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2017年3月22日 (水)

【訃報】田中雅博師死去

末期の膵臓がんであり、医師で僧侶でもあった田中雅博師が、21日に亡くなったと報じられています。

2014年10月にステージⅣbの膵臓がんと診断され、手術はしたが、肝臓への転移も見つかった。抗がん剤治療を続けたが効果は芳しくなく、「来年の3月の誕生日を迎えられる確率は非常に小さい。もう少しで死ぬという事実を直視しています」と述べておられた。それが3度目の誕生月までがんばってこられた。

もう少し生きられそうだと、この間精力的に死と仏教について連載を続け、末期のがん患者に生と死、生きる意味を自らの体験として語り続けてこられた。

医師でもある田中師に、善意から民間療法を勧めてくる人もいたそうだ。

私が現代医学では治癒不可能な状況だと知って、民間療法を奨めて来られる方がいました。善意からでしょうが、民間療法には効くという証拠がありません。「西洋医学でダメなら東洋医学で」という方もいますが、それも古い話で、現代医学に西洋も東洋もありません。東洋医学由来でも臨床試験を行なって効果が認められれば、すぐに現代医学に取り入れられるのです。

田中師は『いのちの苦しみは消える: 医師で僧侶で末期がんの私』において”いのちの苦しみ”との向き合い方を説いている。

「人は誰でも100%死にますが“いつか”であって、すぐではありません。ですが、限られたいのちだとわかると、死にたくない、死ぬのが怖いという気持ちが出てきます。それが、“いのちの苦しみ”です。“スピリチュアル・ペイン”ともいいます。人間誰しも生きていられるなら生きていたいと思いますし、いのちがなくなることに苦しみは感じます。でも、人の死は思い通りにはなりません」

いのちの苦しみをやわらげるひとつの方法として、田中さんは“生きることへの執着を捨てる”ことを説く。人には“思い通りにしたい”という欲求があり、思い通りにならないことに対して苦しみを感じる。だからこそ、“生きたい”“死にたくない”といった欲求をコントロールすれば、苦しみがなくなるという。

いのちの苦しみは非科学的な領域だから、医者では治せませんと、臨床宗教師の活動に力を注いでこられたのです。

この本の巻末には、田中師の般若心経の現代語訳が載せられている。

お釈迦様は一切の苦しみを五取蘊苦(ごしゅうんく)にまとめられた。この身体が我であり我がものであるという執着、自分の感覚、表象、意志、意識という執着をも空っぽにすれば知恵が完成し、心が自由自在になり、恐れがなく、生死の輪廻を離れ、大河を超えて涅槃の彼岸に渡ることができるのだと。

医療には限界があり、死はいずれやってくる。だから、いつまでも「もっと生きたい」は希望ではない。「執着」なんだ。執着を捨てれば心は自由自在になる。

田中師のご冥福をお祈りし、感謝を捧げます。<合掌>

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