。試算結果が0.7mSvとなるためには、郡山市のもっとも土壌汚染の少ない場所に避難していたと仮定しなければ計算が合いません。仮にCs-134+Cs-137で300kBq/㎡のところに避難したとすれば、2.8mSvとなり、合計では3.0mSvです。1年間ここにいたならば、8.2mSvとなります。

ケース2:(汚染度はCs-134+Cs-137の合計)

3月12日-6月21日  飯舘村   2000kBq/㎡     16.5mSv

6月22日-7月11日  福島市    1200kBq/㎡      1.8

                                        合計                18.3mSv

Cap2

こちらもほぼ同じ結果となりました。

しかし、飯舘村の「線量がもっとも高い」地域はCs-134、Cs-137のそれぞれで3000kBq/㎡以上のところが広範囲にあります。放医研の試算は、飯舘村の中心部で1000kBq/㎡以下の場所を想定しているとしか考えられません。

Cap3_2

 

ケース2でもっとも汚染が高い場所に居住していた場合

を計算してみます。

3月12日-6月21日  飯舘村   6000kBq/㎡     49.6mSv
6月22日-7月11日  福島市    1200kBq/㎡      1.8
                                        合計              51.4mSv

4ヶ月間で50mSvを超えてしまいます。50mSvとは、放射線業務従事者が「5年間で100mSv、ただし、いずれの1年でも50mSvを超えてはならない」とされている線量です。飯舘村の「もっとも線量の高い」地域にいたのなら、この程度の線量にならなければウソです。しかもこれは、3000k<とされた地図の赤い部分の下限値を使った計算結果です。倍以上で、100mSvを超える結果も十分にあり得ます。

Cap6

 

被ばく線量のシミュレーションは、仮定条件の設定次第でいかようにも変えられるのです。私の計算でも、屋外にいる時間を10時間、建物の遮蔽係数を0.7としていますが、こんなものどうにでも設定することができるのです。地面からの線量しか計算していませんが、屋根に放射能が貯まっている場合は点状からの線量が一番多くなります。そのようの要素は例え計算したって、いい加減な推定にしかなりません。放射線被ばくを計算で求めることは、所詮おおざっぱな見積にしか過ぎません。

18のモデルケースは、どうやら恣意的に被ばく線量を少なく見積もる意図で計算されています。

私のVBAによる計算は、放射線医学総合研究所がウェブ上にアップしてある「放射線緊急時の評価および対応のための一般的手順」からのデータに基づいています。

半減期を考慮するためにExcelのVBAでプログラムしてありますが、4ヶ月程度の期間なら減衰を無視してもよいので、それなら電卓があれば十分計算できるのです。この程度の計算を事故から半年以上も立たなければ出せないというのは、「専門的能力の欠如」と言って良いでしょう。

しかも、これは「外部被ばく」線量だけです。内部被ばくはまったく考慮されていません。

このような試算を出して「安全だ」と言いたいのでしょうが、そうはなりません。郡山や福島市の代表的な汚染地域、Cs-134、Cs-137がそれぞれ300kBq/㎡のところに1年間いたとすると、外部被ばく線量は16mSvにもなります。このような放射線管理区域とすべきところには18歳未満の人は立ち入ってはいけないし、妊婦や乳幼児がいることが異常なのです。

600kBq/㎡とはどのような汚染なのか。経済産業省が今回の事故に合わせて出している放射能防護服着用基準によれば、郡山市や福島市では「汚染-C区域」に相当する防護服を着用しなければならない地域が多く存在します。40ベクレル/㎠は、400kBq/㎡です。文部科学省の「放射線量等分布マップ 拡大サイト」で見れば明らかでしょう。

原発事故現場で作業をされている方たちが着用している、それと同じものを郡山市や福島市内でも着用するべきほどの放射能汚染なのです。

Cap4

Cap5

 

マーフィーの法則に次のようなのがあります。

          マイクロメータで測って、チョークで線を引き、斧でぶった切る

斧でぶった切るのなら目分量で測れば良いものを、マイクロメータでミクロン単位まで測ろうとする行為を笑ったものです。山下俊一氏と放射線医学研究所も、電卓で計算できる程度の計算を、長期間かけて綿密なプログラミングをしていたのでしょうが、まさにマーフィーの法則を地でいっています。被ばく線量を少なく見積もるために知恵を絞っていたので遅くなったということでしょう。

放医研が自ら公開しているデータを元に斧でぶった切るようにざっくりと計算すれば、少なくとも妊婦や子どもは早期に避難させるべきだという判断ができたのではないか。

放射線影響研究所の長瀧重信元理事長は、「被ばく量は住民が最も知りたい情報で健康影響を調べる基本となる。今回、遅れたとはいえ、モデルケースをまとめたのは一歩前進で、早く住民に知らせるべきだ」としています。そのうえで、試算結果については、「ほとんどのケースでは被ばく量が少なく、避難の対策はおおむね成功していると言える。一方で、なかには年間で20ミリシーベルトを超えるおそれのあるケースもある。健康への影響が出るとは考えにくいが、こうした地域で事故当初の情報提供が適切だったか、改めて検証する必要がある」と話しています。

長瀧氏のコメントもおかしいですね。一歩前進ではなく、遅すぎる試算でしょう。20mSvを超えても健康への影響は考えにくい?? どの根拠を元にしているのでしょうか。彼のこれまでの学者としての業績からはこのような結論は導き出せません。

放医研はどのような条件で試算したのかを明らかにすべきです。

と書いてから福島県のサイトを見ると、計算の根拠を説明した放医研のスライドがアップされていました。<こちら

私の計算と異なるのは、土壌への沈着量ではなく、文科省の発表した周辺空間線量率に0.6(根拠薄弱、実測値と比較すべき)を掛けて実効線量率を計算しています。対象となる核種もセシウム以外にヨウ素131、132、キセノン、テルルなども計算しています。

建物の遮蔽係数(線量低減係数としている)などはそれぞれの条件に応じて計算してますが、3月15日以降がそれ以前よりも係数が小さくなっているのはなぜでしょうか? 水素爆発した後の方が線量が低いはずがないでしょう。平屋・二階建ての建物で0.6⇒0.2 です。どうして3分の1になるの? さらに言えば、屋根に放射能が降り注げば、もっと高くなるはずです。

このように、放射線による被ばく線量を計算するのは、係数の扱い方次第でどのようにでもなるのです。

まさにマーフィーの法則通りのことをやっていました。

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ここでの説明に使用した、被曝リスク計算プログラムの計算期間を指定できるように変更したものをアップしておきます。間に合わせで作ったので、放医研のような立派なアルゴリズムでもなく、細かな部分まで行き届かないものですが、ご了承願います。「DoseRisk-2.xls」をダウンロード

2011年12月12日 (月)

日本を見限った中村祐輔教授

ニュースに接して驚きました。しばらくして、今の日本なら当然か、とも思いました。この国は既に斜陽にさしかかっています。壊れています。いや、下り坂の半ばまで来ているのかもしれません。福島原発事故はその潮流を激流に変えることでしょう。膵臓がんのペプチドワクチンの承認にも影響するのかもしれません。

新薬開発「日本は無力」…国の推進役、米大学へ

 日本発の画期的な医薬品作りを目指す内閣官房医療イノベーション推進室長の中村祐輔・東京大学医科学研究所教授(59)が、室長を辞任して来年4月から米シカゴ大学に移籍することが12日わかった。

 中村教授は今後、米国を拠点に、がん新薬などの実用化を目指すという。国の旗振り役が国内での研究開発に見切りをつけた格好で、波紋を呼びそうだ。

 同推進室は今年1月、仙谷由人官房長官(当時)の肝いりで、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一さん(52)らを室長代行に迎えて発足。省庁の壁を取り払い、国家戦略として医療産業の国際競争力を強化するための司令塔となることを目指した。

 ところが、発足直後に仙谷長官は退任し、10月の第3回医療イノベーション会議には、それまで出席していた経済産業省や内閣府の政務三役も欠席。今年度の補正予算や来年度の予算案策定でも、各省庁が個別に予算要求を出すだけで、「日本全体の青写真を描けなかった」(中村教授)という。

 中村教授は、ゲノム(全遺伝情報)研究の第一人者で、国際ヒトゲノム計画でも中心的な役割を果たした。中村教授は「国の制度や仕組みを変えようと頑張ったが、各省庁の調整機能さえ果たせず、無力を感じた。日本で研究した新薬を日本の人たちに最初に届けるのが夢だったのだが。せめて米国で新薬を実現したい」と話している。
(2011年12月12日14時32分  読売新聞)

今年1月11日の報道では鳴り物入りで開所式をしたのですが・・・「障害となる規制・制度」に負けたということですか。中村教授がよく使っていた「オールジャパン」も期待できないことになりました。派遣労働者問題、TPP、普天間基地問題、消費税についての公約。民主党のなることなすこと、みんな腰砕け。前言を翻すのだけは得意技。詐欺に等しい。

 政府は、新成長戦略に基づいて、産学官のオールジャパンで日本発の医薬品、医療機器、再生医療を生み出すため、7日に「医療イノベーション推進室」を設置した。仙谷由人官房長官を議長とする「医療イノベーション会議」の下で、基礎から実用化まで、切れの目ない研究開発費の投入や基盤整備に取り組むほか、障害となる規制・制度の課題も洗い出す。医薬品については、癌や認知症などが重点領域となっているが、当面は、複数のワーキンググループに分かれて対応策を探り、2012年度予算への反映を目指す。

 室長には、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔教授が就任し、週の約半分は推進室に詰める。非常勤の室長代行を、東京女子医科大学の岡野光夫教授と、島津製作所フェローの田中耕一氏が務める。

 東京・永田町合同庁舎に置いた推進室の看板除幕式では、仙谷氏が「シーズは数限りなくある。日本人の英知を結集した医療イノベーション推進室のこれからの活動に、国民の多くが期待し、応援もしてもらいたい」とあいさつした。

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2011年12月 8日 (木)

がんと栄養、カテキンについて

栄養とがん ネスレ栄養科学会議が監修した『栄養とがん』という本があります。がんと免疫、がん患者の栄養療法など、今日の研究の到達点を専門的に解説したものです。多くはマウス実験や試験管レベルの研究成果ですが、がん患者として注目すべき内容も含まれています。

実は、この本の内容はほとんどネスレ栄養科学会議のサイトにアップされているものです。例えば「栄養科学レビュー」の「食とがん」には

などの論文があり、「学術シンポジウム」には「栄養とがん」とこの本のタイトルそのままの要旨が載っています。いくつかの内容を紹介すると、大東肇氏の「食や職制分によるがんの予防」では、

現在、化学発がんは、周知のようにイニシエーション-プロモーション-プログレッションの三段階に分けて考えられている。したがって、予防戦略としては、これら三段階のいずれかを阻害してやればいいことになる。特に化学的にこの抑制をなしとげようとする戦略(現在のところ、主としてイニシエーションまたはプロモーションの抑制)はがんの化学予防(cancer chemoprevention または単に chemoprevention)と呼ばれている。

筆者らもこれまで、主としてプロモーションの抑制を念頭に置いて、食素材のスクリーニングから、候補成分の単離・同定、動物実験、さらには作用機序の解析に至るまでの研究を展開してきた。

との観点から、プロモーションの抑制効果のある食品素材をあげています。

Ws0072 「5.がん予防科学の現状と展望」では、次のように示唆に富む指摘がされています。

ここまで、がん予防における食への期待と学術的現状について記してきた。特に、食素材やその成分、さらには作用機序などについては、十分熟してきている。このような段階で、現在、がんの予防分野で問われている最も重要な課題は、これら素材や成分が真に“ヒトがん”に有効かどうかである。ヒトでの効果が実際に実証された例は極めて限られている。かつて、その当時としては最も期待の大きかったβ-カロテンで大規模な介入試験が種々実施されたことがある。結果は、一例は効果あり15)であったが、他方では逆の評価(または効果なし)16)が多く認められ、その後カロテノイドの介入試験はすべて中止された経緯がある。このような結果は、一方では関連研究者に大きな失望を与えたが、他方でchemoprevention 全般を見直す上で貴重な機会ともなった。すなわち、各種の予防性食因子を、どのような群にどのような量で与えるべきかを十分検討する必要があることを知らしめた機会となった。

最近、西野と神野らは、カロテノイドについて、C 型肝炎ウイルス由来肝硬変患者の肝細胞がん移行への抑制効果を5年間にわたって調べた。その結果、プラセボ群に比し、投与群では50%以上の抑制効果が認められるとの画期的な成果を報告した。17) この試験で重要であったと考えられる点は、対象を肝細胞がんの危険群に絞ったことと、用いたカロテノイドがリコペンを主に α- および β-カロテン(酸化を防ぐため、ビタミンEを配合)を混ぜた複合体であったことであろう。

がんをも含む生活習慣病全般の予防として、現在、一次から三次予防までが設定されている。一般的には、一次予防は健常な人達に対する予防を、二次予防は早期発見・早期治療であり、三次予防とは病気になった人達がそれ以上悪くならないよう、また生活の質が低下しないよう、適切な治療をすること、と理解していいであろう。理想である一次予防がどの程度具体化されるかは、その評価がいかになされるかなど、難しい課題である。したがって、現状では、危険群(一次予防の範疇ではあるが、前がん病変保持者など危険度の高い群)への有効性を確証してゆくことがまずは取られるべき道であると考えられる。また、単独成分の過剰投与の弊害が細胞レベルや動物実験レベルで明らかにされつつある昨今、複合カロテンを用いて良好な結果を得た点は、今後の応用を考えるうえで大きな示唆を与えたものと思われる。すなわち、単独成分の過剰摂取による副作用を、複合系によって抑える戦略である。現在、このようなトライアルが広く検討され始めている。

一時は大いに期待されたβ-カロテンは、いまでは逆に肺がんを増加させるという結果になっています。予防の観点からの大規模試験の結果ではそうであっても、危険群(現にがんに罹患している患者)では効果がある可能性までは否定できない、と考えられます。食のがん予防については、健康なヒトを対象とした大規模臨床試験も少ないが、がん患者を対象としたものは更に少ない、ほとんどないのです。

緑茶カテキンを例に、単一成分の摂りすぎには警鐘を鳴らしています。

緑茶カテキン・EGCG などでも動物実験レベルでがんを促進するとの報告もある。川西らは、ある種の抗酸化成分が条件によってはプロオキシダントにもなることを明らかにしている。先にも示したように、予防的観点からは、単独成分を過度に摂取することは薦められることではない。

矢ヶ崎一三氏の「食品成分によるがん性高脂血症およびがん細胞特性の制御」でもカテキンについて述べられています。

カテキン類の増殖抑制機構はアポトーシス誘導と細胞周期のG1アレストであり、これらは茶カテキン類をがん細胞に直接作用させても、経口投与後ラット血清をがん細胞に作用させても認められた。これらのことは、茶カテキン類が消化管から吸収され、活性を維持したまま血液中を循環し、標的がん細胞へ到達していることを意味している。なお、茶カテキン類は正常細胞にはアポトーシスを誘導しないことを確かめている。カテキン類の浸潤抑制機構は、抗酸化機能によることが認められている。すなわち、活性酸素種(ROS)は浸潤能を充進させるが、カテキン類をがん細胞に直接作用させても、茶抽出物やカテキン類を経口投与したラット血清をがん細胞に作用させても、ROS誘導性浸潤能充進は抑制された。

私の場合は、お茶ミルで挽いた深蒸し茶を、1日5~6杯飲んでいますが、この程度なら単一成分の摂りすぎにはならないと思われます。カテキンの増殖抑制、浸潤抑制機能を期待して、ほどほどに飲み続けます。

培養肝がん細胞を使った実験を報告しています。抗がん作用のあるといわれる食品成分の、がんの増殖と浸潤に対する効果を表にまとめています。がんの増殖抑制、浸潤抑制を区別した貴重な資料です。

Ws0071

カロテノイドとクルクミン(ターメリック、ウコン)は増殖抑制には効果がないが浸潤は抑制するようです。

あくまでもマウス実験レベルの研究ですから、ヒトに対してそのまま適用できるとも限りません。しかし、それをいっていたら何もエビデンスがないことにもなります。

コーヒーには「新たな発がん抑制成分が発見されており・・・」と、インスタントコーヒーの抗がん作用に関する記述もありますが、ネスレの名を冠した研究会議ですから、紹介するのは控えておきます。

ま、バランスよく食べて、いくつかの食品・サプリメントで補強する。種と土壌の関係のように、がんを育てない体内環境を作るという考え方が大事ではないでしょうか。『がんに効く生活』を基本とした食習慣・生活習慣を継続することが大切です。

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2011年12月 6日 (火)

明治の粉ミルクからセシウム検出 (3.11以前なら)基準値の3倍

まったく呆れてしまうニュースです。明治の粉ミルク「ステップ」から30.8Bq/kgの放射性セシウムを検出。同社は「暫定規制値を大きく下回り、毎日飲用しても健康への影響はないレベル」と説明している。何をバカなことを。3.11以前なら基準値10Bq/kgの3倍だ。大騒ぎになっているはずではないか。乳幼児は放射線感受性が高いことは承知のはずだろう。

中国向けの粉ミルクはきちんと検査をして大丈夫だと、輸出先では説明をしていたそうだ。乳児相手の食品を販売する資格もない。明治はHACCPは取得していないのか。埼玉県のウェブにあるHACCP認定工場の一覧に「明治乳業関東(戸田)工場」がある。たぶんこの工場での製造だろう。粉ミルクは春日部工場(HACCP未認証)ということらしい。他のメーカーも同じように汚染されているのではないか。

HACCPとは食品の中に潜む危害(生物的、化学的あるいは物理的)要因(ハザード)を科学的に分析し、それが除去(あるいは安全な範囲まで低減)できる工程を常時管理し記録する方法である。

日本乳業協会はこんなことを言っている。

Q1.
牛乳・乳製品の原料となる生乳や牛乳・乳製品は安全なものですか?
A1.
生乳は、自治体が放射性物質の検査を行っており、暫定規制値を超えた地域の生乳は出荷できないことになっています。したがって流通している生乳の安全性は確保されていると考えます。安全が確保された生乳のみが乳業会社に送られ、牛乳・乳製品が製造されることから、市販される製品も安全です。

自主検査はしませんとの宣言です。市民放射線測定所が測定したから分かったものの、業界任せ、政府任せでは子どもたちは守れません。

そして相変わらず専門家と称する素人が「基準値以下だから毎日飲ませても大丈夫」のとコメント。子どもには1ベクレルも与えたくないという母親が身勝手だとばかりのコメントです。ICRPも「可能な限り少ない方が良い」と言っているのです。明治以外で検出限界以下のミルクを探すことは、母親として当然とるべき行動です。

しかし、3月にセシウムが混入して、今頃の測定にかかるほどだとしたら、半減期8日のヨウ素131はどれほど大量に含まれていたのか? ストロンチウムは? 埼玉の空気でさえもそれほどだとしたら、福島の空気は? 水は? それを呼吸し、飲んでいた乳幼児に何が起きるのか?

身震いするほどの事件です。

2011年12月 4日 (日)

糖質ゼロの日本酒

4901030236666_2 昨日はこの冬一番の寒さでした。こんな日はやっぱり日本酒が恋しくなります。糖質ゼロの日本酒が出ていますね。月桂冠からは2008年に発売されています。製法特許も申請しているようです。帰りに近くのサミットに寄ったら棚に並んでいたので早速買い求めました。

熱燗で飲んだのですが、飲んだ後で容器に書かれている推奨される飲み方を読むと、冷やの方が良いと書いてあります。それではと、冷やで更に一杯飲みました。

味覚をうまく書くのは難しいですが、旨みもコクもなくて、単に薄めた酒のような気がします。香りは良いようです。「超淡麗辛口」は看板に偽りありです。でも血糖値を気にしなくて清酒が飲めるのはありがたい。70点を付ければ甘いでしょうか。焼酎に飽きた日はこちらに替えるという手もありますね。

白鶴からも大関からも糖質ゼロの清酒が出ているようです。後発だからこちらが美味いかもしれません。珍しいところでは金沢の地酒で「福正宗 ゼロ辛 純米」などというのもあります。機会があれば飲んでみます。

0119d_01_b 発泡酒にもたくさんの糖質ゼロが出ていますが、我が娘が言うには、麒麟の「濃い味」がお勧めだとか。こちらも飲んでみましたが、これはいい。ほとんどビール味です。

これらを用意しておけば、私のQOLは満点です。(*^_^*)  年末年始は、餅の食べ過ぎによる腸閉塞に気をつけながら飲み比べをしてみます。

アルコール飲料は、IARC(国際がん研究機関)による発がん性リスク評価でGroup1(ヒトに対する発癌性が認められる)に分類されています。糖質ゼロは「肥満→インスリン抵抗性→高インスリン血症→発がん」としての効果があるかもしれませんが、だから体に良いと考えるのは間違いです。飲まないのがいちばん良いのですから、くれぐれも飲み過ぎないように(と自分にも言いきかせています)。酒がおいしいと感じるのは健康だという証拠(がん患者で健康はおかしいが)。感謝しています。

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2011年12月 3日 (土)

(財)全日本仏教会が脱原発宣言

(財)全日本仏教会が「原子力発電よらない生き方を求めて」との宣言文を発表しました。10月8日のこのブログ「永平寺が反原発シンポジウムを開催」で、「思想家、宗教者、文学者こそが、新しい日本の思想世界を創造し、われわれが進むべき道を指し示す役割を持っているのではないか。他の宗派も永平寺に続け。」と厚かましくも書きましたが、(財)全日本仏教会という国内のほとんどの宗派が加盟している財団からの宣言であり、仏教界の快挙として歓迎します。

宣言文
原子力発電によらない生き方を求めて

東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散により、多くの人々が住み慣れた故郷を追われ、避難生活を強いられています。避難されている人々はやり場のない怒りと見通しのつかない不安の中、苦悩の日々を過ごされています。また、乳幼児や児童をもつ多くのご家族が子どもたちへの放射線による健康被害を心配し、「いのち」に対する大きな不安の中、生活を送っています。
広範囲に拡散した放射性物質が、日本だけでなく地球規模で自然環境、生態系に影響を与え、人間だけでなく様々な「いのち」を脅かす可能性は否めません。

日本は原子爆弾による世界で唯一の被爆国であります。多くの人々の「いのち」が奪われ、また、一命をとりとめられた人々は現在もなお放射線による被曝で苦しんでいます。同じ過ちを人類が再び繰り返さないために、私たち日本人はその悲惨さ、苦しみをとおして「いのち」の尊さを世界の人々に伝え続けています。

全日本仏教会は仏教精神にもとづき、一人ひとりの「いのち」が尊重される社会を築くため、世界平和の実現に取り組んでまいりました。その一方で私たちはもっと快適に、もっと便利にと欲望を拡大してきました。その利便性の追求の陰には、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされながら日々生活を送り、さらには負の遺産となる処理不可能な放射性廃棄物を生み出し、未来に問題を残しているという現実があります。だからこそ、私たちはこのような原発事故による「いのち」と平和な生活が脅かされるような事態をまねいたことを深く反省しなければなりません。

私たち全日本仏教会は「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ幸福を願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和することを願います。
そして、私たちはこの問題に一人ひとりが自分の問題として向き合い、自身の生活のあり方を見直す中で、過剰な物質的欲望から脱し、足ることを知り、自然の前で謙虚である生活の実現にむけて最善を尽くし、一人ひとりの「いのち」が守られる社会を築くことを宣言いたします。

   2011(平成23)年12月1日

                                                   財団法人 全日本仏教会

格調高い宣言文だと思います。老子の「足るを知るものは富む」、釈迦の臨終の際の説法『仏遺教経』の「少欲知足」、また「欲あれば窮す」との言葉もあります。「まぁ、こんなもんで満足しておこうか」という心構えは、がんの治療についても必要だと考えます。いずれは人間の力の及ばない時期がやってくるのです。「いのち」とは? 生きるとは何か?、もういちど考えてみましょう。

2011年12月 2日 (金)

肥満とがん&糖質制限食

糖質制限食とカロリー制限食のディベートが、来年1月15日の第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)で行われるそうです。ディベートでの糖質制限食派の演者は江部康二先生、カロリー制限食派の演者は、高輪メディカルクリニックの久保明先生です。この学術集会の内容をちょっとのぞいてみると、がん治療時の栄養療法とか、カーボカウントの利点と注意点とか盛りだくさんなので面白そうですが、京都では参加は無理ですね。

肥満とがん発症の関係は明かですが、がん治療後の患者はどのような栄養管理をすれば良いのか。医療機関でもがん患者の治療後の栄養管理にはまだまだ関心が薄いようです。そもそもほとんどの医者が栄養について勉強していません。「それは栄養管理士の仕事だろう」と考えているのでしょう。

坪野吉孝先生は世界がん研究基金による報告書第2版を解説する中で、

「がん体験者の食事に関しては、まだわかっていないことがあるし、これから明らかになってくることがたくさんあるでしょう。しかし、現在の段階でも、推奨されていることがあるのですから、それに基づいた食事に取り組むことをお勧めします。できることはけっこうあるはずです」
世界がん研究基金による報告書の第2版は、食物・栄養・運動とがん予防に関する世界の叡智を集めたものである。がん体験者の食事に関しても、ここで推奨されていることが、現在最も信頼できる内容なのだということを忘れないでほしい。

と言われています。

私も膵臓がん200911061になる前には体重が80キロを超えていました。最高では84キロまでいったこともあります。肥満とがんの発症には明から相関があると言われています。こちらのデータでは、膵臓がんの28%は肥満が原因であるとしています。

しかし、肥満がどのような機序でがんの発症につながるのかは、明らかになっていません。NCI Cancer Bulletin2011年11月15日号「肥満とがん研究特別号(PDF)」にはいくつかの興味深い記事が掲載されています。(文字での記事はこちら

■肥満と癌研究
「肥満と癌リスクをつなぐ機序の解明」
「口腔ミクロビオームを探る」
「ヨーグルトの健康への影響について分析」
「適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために」
「その他の情報」

かつては単に受動的なエネルギー源貯蔵所だと思われていたが、今日、脂肪組織は驚くほどたくさんのホルモン、成長因子、そしてシグナル分子など、いずれも体内の他の細胞のふるまいに影響する物質を産出することが知られている。

世間の一般常識?では、がんになると激やせすると思われているのですが、記事にもあるように、アメリカでは超肥満のがん患者が多いというのには驚きでした。当然再発率も高いはずです。

インスリンも成長ホルモンです。上に書いた世界がん研究基金の報告は、1960年以降に世界各地で書かれた50万件の研究報告から7000件を選び出し、がんと体重、食事との関係を分析した結果、『BMI値(体重を身長の2乗で割った数値)を20~25に保つのが望ましく、肥満によって乳がんや膵臓がんのほか、直腸、食道、子宮内膜、腎臓、胆嚢のがんになり易い』と結論づけています。

我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。 ――現代病を治す糖質制限食 「肥満→インスリン抵抗性→高インスリン血症→発がん」という今までの研究報告に一致するものです。 江部康二先生と作家の宮本輝氏の対談本『我ら糖尿人、元気なのには理由がある』があります。宮本輝氏も、江部医師に相談しながら糖尿病を糖質制限食で治した経験から、この対談になったのです。この対談で江部医師が次のように語っています。

江部 そうです。これは世界共通の肥満度を判定する指数なんですが、この指数で表される肥満の度合いが、がんの発症に最も関係していることがわかったんですよ。
では、なぜ肥満ががんにつながるのか、ということなんですが、これはインスリンの過剰分泌が大きな要因になっています。
インスリンそのものが細胞成長因子なんです。がん細胞というのは毎日5000個くらい発生しては、それを免疫細胞がやっつけるというのを繰り返しているわけです。ところが、インスリンが大量に出ているとがん細胞の増殖を異常に促進してしまうんですよ。ですから、インスリンの過剰分泌は肥満を起こすだけでなく、がん化した細胞を増やして、がんを巨大に育ててしまうわけです。
ですから、肥満ががんを引き起こす大きな要因として、インスリンの過剰分泌があることは間違いないんですね。

宮本 そうすると、精製された糖質を日常的に食っている現代人は、常にがん発症の危機にさらされているわけですね。

江部 そうです。だから、現代社会ではこんなに文明国型のがんが増えているんです。
インスリン過剰とがんとの関係についてさらに証拠となるのは、2005年のアメリカ糖尿病学会で発表されたカナダの研究者の報告です。これによると、インスリンを注射している糖尿病患者さんは、インスリンを注射していない糖尿病患者さんに比べて、約二倍もがんになりやすいんです。
インスリンというのは人体に絶対に必要なものですが、それが過剰になってしまうと、肥満になったり発がんを促進したりしてしまうわけですね。

こんな説明を聞くと、肥満であろうとなかろうと、がん患者はインスリンに注意を払うべきでしょうね。私も含めて、あまり血糖値のことは気にしていない、異常な値でもないかぎりは問題ないと考えているがん患者が多いのではないでしょうか。また、できてしまったがんと血糖値、糖質制限食の関係について興味深く語っています。

がんのなかには、ブドウ糖をあまり取り込まないタイプのものもあり、例えば前立腺がんなどはこの検査ではわかりませんが、がんの八割から九割はPETでわかります。こうした検査が成り立つほど、がん細胞にはブドウ糖を多く取り込むという特徴があるんですね。ですから、ブドウ糖をたくさん食べるタイプのがんならば、糖質制限食によって兵糧攻めになる理屈ですね。

ただ、がん細胞はこれほど単純にはいかないところもあるんです。
グルットという、ブドウ糖の取り込み装置の話を前にしましたが、多くのがん細胞がグルット1を持っているんです。

前に説明したようにグルット(糖輸送体・グルコ-ストランスポーター)には1から12まであり、グルット1は細胞の表面にあるものです。これは正常な細胞では脳細胞や赤血球、網膜の細胞など一部にだけあるもので、血糖さえあれば優先的にブドウ糖を取り込めます。これに対して、心臓や骨格筋などのグルット4は普段、表面にはなく血糖を取り込めません。また内臓細胞もグルット1は持っていません。ところが、こうした細胞ががん細胞化したときに多くの場合グルット1を獲得するんですよ。

だから、私も糖質制限食で血糖を減らせばがんを兵糧攻めにして消滅できるんじゃないかと思ったこともあるんですが、敵もさるもので、グルット1を獲得して生き延びてしまうんですね。

それでも、野放しに糖質を食べて、血糖がいつもどかどかと体内にある状態に比べれば、糖質制限食では血糖量のレベルが違いますね。がんの進行速度はやはり違ってくると思います。すでにできてしまったがんに対して、進行速度を遅くするという意味では兵糧攻めになっています。
糖質制限食でがんの進行が遅くなる、これは十分に可能性があります。

やはりがん細胞は賢くて手強いのです。確実なエビデンスはないですが、効果が出れば儲けものと考えて、糖質制限食をやってみる価値はあります。

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2011年12月 1日 (木)

OTS102の治験が来春終了、ガイダンス作成

P1010790 今日から12月。いつものアンパンマンもサンタさんに衣替え


がんペプチドワクチンOTS102の治験が来年3月終了し、早期承認に向けた動きが活発になっています。今日から和歌山市で開催される「第24回日本バイオセラピィ学会」では、中村祐輔教授が「がんペプチドワクチン:1600例の臨床基礎研究からの教訓」と題して講演し、杏林大学の古瀬純司氏が「癌ペプチドワクチン療法ガイダンス」を発表する予定です。臨床試験が終わる前で、承認申請もしていない段階でのガイダンスは異例であり、中村教授らの意気込みが感じられます。

膵がん新薬開発へ指針 ペプチドワクチン療法、治験最終段階
2011.11.30 21:17 (産経ニュース)

 第4の治療方法として期待が高まる「がんペプチドワクチン療法」で、世界に先駆け日本で実施している臨床試験(治験)が最終段階を迎えている。これに合わせる形で薬剤としての開発指針(ガイダンス)がまとまり、概要が30日、明らかになった。12月1日から和歌山市で開かれる日本バイオセラピィ学会(会長・山上裕機和歌山県立医科大学教授)で発表される。

 この治験は膵(すい)がんに対するもの。進行が早く、90%以上が5年以内に亡くなり、人口動態調査によると、平成22年の死者は約2万8000人。同治験は2年前に始まり、和歌山県立医科大をはじめ全国27施設で153人を対象に実施されている。治験(第2・3相)の結果が来年3月に明らかになる予定で、承認されれば、がんペプチドワクチン療法として世界初となる可能性が高い。

 今回発表されるガイダンスは、こうした治験の進捗状況を踏まえ、がんペプチドワクチン療法のみを対象とした点が特徴。「同ワクチンの新薬が一刻も早く患者に届くようにまずガイダンスを整備することになった」(策定委員)という。

 ガイダンスの「臨床試験」の章で、従来の抗がん剤などの治療の後に同ワクチン療法を開始しても「患者さんの免疫が弱体化した後では効果が得にくい」とされ「早期に投与すれば、免疫反応が十分に強化され、がんとたたかうまでの十分な時間を確保できる」との特質が明記された。

 

ガイダンスは数カ月後に学会の方針として正式に策定され、その後、厚生労働省が策定する指針に大きな影響を与えるとみられる。

 武藤徹一郎・がん研有明病院メディカルディレクターの話 「これまでの他の治療法の指針は、短期的にがんが小さくなったかどうかを基準にしていた。ワクチン療法は新たな視点の基準でないときちんと評価できない面があり、今回の指針でその点が明確になると期待している」

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