« 2012年10月 | トップページ | 2012年12月 »

2012年11月

2012年11月28日 (水)

闘病者はなぜ書くのか?

このブログのページ別アクセス数を見ると、トップページは別にして、ウェブページの「@私のがん攻略法」が一番多いのです。その次が「ゲルソン療法では膵臓がんは治らない」などとなっています。訪問してくださる皆さんの「治りたい」という気持ちが伝わってきます。年間で170冊ほどの闘病記が出版されているそうですが、膵臓がんに関する闘病記は少ない。だからこんなブログでもアクセスしてくれるのでしょう。

闘病記専門書店の店主が、がんになって考えたこと 闘病記専門の古書店「パラメディカ」の店長、星野史雄さんが、自分の闘病記を書いています。『闘病記専門書店の店主が、がんになって考えたこと

最愛の同い年の妻を乳がんで亡くし、直後には娘とも思っていた愛犬まで失います。それを機会に闘病記を”せどり”し始めたのです。2800冊もの闘病記を集めて、多くを読んでいたはずの彼ですが、自分の大腸がんを告知されたときの記憶は一部しかないと言う。やはり頭の中が真っ白になっていたのでしょう。

柳田邦男の言葉を引用して、闘病者が書くことの意味を次のようにあげています。

  1. 苦悩の癒し
  2. 肉親や友人へのメッセージ
  3. 死の受容への道程としての自分史への旅
  4. 自分が生きたことの証の確認
  5. 同じ闘病者への助言と医療界への要望

続きを読む "闘病者はなぜ書くのか?" »

2012年11月25日 (日)

卵巣がん体験者の会のNスペ「がんワクチン」批判【追記あり】

先日のNHKスペシャル「がんワクチン~夢の治療薬への格闘~」につてい、卵巣がん体験者の会スマイリー:片木美穂代表が全面的で適切な批判の意見をアップされています。

2012年11月18日に放送されたNHKスペシャル「がんワクチン~"夢の治療薬"への格闘~」について

報道における問題点

  • その1:2月に放送されたあさイチの“がんワクチン”報道について
  • その2:NHKスペシャルの最大の問題点「個人情報の取り扱いについて」
  • その3:取材する側に「治験」に対する正しい理解があったのか
  • その4:世の中に氾濫する“効果が実証されていないのに高額な治療費をとる”「免疫療法」「ワクチン療法」について考えたのか

番組はどうあるべきだったのか
NPO法人パンキャンジャパンは、すい臓がんに対して米国では10種類ものお薬が承認されているのに、日本ではTS-1、ゲムシタビン、エルロチニブの3剤だけであることを指摘し、現在、シスプラチン・オキサリプラチンなどのプラチナ製剤、さらに、イリノテカン・ロイコボリン・カペシタビン・ドセタキセル・ナブパクリタキセルなどを求めて署名活動を行っています(11月30日まで)。
すい臓がん患者さんの希望の星はなにもがんワクチンに限った話ではなく、もっと身近に、医療制度の弊害で苦しんでいるものもあるのです。
パンキャンジャパン事務局長の眞島さんは厚生労働省がん対策推進協議会において、このような発言をされています。

    「先ほどデータの中で、膵臓がんの患者さんの生存率が一番厳しいというお話がありましたけれども、この間、フェニックスへ行きましたら、非常にエキサイティングな発表がどんどんがん研究から出てきているんです。それを直接患者さんに還元しようという努力もなされていて、今、アメリカでは、進行膵臓がんの患者さんの平均余命は2年が手中に入っていると言われています。ちょうど日本の倍です。そういうことをがん研究者、臨床関係の方から聞くことができたというのは、がん研究というのは、難治性がんの患者さんにとってみれば光なんだ、命なんだということです。(2012年9月)」

名越康文さんの『自分を支える心の技法』にこんな箇所があります。

僕の友人に、三十代でがんで亡くなった医師がいます。肝臓がんで、だんだん腹水がたまってくるところまできた。その彼に、僕が見舞に行ったあるとき「何がいちばんしんどい?」と聞いたんです。そうすると、「新しい治療法があって”これやってみないか”と言われたときが一番しんどい」と言うんです。どういうことか。死ぬことを受け入れて、残りの少ない人生をまっとうしようという、すごく静かな心になっていても、「これやってみるといいかもしれないよ」と勧められると、どうしたって欲が出る。欲が出ると心が乱れる。心が乱れると怒りがわいてくる、ということを、おそらく彼は言いたかったのだと思います。

「”救われるかもしれないよ”ということだけは言われたくない」という彼の言葉はいまでも忘れられません。

死を覚悟している患者には「余計なお世話」かもしれないのです。「頑張っていれば、明日有効な薬が出てくるかもしれない」などと、脳天気に期待している患者がいるとでも考えているのでしょうか。

手術不能の膵臓がんが、ペプチドワクチンで治ることはありません。延命効果すらもあるのかどうかわかりません。分からないから治験をしているわけです。もちろん、がんワクチンに対して通常の抗がん剤と同じ条件を付けて臨床試験を課すことの問題点はあります。患者に「偽りの希望」を抱かせるような姿勢は改めてほしいものです。もっと患者の立場に立った放送がされるべきです。

番組で紹介された臨床試験はこちらですが、11月2日に内容が更新されて「参加者募集中断」となっています。【12月10日に再開されています。】

【追記】元国立癌研究センターの腫瘍内科医:勝俣範之医師も、専門的な立場から批判の記事を載せています。こちら

続きを読む "卵巣がん体験者の会のNスペ「がんワクチン」批判【追記あり】" »

2012年11月24日 (土)

マインドフルネスとタオ

マインドフルネスストレス低減法』の冒頭にある「日本の読者の皆さんへ」で、カバットジンは、鈴木大拙によって日本の禅を知り、道元の思想に影響を受けていると書いています。もちろん2500年前に仏陀が説いた、原始仏教の「気づきの瞑想」がルーツです。”今”という瞬間のすべてをすすんで受け入れることです。「やらねばならないこと」ばかりに時間と心をとられて、皮肉にも私たちは”自分自身とコンタクトをとる”ことが難しくなっています。

マインドフルネスストレス低減法 がん患者でなくても、誰でもが老・病・死を避けられないのですから、本当に大事な問題は「チャンスがあるうちに、どのようにして”人生を生きるか”」ということです。瞑想による”何もしない時間”を持つことが、自分自身を発見するための第一歩です。

カバットジンは「エピローグ」には老子を持ち出してきます。タオについてこのように書いています。

ご存じない方もいらっしゃると思いますが、中国には”タオ(道)”という、よく知られた概念があります。タオ(道)というのは、無理に何かをしなくても、「道はおのずと開け、訪れる」という考え方です。 ”何もしない、無理に励まない”という意味を理解できればタオ(道)という概念も理解できることと思います。

人生は、すでにおのずと進んでいるのです。ですから、健康に生活するうえで大切なのは、あなたが自分の人生をタオ(道)という視点でとらえ、ものごとをあるがままに受け入れ、すべてのものごとやすべての瞬間と調和していく、という意識なのです。

人生というのは、洞察力と癒しの力を身につけ、受容と平安、そして心と体を深く理解していく道のりなのです。タオ(道)は意識的に暮らし、自分の内部の力と外部の力を知ると同時に、内や外といった区別というものは存在しないということを知るための知恵なのです。

今、あなたは、一生かけて意識と全体性を探求し、自分自身を見つける旅に出発しようとしているのです。
旅といっても遠くに出かける旅ではなく、”今”この瞬間の充実感を味わい、”今”ここで静寂と平安を見つけることができる、という旅なのです。今すぐにでも、自分の体の中で安らぎを見つけることができる旅なのです。

注意集中力を養う旅は、生涯続くことになるでしょう。そして、人生という旅の最後に、ようやく”自分は何者なのか”ということを悟るところに行き着くのです。

瞑想によって、”全体性”という視点から、体の内的結びつきの質を高め、自己治癒力を回復させることができるのです。

続きを読む "マインドフルネスとタオ" »

2012年11月19日 (月)

「がんワクチン」は"夢の治療薬"ではない

昨夜のNHKスペシャル「がんワクチン~”夢の治療薬”への格闘」、多くの方が観たようですね。関係のない、久留米大のがんワクチン事務局のホームページへのアクセスも急増したといいます。

難しい内容をわかりやすく説明しようとする努力は認めますが、いくつか問題もあります。

今年の2月に「あさイチ」で紹介されて話題になったワクチン:エルパモチドの第Ⅱ相試験の生存率曲線が番組で紹介され、がんワクチンに効果があったかのように説明されていましたが、エルパモチドの第Ⅲ相試験の結果は「有効性が確認できない」というものでした。番組ではそれにはほとんど触れませんでした。グラフを見た視聴者は「膵臓がんが治る」と誤解しかねません。

実際には一人の女性の膵臓がんの肝臓転移が消失したとされていますが、どうして第Ⅲ相試験で有効性が証明できなかったのか、「あさイチ」で紹介したNHKの責任としては、この点を取材して欲しかった。

Imageyositakapc041
がんペプチドワクチンは”夢の治療薬”ではないことが、ますます明らかになってきたと思います。がんペプチドワクチンで、再発・転移した膵臓がんが治ることは、まずありません。番組で紹介されていた、現在進行中の数種類のペプチドを混合したカクテルワクチンでも同じです。延命効果があるだけです。ただ、抗がん剤と違って副作用がほとんどないから、患者のQOLの質は高いのです。延命した時間を副作用なしで過ごせることは何にもまして貴重です。

治験に参加した多くの患者も、たぶん「万が一、治るかもしれない」と期待しているのでしょう。

まだ治験最中の治療法を大々的に紹介することも異例です。がんペプチドワクチンの効果は半年後からと言われていますが、その半年時点での取材です。それだけ患者の期待が大きいということでしょう。千葉徳州会病院の講演会でも満員の聴衆でした。しかし、患者に過大な期待を抱かせる報道だと言って良い。

春のあさイチの放映後も、いわゆる「免疫療法」を標榜する、巷のあやしげな病院に患者が殺到したそうです。今回も同じ現象が起きなければ良いのですが。

Imageyositakapc037

膵臓がん患者に希望を持って欲しいと思いますよ。しかし、過大な希望では患者を誤らせるだけです。抗がん剤はずっと効くわけではない。がんワクチンも腫瘍がなくなってしまうのではない。膀胱癌の再発予防効果も取り上げていました。中村祐輔教授はもともとこのワクチンは再発予防に使うのが効果的だと言っていました。しかし、治験結果ので無い段階で、再発防止効果があるかのように断定するのは、科学的ではない。

米国は国を挙げてがんワクチン開発を支援しています。日本の現状はお寒いかぎりで、やっと14億円の支援が決まったという。3.11後の復興予算が、100億円単位で復興とは無関係の、自衛隊の風呂場の改築などに支出されています。がんワクチンの開発に回した方が、まだましだと言えます。

男性患者の宮内さんが言っていました。「絶対に治してみせる」「これで生き延びられるかもしれない」と。希望を持つことは治療成績を上げるためにも大切です。
Imageyositakapc125
しかし、”夢の治療薬”だと期待していると、裏切られることになる可能性が高い、と考えています。千葉徳州会病院の7人の治験参加者も、すでに4人の患者が、状態が悪くなって治験から離脱したと解説されていました。芳しい結果は出ないような気がします。もちろん、治験の結果は待ち遠しいし、今後も冷静に追跡します。

Imageyositakapc100

続きを読む "「がんワクチン」は"夢の治療薬"ではない" »

2012年11月18日 (日)

『がんの統合医療』(4) クルクミン

がんの統合医療』から、クルクミン(ウコン)に関する箇所を紹介します。クルクミンの有効性に関して、多くのエビデンスが揃ってきたようです。

  • クルクミンは有望な抗がん剤として注目され,幅広いがん種に対する化学予防、治療において強力な効果を示す可能性を秘めている。実験データからはクルクミンは多様な作用機序を示すことが示唆されている。クルクミンは1日8g投与で安全性と良好な耐容性を示し、臨床試験への準備は整った。さらなる安全性評価、適切な代理バイオマーカーに対する作用の評価、前がん病変を有する患者や他のハイリスク群における化学予防効果、進行がん患者に対する単独治療か通常治療との併用による治療効果の検証のために、今後、第Ⅰ相、第Ⅱ相試験を実施する必要がある。
  • 米国立がん研究所(NCI)のがん予防部門では、がん予防の新規化合物を精力的に探している。こうした製剤には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、クルクミン、インドール3ーカルビノール/ジインドリルメタン(DIM)、デグエリン(ロテノンの誘導体)、緑茶(ポリフェノンE)、大豆イソフラボン、リコピン、レスベラトロールなどがある。
  • クルクミン(curcumin)は、ウコン[turmeric]に含有されている黄色物質で、最も強力な化学予防薬や抗がん剤の1つとして浮上してきた。
  • この化合物は、多様な動物モデルや培養細胞モデルにおいて抗がん作用を発揮することが明らかになった。結腸癌、胃癌、皮膚癌に対して、大腸前がん病変の発現やDNA付加体形成を抑制することで化学予防物質として働く(Singh & Khar、2006)。また、クルクミンはNF-κBをダウンレギュレーションすることで増殖抑制作用やアポトーシス誘導作用を示し、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)のような血管新生促進遺伝子のダウンレギュレーションや、血管内皮細胞の遊走の抑制と浸潤の低下による血管新生阻害作用を有する。主なアポトーシス誘導物質や放射線に抵抗を示す培養細胞株は、クルクミンをこれらと併用処理すると、アポトーシスに対する感受性が高くなる。

続きを読む "『がんの統合医療』(4) クルクミン" »

2012年11月17日 (土)

『がんの統合医療』(3)

がんの統合医療 統合医療に関する誤解の第一は「統合医療=補完代替医療」とする考えである。統合医療は現在の通常医療の範囲を超えた考えや実践を包括しているが、通常の医療を一方的に拒否するものでもないし、代替医療を無条件で受け入れるものでもない。その実際のイメージを掴んでいただくためには、『がんの統合医療』の二人の監修者、ワイルとアブラムス医師が、胆管癌の患者に与えた助言を見てみよう。

最近、胆管癌と診断された64歳の男性が、本書の2人の監修者に助言を求めてきた。彼を診ている、ある大きな大学病院の医師たちはWhipple法による膵頭十二指腸切除術が適応であるとの意見で一致していたが、この専門医たちは術後の補助療法に関しては意見が一致しないとのことであった。なぜなら、これはまれながんであり、補助療法に関する統計学的なエビデンスに乏しく、彼が相談していた腫瘍内科医たちは膵癌の経験に基づいて指導を行っていた。フルコースの放射線療法とそれに引き続いて積極的な化学療法をするようアドバイスした。

その患者は教養があり、健康を常に意識して、広い展望をもった専門家からの他の選択肢におおいに興味をもっていた。腫瘍内科医は、彼が使っているサプリメントの是非や、どんなものを食べてよいか、あるいは食べてはいけないかについて彼が質問しても答えることができなかった。また、(結果に影響するかもしれない)運動や精神的・感情的な要因について、あるいはライフスタイルの要因ーこれらはがんの進展に影響を及ぼすかもしれないし、手術療法や放射線療法・化学療法から逃れたがん組織を遺残させるかもしれない一について、何も説明できなかった。

私は、ある現代中国医学の施術者を彼に紹介した。その施術者は中国の医師(MD)で中国式のがん統合医療の経験をもっていた。この医師は、手術により遺残したがんの発育を遅らせ、骨髄や免疫組織を放射線や抗がん剤による障害から守るために、ハーブ製品を勧めた。彼は最終的なパートナーであった腫瘍内科医および外科医に相談することなく、この製品の使用を決断した。

私はまた彼に、たまたま近隣の都市で開業していた数少ない統合腫瘍医の一人を紹介した。患者は手術前に2回面談し、治療中の栄養とサプリメントに関する質問に答えてもらった。彼はさらにいくつかの点についてアドバイスを受けた。

その患者はそれから、私が紹介した催眠療法士(hypnotherapist)との電話でのやりとりで術前の準備を行い、病院内で使えるよう(催眠療法の)録音テープを入手した。彼がセカンドオピニオンのためにAbrams医師(本書の監修者の一人)に電話するまでに、私は彼が意見や情報が過多になって混乱していることを実感した。そこで、私は他の医師たちが対応できないような問題については、アドバイザーとして手近な統合腫瘍医にまず相談するよう提案した。Abrams医師は、最近膵癌でWhipple手術を受けて経過がすこぶる順調なある患者を彼に紹介した。二人は何度も電話でやり取りを交わした。彼は、手術を間近に控えた者にとって何が期待できるか随分多くの情報が得られたし、術後の回復状況や治療成績については十分楽観的になることができた。これは非常に有益であった。

(私自身も実践の場でいつも、慢性疾患をもった患者には、同様の問題を抱えつつも順調に経過している別の患者を紹介するようにしている。病んでいる患者に、もっと健康になれると確信させるのにこれほどよい方法はない。がんと診断されて間もない患者にとっては、特に重要である)

手術は順調にいった。がんは原発部位を越えて広がってはいなかったが、切除断端の一つはあやしかったので、患者は迷うことなく1コースの放射線治療を受けた。しかし、同時に化学療法を併用することについては、専門家の間で意見の一致をみなかった。

患者は順調に回復した。そして、健康によい食事をとっていることを確信し、植物薬やサプリメントをとり「こころと体」の療法を実践し、できるだけ毎日歩き始めた。彼の精神状態は前向きであったが、化学療法を受けるかどうかを決めるのには苦闘した。彼の腫瘍内科医はシスプラチンを用いた積極的な化学療法を強く推したが、毒性の低い通常量のフルオロウラシル(5-FU)なら快適に過ごせるであろうと言った。腫瘍外科医を含めた専門医たちのなかには、胆管癌に対する化学療法のベネフィットはないに等しいので、どんな化学療法も推奨しない、という者もいた。あらゆる意見を慎重に考慮した後、彼は5-FUを選んだ。そして、彼の統合腫瘍医はこの選択を支持し、6週間コースの放射線化学併用療法に対して、食事内容やハープ、サプリメントを調整した。

こうした治療に直接関わった医師たちの話によれば、この患者は、副作用もそれほどなく経過し、これまでの治療経験でみたことのないほど良好な結果が得られたという。患者自身の見方では、良好な経過をたどったのは、すべて健康全般や生体防御をサポートするよう実行してきたことによるものであり、さらに研究心から、がんの統合医療を学んだことによるものであった。彼は、もう大丈夫であるという確信をもったことと、人生のあらゆる面で自らが精進することにより健康を守ろうと励む動機づけにもなったことを実感している。他のがん患者が、彼が得た情報を求めているなら進んで提供すること、さらにはがんの統合医療の分野の発展に役立つことなら喜んでしょうと思っている。

統合医療とは、がんを予防し、治療し、そしてその影響を受ける体、こころ、スピリチュアリティをあらゆるレベルで支持するために、われわれができる最善のことを単に実行するものである。

体を温めていればがんは治るとか、抗がん剤は毒だからこれを止めればがんが治るだという日本の「代替療法家」とは、本質的に違うものなのです。

続きを読む "『がんの統合医療』(3)" »

2012年11月15日 (木)

薬をすべて変更しました

DP1M-100-0273

大森:鷲神社の酉の市 DP1 Merrill F2.8 1/40秒 ISO200


9月に腸閉塞で入院したとき、その病院の担当医が飲み薬をすべて変更することを決めた。理由は、腸閉塞の原因がアヘンチンキの効き過ぎによるものではないかと疑ったからだ。確かにアヘンチンキは5年前の手術依頼、よく効いた。これを飲まなければ食後は確実にひどい下痢に襲われていた。最近では飲む量を10CCから5~7CCに減らしていたのだが、それでも良い効果があった。逆にいえば、効き過ぎという傾向もあったのだろう。

アヘンチンキの代わりは、ツムラの「大建中湯」である。腸閉塞にはこの薬以外は効果が期待できないらしい。(こちらこちらの記事)また、12年前に直腸がんの手術でお世話になった東邦医大の船橋先生(もう教授になられていた)が、がんサポート情報センターに「注目される大建中湯の効果」という記事を書かれている。

消化酵素複合剤のエクセラーゼ配合カプセルは新しい薬「リパクレオン」に変更した。これは豚の膵臓由来の膵消化酵素補充剤である。欧米では酵素補充療法が一般化しており、リパクレオンは既に80ヶ国で使用されているとのことであるので、それなら新薬といっても安心だろうと考え承知した。ただ、便秘、下痢、発熱、腹部膨満、高血糖などの副作用が報告されているという。血糖値の管理は怠らないようにしよう。

後はビオスリー、これは乳酸菌の仲間で整腸剤。以前少しの期間服用したことがある。これも古くからある薬だ。

薬がすべて顆粒か粉末になってしまった。

ご覧の通り、抗がん剤は一切ない。術後6クールのジェムザールをアジュバントとして投与して以来、がんに対する治療はしていない。

タケプロンの代わりにネキシウムカプセル錠も勧められたが、

胃酸分泌の最終過程であるプロトンポンプに作用し、胃酸分泌を抑制します。 通常、胃潰瘍、吻合部潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群の治療、非ステロイド性抗炎症薬・低用量アスピリン投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制に用いられます。

と書かれている症状に心当たりがないので「飲む必要はないと思う」と伝えて断った。タケプロンも必要がなかった気がする。

「大建中湯」は穏やかによく効いている。ただ、毎食後1時間ほどして、緩やかに便が出てくる。1日に3回の通じがあるという経験はこれまでにないので、少々面倒くさい。

リパクレオンの効果は確かにあると思う。消化吸収が良くなった気がするが、逆に食欲を抑えないと、体重が増えそうで心配だ。

「いまあるがんが消えていくジュース」などと言う医者がいるが、簡単に消えるのならそれは「がんもどき」だろう。がんと闘うのには体力が必要である。おいしいものを食べて良く消化するようにした方が良い。低GI値の玄米食は理想的である。私も白米よりも玄米の方がおいしく食べられる。しかし、”玄米菜食でなければがんが治らない”などと決めつけるのは馬鹿げている。

がんは複雑系、もちろん人間そのものが、宇宙の神秘以上の複雑系的存在である。

2012年11月13日 (火)

死ぬのは、がんがいい

中村仁一氏の『大往生したけりゃ医療とかかわるな』が評判になり、近藤誠氏は『がん放置療法のすすめ―患者150人の証言』が”私の総決算だ”という。その二人が対談をして『どうせ死ぬなら「がん」がいい』を出版した。

どうせ死ぬなら「がん」がいい (宝島社新書) 中村仁一氏は70人の「放置がん患者」を診て(見てきたと言うべきか)きたという。老人ホームの配置医だが、がんを放置した患者では、最期まで痛む患者は一人もいなかった。近藤誠氏は「がんもどき理論」に賛同した150人の患者を「放置」してきたが、その結果は「がんもどき」を放置しておいても転移も出てこないし、死ぬこともないとわかったという。ならば「どうせ死ぬならがんに限る」という結論だ。

私も「どうせ"何か"で死ぬのなら、がん死は悪い"何か"ではない」と書いたことがある。「がん死」のお迎えは最高だと思う。「風のガーデン」のように、生前葬をやる余裕だってあるし、人生の幕引きを自分の思い通りにできるかもしれないのだから。ポックリ死だとそんな時間も暇もないし、ぼけたら何もできやしない。脳卒中か心筋梗塞になって「しめしめ これでピンピンコロリか」と期待しても、ポックリと逝き損なって、寝たきりになったらいつ死ねるかわからない。先が見えないから、家族からは「いい加減に死んでもらいたい」と思われ、最悪なら家庭崩壊だ。

がんなら最期まで意識がはっきりしていることが多いし、介護している人も「そんなに長い期間じゃない」ということがわかる。死んだ後も介護の充実感がある(だろうと思う)。だらだらと生き長らえてしまうと、介護する側も力の加減がわからない。全力投球の挙げ句に「無理心中」になっては目も当てられない。

パスカルは、すべての人間は生まれた瞬間に「百年の間に死刑は執行される、しかしその方法は 伝えない」という残酷な”有罪判決”を受けている。だから、すべての人は「未決の死刑囚」だと言った。がん患者は「未決」ではなくなるのだから、感謝しても良いくらいだ。

ただ、子どもがまだ成人していなくて、離婚して父子家庭で父親が末期癌で、と深刻な例を聞かされて、それでも「がんが良いか」と訊かれると返答に困る。

私も膵臓がんが転移・再発したら治療はしないつもりでいる。抗がん剤は無駄だからだ。タルセバもフォルフィリノックスもお断りだ。この点では近藤氏と同意見である。しかし、がんには「がんもどき」と本物のがんがある、という彼の仮説には同意できない。近藤理論によれば、私の膵癌は「がんもどき」ということになる。手術してもしなくても、5年後には生きているはずであり、これからも転移はしないだろうから、食事や運動など、何をやってもやらなくても同じだというわけである。

近藤理論では、できたがん細胞の転移能力のありなしが全てであり、患者の「免疫力を高めてがん細胞が育ちにくい体内環境」を作る努力など無駄だという結論になる。体内に一個のがん細胞ができた時点で、あなたの運命は決まってしまうのである。これは人体では多くの因子が複雑に絡み合っているという「複雑系」思考を無視した、運命論・決定論だ。

近藤誠氏も逃げ道は残していて、「がんの9割は末期発見・治療断念・放置がいちばん」と、10割とはいわないのだが。

いつ再発しても良いように、今年中にはリビング・ウィルを書いておこうと考えている。

続きを読む "死ぬのは、がんがいい" »

2012年11月11日 (日)

『がんの統合医療』(2)

DP2M-100-1830

四万ダム湖の紅葉。4年前は大雪の日に訪れたが、今年はすばらしい紅葉に出会えた。宿も同じ「鹿覗キセキノ湯 つるや」 ↓ 紅葉を眺めて露天風呂を独り占め

Dp1m1000176


がんの統合医療 『がんの統合医療』から、食事とがんに関する部分を抜き出してみます。

「4章 食事とがん:疫学と予防」から、

  • がんは,細胞や組織に対して多数の傷害を与え発症する慢性疾患である.したがって,がんを予防する栄養素や生理活性のある食品成分を,生涯を通して常に十分量を摂取することにより,がんは予防が可能である.
  • がんを予防する生理活性物質は主に植物由来の食品に含まれていて,大部分のものは,がんのリスク軽減に関連したいくつかの生物学的特性を有する.
  • 食事は,免疫調節,メチル化,抗酸化,抗炎症作用などの多岐にわたる分子経路や細胞経路を介して発がん現象を変化させる.

食事とその栄養素,そして生理活性を有する食品成分(bioactivefood components : BAFC)は,がんに対する宿主の反応を強化する重要な役割を果たす.さらに,食事自体が修正可能ながんリスクファクターである.年齢や遺伝的素因などとは異なり,食事の選択はがんのリスクを減らすことを目的として変更が可能である.

食事の推奨事項は米国立がん研究協会(AmericanInstitute for Cancer Research : AICR)と世界がん研究基金 (WorldCancer Research Fund : WCRF)が合同で出した成果は,がんのリスクを減らす推奨事項の最新情報であり, 米国がん学会(ACS)の推奨事項を支持する内容となっている.

  • 標準体重を維持して太らないようにする
  • 高カロリー食品を控え,砂糖の添加された飲料を避ける
  • 主に植物由来の食品(野菜,果物)を食べる
  • 赤身肉を控えめにし,加工肉(ハム,ベーコン,ソーセージなど)の摂取は避ける
  • アルコールの摂取を控える
  • 塩分の多い食品を控え,かび臭い加工穀物食(シリアル)や豆類は食べない
  • 必要な栄養素は食事からとる
  • 子どもは母乳で育てるようにする
  • がんのサバイパーはがん予防の推奨事項を遵守する

2つの組織の一貫した推奨事項は明らかである.実際,がんのリスクを減らすための最近の食事についての推奨事項は,体重管理,心血管疾患のリスク減少,脳卒中の予防,糖尿病のコントロールにもあてはまる.

体重の管理

体重のがんのリスクへの関与が推奨事項の大部分におおいに影響を与えていることは明らかである. 特に,大人になってからの体重増加を回避して適正体重を達成し,それを維持することが,がんのリスクを軽減させる重要な推奨項目である.野菜や果物,食物繊維をたくさん摂取することでカロリーを抑え,体重管理を可能なものにする  .逆にいえば,脂肪や甘味飲料の摂取により体重は増加する.過体重や肥満はがんになるリスクを 14~20 %増加させるといわれている.

そして,肥満の状態が,閉経後の乳癌,胆嚢癌,大腸癌(男性),卵巣癌,膵癌,子宮頸癌,子宮内膜癌,食道癌,多発性骨髄腫などに影響するとされている. また特に前立腺癌の場合には,過体重のために診断時のステージ(病期)がより進行しているというエビデンスが示されている.

肥満は,ホルモン濃度の変化,免疫応答の抑制,炎症性サイトカインや増殖因子(インスリン,インスリン様成長因子)の上昇などのさまざまな生物学的機序や身体活動への影響を通して,発がんの過程に変化を与える. 肥満者はまた,高いレベルの酸化ストレスを示すが,これにより,局所および全身の炎症反応を導き,結果として細胞傷害を引き起こす可能性がある.

続きを読む "『がんの統合医療』(2)" »

2012年11月 9日 (金)

補完代替医療と『がんの統合医療』(1)

DSC05294

DSC05308

リンドウ:赤城自然園にて


補完代替医療と統合医療は違うものなのか。違うとすればどこが違うのか。シュレベールの『ガンに効く生活』は副題が 『克服した医師の自分でできる「統合医療」』となっている。厚生労働省のがん研究助成金を得て作成されたのが『がんの補完代替医療ガイドブック 第3版』である。

ガイドブックでは「2.補完代替医療ってなに?」において次のように定義している。

補完代替医療は、英語でComplementary and Alternative Medicine(コンプリメンタリー・アンド・オルタナティブ・メディシン)といい、頭文字を取ってCAM(カム)と呼ばれています。

  • 補完医療:私たちが受けている現代西洋医学(通常医療)を補う「補完する」医療
  • 代替医療:現代西洋医学(通常医療)にとって代わる、言葉通り「代替する」医療

この二つの医療は、別々に異なるものもありますが、多くは分けることが困難な場合が多く、両者をまとめて補完代替医療といいます。

現代医学の細分化・専門化が進み、特に臨床においては患者の「こころ」や「特異性」が置き去りにされ、「臓器は診るが人は診ない」医療に対して患者の医療不信が広がっている。そこで理想的な医療のあり方として「全人的医療」「統合医療」が提唱されている。「ガイドブック」では、

さらに近年、これら補完代替医療と現代西洋医療(通常医療)を組み合わせることによって、患者さんの心と身体そして精神を総合的に考えて治療を行う「統合医療」という概念が生まれ、実践されています。

と説明している。しかし、日本においては「統合医療」の名の下に、エビデンスの乏しい代替医療を患者に勧めている医者もいる。その代表が帯津良一や安保徹、済陽高穂らであろう。

大阪大学には補完医療外来がある。そこの責任者である伊藤壽記教授は膵臓移植のエキスパートでもある。補完代替医療に関心を持ったきっかけを次のように話している

確かに移植を行えば完全社会復帰ができますが、問題もあります。免疫抑制剤を服用しなければならず、感染症もかかりやすくなります。移植膵も長期的には慢性の拒絶反応で徐々に機能が失われていくなど問題もあります。
膵がんも、手術をしてもすぐ再発してしまう。最近は有効な抗がん剤も出てきているが、それでもまだがんの中の難病中の難病です。だとすれば、何か、他に活路を見出すことのできるものはないかと考えるのは当然でしょう。もっと患者の生活の質を上げる手立てはないかと。こうして見出したのが補完代替医療です。

伊藤壽記教授らが設立した「(社)エビデンスに基づく統合医療研究会」(eBIM研究会)では、エビデンスに担保されたCAMを現行の医療に有機的に融合させ、全人的な立場で治療する、新たな治療体系としての統合医療(Integrative Medicine)が求められているとしている。

Togo1

シュレベールの『がんに効く生活』は、患者サイドに立った「統合医療」の実践的な案内書であるが、日本の医療者、学者からはこのようなしっかりとしたエビデンスに基づいた書籍が出版されることは望めない。ましてや医療者に役立つがんの統合的医療(=統合腫瘍学)の教科書などは望むべくもない。

がんの統合医療 2009年に米国で『INTEGRATIVE ONCOLOGY』が出版された。統合腫瘍学の最新の教科書であり、監修者は、あの統合医療の提唱者であるアリゾナ大学教授のDr.ワイルと、カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授のDr.アブラムである。そしてその翻訳が、伊藤壽記教授らの監訳で『がんの統合医療』として2010年に日本でも出版されている。600ページの大書であり、かなり高価でもある。

続きを読む "補完代替医療と『がんの統合医療』(1)" »

2012年11月 6日 (火)

治らなくても「敗北」ではない

DSC05344

秋明菊(シュウメイギク)<群馬県・赤城自然園にて>

土日には赤城ー四万温泉ー吾妻渓谷ー榛名湖を回ってきました。

DP1M-100-0247

榛名湖と榛名富士:紅葉ピーク。 写生をしている女性


ここ数ヶ月、間接的にですが膵臓がんの方の悲しい知らせに接することが多くなりました。膵がんの最期は本当にあっという間に体力がなくなります。やっておくべきことなどについて事前に準備をしておかなければ、間に合わないのかもしれません。

がんが治らなければ「敗北」でしょうか。がん患者なら、あわよくば自分だけは奇跡的にでも治って欲しい、と考えることは当然でしょう。しかし、あまりにも「治る」ことにこだわりすぎると、人生の貴重な時間を治ることだけに費やしてしまわないでしょうか。

柳原和子さんも、治らなければ「敗北」という風潮があるのはおかしい、と言っていました。

柳原和子さんは、腫瘍が奇跡的に消失する体験を何度も経験している。そんな彼女が、もう最後だと思ったときの加島祥造との対談があります。その対談で、

続きを読む "治らなくても「敗北」ではない" »

« 2012年10月 | トップページ | 2012年12月 »

がんの本-リンク

  • がん患者が選んだがんの本

サイト内検索

膵臓がんブログ・ランキング

膵臓癌 お勧めサイト

アマゾン:商品検索

がんの本「わたしの一押し」

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想