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2016年12月 4日 (日)

今日の一冊(61)『ケトン食ががんを消す』

最近何かと話題になっているケトン食によるがん療法を紹介した本です。「悪者扱い」されてきたケトン体の項には、

極端な糖質制限をベースとする私の免疫栄養ケトン食は、糖尿病の合併症を持つがん患者さんには、原則適用されません。
肝臓にがんの原発巣を抱える患者さんも、免疫栄養ケトン食は適用されません。

と書かれています。これじゃ血糖値が異常な膵臓がん患者には適用できないですね。

帯には「世界初の臨床試験で実証」と書かれています。

  1. 2011年7月から、アイオワ大学と米国国立衛生研究所(NIH)などによって、肺がんとすい臓のステージ4に対するケトン食の効果や安全性(通常の化学、放射線治療と併用)を検証する臨床研究が進められています。17年7月に第1回の報告が予定されています。私も楽しみにしています。
  2. ClinicalTrials.govで「Ketogenic & Cancer」で検索しても、19件のヒットがありました。世界ではがんとケトン食の関係で多くの臨床試験が行なわれているのです。
  3. 日本でも昨年10月、京都市で開かれた「第53回日本癌治療学会学術集会」で、大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座、萩原圭祐准教授らによって「肺がん患者におけるケトン食の有用性と安全性についての検討」が発表されています。5症例のうち2例(▽ケトン食継続中▽ケトン食3カ月経験の後に糖質控えめの食事を継続中)では、がんが寛解しています。

1.と3.はこの本でも触れられ紹介されています。

この本で紹介されている臨床試験も3.と同様に「症例研究」であり、ランダム化比較試験ではないということは留意しておくべきです。しかも抗がん剤とケトン食との併用です。本来は、抗がん剤だけのグループと抗がん剤+ケトン食のグループで比較しないかぎり、ケトン食ががんに効くとは言えません。

大津秀一医師もそのように批判しています。「がん細胞を兵糧攻め!「究極糖質制限」の威力 という記事を読み解く メディアが流す情報の吟味が大切

もっともな指摘ですが、しかし、1回の勤務医ではそんな大規模な試験は無理でしょう。しかも食事療法ですから製薬企業から研究費が出るはずもありません。

それに著者はこのように述べています。

ケトン食は単独でがんに効くのではなく、抗がん剤治療などとの併用で飛躍的な効果を発揮する可能性があるのです。

ま、食事だけでがんが治ることは難しいでしょう。しかし、がん患者としては併用であれ単独であれ、がんが消えてくれればよいのです。ケトン食単独の抗がん効果を敢えて証明してくれる必要はありません。

ステージⅣbでケトン食を3ヶ月継続した患者9例の1年後の評価は、3例がCR(完全寛解)、3例がPR(部分奏功)、1例がSD(進行抑制)、2例がPD(増悪) による死亡と、奏効率が67%、病勢コントロール率が78%という結果になりました。(腫瘍が縮小して手術に持ち込めたからですが)。2016年2月現在で、7人のうち手術まで持っていけたのが5人。そのすべてが完全寛解(CR)に至りました。

標準治療でステージⅣbの患者の3分の1が、手術ができるほどに腫瘍が縮小し、寛解するなんて、あり得ませんよね。大津医師の指摘はちょっと的が外れている気がします。

以下にいくつか気になる点を挙げておきます。

  • 「免疫栄養ケトン食」は短期決戦。3ヶ月以上続けてはいけない
  • 小児の癲癇治療に特化した食事療法でケトン食による重篤な副作用が報告され、代表的なものは、体力の減退、嘔吐、下痢、便秘ですが、低血糖による意識の低下や昏睡なども見られます。長期の実施になると、稀に成長不良や微量元素の不足によって不整脈を誘発することもあります。最近ではケトン食を1年以上継続した癲癇の子供が死亡したケースが報告されています。長期間にわたる極端な糖質制限が、危険を伴う理由がここにあるのです。
  • と、著者は副作用での死亡例を重視、しかし江部康二医師は副作用は軽微との認識で異なっている。
  • EPAには、がん細胞が増殖するために、自ら血管を増やす「血管新生」を抑える働きがあり、転移を起こしにくくしたり、がん細胞のアポトーシス(自然死)を誘導したりする効果があることも確認されました。  ようするに、EPAには、がん細胞の炎症反応(CRP値)を抑制し、悪液質を改善させる力があるだけでなく、がんの進行をブロックする働きもある。
  • 体内の深部にあるすい臓のがんは、固い繊維芽細胞で覆われており、これによってがん細胞への抗がん剤や免疫細胞の侵入がブロックされたりするのです。すい臓がんの治療が難しいとされる理由です。
    しかし、この繊維芽細胞の質を変えることで、すい臓がんと言えども、抗がん剤や免疫細胞の侵入をスムーズにすることが可能になります。たとえば、ハイパーサーミア(局所温熱療法。後述)には、すい臓がん細胞周辺の繊維芽細胞同士の結合を緩めて隙間を生じさせる働きがあります。
  • ゲルソン療法に限って言えば、抗がん剤がまだ開発されていない戦前に産声を上げたものです。
  • ニンジンニュースは糖質が多く含まれている。ケトン食とは真逆です。
  • 現在のゲルソン療法でも、抗がん剤治療後のすい臓がんの患者さんには、ゲルソン療法そのものを中止しています。(私も何度も記事で注意している)
  • がんができたら肉を食いなさい。
  • ビタミンDは一日5000IU以上が必要。
  • 私の患者の中には、TS-1との併用ですい臓がんの進行がほぼストップしている患者が数人います。
  • 牛蒡子のサプリメントとリポトール(スタチン製剤)を勧めた余命1ヶ月と宣告されたすい臓がん患者では、腹水が消え、2年経った現在でも元気です。

ケリー・ターナーは『がんが自然に治る生き方』で、自然寛解した患者が実行している9つのことの最初に、

  • 食事を根本的に変える

を挙げているのですね。

ケトン食=スーパー糖質制限食ですが、私自身はずっと糖質制限を続けてきました。その経験からも、私がもし再発・転移してしまった場合には、低用量抗がん剤治療とケトン食を試すことになろうと思います。(どちらもエビデンスはないが、さりとて再発した膵癌に対しては一切のエビデンスはありませんので)

まだ症例研究の段階ですので、過大な期待は禁物ですが、希望の持てる治療法だと受け止めています。しかし、患者が個人で行うには敷居が高いですね。(セミナーがある)

さまざまな代替療法を、根拠を示して紹介しているのも特徴です。中には首をかしげるものもあるが・・・。著者の「免疫栄養ケトン食セミナー」を開催しているバイオロジックヘルス(株)のサイトもいかがわしいね。

水素水はまぁ、がんに効く可能性はあるから良いとして、磁気治療器や波動測定器まで扱っている。電磁波対策も。これほど怪しげな商品と同列にセミナーを並べて平気な著者の感覚を疑いますね。

この本、興味深いこともたくさん書かれているが、怪しげなこともたくさん書かれている。足湯の効用などは安保徹氏とそっくりです。


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コメント

胆嚢癌Ⅲbさん。
『ケトン体が人類を救う』に紹介されているFacebookのグループですよね。
残念ながら私はFacebookはやっていないので、リンク先だけを参照させていただきます。

お久しぶりです。

記事を読むのが遅れてコメントがおそくなりました。
私はフェイスブックで最近立ち上げられた非公開グループの「ビタミン・ケトン療法」に参加させて頂いてますが、当該記事の著者の古川医師の臨床試験よりももっと熱い記事が続いています。
https://www.facebook.com/groups/vktherapy/

このグループを立ち上げた2人の医師のサイトです。
http://blog.livedoor.jp/skado1981/archives/12740345.html
http://ameblo.jp/naikaimizuno/entry-12220492173.html

ちなみにフェイスブックに参加されれば分かりますが「パラダイムシフト好きの外科医」先生とは群○県の公立○○総合病院の外科の門○先生です。

よろしければ参考にして下さい。

山吹さん、ひでこさん。
ケトン食、興味深いですがまだまだ実験段階ですね。私としては来年7月のアイオワ大学と米国国立衛生研究所(NIH)の臨床試験結果の発表を待って最終判断です。
症例報告で可能性はありそうですが、こうした例はひっくりかえることも多いからです。
著者のセミナーを開催している会社が、波動測定器といういかさま商品を扱っていることも不信感をぬぐいきれない理由です。

再発したら低用量抗がん剤とケトン食はいい方法だと思います。
お読みになってるかもしれませんが、三好先生のブログで、糖質制限で好中球、血小板が減少した体験が書いてあります。その2つの値は抗がん剤選択の因子だそうで、がん細胞の周囲環境を変化させることは、がん細胞の制御に繋がる可能性があるそうです。9/2時実践!食事療法 の記事です。
今まで食事療法に関心はなかったそうですが、気がついたことあったようです。

古川先生が書いている、9人のステージ4の患者ですが、他の報道で乳がんと大腸がんと書いてありましたあ。乳がんでしたら、合う抗がん剤なら原発巣が縮小して手術に持っていけることもあります。小林麻央さんもそうです。根治ではなく局所コントロールですが。
どのくらいの症状の人対象かもっと詳しく知りたいです。ケトン食がどのくらい働いたをです。結果は素直に良かったですね、と思います。


こんにちは。腫瘍内科医や緩和ケア医の中に、「抗がん剤+別治療」を常に科学的根拠が無いと、何だか目の敵にする様な方々がいて、残念です。抗がん剤は他の治療法、療養法に勝ると言いたいが為だけに、他の研究を貶めているようで不毛ですし、患者には迷惑この上ないです。私から見ると、こういう人は科学者であって、医者では無い。アメリカで大々的に発表されると、あっという間に変わりそうな気もしますが。「抗がん剤+漢方」は市民権を得てきたようで主治医にもすんなり話が通りました。癌患者でもある西村医師が言われる通り、患者にとっては、何が効いてもいいわけです。こちらのプログで癌に係わる本の読み解き方を教わりました。「良い情報だけでは無く、気を付けるべき情報にも常に用心して読むべし」ですね。夢の癌治療法、療養法等、まだ生まれてませんから。何かいい方法はないかと臨床研究を続けている医師が希望の種を生み出してくれていると思っています。今日も長文ですみません。

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